“PriceTech”の空が駐車場の料金最適化に向け、NTTル・パルクと実証実験開始

ホテルの料金設定サービス「MagicPrice」を提供するは1月7日、駐車場開発・運営のNTTル・パルクとコインパーキングの料金最適化の実証実験を開始し、ダイナミックプライシング導入に向けた検討を始めることを明らかにした。

空は「あらゆる価格を最適化し、売り手も買い手も嬉しい世界を作る」をミッションとして、ダイナミックプライシングに関するサービスを提供するスタートアップ。2016年には、ホテル・旅館業を対象にしたダイナミックプライシング(動的に変動するリアルタイムな適正価格による値付け)の支援サービスとして、MagicPriceを提供開始している。

MagicPriceでは、ホテルが客室料金を検討する際に必要な予約状況などのデータを自動収集・分析し、AIが適切な販売価格を提案。ホテルの担当者は簡単な操作で客室料金設定ができ、旅行予約サイトへの料金反映も自動で行える。

NTTル・パルクとの実証実験でも、競合企業のWebサイトなどからデータを自動収集・分析して、AIが適切な駐車料金を提示する。実験は首都圏を中心とした約400カ所のコインパーキングで実施予定。従来は月1回程度だった料金変更のタイミングを週1回へ変更して、より柔軟に値付けを行っていく。看板の表示料金については、当初は担当者が人力で張り替えるそうだが、今後デジタルサイネージにより、遠隔・リアルタイムでの料金変更も目指すという。

今回の実証実験は、昨年9月、NTT東日本アクセラレータープログラム「LIGHTnIC」第3期企業に空が採択されたことをきっかけに、スタートした取り組みだとのこと。空では昨年11月にも、電通と共同でリテール業界でも実証実験参加企業を募っており、今後、他業種・他業界にもプライシングサービスを展開していく考えだ。

“PriceTech”の空が電通とのタッグでリテール業界進出へ、実証実験店舗を募集開始

ホテルの料金設定サービス「MagicPrice」を提供するは11月26日、電通と共同で、リテールAI研究会流通部会に「ダイナミックプライシング分科会」を立ち上げたことを明らかにした。小売店舗へのダイナミックプライシング適用の可能性を検討するため、同会に参加する会員企業の中から、実証実験に参加する企業の募集を開始する。

空が2016年から提供しているMagicPriceは、ホテル・旅館業を対象にしたダイナミックプライシング、すなわち動的に変動するリアルタイムな適正価格による値付けの支援サービスだ。ホテルが客室料金を検討する際に必要な予約状況などのデータを自動収集・分析し、AIが適切な販売価格を提案。ホテルの担当者は簡単な操作で客室料金設定ができ、旅行予約サイトへの料金反映も自動で行える。

実は同社は、かなり早い段階からダイナミックプライシングを、ホテル業界だけでなく他業界にも適用することを目指してきた。2017年開催のTechCrunch Tokyoスタートアップバトルで最優秀賞を受賞した際のピッチでも、空代表取締役の松村大貴氏が「あらゆる価格を最適化し、売り手も買い手も嬉しい世界を作りたい」とプレゼンを行っている。今回のリテール業界進出は、空にとっては満を持してのホテル業界外への展開となる。

リテールAI研究会には流通関連商材のメーカー、卸とその関連企業が中心に参加する「正会員」「賛助会員」と、スーパー、家電量販店、ドラッグストア、アパレルなど、小売り販売を行うさまざまな業界の流通企業が参加する「流通会員」の3組織があるが、ダイナミックプライシング分科会は流通会員が属する流通部会内に設立された。

空と電通では、分科会を通じて小売店舗におけるダイナミックプライシング導入を目的とした実証実験への参加企業を募る。空によれば、今のところ具体的に参加を表明している企業はいないそうだが、今後進める実証実験の中で、空はホテル業界支援で培った価格データ分析に関する知見を、電通は流通業界に関する知見を提供し、小売でのダイナミックプライシング適用の可能性を検討していく。

ホテルと、スーパーやドラッグストアなど多品目を扱うリテールとでは、データ収集の大変さやプライシングの難易度も違ってくるのではないかと思われる。空では、こうしたリテールならではの課題について「小売事業者とのディスカッションを通し、難易度やデータ量の差、対応しなければならない事項については明らかになっている」として、対応策についても検討、ディスカッションは行われていると説明。ただし「当社サービスを小売で実装した例はまだないため、今回の実証実験のなかでさまざまな手法の有効性を検証していく」と述べ、実証を実用化へ向けてのステップと位置付けている。

また、リアル店舗での販売が多いことから、店頭でのリアルタイムな価格変更に必要となるであろう「電子棚札」については、電通テックの支援を受けて導入することも可能にしている、とのことだった。

AIがホテルの単価を最適化、ダイナミックプライシング支援ツールのメトロエンジンが7億円を調達

AIを活用してホテルや旅館の客室単価の設定を支援する「メトロエンジン」などを展開するメトロエンジン。同社は8月23日、複数の投資家より総額約7億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回メトロエンジンに出資した投資家は以下の企業・個人などだ。

  • SBIインベストメント
  • NECキャピタルソリューション
  • エボラブルアジア
  • JR東日本スタートアップ
  • タップ
  • ベクトル
  • ベンチャーラボインベストメント
  • 菅下清廣氏

メトロエンジンが手がけるのは、事業者がいわゆる“ダイナミックプライシング”を活用するためのサポートツールだ。現在はこれをホテルや旅館向けに提供している。

ダイナミックプライシングとは、モノやサービスの価格を需要と供給に応じて変動させる仕組みのこと。需要予測を基に“適正価格”を設定することで、事業者にとっては収益向上にも繋がる。

海外では宿泊施設やエアチケットだけでなく、ライブやスポーツのチケットなど様々な業界でこの仕組みの導入が加速。日本でもヤフーと福岡ソフトバンクホークスが観戦チケットを価格変動で販売した事例などがあり、その注目度が増してきている。

ダイナミックプライシングでポイントとなるのが、いかに適正な価格を毎回算出することができるか。関連するビッグデータをリアルタイムに集め、それらを徹底的に分析した上で需要を予測し価格を導き出すシステムが必要だ。

メトロエンジンの場合は競合宿泊施設の客室単価や在庫数、レビュー数など「宿泊客の予約行動」に関わる様々なビッグデータを収集。それらをAIが分析した上で客室単価を算出する。

従来はこれらの業務をレベニューマネージャーと呼ばれるような担当者が人力で行なっていたわけだけど、複数のツールを使って多様な情報を収集したり、何度も新しい情報を反映させるのには相応の時間とコストがかかっていた。

メトロエンジンの特徴のひとつはそれをテクノロジーによって効率化できること。同社代表取締役CEOの田中良介氏は「適正な価格を出すことで収益の向上に繋がるだけでなく、そこにかかっていた人件費や調査費用、時間といったコストを削減できる」と話す。

現時点で国内を代表とするホテル数十チェーンへの導入が決定済み。調達した資金を活用してエンジニアやデータサイエンティストの人員を100名程度まで拡大し、ダイナミックプライシングの精度向上を始めサービスのさらなる改善、成長を目指していくという。

また今回のラウンドは同社にとって資金面以外でも大きなインパクトがある。このビジネスを拡大していく上では欠かせないのが、宿泊施設の基幹システムであるPMS(Property Management System)との連携だ。調達先であるNECとタップはPMS領域において実績のある2社。両社とタッグを組めたことはメトロエンジンにとって大きいだろう。

同社ではまず宿泊施設における価格の最適化を支援していくが、今後は他の領域においても単価設定や需要予測の仕組みを展開していく方針だ。

「今後あらゆる領域でモノやサービスの価格がダイナミックプライシングかサブスクリプションのどちらかになっていくと考えている。宿泊施設のように供給に上限があるものはダイナミックプライシング、ニュース記事の購読のように供給に上限がないものはサブスクリプションというように、この流れが2〜3年で一気に加速する」(田中氏)

たとえば航空券や高速バス、駐車場などは同社が持つ技術だけでなく、保有している宿泊施設のデータとも関連性がある領域。すでに持っているアセットを組み合わせることで、精度の高い需要予測や単価設定も実現できるという。

メトロエンジン以外でも、TechCrunch Tokyo 2017のスタートアップバトルで最優秀賞を獲得した価格決定に関わる技術をホテル業界以外にも展開しようとしているし、6月には三井物産とヤフーがダイナミックプライシング事業の合弁会社を設立するといった動きもあった。

日本でもこれからいろいろな領域に、ダイナミックプライシングの波が訪れるのかもしれない。

メトロエンジン代表取締役CEOの田中良介氏