「今後もファッションAIにフォーカスする」ニューロープが1億円調達

ファッション領域で人工知能による法人向けサービスを展開するスタートアップ、ニューロープは10月9日、大和企業投資、ディノス・セシール、中京テレビ、Reality Acceleratorを引受先とする第三者割当増資により、1億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

画像検索から需要予測まで業界向けにAI活用

2014年設立のニューロープは、創業後、インスタグラマーと提携してコーディネートスナップを掲載する、メディアコマース「#CBK(カブキ)」をリリース。インフルエンサーマーケティングによるアパレルブランドのプロモーションなどにも取り組みながら、蓄積されたデータを活用して2015年10月からAI開発に着手し、2017年4月にはファッションに特化した人工知能「#CBK scnnr(カブキスキャナー)」をリリースした。以降、AIによるファッション画像検索、スタイリング提案、トレンド分析、需要予測など、さまざまなサービスを法人向けに提供している。

メディアコマース「#CBK」

2018年にはReality Accelerator、大和企業投資、都築国際育英財団から約5000万円を調達したニューロープ。その後、ECサイトにタグを入れると自動で類似アイテムやオススメのコーディネートが紹介できるレコメンデーション機能を充実させ、「取引先も順調に増えている」(ニューロープ代表取締役の酒井聡氏)という。

また、ファッションにおけるトレンドや需要予測などもサービスとして展開。トレンド予測では、SNS上のスナップをAIで解析し、トレンド分析を行う「#CBK forecast(カブキフォーキャスト)」を企業へ提供している。

AI解析によるトレンド分析ツール「#CBK forecast」

需要予測については、取引先から過去売上データの提供を受け、統計分析により、将来発注が予測できる推定モデルを作成。現在5社ほどの取引先とともに実証実験を行っており、今後SaaSとして製品化を進めていくという。

今後もファッションに特化、プロダクト強化に投資

酒井氏は「レコメンド、トレンド定量化、需要予測など、さまざまなプロダクトを開発・提供していく中で、純粋にリソースが足りなくなってきた」と述べ、今回の調達資金について「主にエンジニア採用に充てる」と話している。またグラフィックボード調達など、開発環境の整備にも充て、全体に「プロダクト面を強化するために投資していく」としている。

ニューロープ代表取締役 酒井聡氏

今回、株主に加わったディノス・セシールとは、昨年からECと紙のカタログを連携させる取り組みを行ってきた。「従来はたくさんの紙のカタログを配布して、縦に売上を積むスタイルが取られてきた。そこへAI技術、スナップ情報などを用いて、顧客ごとにパーソナライズしたカタログを作り、配布するという施策を昨年行ったところ、よい結果をもたらしている。これまでの協業でも実績が出ており、今後も提携していく」と酒井氏は話す。

ファッションAIの世界では、ニューラルポケット(旧ファッションポケット)やSENSY(センシー)といったスタートアップがスタイリング提案アプリやサービスを展開しているが、最近ではその多くがファッションに限らない汎用AIの領域へ移っている。酒井氏は「ニューロープは今後もファッションにフォーカスし、ファッションに特化したAIを提供していく」と語る。現在展開するファッションのレコメンド、トレンド予測、需要予測に加えて、今後は「デザイン支援や来店客分析なども手がけたい」という。

ニューロープが展開を目指すファッションの各領域

「ドメインをファッションに特化することで、営業部隊は比較的スリムにできる。その分、プロダクトは(ファッションの)バリューチェーンのいろいろなところに対応したものを開発していくつもりだ」という酒井氏。ニューロープはもともとITをバックグラウンドにしたメンバーで構成されたチームで「これからもエンジニア中心でやっていく」としつつ、ファッション業界で培われた知識を糧に「業界の人と同じ船に乗ってやっていく気持ちで、業界の発展に貢献したい」と語っている。

また「台湾やタイなどで現地企業を訪問して提案したところ、感触は悪くない。プロダクトを利用してもらえそうだ」と酒井氏は述べ、「ファッションSaaSは言語にそれほど依存しない」として、海外展開も図っていく考えだ。

5万件の画像タグ手打ちからファッションAI開発へ——ニューロープが5000万円を資金調達

2014年設立のニューロープは、ファッションに特化した人工知能によるサービスを展開する、ファッション×AIのスタートアップだ。同社は3月5日、Reality Accelerator大和企業投資、都築国際育英財団を引受先とした第三者割当増資等により、約5000万円を調達したことを明らかにした。

写真右から大和企業投資 仙石翔氏、Reality Accelerator 郡裕一氏、ニューロープ代表取締役 酒井聡氏とニューロープのメンバー

ニューロープは創業後、モデルやインスタグラマー約300人と提携して、コーディネートスナップを紹介するメディア「#CBK(カブキ)」をリリースした。“モデル着用アイテムに似たアイテムが買えるメディア”という点では、2017年10月にスタートトゥデイの傘下に入ったVASILYが提供する「SNAP by IQON」(2017年3月公開)と同様だが、カブキでは当初、写真に付けるアイテムタグを、なんと全て人力で入力していたそうだ。タグ付けしたリアルなスナップのデータは5万件にも及ぶという。

その後、登録されたデータを元にして、2015年10月からディープラーニングを活用したAI開発に着手。2017年4月、ファッションに特化した人工知能をリリースした。

ファッションとAIとは実は相性がよいらしく、スタートアップによるプロダクトもいろいろ出ている。先述したSNAP by IQONもインスタグラマーのコーディネートに似たアイテムを、ディープラーニングによる画像解析で探し出して購入できるサービスだし、SENSY(旧カラフル・ボード)も人工知能がスタイリングを提案するアプリやサービスを提供している。

こうした競合サービスが多い状況について、ニューロープ代表取締役の酒井聡氏は「僕たちは2014年にガチでデータを集めるところから始めて、1年半の開発期間を経てAIをリリースした。そこは自信を持っている」と話している。

ニューロープが開発した人工知能は、機能で大きく2種類に分けられる。ひとつはファッションスナップを自動解析する「#CBK scnnr(カブキスキャナー)」。一般向けには、LINEにスナップを送信すると解析結果を教えてくれる「ファッションおじさん」として公開されている。

もうひとつはコーディネート提案AIだ。ファッションアイテムに対して、コーデすると合うアイテムを数秒で提案してくれる。カブキスキャナーの画像解析機能と併用すれば、着合わせをリコメンドすることもできる。こちらも、LINEにスナップを投稿するとコーディネートを提案してくれる「人工知能ショップ店員Mika」が公開されている。

ニューロープではこれらの人工知能をAPIとして提供し、事業を展開している。ファッションECのマガシークには、画像検索レコメンド機能を提供。マガシークのアプリで画像データを読み込むと、販売アイテムの中から写真に近いものを検索できる。オークションサービスのモバオクが運営するウェブマガジン「M/Mag」(スマートフォン版のみ)でも、掲載記事のコーデからモバオクに出品されている類似アイテムを買うことが可能になっている。

またSTYLICTIONが運営するファッションメディア「itSnapマガジン」にもAIを提供。掲載記事のスナップを解析してタグ付けを行い、複数のコマースサイトの類似アイテムをまとめて表示し、アイテムが購入されるとメディアにフィーが入る仕組みとなっている。

このほかにも「百貨店などのデジタルサイネージの前で衣装合わせをすると、コーディネート提案が表示されるといった使い方や、SNS上にある『#コーデ』タグがついた画像を分析することで、トレンド予測を行う、というような事業も検討している」と酒井氏は話している。

AIを導入する企業が増え、ニューロープのサービスも引き合いが多くなっていると酒井氏は言う。今回の調達資金の使途について、酒井氏は「API提供だけではなく、企業からの要望にも対応しているので、アプリケーションの開発にどうしてもエンジニアのリソースが取られがち。エンジニア採用にも投資し、既存AIの強化や新規AI開発など、AI自体の強化開発を進めたい」と述べていた。