多数のスタートアップが新型コロナ対策支援事業にピボット中

この間、我々はパンデミックがなければ関心をもちそうになかった知識をいろいろと覚えた。身の回りにあるもので簡単にマスクを作る方法とか豆の缶詰の煮汁が卵白の代用になるなどのお役立ち情報だ。

今回のまとめ記事でもそのような例を紹介する。誰でも知っているような世界的大企業ばかりでなく、まだ小規模なスタートアップも新型コロナウイルス(COVID-19)への対応を支援するビジネスへのピボットや新たな提携関係の確立などに向けて動いている。以下TechCrunchが気づいた最近の例をいくつかまとめてみたので参考にしていただきたい。

グリーティングカードからバーチャルセラピーサービスと提携

2017年にAli O’Grady(アリ・オグレディ)氏はグリーティングカードのスタートアップ、Thoughtful Humanを設立した。このスタートアップはガン患者や最近近親者を亡くした相手など、デリケートな場合のグリーティングカードを専門としている。ここに新型コロナウイルスの流行と自主隔離がやってきた。

カウンセラーを紹介するプラットフォーム、BetterHelpは新型コロナウイルスの流行による心のケアをするために通話やチャットによる無料セラピーに乗り出した。Thoughtful Humanはこのプロジェクトに賛同し、BetterHelpと提携して事業に参加している。

レイオフにめげず職場に復帰するためのツールを提供

Ziraは業務のシフト策定の自動化やチームチャットなどにより職場の効率化を図るサービスを提供している。同社は新型コロナウイルスの流行によってレイオフされた人々を援助するためのBounce Backという無料ツールを立ち上た。簡単にいえば、このアプリケーションはユーザーの住む地域別に失業に対処する方法を教えてくれる。このサービスを通じてユーザーが以前の雇用主の現状を知り連絡を取ることができる。また地域の求人市場にもアクセスが可能だ。

国務省と提携したビジネス向け情報収集サービス

自然言語によるビジネス向け情報収集サービスのYextは新型コロナウイルス関連の質問に答えるツールを90日間無料で提供する。これはアメリカ国務省と提携しており、COVID-19情報のハブとなり世界各地への渡航情報を提供する。先月、Yextは新型コロナウイルス情報のポータル開設でアラバマ州、ニュージャージー州と提携している。

メニューをテーブルからオンラインへデジタル化

My Menuはレストランが店内のメニューをデジタル化するのを助けるサービスだ。ソーシャルディスタンス確保と自主隔離の拡大によって店内の食事提供を取り止めるケースが急増したことを受けて、同社はメニューのデジタル化に用いられたテクノロジーを公開し、レストランがオンラインでの持ち帰りメニューを作るのを助けようとしている。MyMenuのツールを使えば、QRコードをスキャンするだけで即座に持ち帰りメニューがポップアップするようにできる。レストランの顧客は面倒なナビゲーションなしにQRコードから直接メニューを開いて注文がでいる。

クラウド利用のクリエイティブ

DigitalOceanはクラウドのプロバイダだが、デベロッパーがパンデミックへの対処を支援するプロジェクトを共有するためのハブを作った 。このハブを活用したプロジェクトには、新型コロナウイルスの世界的拡散をモニターするための匿名で健康状態を報告できるアプリや、ケニアの小学校教師がリモート授業を円滑に進めることを助けるコミュニティーづくりなどが含まれる。

起業家向け無料カウンセリング

Betaworksは、メンターからのアドバイスが得られる起業家向けのサポートグループをスタートさせる。これはスタートアップの起業家とビジネスリーダーを結びつけるピアツーピアプログラムで、期間は6週間で参加は無料だ。申込の締め切りは4月13日、先着順で参加者が決定されるので興味があれば急いだほうがいい。

#MaskUpでマスク供給

サスティナブルなアパレルを提供するStellariの創業者であるJanelle M. Jimenez(ハネレ・M・ヒメネス)氏は ロサンゼルスの製造会社がマスクを生産するためのシードマネーを投じている。ヒメネス氏はメーカーと提携し、1万5000ドル(約160万円)を投資したが、大量生産のためにはあと1万ドルが必要だ。マスクは地元の衣料産業を援助するために原価で提供される。このプロジェクトはIndiegogoで2万4000ドル(260万円)をすでに集めた

COVID-19対応サイトづくりにプログラマーは団結せよ

Coding Dojoは卒業生のプログラマーたちをウェブサイトを新型コロナウイルスに対応させる必要に迫られているスモールビジネスに結び付けるプログラムを開始した。プログラマーは、角の酒屋のサイトづくりや既存サイトへの配達機能の追加などのプロジェクトを無料で引き受ける。

ボストンでマラソン大会用ゼッケン買い上げのチャリティ

Tom O’Keefe(トム・オキーフ)氏はマラソン参加者向けチャリティ団体のStrideForStrideのファウンダーだ。この団体はグアテマラ、ニカラグア、エルサルバドル、ブラジル、チリ、キューバ、ジャマイカ、アメリカなどの低所得のランナーからマラソン大会用ゼッケンを買い上げている。新型コロナウイルスでマラソンが中止され、ボストン地区ではホテル、レストラン、Sam Adamsビールなどの企業会社からの資金援助が途絶えた。Strideではパンデミックの後、レストランやバーを組織してランニング・クラブを作る計画だが、当面はDownloadBoston.comというボストン地区のブランドをプロモーションする運動に注力している。

最前線の医療スタッフに食事を提供

ニューヨーク市民のグループが#InMyScrubsという運動をスタートさせた。資金を集めて新型コロナウイルスの緊急対応にあたっている病院の医療スタッフに地元のレストランから食事を送るというものだ。これ自体はテクノロジーをベースにしたイニシアチブではないが、心温まる動きだ。賛同者は自宅でジャージーやスウェットシャツなど緊急対応スタッフが着用している消毒済上着(Scrub)に似た衣類を身に着けている写真をInstagramにアップロードして連帯を示す。この運動はすでに6万8000ドル(約73万円)を集めている。

トップ画像:alashi / Getty Images

【Japan編集部追記】布と輪ゴム2つで簡単なマスクの作り方を実演しているのは米公衆衛生局長官で海軍の軍医中将のアダムズ博士。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Facebookはピボットしようとしている

「未来はプライベート」とマーク・ザッカーバーグ氏がFacebookのロードマップの説明で語った。それは「今は、控えめに言っても、プライバシーに関して最高の評判を得ている状態ではない」と認めた後の発言だった。しかし、彼がそれを「今」欲しがっている理由は明白だ。Facebookの終わりなきプライバシー崩壊は同社の評判に破滅的影響を与えている。

収益ではないので念の為。しかし収益はIT業界では遅れてやって来る指標としてよく知られている。Facebookのように、事実上公益事業の役割を果たすようになった会社は、いたるところで利用されることによって利益が最大化する。人々がそれを好きだからではなく、ほかに良い選択肢がないからだ(Craigslist、PayPalも参照されたい。MySpaceという無名の小さな会社も聞いたことがあるかもしれない)。

しかし「未来はプライベート」とは、Facebookがグループや個人がエンドツーエンドで暗号化されたメッセージをやり取りするプラットフォームになり、メッセージの内容を知ることはできないのでそれに関して批判されることがなくなる、というビジョンであり、これは途方もないビジネスモデルの転換に思える。「上院議員、われわれは広告を売っています」とはこれもザッカーバーグ氏の有名な一節だ。エンドツーエンド暗号化や、無限にスクロールするニュースフィードより個別のコミュニケーションを重視する方向性は、Facebookから貴重な広告スペースと貴重な広告ターゲット情報の両方を奪うのではないのだろうか?

おそらくそうだ。しかし、Facebookがニュースフィードでの露出に関して広告を売って儲けるより、はるか先のことをやりがっていることは、すでに火を見るより明らかだ。そうやってここまでやってきたが、それには限界があり、最近では爆発する怒りとフェイクニュースによる炎上も呼んでいる。だから、今ボールのある位置を見るのではなく、どこへ向かっているのかを見なくてはならない。Facebook Marketplaceは? Facebookの暗号通貨計画は? どうやってWhatsAppを買収し、Facebook Messengerを独立したアプリにしたのか?

Facebookが本当に次に求めているのは、Messengerを全世界のWeChatにすることなのは明らに思える。ビジネスコミュニケーションにもパーソナルにも使われる難攻不落な囲われた庭園。メッセージングだけでなくEコマースも支配し、クレジットカードを超え、そして置き換えるプラットフォームだ。

それは恐ろしく儲かる事業になる。さらに、公共あるいは当局による監視と暴動も著しく減るだろう。将来必然的に起こるであろうMessenger上の暴動や残虐行為が起きたとき、Facebookは実に正しくこう言うだろう。それらのメッセージを監視、検閲することは数学的に不可能であり、それはユーザーのプライバシーを守るために数学的に不可能にしているからである。

偽善的に聞こえるだろうか? なんと偏狭で短絡的な考えだろうか。皮肉なことに、Facebookの繁栄する未来を、「Facebook」抜きに考えることはことは十分に可能だ。そこでは、Instagramがソーシャルメディアの王であり、Messenger/WhatsAppがメッセージングを支配し、5000億ドルの国際送金市場を占有し、そこで日々行われる数百万件の取引から手数料を得る。

かつてFacebookとしてわれわれが知っていたもの、かつて有名だったアプリやウェブサイトは廃墟のように衰え、先細りのますます中年化する人々のイベント企画や単発的な生活アップデートに使われ、LiveJournalやMySpaceを始めとする無数のゾンビソーシャルメディアのようになっていく。しかしその会社は朽ち果てる前に、新たな、より強力で、より進化した巨大企業を誕生させる。その庭園は「塀に囲われている」だけではなく、(アメリカンコミックの架空の国)ワカンダのようなドームに包まれ、規制に対する耐性が強く、不快な創発特性の発生や上院の証言台に呼ばれる可能性も低い。このアイデアを好むと好まざるとにかかわらず、そうなることを認めざるを得ない。もし成功すれば、究極のピボットだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook