Ultraleapの空中触覚技術はメタバースのインターフェースになる、テンセントが約93.5億円のシリーズDに参加

UltraleapのCEOであるトム・カーター氏とCFOのChris Olds(クリス・オールズ)氏(画像クレジット:Gareth Iwan Jones

いまはUltraleap(ウルトラリープ)となった会社が、超音波で触覚を再現するその先駆的技術をTechCrunch Disruptで披露したのは、2017年にさかのぼる(当時の名前はUltrahaptics)。印象的な「スター・ウォーズ」のデモンストレーションが観客を魅了した。

そのデモは見ものだった(下の動画参照)。この技術は、その発明者であり現在もCEOを務めるTom Carter(トム・カーター)の大学院での研究に基いている。Ultrahapticsはその後、2300万ドル(約26億2000万円)の資金を調達し、自動車メーカーが興味を持つようになった。その後、大きな注目を集めていたLeap Motionを吸収したがハンドトラッキング空中ハプティクス(空中触覚)の組み合わせはすばらしいものであることがわかった。

今回Ultraleapが、Tencent(テンセント)、British Patient Capitalの「Future Fund:Breakthrough」、CMB Internationalらが主導した8200万ドル(約93億5000万円)のシリーズD調達を行った。また、既存の株主であるMayfair Equity PartnersとIP Group plcも参加した。

UltraleapのCEOであるTom Carter(トム・カーター)氏は、Facebookなどの企業によるVRベースの「メタバース」に関する最近の話題や、パンデミックによってもたらされたタッチレスインターフェースへの移行が今回の資金調達に貢献したとコメントしている。

彼はいう「メタバースという概念は、Ultraleapにとっては新しいものではありません。フィジカルな世界とデジタルな世界の境界を取り除くことは、常に私たちの使命でした。パンデミックの影響で、物理的な世界をデジタル要素で強化することの重要性を理解する人が増え、この言葉がさらに台頭したのです。Ultraleapにとっては、この新しい時代はVRヘッドセットに限定されるものではありません。インターネットのように、家庭、オフィス、車内、公共の場など、生活のあらゆる場面で私たちが接することになる現実なのです。今回のシリーズD調達の目的は、主なインターフェースである手への移行を加速することです。なぜなら、誰もが思い描くメタバースの中には、物理的なコントローラ、ボタン、タッチスクリーンがないからです」。

Ultraleapの第5世代ハンドトラッキングプラットフォームGemini(ジェミニ)は、明らかに多くのデバイスへの適用を意識している。実際、Qualcomm(クアルコム)のSnapdragon(スナップドラゴン)XR2チップセットや、Varjo(バルジョ)VR-3およびXR-3ヘッドセットなど、複数のプラットフォームやカメラシステム、サードパーティのハードウェアにすでに組み込まれている。

Ultraleapの計画では、GeminiをさまざまなOSに対応させ、ツールや研究開発への投資を増やし、開発者が技術をどのように応用するかについて、想像力を膨らませることができるようにすることを目指している。

このタッチレス技術の重要な推進力の1つは、もちろん「グレートパンデミック」だ。もう何かに無防備に触れたいと思うひとなどいなくなったのではないだろうか?

そのため、ペプシコやレゴなどの企業が、すでにUltraleapの技術をパブリックインターフェイスに採用している。

そして2017年にも示唆されたように、自動車メーカーは「車内での体験」を現実のものにしようとしている。Ultraleapは、すでにDS Automobiles(DSオートモビル)やHosiden(ホシデン)と協力して、新たな空中ハプティック体験を提供しようとしている。

カーター氏は電話でこれらの動きについて話ながら、VRベースのメタバースの中で機能するユーザーインターフェースの可能性が、Ultraleapの技術のビジョンであると説明した「確かにメタバースは今とても話題になっていますが、実際にそこで語られているのは、私たちが目指していること、すなわち人間とバーチャルコンテンツの間にある障壁を取り除くことなのです。

今回の資金調達は、私たちがターゲットとするすべての市場において、すべての人が自分の手を使った最適なインターフェースに移行できるようにするためのものなのです。XRに関してはGeminiを発売しましたが、ここ数週間で新世代のハンドトラッキングは大絶賛されています。いまこそ、大きく拡大をするべきタイミングなのです。ペプシコの導入例では、好ましいとしたユーザーが85%に達し、注文を終了するまでの時間ではタッチスクリーンと同等でした」。

そして、自動車だ。彼は「UXは新しい推進力です」という。「私たちは今でも車を運転していますが、車内での体験にもっと焦点を当てようとしています。仕事をしているのか、楽しんでいるのか、あるいはその他のメタバースに似た活動を車内で行っているのか、などです」。

彼によれば、道路から目を離さなければならないタッチスクリーンではなく、空中に置かれたインターフェースを使用することで、安全面で非常に大きなメリットがあることがわかったそうだ「ドライバーが道路から目を離す回数が減ることで、ドライバーの精神的な負担が約20%軽減されるのです。こうしたインターフェースに移行することで、より安全な運転ができるようになります。そして、一旦そのインターフェースを手に入れ、みんながこの方法で対話することに慣れれば、未来の世界への移行が容易になります」。

以下が2017年のデモの様子だ。

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(文: Mike Butcher、翻訳:sako)

クアルコムが新たなAR開発プラットフォームを発表、ハンドトラッキング技術のClay AIR買収も

Qualcomm(クアルコム)は米国時間11月9日、頭部装着型AR(拡張現実)体験を構築するための新しい開発者プラットフォーム「Snapdragon Spaces XR Developer Platform(スナップドラゴン・スペーシズXRディベロッパー・プラットフォーム)」の提供を開始した。このプラットフォームでサポートされているハードウェアは、現在のところ、Lenovo(レノボ)のスマートグラス「ThinkReality A3(シンクリアリティA3)」(Motorola[モトローラ]のスマートフォンと組み合わせて使用する)のみだが、2022年前半にはOppo(オッポ)やXiaomi(シャオミ)製のハードウェアにも拡大する予定だ。

Qualcommは、このソフトウェアエコシステムを構築するために、Epic Games(エピック・ゲームズ)の「Unreal Engine(アンリアル・エンジン)」、Niantic(ナイアンティック)の「Lightship(ライトシップ)」プラットフォーム、Unity(ユニティ)、Viacom CBS(バイアコムCBS)など、幅広いパートナーを揃えた。Deutsche Telekom(ドイツテレコム)とT-Mobile U.S.(TモバイルUS)もQualcommと提携し、hubraum(フブラウム)プログラムを通じて、Snapdragon Spacesを利用するスタートアップ企業を支援する。

画像クレジット:Qualcomm

現在のところ、このプログラムにアクセスできるのは、ごく一部の開発者に限られる。現在参加しているのは、Felix & Paul Studios(フェリックス&ポール・スタジオ)、holo|one(ホロ・ワン)、Overlay(オーバーレイ)、Scope AR(スコープAR)、TRIPP(トリップ)、Tiny Rebel Games(タイニー・レベル・ゲームズ)、NZXR、forwARdgame(ファワードゲーム)、Resolution Games(レゾリューション・ゲームズ)、TriggerGlobal(トリガーグローバル)など。一般提供は2022年の春に開始される予定だ。

また、Qualcommは同日、ハンドトラッキングとジェスチャー認識ソリューションのために「HINS SASおよびその完全子会社であるClay AIR, Inc.(クレイ・エア)のチームと一部の技術資産」を買収したと発表した。これは2019年のWikitude(ウィキチュード)買収に加え、同社のARへの取り組みを飛躍させるためのもう1つの動きだ。

「私たちが、スマートフォン向けのVIO(visual-inertial odometry、視覚・慣性を使った自己位置推定)のようなアルゴリズムで、拡張現実を検討する研究開発プログラムを始めたのは、2007年にまで遡ります」と、Qualcommのバイスプレジデント兼XR担当GMであるHugo Swart(ヒューゴ・スワート)氏は、今回の発表に先立つプレスブリーフィングで述べている。「2010年代にはODGのようなデバイスも可能にしてきました。2014年に仮想現実や拡張現実に特化した新しいチップを開発しましたが、私たちは長期的な視点で取り組んでいます。目指す場所にはまだ達していないことが、私たちにはわかっています。没入型と拡張型の両方の体験を可能にするARグラスという至高の目標を実現するには、まだまだ投資が必要です」。

画像クレジット:Qualcomm

今回発表されたプラットフォームは、ローカルアンカーとパーシステンス、ハンドトラッキング、オブジェクト認識およびトラッキング、平面検出、オクルージョン空間マッピング、メッシュ化などの機能をサポートすることができる。

Qualcommはこのプラットフォームで、開発者がARエクスペリエンスを構築する際の障壁を低くしたいと考えている。開発者は基本的なARアプリケーションを迅速に構築するためのドキュメント、サンプルコード、チュートリアル、追加ツールを利用できるようになる。このエコシステム構築を希望する企業をさらに支援するために、QualcommはPathfinder(パスファインダー)と呼ばれる追加プログラムも開設する。このプログラムでは、ソフトウェアツールやハードウェア開発キットへの早期アクセス、プロジェクトへの追加資金、Qualcommとの共同マーケティングやプロモーションなどが提供される。

画像クレジット:Qualcomm

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)