DeepMindのAlphaFold2に匹敵するより高速で自由に利用できるタンパク質フォールディングモデルを研究者が開発

2020年末、DeepMind(ディープマインド)は、同社のAIモデルAlphaFold2(アルファフォールド2)がタンパク質の構造を正確に予測(一般的で非常に難しい問題だ)することで生物学界を驚かせた。数十年来の問題を「解決できた」と多くの人が宣言したからだ。今回研究者たちは、このときDeepMindが世界を飛び越えてみせたように、今度はRoseTTAFold(ロゼッタフォールド)でDeepMindを飛び越えたと主張している。RoseTTAFoldは、わずかな計算コストでほぼ同じことを行うシステムだ(しかも無料で使用できる)。

AlphaFold2は、2020年11月に開催されたCASP14(タンパク質を構成するアミノ酸の配列から、その物理的構造[フォールディング]を予測するアルゴリズムを競う仮想イベント)で競合他社を圧倒し、業界の話題となった。DeepMindのモデルは、他のモデルをはるかに凌駕し、非常に高い信頼性のある精度を誇っていたため、この分野の多くの人たちが(半ば真剣に、そしてユーモアを持って)新しい分野への転身を口にしていた。

しかしDeepMindによるこのシステムの計画だけは、誰も満足させていないように思えた。その内容が網羅的かつオープンに記述されていなかったため、(Alphabet / Googleが所有する)DeepMindが、秘密のソースを多かれ少なかれ独り占めしようとしているのではないかと心配する人もいたのだ。もちろんそれは彼らの特権ではあるものの、科学の世界における相互扶助の精神にはやや反するものだと思われた。

【更新】ちょっとしたサプライズだが、DeepMindは米国時間7月15日に、手法に関するより詳細な内容を「Nature」誌に発表した。コードはGitHubで公開されている。このことにより、前述の懸念はかなり軽減されたものの、以下に説明した先進技術の内容にはまだ十分意味がある。記事の最後にはチームからのコメントも付けておいた。

関連記事
Alphabet傘下のAI技術企業DeepMindがAIベースのタンパク質構造予測で歴史的なマイルストーン
新型コロナ治療に道を開くワシントン大ベイカー教授の研究に3.2億円のブレークスルー賞

この懸念は、ワシントン大学のDavid Baker(デビッド・ベイカー)氏とMinkyung Baek(ミンギヨン・ベイ)氏を中心とする研究者が、最新の科学誌『Science』に発表した研究によって、少なくとも部分的には解消されたようだ。ベイカー氏は、ご存知の方もいると思うが、人工的に作られたタンパク質を用いて新型コロナウイルス(COVID-19)に対抗する研究でBreakthrough Prize(ブレイクスルー賞)を受賞したばかりだ。

研究チームが開発した新モデルRoseTTAFold(AlphaFold2の手法を参考にしたとベイカー氏がメールで率直に答えている)は、AlphaFold2に匹敵する精度で予測を行うことができる。

ベイカー氏は「AlphaFold2グループは、CASP14ミーティングでいくつかの新しいハイレベルなコンセプトを発表しました。そうしたアイデアからスタートし、グループの仲間と一緒にブレインストーミングを重ねたことで、ミンギョンはわずかな時間で驚くほどの成果を上げることができました」と語った(「彼女は本当にすごいよ!」と彼は付け加えた)。

予測されたタンパク質の構造とその正解の例。90点以上は非常に良いとされている(画像クレジット:UW/Baek他)

ベイカー氏のグループはCASP14では2位という立派な成績を収めたが、DeepMindの手法が一般的なレベルで説明されたものだとしても、彼らの手法と競合するものであることに気が付いた。彼らは、(1)アミノ酸の配列、(2)残基間の距離、(3)空間上の座標を同時に考慮する「3トラック」ニューラルネットワークを開発した。その実装は非常に複雑で、この記事では紹介しきれないが、結果として、ほぼ同じ精度レベルを達成したモデルとなった。繰り返しになるが、1年前にはまったく存在しなかったレベルだ。

さらにRoseTTAFoldは、このレベルの精度をより速く、つまり、より少ない計算量で達成する。

DeepMindは、個々の予測を行うために複数のGPUを何日もかけて使用したと報告していますが、私たちの予測手法は、サーバーの利用と似たやり方で、ネットワークを介して1回のパスで行われます【略】RoseTTAFoldのエンド・ツー・エンドバージョンでは、400残基未満のタンパク質のバックボーン座標を計算するのに、RTX2080 GPUで10分以内で収まります。

聞こえただろうか?これは何千人もの微生物学者が安堵のため息をつき、スーパーコンピューターの利用を申請するメールの下書きを捨てた音だ。現在、2080を手に入れるのは容易ではないかもしれないが、重要な点はハイエンドのデスクトップGPUがあれば、ハイエンドクラスターを数日間稼働させることなく、数分でこのタスクを実行できるということだ。

RoseTTAFoldは要件が控えめなため、AlphaFold2では考えられなかったような、パブリックなホスティングや分散にも適している。

ベイカー氏は「私たちは、誰もがタンパク質の配列を投稿して、構造を予測できる公開サーバーを用意しています」と語る。「数週間前にサーバーを立ち上げてから、4500件以上の投稿がありました。また、ソースコードも自由に利用できるようにしています」。

これは非常にニッチな問題に見えるかもしれないが、タンパク質の折り畳みは歴史的に見ても生物学で最も困難な問題の1つであり、その解決のために数え切れないほどの時間がハイパフォーマンスコンピューティングに費やされてきた。タンパク質の構造を予測するために、人々が自分のコンピュータサイクルを寄付する分散コンピューティングアプリFolding@Homeが話題になったことを憶えている人もいるだろう。1000台のコンピューターで解決に数日から数週間かかっていたような問題(基本的に力任せに解を作り出し検証する)でも、今ではデスクトップ1台で数分で解決できるようになった。

タンパク質の物理的構造は、生物学の中でも最も大切なものだ。なぜなら、私たちの体の中で大部分の仕事をしているのはタンパク質であり、治療のために変更したり、抑制したり、強化したりしなければならないのもタンパク質だからだ。しかし、そのためにはまずタンパク質を理解する必要があるのだが、2020年の11月まではその理解を計算機を使って確実に行うことはできなかったのだ。CASP14ではそれが計算可能であることが証明され、そして今回それが広く利用できるようになったのだ。

だが残念ながらこれらは、タンパク質フォールディングの問題を解決するための「ソリューション」そのものではない。もちろん今回、中立的な状態で静止しているタンパク質のほとんどの構造を予測することができるようになり、複数の領域に大きな影響を与えるようにはなったものの、タンパク質が「中立的な状態で静止している」ことはほとんどない。他の分子をつかんだり離したり、ゲートを通して他のタンパク質をブロックしたりすり抜けさせたり、とにかくあらゆることをするために、タンパク質自身がひねったりねじったりされるのだ。こうした相互作用は、数が莫大で、複雑で、予測するのが難しく、AlphaFold2もRoseTTAFoldもそれを計算することはできない。

ベイカー氏は「この先、たくさんのエキサイティングなテーマが待ち受けています【略】物語は始まったばかりなのです」という。

DeepMindの論文について、ベイカー氏は大学人の仲間意識から次のようにコメントしている。

読んでみて、すばらしい業績を描いたすてきな論文だと思いました。

このDeepMindの論文は、私たちの論文をきれいに補完するものであり、私たちの研究が彼らの進歩に基づいていることを考えると、私たちの論文より前に発表されたのは適切なことだと思います。

読者のみなさまには、両論文を楽しんでいただけると思います。2つは重複するものではありません。私たちが論文で指摘しているように、彼らの手法は私たちの手法よりも精度が高く、その差の原因が彼らの手法のどのような特徴にあるのかを知ることは、非常に興味深いところです。私たちはすでに、RoseTTAFoldをタンパク質の設計やより体系的なタンパク質複合体の構造予測に使用していますが、DeepMindの論文から得られたアイデアを取り入れることで、従来の一本鎖のモデリングとともに、これらを急速に改善できると期待しています。

もし科学とその潜在的な影響について興味があるならば、CASP14におけるAlphaFold2のパフォーマンスを受けて書かれた、方法とあり得る次のステップについての、より詳細で技術的な説明を読んでみるとよいだろう

カテゴリー:バイオテック
タグ:DeepMindタンパク質RoseTTAFoldワシントン大学

画像クレジット:Ian Haydon, UW Medicine Institute for Protein Design

原文へ

(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

「バドワイザーは卵を作る」食料大手が代替タンパク質産業に相次いで参入、投資額も急増

企業は代替タンパク質市場の潜在性に急速に目覚めつつある。米国最大の消費者ブランドが引き続き投資し、消費者がより健康的で環境的にも持続可能な食品へ移行するのをサポートしているスタートアップと提携している。

アースウィーク(地球保護週間)が近づく中、先に発表された新たな提携は、古い事業を一変させる新しいテクノロジーのポテンシャルを示している。

米国時間4月21日にAB InBevの投資・イノベーション部門であるニューヨーク拠点のZX Venturesは、卵の代用品の「醸造」などを含むタンパク質生産テクノロジーのデベロッパーClara Foodsと提携すると明らかにした。バドワイザーのメーカーであるAB InBevは飲用するというよりお湯で茹でるタイプの液体を作るための体制を整えている。

その場合、卵が孵化するかどうかは未来の消費者であるあなた次第だ。

「当初からClaraは世界の非動物性タンパク質へのトランジッションを加速させることをミッションとしてきました。まずは卵から始めています。毎年1兆個超の卵が世界で消費されていて、企業の放し飼いの約束は十分ではありません」とClara Foodsの創業者でCEOのArturo Elizondo(アルトゥーロ・エリゾンド)氏は話した。「地球に優しく、よりおいしい未来の実現に向けて協業するために、世界最大の発酵の会社と提携することに興奮しています。この提携は当社のビジョンの実現に向け大きなステップです」。

2020年の代替タンパク質への投資規模の拡大を示すグラフ。2019年から2020年にかけて代替タンパク質への投資は10億ドル(約1080億円)から30億ドル(約3240億円)に急増し、中でも植物性タンパク質の製品への投資が大半を占めた(画像クレジット:Good Food Institute)

提携はマーケット主導という理由がある。両社が引用した研究によると、高品質タンパク質への需要は2050年までに98%増えると予想されている。

「増大する食料需要に応えるには、新旧のいくつかの産業にまたがるコラボレーションとイノベーションの上に構築された画期的なソリューションを必要とします。昔ながらの自然な発酵プロセスは、グローバルの食料システムにおける未来の需要に応えるのをサポートするために、さらに利用することができます」とBioBrewの創業者でCEOのPatrick O’Riordan(パトリック・オリオーダン)氏は述べた。BioBrewはビール以外のものに大規模の発酵と下流処理の専門性を応用しようとしているZX Venturesの新規事業だ。「スケーラブルで持続可能、そして採算の合う方法でClara Foodsとともに高機能な非動物性タンパク質開発を開拓するのを楽しみにしています」。

一方、似たようなことがセントルイスでも起こっている。そこではシリアル大企業のPostもさまざまな代替肉を作っているスタートアップHungry Planetに投資している。

Kellogg(ケロッグ)のシリアル帝国を立ち上げたのと同じ植物ベースの食料と精神的核となるものとしての健康にフォーカスしているセブンスデー・アドベンチスト(安息日再臨派)によって組織されたPostは長らく、グレープナッツシリアルや他の穀物ベースの朝食の商品でコーンフレーク大企業のライバルだった。

そして今、PostはHungry Planetの2500万ドル(約27億円)の投資をリードした。Hungry Planetはクラブケーキ、ラム肉バーガー、鶏肉、豚肉、牛肉の肉ベースの代替品の提供を目指している。その他の投資家にはシンガポール拠点の環境に配慮したホールディングカンパーニーTrirecがある。

業界の動向を追跡しているGood Food Instituteによると、代替タンパク質はビッグビジネスだ。2020年、タンパク質の代替ソースのテクノロジー開発を手がけている企業や商業化している企業は30億ドル(約3240億円)超を調達した。

「2020年に代替タンパク質産業は前年よりもかなり多くの資金を調達し、レジリエンスだけでなく加速を示しました」とGFI法人エンゲージメントのディレクターであるCaroline Bushnell(キャロライン・ブッシュネル)氏は声明で述べた。「こうした資金流入と今後まだ行われる資金調達は、かなり必要とされているR&Dと、これらの企業がスケール展開してより多くの消費者に美味しくて手頃な値段、そして入手しやすい代替タンパク質の製品を提供できるようにする生産能力の構築を促進するでしょう」。

これは、森林破壊を止め、畜産関連の温室効果ガスの排出を減らすために、これまでよりも植物ベースの代替品を動物性タンパク質にもたらそうとする動きの一環だ。

「人類は我々が抱える問題の規模と緊急性に対応するソリューションを必要としています」とエリゾンド氏は述べた。

カテゴリー:フードテック
タグ:ZX VenturesClara Foodsタンパク質代替肉代替卵Anheuser-Busch InBev持続可能性

画像クレジット:plus49/Construction Photography/Avalon/Getty Images / Getty Images

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

マッシュルームでできた栄養価の高い代替肉をMeatiが2021年夏から展開

菌糸体(真菌類の構造繊維)を消費者向けの健康的な代替肉に変えるMeati(ミーティ)は2021年夏からの大々的な展開に向け準備中だ。

共同創業者のTyler Huggins(タイラー・ハギンズ)氏は、米国各地の選ばれたレストランにホールカットステーキと鶏肉プロダクトのサンプルを、初の商品であるジャーキーとともに提供することを予定している。

ハギンズ氏にとってプロダクトの立ち上げは、従来の肉より優れた代替物として機能性菌類食品を商業分野で幅広く受け入れられるようにする、長い道のりにおける1歩だ。

「これを会話の始まりに使いましょう。2オンス(約56グラム)であなたが毎日摂取すべきタンパク質の50%、食物繊維の50%、亜鉛の半分が摂れます。栄養という点でこのプロダクトに匹敵するものはありません」とハギンズ氏は話した。

そして肉からマッシュルームへの移行も地球にとっては良いものだ。

Meatiは今夏、試験プラントを稼働させ、Perfect Dayのミルク代替品、Atlastの肉代替品、EcovativeMycoWorksの革代替品など、マッシュルームを活用する一連の動きに加わる。

菌糸体を活用したプロダクトをマーケットに持ち込もうとしている他のテック企業について「私たちは間違いなく同じ動きをとっています」とハギンズ氏は述べた。

しかしながら、すべての菌糸体が同じように作られているわけではない、と同氏は指摘した。ハギンズ氏がユニークと言った、「最もハッピーな状態にキープして」菌を成長させる方法をMeatiは持っている、と同氏は話した。同社によると、それは最高の栄養価と最高の成長効率を意味する。

両親がバイソン牧場を所有し、畜牛地帯で育ったハギンズ氏にとって、目標はTボーンやリブアイに取って代わるのではなく、高級ブリトーや他の迅速にサーブする肉の切り身に使う肉や鶏肉とすることだ。

バインミーに使われているMeatiマッシュルームミート(画像クレジット:Meati)

「同じ種のカット肉に対して、我々は勝ちます。挑むための時間をいま稼いでいます。超高級路線でいこうとは思っていません」とハギンズ氏は話した。

同社の投資家のキャップテーブルにはかなり勇足の料理会社がすでに含まれている。Barack Obama(バラク・オバマ)元大統領の栄養政策担当上級顧問、Michelle Obama(ミッシェル・オバマ)夫人の「Let’s Move!」キャンペーンのエグゼクティブディレクターを務めたSam Kass(サム・カス)氏で知られるAcre Venture Partnersや、シカゴの高級料理店Alineaもそうだ。

しかしハギンズ氏はMeatiが日々使う代替肉となることを望んでいる。「これは毎日のタンパク質だと人々が思うようになって欲しいのです」と述べた。

Meatiは未来の代替肉が従来の牛肉や鶏肉と価格的に競争力を持つと考えているが、消費者の食欲を刺激するために同社はまずジャーキーから始める。

「Meatiのおいしいジャーキーは白紙のキャンバスです。当社はビーフジャーキーのような味をつけて提供を始めます。しかし、展開を初めてすぐに菌糸体のジャーキーだと言おうと思います」とハギンズ氏は話した。

同社は現在、ハギンズ氏と共同創業者のJustin Whiteley(ジャスティン・ホワイトリー)氏が30人のスタッフを率いている。創業者2人は当初、バッテリー代替品としてMeatiに取り組み始めた。調査に基づき(ハギンズ氏が菌糸体、ホワイトリー氏が高度なバッテリーを担当)、2人はリチウムイオンバッテリーのための菌糸体ベースの電極で助成金を受け取った。

「我々はより良いバッテリーを作るために菌糸体の化学組織を微調整しようとしていました。そして何か栄養価があり、食べることができるものを作っていることに我々は気づいたのです」とハギンズ氏は話した。

また、バッテリー会社はそれを欲しなかった。

Acre、Prelude Ventures、Congruent Ventures、Tao Capitalから調達した2800万ドル(約30億円)を手に、Meatiは市場参入する準備ができている。また、同社は菌糸体を育てる施設の広大なネットワークを構築するために借入資金へのアクセスも持っている。TrinityとSilicon Valley Bankから1800万ドル(約19億円)を借り入れたばかりだ。

「2年前、この業界のほとんどの企業には、施設を建てるために借金する能力はありませんでした。VCから資金を調達できることができ、そして負債による資金調達をするだけのマーケットがあることを考えたとき、フードテック業界にいられるのはエキサイティングです。これまで以上に開発は急展開するはずです」とハギンズ氏は話した。

Meatiの共同創業者であるタイラー・ハギンズ氏とジャスティン・ホワイトリー氏(画像クレジット:Meati)

関連記事:

カテゴリー:フードテック
タグ:Meati代替肉菌類タンパク質資金調達

画像クレジット:

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

植物性由来肉のBeyond Meatが中国に初の生産工場を開設

Beyond Meatがスターバックスのメニューとして中国でデビューしてから約1年、カリフォルニアの植物ベースのタンパク質企業は上海近くに生産施設を開設し、中国のサプライチェーン資源を活用し、製品の二酸化炭素排出量を削減する可能性を求めて、上海近郊に生産施設を開設した。

上海から85km離れた嘉興市に位置するこの工場は、Beyond Meatにとって米国外で初めてのエンド・ツー・エンドの製造施設になるとNASDAQに上場している同社は、米国時間4月7日の発表で述べた。

この1年で、Beyond MeatやEat Justなどの外国企業の進出に加えて、Hey MaetやStarfieldなどの国内スタートアップへの資本注入が相次ぎ、中国の代替タンパク質市場における競争は激化した。

関連記事
Beyond Meatの代替肉バーガーが中国アリババのスーパーに登場
カリフォルニアの植物性卵スタートアップ「Eat Just」が中国のファストフードチェーンに製品を供給

Beyond Meatは、競走を恐れていない。中国の代替タンパク質業界に関するTechCrunchの記事に感想を求められた同社代表者は「Beyond Meatが競合他社について考慮していることは何もない」と述べている。

関連記事:Beyond Meatの代替肉バーガーが中国アリババのスーパーに登場

中国には食肉代替製品に対する巨大でまだ満たされていない市場があるだけでなく、中国自身が植物性タンパク質の主要なサプライヤーでもある。中国の食肉代替製品のスタートアップは最初から原価の有利性を享受し、また増加するミドルクラスの味覚をより反映した消費者製品の支援を競う投資家たちの関心にも事欠かない。

そのため中国に何らかの製造施設を持つことは、中国市場に真剣に取り組んでいる外国勢にとってほとんど必須の前提条件だ。以前、Teslaは安い電気自動車を提供するために上海にGigafactoryを作った。生産の地域化はまた、サプライチェーンの短縮により企業の持続可能性目標の達成を助ける。

Beyond Meat自身の言葉によると、嘉興の工場は中国国内の生産と流通を迅速させ、かつ大規模化できるだけでなく、Beyond Meatの原価構造と事業の持続可能性を改善するという。

この米国のフードテック大手はローカライゼーションに真剣で、中国では同社の旗艦製品であるバーガーのパティと豚挽肉の模造製品を販売するが、後者は世界最大の豚肉消費国向けに特別に製造されている。大豆と米を主原料とする豚挽肉もどきはさまざまな中国料理に使用でき、同社の上海とロサンゼルスのチームのコラボレーションの成果でもある。

嘉興の工場は製造だけでなく、中国市場向けの新製品の研究開発も行う。またBeyond Meatは2021年、ヨーロッパ初となる自社生産工場も設ける。

Beyond Meatの創業者でCEOのEthan Brown(イーサン・ブラウン)氏は「中国には長期的な成長を期待する地域としての本格的な投資を行う」と述べている。「この新しい製造施設は、私たちが中国の消費者に人間と地球の両方にとって良い植物由来のおいしいタンパク質を届けようと努力することによって、価格と持続可能性の両方を目標に近づける役割を果たすでしょう」。

Beyond Meatの製品は中国主要都市のスターバックスやKFC、AlibabaのスーパーマーケットであるHema、およびその他の小売店で販売されている。

カテゴリー:フードテック
タグ:Beyond Meat中国植物由来肉タンパク質

画像クレジット:Beyond Meat China

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)