南米フィンテック依然好調、ソフトバンクなどがブラジルの担保貸付サービスに250億円出資

投資家がラテンアメリカのスタートアップに積極的に進出を続ける中、どの分野よりも注目を集めているのがフィンテックだ。地域全体の資産が増えるにづれ、適切な財務サービス(特に融資)の利用は、普通の現金よりも新しい金融ツールを使いこなしたいと思っているモバイル志向のミドルクラスにとって不可欠だ。

それが、ブラジルの消費者向けクレジットカードの巨人であるNubank(ニューバンク)を企業価値約40億ドルに押し上げた理由だ。そして担保貸付サービスのCreditas<(クレディダス)が、ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびソフトバンクグループから2.31億ドル(約250億円)を調達したのも同じ理由だ。既存投資家のVostok Emerging Finance、Santander InnoVentures、Amadeus Capitalらもこのラウンドに参加した。

年にSergio Furio(セルジオ・フリゴ)氏が設立したCreditusは、低金利と引き換えに抵当を供出するブラジル人顧客向けに貸付けを始めた。そして2017年には、多方面の種類の貸付を行う総合金融会社になった。

Creditusは、Kaszek Ventures、Quonaの Accion Frontier Fund、Redpoint eVentures、QED Investors、Naspers Fintech、International Finance Corporation、EndeavorのCatalyst fundといった国内外の投資家による資金のおかげで、ブラジルの金融サービス分野で最大のスタートアップになった。同社は調達した資金を使って提供サービスの幅を広げ、無担保消費者ローンやクレジットカードといった新規ビジネスを始めようとしているらしい。

もし無担保貸付分野への参入に成功すれば、CreditasはNubank(Creditasの筆頭出社であるソフトバンクと出資について交渉していると報じられた)と対等に戦えるようになる。

「Creditasは、効率と低価格によってす素晴らしい体験を提供し、ブラジルにおける低費用貸付の民主化を進める努力を続けている。今回の投資によって我々の計画が加速され、ブラジル国民の生活を改善するビジネスモデルを拡大していくつもりだ」とフリオ氏が声明で語った。

出資に伴い、ソフトバンク・ビジョン・ファンドおよびSoftBnak Latin America Fundの代表者がCreditasの取締役に就任する。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

今、ブラジルのヘルステック分野が熱い

[著者:Manoel Lemos]
シリコンバレーのベンチャー企業Redpointのブラジル専門部門Redpoint eventuresの業務執行社員。

大勢の人が絡む大きな問題に取り組むことは、起業家と投資家の両方にとって絶好のチャンスとなる。たとえば近年のブラジルでは、フィンテックによる金融改革や、新しいオンデマンドのビジネスモデルに投資が集中しているが、ヘルステック関連のスタートアップも、ブラジルで爆発的な増加を見せている。全国民のうちの数千万人が、根深い不平等問題によって医療サービスが受けられず、深刻なまでに低水準な医療の質、重い負担、あらゆる面での非効率といった問題に苦しめられている。起業家の皿は、市場に届けたいヘルステックの改革案で山盛りの状態だ。

Liga Venturesの最近の調査では、現在ブラジルには健康に特化したスタートアップが250社位上あり、民間医療に年間420億ドル(約4707億円)以上を消費する世界で7番目に大きな健康市場になっているという。ただし、そのうち180億ドル(約2017億円)が効率の悪さのために浪費され、この5年間でブラジルの医療関連コストが倍に跳ね上がっているため(累積インフレ率38パーセント)、ブラジルの医療は崩壊寸前にある。ヘルステック系スタートアップは、サンパウロ南部のビラオリンピアに拠点を置く世界最大級の起業家ハブCUBOItaúでも、トップ5の業界に入っている。

昨年、中南米の民間投資を支援する非営利団体LAVCAが発表した「中南米の技術ブレークアウトの年」によると、中南米において、ヘルステックは2番目に急成長している技術分野になっている。2016年と比較して、ヘルステックの取り引きは250パーセントにまで拡大した。ブラジルに診療所を建設して安価に最高の医療を提供することを目的としたネットワークDr. Consultaへの5000万ドル(約56億円)の投資は、2017年のベンチャーキャピタルによる投資の中でも最大のものだった。

医療分野は、患者、仲介業者、診療所、代理店、サプライヤーの間で、人と仕事と製品を結びつけなければならない複雑な市場だ。そこで、技術革新を武器に、ブラジルでもっとも大きなインパクトを与え、この市場に新しいビジネスモデルをもたらす主要なカテゴリーと企業を紹介しよう。

オンデマンドの医療

公的医療機関が利用できるのは、ブラジルの人口(約1億5000万人)のうち、およそ75パーセントに限られている。しかし、そうした医療機関は運営管理が不十分で非効率だ。1回の診療や検査のために、患者が数週間から数カ月待たされることも少なくない。そこに技術力を背景にしたスタートアップが登場し、より広く、より高齢の人々にも、効率的に医療を受けやすくする機会を提供し始めた。

たとえば、低価格な診療所チェーンDr. Consaltaの施設は、この3年間で1軒から51軒にまで増えた。今では、100万人以上の患者から得た国内最大の医療データセットを持つと主張するまでになった。他の民間診療所では、診察料が少なくとも90ドル(約1万円)はするが、Dr.Consaltaは25ドルだ。同様のオンデマンド医療を提供する診療所として、ClínicaSimDr. Sem Filas、 DocwayGlobalMed.などがある。

テレヘルスとモバイル健康アプリ

医療上の助言、診断、モニタリングをより便利にするテレヘルス・サービスがブラジルで拡大している。たとえば、Brasil Telemedicinaは、医療検査、医師の診察、遠隔モニタリング、心理カウセリングなど、さまざまなサービスを24時間提供している。

患者のケアを改善するためのB2Bテレヘルス・サービスには、1日24時間年中無休で放射線画像解析を行うTelelaudo、心臓の健康状態のモニター、陰圧閉鎖療法、乳児の呼吸と健康状態のモニターのための特殊な機器を提供するVentrixなどがある。また、サンパウロに拠点を置くスタートアップNEO MEDは、心電図と脳波図の医学報告が簡単に素早く作成でき、それぞれの場所で柔軟に収入を増やしたいと考える診療所、研究所、病院、医師の協力を促すプラットフォームを開設した。

フィンテックのような急成長分野を
もうひとつ作れる重要な材料が
この国にはふんだんにある。

ブラジルでは、糖尿病と高血圧といった疾患の発生率の高さインターネットユーザーの多さから、モバイル健康アプリの人気が高まっている。たとえば、Dieta e Saude(栄養と健康)というアプリは、160万人以上のユーザーに、よりよい栄養食品を選ぶよう助言し、それを習慣づける動機を与えている。ブラジルで設立され、現在はサンフランシスコに拠点を移したYouperは、社会的不安の解消を手助けする情緒的健康のためのバーチャル・アシスタントだ。ユーザーの思考パターンを再構成して、心をより健康な状態にしてくれる。

AIとデータ解析

他の業界と同様、またブラジルに限らず、AIとデータ解析は、患者の診断のスピードアップから医療コストの管理に至るまで、医療を変革しつつある。

その中のイノベーターのひとつにGestoがある。データベースに蓄積した450万件以上の患者の情報を機械学習でふるいにかけ、有用な情報を引き出して、患者の治療を最適化すると同時にコストを管理し、企業にとって最適な保険プランの選択を助けてくれる。集中治療室の管理を専門とするブラジル最大手のIntensicareは、AIを利用して診断のための時間を短縮し、患者の滞在時間と死亡率の低減を目指している。レシフェに本拠地を置くスタートアップEpitrackは、クラウドソースのデータ、AI、予測分析を使って疫学をコンピューター化し、伝染病の大流行と戦っている。

電子カルテ

昨年、ブラジル政府は、国内4万2000箇所以上の公営診療所で扱う患者のカルテを近代化するプロジェクトを、2018年までに完了させると発表した。世界銀行によると、カルテの電子化によって、連邦政府の経費は68億ドル(約7630億円)削減できるという。昨年末の時点で、ブラジル人(2億800万人)のうち3000万人しか電子カルテを持っておらず、ブラジルの家族向け診療所の3分の2近くが、患者の電子カルテを作成する手段を持っていなかった。

SaaS電子カルテのプラットフォームであるiClinicは、医療の近代化に大きな影響を与えたブラジルでもトップクラスのスタートアップだ。医療の専門家によるカルテの分類を電子的に支援し、すべてのデータをクラウドに保管し、あらゆるデバイスで読み出せるようにする。iClinicは非常に使いやすいシステムであるため、医療の効率化、コストの削減、治療の質の向上が期待できる。現在、ブラジルの各地で利用されているが、ブラジル以外の20カ国以上にも利用者が広がっている。

処方箋のデジタル化

ブラジルでのデジタル化の遅れによるもうひとつの大きな問題として、70パーセント近くの処方箋に記述ミスの恐れがあるという点を世界保健機関(WHO)が指摘いている。そのためブラジルでは、投薬ミスの関連で年間数千人が死亡している。精査することで、かなりの人数が救えるはずだ。アメリカでは、すでに77パーセント以上の処方箋がデジタル化されている。

この生死の問題に対処するために、ブラジルの電子処方箋管理の中心的存在としてMemedが登場した。現在、ブラジルのすべての医療分野の5万5000人以上の医師がこれを利用し、アレルギーと薬物相互作用の照合を行っている。これにより、服薬コンプライアンスが容易になり、医療効果も高まる。同社は、ブラジルでもっとも充実した、信頼性の高い、最新の薬物データベースを開発している。

ブラジルのヘルステック関連のスタートアップは注視すべき分野として急成長しているのは確かだが、ヘルステック革新が解決に着手したこの国の問題は、まだまだ氷山の一角に過ぎない。フィンテックのような急成長分野をもうひとつ作れる重要な材料が、この国にはふんだんにある。ブラジルにおけるヘルステックは、今後長きにわたり、それを信じる起業家と投資家にとって、確実にホットな分野となる。

備考:Redpoint eventuresはMemedに投資しています。  

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(翻訳:金井哲夫)

Brexの22歳の創業者コンビが、2年未満で10億ドルのビジネスを構築した道のり

ブラジル生まれのHenrique Dubugras(写真右)とPedro Franceschiが、16歳で出会ったときに、彼らを結びつけたのはコーディングへの愛と、Mark Zuckerberg風の野心を理解してくれない厳しい母親に対するお互いの欲求不満だった。

まあ公正を期すならば、彼らの母親たちの心配が始まったのは、10代になったばかりの息子たちが、特許侵害を警告する通知を受け取ってからなのだが。FranceschiがiPhoneに対する最初の「脱獄」方法を発見した際に、Appleから受け取った法的警告は、少なくともそのことを裏付けている。

彼らの両親は、息子たちにハッキングをやめ、オンラインを徘徊することをやめるように懇願した。

だが彼らは聞き入れなかった。

本日(米国時間10月5日)、この22歳のコンビは、彼らの成功した2番めの有料ビジネスであるBrexに対して、1億2500万ドルのシリーズCを発表した(評価額は11億ドル)。Greenoaks Capital、DST GlobalそしてIVPがこのラウンドを主導しているが、これによって彼らがこれまでに調達した資金は2億ドルに達する。

サンフランシスコに拠点を置くBrexは、スタートアップの創業者たちに、個人保証や保証金の差し入れなしに、コーポレートクレジットカードへのアクセスを提供するサービスだ。同社はまた、PayPalの創業者であるPeter Thielや、Visa Carl Pascarellaの元CEOであったMax Levchin、その他いくつかの有名VCからの支援も受けている。

Brexはこれまで見た中で、最もエキサイティングなスタートを切ったものの1つです」と発表の中で語るのは、IVPのSomesh Dashだ。

今回のラウンドは、彼らを史上最も若いユニコーン創業者にして、猛烈な速さでユニコーンテリトリーに突入した例外的なスタートアップたちの仲間へと押し上げた。Brexは2017年の冬に創業され、2018年6月にサービスが公開されたばかりなのだ。

どのように成し遂げられたのか?

「私は過去2回失敗しています、そしてこれまでに1つに成功し、あと1つに現在成功しつつあります」と、BrexのCEOであるDubugrasは、長い経歴を並べながら、TechCrunchに語った。

私たちのほとんどが、高校1年の生活はどのようなものだろうと心配しているだけの14歳という年齢で、Dubugrasが抱いていた関心は、次のビジネスの試みをどのようなものにしようかというものだった。彼は既にオンラインゲームを成功させていたが、それに対する特許侵害通知を受け取った後に、それを終わらせることを余儀なくされた。

当然ながら、彼はゲームから得た現金を使って会社を設立した。ブラジルの学生が、アメリカの学校に入学申請をすることを助ける教育スタートアップである。彼自身はスタンフォードに入学することを望んでいたので、ブラジルの若い生徒たちが、どのように米国の大学に申請を行っているのかがすぐにわかった。

ある面では同社は成功した。それは80万人のユーザーを獲得したが、収益をあげることはできなかった。ビジネスをスケールアップできるほど、彼は幸運ではなかったのだ。

「ブラジルには、15歳の人間に喜んで資金を提供してくれるようなVCはあまりいないのです」とDubugrasはTechCrunchに語った。

このエデュテックを畳んだあと、彼はFranceschiと出会った。Rioからやってきた10代のブラジル人だ(なおDubugrasはサンパウロ出身である)。FranceschiはイノベーションへのDubugrasの渇望を理解し、彼もまた成功に飢えていた。2人は会話を始め、やがてFranceschiがもっていた決済への関心に基いて、彼らは「ブラジルのStripe」を目指すPagar.meを始めた。

Pagar.meは3000万ドルを調達し、100人のスタッフを集め、売却されたときには最高15億ドルの取引を処理していた。ついに彼らは本当の成功を手に入れたのだ。新しいことを始める時が巡ってきた。

「シリコンバレーにきて何かを作りたいと思っていたのです。なにしろここでは何もかもが大きくクールにみえましたから」とDubugrasは語る。

そして彼らはシリコンバレーにやってきた。2016年の秋に、2人はスタンフォード大学に入学した。ほどなくして彼らは、Beyondという名前の仮想現実スタートアップの大きな夢と共に、Y Combinatorに参加した。

「私たちは3週間でそれを諦めたと思います」とDubugrasは語った「私たちは、その事業を開始するための適切な創業者ではないことに気付いたのです」。

彼は、Y Combinatorが、彼らが何に向いているかを気付く手伝いをしてくれたと言う ―― それが決済だ。

自分たちも創業者であることから、DubugrasとFranceschiは、起業家たちが直面する巨大な問題を深く認識していた。それはクレジットカードへのアクセスだ。大手銀行は中小企業を、積極的には引き受けたくないリスク対象だとみなしているため、創業者はしばしば窮地に追い込まれる。DubugrasとFranceschiは、自分たちのアドレス帳に、スタートアップ起業家たちの大きなネットワークを持っていただけでなく、特に創業者たちのためにデザインされたクレジットカードビジネスを構築するために必要な、フィンテック上の洞察力を有していた。

そこで彼らは2017年4月にBeyondを廃業し、Brexが生まれたのだ。スタートアップはすぐに勢いを得ることができたので、2人はスタンフォードを退学し、ビジネスをフルタイムで進めることにした。

金融アクセスの簡素化

Brexは個人保証や保証金を必要とせず、サードパーティのレガシー技術も使用していない。そのソフトウェアプラットフォームはゼロから構築されたものだ。

それは、企業に対して出費に対する統合的な情報を提供することで、企業経費に関する面倒な部分を簡素化する。たとえば、各企業のCEOは毎月末に、全社でUberやAmazonに対して使われた金額がいくらかを簡単に知ることができる。

さらに、Brexは起業家に対して、他のものよりも10倍も高い与信限度額を与えることができ、カードを発行することができる。少なくとも仮想カードはオンライン申請が終わった直後から利用できるようになる。

「私たちは初期のStripeが提供していたものにとても似たものを提供します。ただしはるかに速く。なぜならシリコンバレーの企業はお金を稼ぐのは得意ではないのに、お金を使うのは得意だからです」とDubugrasは説明する。

資金調達の発表の一部として、Brexは、創業者たちの必要性と出費パターンを考慮した、リワードプログラムを始めることを明かした。その計画に続いて、彼らは手に入れた資本金を使ってエンジニアを雇用し、テクノロジー企業以外のクライアントに向けて、ビジネスを成長させる方法を探ろうとしている。

「企業向けクレジットカードの世界を席巻したいのです」とDubugrasは言う。「世界中のすべての企業に、ビジネス経費を使う際には、Brexカードを使って欲しいと思っています」。

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(翻訳:sako)

画像クレジット: Brex