グルメSNS「シンクロライフ」にレストラン検索不要の「AI厳選」機能が追加

グルメSNS「シンクロライフ(SynchroLife)」は、SNSとAI活用により、ユーザーのレストラン探しをサポートするアプリだ。ほかのグルメアプリとの大きな違いは、トークンエコノミーの概念を取り入れていること。良質なグルメレビューの投稿者にはトークン(暗号通貨)による報酬を付与する。また来店ポイントのような形で、飲食代金からの還元リワードをトークンで受け取れる仕組みもアプリ内に持っている。

シンクロライフを運営するGINKAN(ギンカン)は4月4日、同アプリへの「AI厳選」機能追加を発表した。従来のレストラン検索機能は廃止され、現在地点などのエリア情報に基づき、AIがオススメする店を写真中心のインターフェースから選ぶスタイルに変更された。

またSNSのタイムラインには、ユーザーの日頃の生活圏などから優良なレビュー投稿をパーソナライズして表示する「For You」フィードが登場した。

2018年8月にベータ版が公開されたシンクロライフ。今回の一連のレコメンデーション要素の強化により、「これまで以上に直感的に良質なレストランをすばやく発見できる」ようなユーザー体験の実現を図ったという。

確かに従来のグルメレビューサービスでレストラン探しをするときには、エリアやカテゴリーだけではまだ多くの店から候補が絞り込みきれず、レビューの文面など、さまざまな要素を自力でチェックして選んでいくので、決定までに時間がかかることもしばしばだ。

シンクロライフのAI厳選機能では、SNS上の人気指標やリピート指標などを分析しているため、あらかじめ一定以上の人気があり、投稿者のリピート率が高い店をレコメンドしてくれる。エリアやジャンルは指定することができるので、現在地だけでなく、これから訪れる旅行先などの土地勘のない場所でも、ほかのユーザーが薦めるレストランを知ることができる。

また新たな指標として「リピート希望」の表示も加わった。実際に来店して投稿したユーザーの評価指標をもとに「10人中8人がリピート希望!」といった表示がリスト上の各店に示される。

iOS版/Android版が提供されているシンクロライフは現在、155カ国・4言語(日本語、英語、韓国語、中国語)で利用可能。累積19万件以上のレビューが投稿されている。

GINKAN代表取締役CEOの神谷知愛氏は「もともとレストラン選びに時間をかけずに済み、検索しなくても表示されるシステムを目指して、レコメンドエンジンやロジックを改善してきた。今回のAI厳選機能で、ようやく作りたかったものができたというところ」と話している。

とはいえ、中には自分が選んだ細かい条件で検索をかけたいユーザーもいるのではないだろうか。神谷氏は「世の中には詳細な検索でレストランを探せるサービスは既にいくつもあるし、僕自身も利用している。だが、予算やシーンなどの細かい条件検索と“場所と食べたいものが大体決まっている人”向けの提案を両立するのは、インターフェースが複雑になって難しい」と述べ、「“大体決まっている人”へのサービスは、ありそうでなかったので、そこへフォーカスした」と答えている。

「シンクロライフは、テレビ番組や雑誌と同様にレストラン情報を眺めたいというシチュエーションには、SNSフィードでパーソナライズした表示を、場所と食べたいものが大体決まっている人には、AI厳選機能でレストラン提案を行う。“提案されたものからレストランを選ぶ”というのは、あまり体験したことがないユーザー体験になるのではないか」(神谷氏)

GINKANでは、今後もユーザーのアクションや閲覧データをもとに、さらにシンクロライフ収録レストランの評価の質を高めていく予定だ。

シンクロライフは、トークンエコノミーの概念を導入することで、レストランのマーケティング課題の解決に取り組むプロダクトでもある。今年3月にはこうした取り組みが評価され、MUFG Digitalアクセラレータのプログラム第4期に採択された。

神谷氏は「ユーザー体験に関しては、SNSとAIでハズレなしのお店選びを、ということで、消費者のニーズや課題に合わせたアップデートをして、最終形に近づいてきた。またレストランのマーケティング課題については、東急不動産の協力で飲食店来店客へのトークン還元の実証実験も行い、準備が進んでいる」と話す。

さらに「飲食店の広告宣伝費率の課題を、ブロックチェーンを活用した暗号通貨で解決した暁には、ユーザーである消費者は今までの『飲食店での食事で消費する』スタイルから『デジタルアセットをもらう』スタイルに変わっていく」と神谷氏は述べ、「一般消費者がアセットを持つ、ということでフィンテックの入口にもなるサービス」としてシンクロライフを構想していると語る。

今後、さまざまな金融機関やペイメント事業との接続により、ほかの暗号通貨への変換や資産運用、国内外での決済なども、シンクロライフで可能にしたいという神谷氏。「まずは飲食店の参加により、O2Oビジネスとしての土台を確立し、そこから加盟店の決済手数料の軽減やユーザーの支払いをシンクロライフで完結させるなど、課題を解決していきたい」と話している。

トークンエコノミー×グルメSNS「シンクロライフ」、トークンへの転換権を付与したスキームで資金調達

つい先日、グルメSNS「シンクロライフ」がトークンエコノミーの仕組みを導入することで、同サービスをさらにユニークなものにしようとしていることをお伝えした。

具体的には良質なレビュアーなど、プラットフォームに貢献しているユーザーが報酬として独自トークン(SynchroCoin)を受け取れる仕組みを設計。将来的に保有するトークンをレストランの食事券と交換したり、食事代金の支払いに使えるようにしたりすることで、独自の経済圏を作ろうという取り組みだ。

この構想の実現に向けて、シンクロライフを運営するGINKANは8月10日、セレスと元サイバードホールディングス代表取締役会長の小村富士夫氏を引受先とする第三者割当増資により、総額8000万円を調達したことを明らかにした。

セレスとは業務提携も締結。モッピーなどアクティブ会員が350万人を超えるスマホ向けポイントメディアの基盤を持つセレスとタッグを組み、メディア間のシナジーやブロックチェーン技術の実サービスへの活用に向けた研究開発を進める方針だ。

なお今回の資金調達はGINKANの子会社であるSynchroLife, Limitedが発行するトークンへの転換権を付与した形での、株式の第三者割当増資というスキームを採用。詳細については後述するが、これによって株式市場への上場や事業売却以外のエグジットも可能になるという。

AI活用で好みにあった飲食店をレコメンド

シンクロライフは、ユーザーがレストランでの食体験を投稿できるグルメSNSだ。

特徴のひとつがAIを活用したレコメンドシステムによる、パーソナルキュレーションの仕組み。ユーザーの投稿や観覧履歴を始めとしたアプリ内でのアクションを独自のアルゴリズムで学習・分析することで、使い続けるほど自分の好みに合った飲食店が見つかりやすい仕様になっている。

同アプリにはすでに17万件以上のレビュー、42万枚の写真が掲載。現在は日本語のほか英語や韓国語、中国語にも対応し、82ヶ国でユーザー登録、48ヶ国でレビュー投稿がされているという。

そして8月2日にβ版をリリースした新バージョンでは、ここにSynchroCoinというトークンの概念が加わった。冒頭でも触れた通り、良質なレビューや飲食店情報の登録、編集、翻訳といったプラットフォームに貢献したアクションに対して報酬が付与されるようになる。

コミュニティを加速する手段としてのトークン

ここでおそらく多くの人が気になるのが「良質なレビューとはどんなものか」「トークンを付与したところでどれほどの効果があるのか」といった点ではないだろうか。

この点についてGINKAN代表取締役CEOの神谷知愛氏に聞いてみたところ、各ユーザーが持つスコアや各レビューの性質、そしてそこに対する「行きたい」などの反応をスコアリングする仕組みのようだ。シンプルに言えば「そのレビューは誰が投稿したものか、そしてそれに対してどんな反応があったか」が基準になる。

もう少し補足をすると、そもそもシンクロライフには以前から「経験値」というゲーム要素が導入されていて、トークンのようなインセンティブはないものの同じようなシステムが回っていた。

ユーザーは投稿した口コミのサービス貢献度に応じて経験値を獲得でき、経験値がたまるごとに称号(初段〜神)がランクアップする仕組みを導入。例えばまだ誰も投稿していない店舗や投稿が少ない店舗のレビューを書いたり、他のユーザーの参考になる(「行きたい」が多くつくなど)レビューを書いたりすると経験値が貯まるようになっている。

ここですでにレビューをスコアリングする機能は実装されていて、しかもこのシステムがシンクロライフのコミュニティを拡大するのに大きな影響を与えてきたのだという。それは投稿数や写真枚数の増加はもちろん、店舗情報の追加や修正、閉店依頼といったアクションにも繋がったそうだ。

「実は以前からアプリ内通貨のような仕組みをやりたいという思いはあった。今まではレビューや情報提供を通じて飲食店やプラットフォームに貢献しても、それはボランティア的な位置付け。そこにトークンという経済的な要素を入れることで、ユーザーのモチベーションや継続率も上がるのではと考えた。トークンはもともと動いているコミュニティを、さらに大きく強固にするためのものだ」(神谷氏)

今までにないグルメコミュニティの可能性

シンクロライフでは報酬用として全体の20%となる2000万トークンをプールしていて、そこから1週間ごとに一定量を分配するように設計されている。つまり毎週スコアの集計が行われ、その値に応じたトークンがもらえるというわけだ。

現時点でトークン付与の対象になるのは飲食店のレビューと店舗情報の作成。今後は情報の翻訳や加盟店舗の紹介などに対してもトークンを提供したいということだった。

神谷氏いわく「レビューではなく、良質なレビューであることが重要」というように、とにかくレビューを書けばトークンがもらえるという仕様ではなく、トークンの付与はあくまでサービスへの貢献度が高いアクションに限定する。

その一方で「消費者が気軽に楽しめる環境を作ることがキャズムを超える鍵」とも話していて、加盟店舗で食事をした際に還元リワードとして一定割合のトークンが付与される仕組みを作る計画。この還元率を店舗が設定できるようにすることで、顧客を呼び込む集客ツールとしても機能するようにしたいという。

その先にはトークンをレストランの食事券と交換したり、食事代金の決済で利用したりできるようにする予定。もしこのサイクルが上手く回れば、今までとは違ったグルメコミュニティができる可能性もあるだろう(もちろん加盟店をどれだけ開拓できるかなど、超えなければならない壁はある)。

トークンへの転換権を付与したスキームによる調達

最後に今回の資金調達のスキームについても少し触れておきたい。冒頭でも紹介したように、今回はGINKANの子会社であるSynchroLife, Limitedが発行するSynchroCoinへの転換権を付与した形での、株式の第三者割当増資という形を取っている。

GINKANではこれまでエンジェルラウンドで小村氏らから3000万円を調達しているほか、昨年香港法人のSynchroLife, LimitedにてICOを実施。755イーサ(日本円で約5000万ほど)を集めた。

ただこのICOを取り巻く環境はまだまだ不透明な状況にある。今回は神谷氏に加えセレスの担当者にも話を聞くことができたのだけど「一部ではICOをしていると監査法人が監査契約を結んでくれないとか、投資家から出資を受けづらいといった話も聞く」のだという。

GINKANとセレスのメンバー。前列の左から2番目がGINKAN代表取締役CEOの神谷知愛氏

セレスではこれまで仮想通貨・ブロックチェーン領域の事業展開や、関連するスタートアップへの出資を推進してきたが、アプリケーションレイヤーへの投資はまだ多くないそう。シンクロライフについてはトークンエコノミーとの相性なども鑑みて出資をしたいと考えた一方で、ICOをしていることがひとつのネックになった。

「(セレスは)事業会社なのでそこまでエグジット、エグジットと言う訳ではないが、取締役会などで話をする際にはそのストーリーを話す必要はある。もし仮に監査法人がつかなかった場合にどうするかを相談した上で『だったらトークンへの転換権をつければいいのでは』という話が出てきた。ビジネスとしてきちんと成功すれば、その裏側にあるトークンは値上がりしていると考えられるためだ」(セレス担当者)

トークンへの転換権を行使することで、IPOやM&A以外でのイグジットも仕組み上は可能になり、これがスタートアップの新たなオプションにもなりうるというのが双方の見解。フレキシブルな資金調達の手段を作ることで、スタートアップ界隈へはもちろん「トークンエコノミーの発展にも寄与できれば」という。

良質なレビューにはトークン報酬、グルメSNS「シンクロライフ」が新バージョンのβ版公開

AIを活用したパーソナライズエンジンによって、ユーザーのレストラン探しをサポートするグルメSNS「シンクロライフ」。このグルメサービスがトークンエコノミーの仕組みを持ち込んで、新たにバージョンアップしたようだ。

シンクロライフを運営するGINKANは8月2日、同サービスの新バージョンのβ版を公開した。

新しくなったシンクロライフでは良質なレストランレビューを投稿したユーザーに対し、報酬として独自のトークン(SynchroCoin)が付与される仕組みなどが追加。トークンエコノミーを活用することで、自律性を持ちながら成長し続けるレストランレビュープラットフォームの構築を目指すという。

なおGINKANでは2017年9月に香港法人SynchroLife LimitedにてICOを実施。今回のβ版は同プロジェクトのロードマップにおいて、最初のマイルストーンとしていたものだ。

シンクロライフは「AIとユーザーが作るレストラン格付けガイド」をコンセプトとしたグルメSNS。各ユーザーごとの食の好みなどを学習し、レストラン検索やフィードをパーソナライズすることで、自分に合ったお店を探しやすい環境を作っている。

同サービスには現在17万件以上のレビュー、42万枚の写真が掲載。全登録ユーザーのうち19.68%のユーザーがレビューを投稿しているという。日本語からスタートしたのち、2017年7月には英語・韓国語・中国語にも対応。世界中で利用できるグローバル版の展開を開始した。今は82ヶ国でユーザー登録、48ヶ国でレビュー投稿がされているそうだ。

そして冒頭でも触れた通り、今回の新バージョンでは従来の仕組みにトークンという概念やウォレットという機能が加わることになる。

シンクロライフでは現在のレビュー貢献度のスコアをより合理的なアルゴリズムへとアップデートするとともに、良質なレビュー投稿者がSynchroCoinをインセンティブとして受け取れる仕組みを導入。レビュー、翻訳、レストラン情報の作成や更新などへ報酬が提供されるようになる。

この報酬制度はレビュアーの信頼スコアが反映される構造のため、しっかりと機能すれば不正やレストランから依頼を受けて投稿することを抑制し、健全なグルメSNSを育てることにも繋がりそうだ。

また今回全てのユーザーが利用可能な暗号通貨ウォレット機能も追加。報酬として受け取ったSynchroCoinが管理できるほか、ETHを始め様々な暗号通貨を追加予定とのことだ。

なお今後加盟店で飲食をした場合に、食事代金から還元リワードとしてSynchroCoinを受け取れる仕組みを展開する計画。トークンを受け取る際にもこのウォレット機能を利用することになるという。

当然ながら細かい機能や特徴に違いはあると言えど、レストランのレビューを投稿したり美味しいお店を検索できるプラットフォーム自体は「食べログ」や「Retty」などを含め複数存在する。

ただ今回のシンクロライフの取り組みはとてもユニークかつ興味深いものではないだろうか。アプリを見ている限り、2018年冬以降にはSynchroCoinをレストランの食事券と交換したり、食事代金の決済で利用したりできるような仕組みも予定しているようだ。

これは勝手な想像だけど「レビューを投稿して獲得した報酬を使って新しいレストランで食事を楽しみ、そのレビューを書いてまた報酬を手にする」といった新たな経済圏のようなものが誕生する可能性もありそうだ。

トークンエコノミーで実現する新しい政治コミュニティ「ポリポリ」のβ版が公開

「正直、政治にものすごく興味があったかというとそんなことはない。ただ政治は世の中に与える影響が多く市場規模も約6兆円と大きい一方で、イノベーションが進んでいない領域。だからこそテクノロジーでもっと良い仕組みを作れる余地も十分にあると思った」ーーそう話すのはポリテック(政治×テクノロジー)分野のスタートアップPoliPoli代表取締役社長の伊藤和真氏だ。

開発中のアプリ「ポリポリ」を通じて同社が目指しているのは、ブロックチェーンを使ってトークンエコノミーを構築することで良質な政治コミュニティを作ること。その第一段階として、トークンを絡ませない同アプリのβ版(iOS)を7月2日より公開している。

3つの機能を持つ政治コミュニティ

β版段階のポリポリは、比較的シンプルな政治コミュニティアプリといえるだろう。

軸となる機能は大きく3つ。気になる政治トピックについて議論したりニュースにコメントしたりできる「議論機能」、登録している政治家の政策や実績を閲覧できる「政治家一覧機能」、政治家へ質問や提言ができる「質問機能」だ。

ユーザーはトークルームと呼ばれるスレッドのようなものを作成することができ、そこで身の回りの政治に関するトピックについてディスカッションすることが可能。選挙前などには各候補者の情報を比較したり、政治家の考えを確認することで正しい情報を収集するツールにもなりえる。

また政治家側には複数のSNSへ同時に投稿できる機能を提供。情報発信の負担を下げるという効果もあるそうだ。

伊藤氏は今の政治が抱える課題として「情報の流通」と「荒れやすいコミュニティ」をあげる。

情報についてはマスメディアの発信できる情報量に限りがあり、どうしても人気政治家やスキャンダルに関する報道が目立つ。反面、政治家がどんな活動をしているのか、どんな考えを持っているのかといった重要な情報は不足してしまいがちだ。

また一部の政治家はSNSなどを通じて市民とコミュニケーションをとっているものの、インターネットを活用して十分に情報発信をできている政治家は少ない。結果的に政治家へ直接質問したり、意見交換したりできる機会もかなり限られる。

かといって政治に関するネットコミュニティはどうしても荒れやすい。自分と別の意見を持つユーザーへの誹謗中傷なども多く、コミュニティにユーザーが定着しない原因にもなっている。

ポリポリのアイデアは、現在のベータ版にトークンをかますことでこれらの課題を解決しようというものだ。

良質なコミュニティ作りのカギを握るトークン

トークン実装後のポリポリのモデル

ポリポリの正式版では独自のトークン「Polin」が発行されるようになり、これがあらゆるシーンで良質なコミュティを作るカギとなるインセンティブの役割を担う。

たとえばコミュニティ内で良い発言をするなど、活躍したユーザーには信頼スコアに基づいてPolinが付与され、反対にコミュニティを荒らすようなユーザーはスコアが下がる仕組みだ。

このPolinは政治家に投げ銭のような形で送ることもでき、個人献金プラットフォームの性質も持つ。信頼スコアによってコミュニティの質を担保することができれば、政治家も余計な炎上リスクを気にせず積極的に情報発信をするようになるかもしれない。

そうすれば従来の仕組みでは実現が難しかった、市民と政治家双方が積極的に意見交換をする議論プラットフォームが生まれる可能性もある。これがポリポリの目指すトークンエコノミーを用いた政治コミュニティの形だ。

「トークンの価値が出てくると、さらにその価値を高めようとインセンティブが働き、ユーザーがコミュニティ内で活発になる。トークンエコノミーのポイントはコミュニティを作れること。うまくインセンティブを設計できれば、おもしろい政治の仕組みができると思う」(伊藤氏)

長期的にはPolinを交換所で交換できる仕組みや、実店舗の決済時に使える仕組みなども整えながら流動性を高め、Polinの価値を高めていく狙い。ポリポリの主なビジネスモデルは通貨発行益、つまりPolinの価値があがるほど収益がでる構造だ。「トークンの価値が上がるような仕掛け」を作れるかどうかは、PoliPoliにとっても重要になる。

個人的には正直このモデルが成り立つのか予想がつかないが、この点について伊藤氏は「そもそも政治家に献金したいという市場が約数百億円ある」ことに加え、「アンケートによって集めたユーザーのデータを企業や政治家がPolinを使って取得できる仕組み」を設けることなどで、トークンを買いたいと思う理由を作っていきたいという。

なお仮想通貨を用いた献金については法律が十分に整備されていない領域ではあるが、献金者の情報を取得していれば年間150万円まではOKとされているそう。ただし外国人からの献金は禁止されているため、政治家にPolinを送る際にはパスポート認証をするなど、法律に遵守した形で慎重に設計していきたいとのことだ。

政治×トークンエコノミーに感じた可能性

PoliPoliのメンバー。左から2番目が代表取締役社長の伊藤和真氏

PoliPoliの設立は2018年の2月。1998年生まれで現役慶応大生の伊藤氏を始め、若いメンバーが集まる。5月にはネットエイジ創業者の西川潔氏、Labitの創業者の鶴田浩之氏、F Venturesから約1000万円を調達した。

冒頭でも触れたとおり、もともとは政治にそこまで興味がなかったという伊藤氏。ただ海外のスタートアップなどを調べていると、OpenGovなど政治領域のスタートアップが盛り上がっていることを知った。日本の政治はテクノロジーの活用が十分ではなかったこともあり、チャンスがあると考えこの市場に取り組むことを決めたのだという。

2017年の秋には市川市選挙に合わせてポリポリの原型となるアプリを作成。候補者の政策比較や、候補者に質問や提言ができるという機能を搭載したところ、約1000人にダウンロードされた。

そこから現在のポリポリの構想に行き着くきっかけとなったのは、トークンエコノミーを活用した新しい収益化の仕組みを備えたメディア「Steemit」を知ったこと。「Steemitはトークンの時価総額が約500億円もある。このような仕組みは政治とも相性がよく、今までにない形でマネタイズができるかもしれない」(伊藤氏)と考えたそうだ。

PoliPoliでは今回リリースしたβ版を通じてコミュニティを育てながら、9月〜12月を目処に無料でトークンを配布していく計画。2018年末を目処に完成版をリリースする予定だ。

「『政治家や市民が何か良い発言をすればトークンをもらえたり投げ銭できる』というある種のゲーム要素が大切。PoliPoliでは『政治をエンターテインする』ことをテーマにしているが、政治に興味がないような人でも入ってくるようなインセンティブを設計することで、新しいコミュニティを作っていきたい」(伊藤氏)