考えの整理に捕らわれずすばやく書き留めることに特化したメモアプリ「Mem」が6.2億円調達

ノートテイキングの分野には高評価の生産性スタートアップが多数存在し、生産性を無限に上げるかもしれない製品を提供してユーザーを獲得しようとする競争がかつてないほど激化している。この1年間でNotionは20億ドル(約2194億円)、Codaは6億3600万ドル(約697億7000万円)、Roamは2億ドル(約219億4000万円)のバリュエーションとなった。

この分野に、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)から新たな資金を得たプレイヤーがステルスから姿を見せている。無料のMemアプリは、考えの整理にとらわれすぎずにすばやく書き留めることに特化したプラットフォームで、現在は早期アクセスの段階だ。Memの創業者たちはこのプラットフォームの今後について、機械学習やさらにはARの進化にも踏み込むような巨大な野望を抱いている。

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Mem共同創業者のKevin Moody(ケビン・ムーディー)氏はTechCrunchに対し「本当に差別化の要因となるのは、(情報を)どこにいても取り出せることです。そのために、短期的にはMem Spotlight機能を備えたデスクトップアプリをどこにいても使えるヘッドアップディスプレイとして、中期的にはアシスティブなモバイルアプリケーションで、そして長期的には有用なコンテンツを現実世界にオーバーレイ表示するコンタクトレンズのようなものを想像してみてください」と述べた。

ムーディー氏と共同創業者のDennis Xu(デニス・シュ)氏はTechCrunchに対し、a16zが主導したシードラウンドで560万ドル(約6億1500万円)を調達したと述べた。このラウンドにはCultural Leadership Fund、Will Smith(ウィル・スミス)氏のDreamers VC、Floodgate、Unusual Ventures、Shrug Capitalの他、エンジェル投資家のHarry Stebbings(ハリー・ステビングス)氏、Julia Lipton(ジュリア・リプトン)氏、Tony Liu(トニー・リュウ)氏、Rahul Vohra(ラウル・ボラ)氏、Todd Goldberg(トッド・ゴールドバーグ)氏なども参加した。

現時点でのMemは、フォルダやリンクをクリックして考えを収める場所を見つけるのではなくユーザーが「簡単に整理」できる方向を目指している。ユーザーやメモのトピックにはすばやくタグを付けられる。ユーザーは検索と時系列での整理を頻繁に使うため、最近使ったメモが表示されるようになっている。特定のメモに関するリマンダーを設定して、メールでよく使われる仕組みをノートテイキングに取り入れることもできる。

Apple(アップル)のメモアプリなどのユーザーにとってはこうした独特のインターフェイスにあまり抵抗がないかもしれないが、NotionやAirtableなど迅速さより構造を重視するアプリとはかなり違う設計だ。

Mem Spotlight

おそらくMemの最大の特徴は、このプラットフォームに取り込んだ情報にアクセスする方法だろう。同社の創業者たちはこのアプリを「最終目的地」と思われたいわけではなく、キーボードショートカットで呼び出す「Mem Spotlight」というオーバーレイを多用してメールやプレゼンテーション、テキストメッセージに必要な情報を見つけて欲しいと考えている。創業者と投資家たちが広い意味で期待しているのは、今後Memがプラットフォームのインテリジェンスを活用して、脳やデジタルフットプリントの情報源から取り出したデータを理解し、ユーザーについて広告ネットワークやソーシャルメディアグラフよりも深く知ることだ。

ムーディー氏は次のように考えている。「デジタルフットプリントを受動的に取得し、それをあたかも構造化されているかのように使うだけだとしたらどういう意味があるでしょうか。テキストや連絡先、知っている人、参加する予定のイベント、そしてMemに取り込まれるさまざまなソースからのフィードなど、こうしたエンティティをすべて実際にMemでモデリングできるとしたら、『あなた』というAPIである製品をMemが持つことにどういう意味があるでしょうか」。

現時点でMemのアプリは創業者たちが将来に思い描いているほど大がかりなものにはなっていないが、同社はウェイトリストで待っている初期ユーザーのオンボーディングを実施しデスクトップ向けの機能を追加しながら、ユーザーが情報を「記憶する」のに役立つプラットフォームに向けて前進している。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Memメモアプリ資金調達

画像クレジット:Mem

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(文:Lucas Matney、翻訳:Kaori Koyama)

シンプルさに向かうEvernoteのiOSアプリ

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Evernoteのモバイルアプリを本当に好きだった人はいるだろうか?いるはずがない?オーケー、それなら良い知らせだ。あなたのアイデアをよりシンプルに効率よく記録するだけでなく、検索しそして整理するために、新たなモバイルバージョンが提供された。

覚えていると思うが、これまでのアプリは少々煩雑だった。画面上部にはショートカットが並んでいた。つまり、テキストのノートを開始したり、写真を追加したり、リストを作成したり、音声ノートを作成したり、リマインダーを設定したりするために押すボタンたちだ。その下にはカスタマイズ可能なホーム画面があって、ノート、ノートブック、ワークチャット、タグ、地図、その他のショートカットといったセクションを、追加したり削除したりすることができた。

Evernoteによれば新しいバージョンはゼロから設計され、レイアウト全体とナビゲーションが再考されたということだ。

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今度のアプリには、下部により標準的なナビゲーションボタンの列がある。それぞれノート、検索、ショートカット、そしてアカウントといったものにアクセスできる。

シンプルな緑の十字ボタン(+)を押せば、新しいノート作成を始めることができる。そしてこのボタンを長押しすることで、音声、写真、リマインダーを作成するための他のボタンが現れる。

Evernoteのソーシャルプラットフォーム化の試みであるワークチャットは、今回はやや取り扱いが控え目になって、アカウントセクションの中に仕舞われてしまった。

一方、アプリは古いバージョンのときのようなホーム画面ではなく、最新の更新ノートを表示するように起動する。Evernoteによれば、これで最後にしていた作業を再開しやすくなるとのことだ。

また画面の最上位にあるドロップダウンタブによって、ノートブックをより簡単に切り替えることもできるようになった。

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必要なノートを見つけやすくするために、ノートのプレビューも再考された。サイズを小、中、大と切り替えることができて、ノートの中のイメージもプレビューに表示される。そのため必要なノートをビジュアルに探すことができる。フィルターオプションを使えば、ノートをタグやリマインダーで検索することができる。また単一のノートブックの中だけ、あるいはアカウント全体を検索することができる。

ノートを書き込む機能もアップグレードされた。テキストサイズを小、中、大と変えたり、テキストの色を変えたりすることができる。

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全体としては、少なくとも第一印象としては、以前の厄介なアプリケーションよりはその使い勝手が改善されているようだ。とはいえ、アプリは相対的にシンプルになったと言うことはできるものの、必要とされるシンプルさにはまだ達していない。

デザインには依然として混乱した要素が含まれる。例えばノートのメインスクリーンの検索ボックスの横にある小さなタグやリマインダーアイコンのように。そもそも、既に専用の検索タブがあるのに、どうしてここに検索ボックスがあるのだろうか?

また、ホーム画面の右上の微妙な3ドットのドロップダウンメニューをプルしてみよう。なぜ1つのスクリーンではこれはカスタマイズオプションで、他のスクリーンでは違う機能なのだろうか?こうした本質的でない機能は、標準的なギア設定アイコンの中に詰め込んでしまった方が良くはないだろうか?こうすれば、「カスタマイズ」セクションと「ショートカット編集」オプションを提供しながら、アカウント画面とワークチャットを1タップで呼び出し可能にできる。

一部のユーザーを除いて、必ずしもEvernoteユーザー全員には活用されているとは言えない「ショートカット」に、専用のボタンが割り当てられている理由もあまりはっきりしない。今やドロップダウンを用いてノートブックを容易に切り替えることができるのだから、お気に入りにアクセスするための画面を必要としているのは、膨大な数のノートブックを持っている人か、同じノートに何度も繰り返しアクセスする人だけだ。

そもそも、どうしてこのセクションを「お気に入り」と呼ばないのだろうか?

そしてどうして「すべてのノート」ドロップダウンメニューの中にお気に入りに切り替えるオプションを追加しないのだろう?なにしろリマインダーに切り替えるオプションさえ、既にそこに置かれているのだ(そしてEvernoteは、あなたが最後に「お気に入り」セクションに切り替えて使ったことをただ覚えておいて、次に立ち上がるときにはそこを開くこともできる。独立したセクションは必要ではないのだ)。

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そう、それらは再考に際して出た思いつきのようものだ、そしてそれらは恐らく全員のワークフローに役立つというものではないだろう。

とはいえ仕事効率化アプリをスリムダウンすることは難しいと思われる。特にカスタマイズ可能なシステムの場合には、ユーザーたちが自分自身のシステムを作り上げてしまうからだ。例えばGmailを見てみるが良い。Googleは受信ボックスを作り直そうと思った時、彼らは単純にGmailを離れて完全に新しい電子メールアプリであるInboxを作り始めた。

しかし、Evernoteの場合は、このアップデートは会社がビジネスの成長に向けて苦労しているときにやってきた。会社はずっと、MicrosoftのOneNoteとの競争に晒され、マネジメントは混乱し、スタッフがユーザーのプライベートコンテンツを読むことができるようにプライバシーポリシーを変更しようとしたときに巻き起こったような論争に、直面してきた(その変更は激しい抗議の声を受けて速やかに撤回された)。

Evernoteは現在の利用者が船を見捨てて逃げ出すのを防ぐために、そのアプリを有益で簡単なものにしなければならない。そしてやっとそのゴールへ向かって歩き出したものの、まだまだやることは残されている。

新しいアプリ、Evernote 8.0は、現在iPhone、iPad、そしてiPod touchで利用可能になっている。

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(翻訳:Sako)