超党派グループがソーシャルメディアの推奨アルゴリズムを制限する法案を提出

下院の超党派グループが、ユーザーのオンライン体験を方向づけるアルゴリズムの使用について、ユーザーがもっと制御できるようにする法案を提出した。このフィルター・バブル透明性法案が通過すれば、Meta(メタ)などの会社は、 “input-transparent”(入力透明性)アルゴリズムと呼ばれる推奨にユーザー・データを使用しないバージョンのプラットフォームを提供しなければならなくなる。

同法案は、「不透明」な推奨アルゴリズムを禁止するものではないが、ユーザーがその機能をオフにできるスイッチをつけることを要求している。さらに、推奨アルゴリズムを使い続けるプラットフォームは、その推奨がユーザーの個人データから生まれた推論に基づいていることを告知しなければならない。告知は一回限りでよいが、「明快で目に付きやすい方法」で伝える必要がある、と提案に書かれている。

法案を提起したのは、下院議員のKen Buck(ケン・バック)氏(共和党・コロラド州)、David Cicilline(デビッド・シシリン)氏(民主党・ロードアイランド州)、Lori Trahan(ロリ・トラハン)氏(民主党・マサチューセッツ州)、およびBurgess Owens(バーゲス・オーエンス)氏(共和党・ユタ州)の4名だ。これは、上院議員のJohn Thune(ジョン・スーン)氏(共和党・サウスダコタ州)とRichard Blumenthal(リチャード・ブルメンタル)氏(民主党・コネチカット州)が今年6月に提出した法案のコンパニオン法案だ。「消費者は、ユーザー固有データに基づく秘密アルゴリズムによって操作されることなくインターネット・プラットフォームを利用できる選択肢を持つべきです」と、本法案を最初に報じたニュース機関、Axios(アクシオス)にバック氏は語った。

議員らは、ソーシャルメディアの巨人たちがユーザーの取り込みを強化するために推奨アルゴリズムを使っていることを頻繁に批判してきたが、これまでにアルゴリズムの使用を抑制する法的措置はほとんど取られていなかった。1月6日の米国議会議事堂襲撃事件を受け、民主党議員30名以上からなるグループが、Meta(メタ/当時の名称はFacebook[フェイスブック])、Twitter(ツイッター)、およびYouTube(ユーチューブ)に対し、推奨エンジンに本質的変更を加えるよう要求したが、結局は脅威となるような規制措置には至らなかった。今回のフィルター・バブル透明性法案は、下院、上院の超党派支持を得ているものの、成立するかどうかは不明だ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Igor Bonifacic(イゴール・ボニファシック)氏はEngadgetの編集協力者。

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画像クレジット:POOL New / reuters / Getty Images

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Nob Takahashi / facebook

NVIDIAが多機能でリアルなAIアバター・AIアシスタントが作れるプラットフォーム「Omniverse Avatar」を発表

NVIDIAは11月9日、仮想コラボレーションとリアルタイムシミュレーションのためのプラットフォーム「NVIDIA Omniverse」(オムニバース)上で使えるインタラクティブなAIアバターが作れる機能「Omniverse Avatar」(アバター)を発表した。

Omniverse Avatarは、単にインタラクティブに動かせるレンダリングされた3Dキャラクターを作るだけではなく、音声、AI、自然言語理解、レコメンデーションエンジン、シミュレーションといったNVIDIAのテクノロジーが駆使され、見たり、聞いたり、多言語で話したりができるAIアシスタントとして機能する。NVIDIAの創業者でCEOのジェンスン・フアン氏はこれを、「インテリジェントな仮想アシスタントの夜明け」と称している。

NVIDIA Omniverseの新機能として追加された「Omniverse Avatar」には、次の要素が盛り込まれている。

  • 音声認識:複数言語の音声を認識するソフトウェア開発キット「NVIDIA Riva」をベースに会話の応対を行う
  • 自然言語理解:「NVIDIA Megatron 530B大規模言語モデル(Large Language Model)」をベースに、複雑な文書の作成、幅広い分野の質問への回答、長いストーリーの要約、他言語への翻訳などを行う
  • レコメンデーション エンジン:大量のデータを処理し、賢明な提案を行うことを可能にするディープラーニング レコメンデーション システムを構築するためのフレームワーク「NVIDIA Merlin」を利用
  • 認知機能:ビデオ分析用のコンピュータービジョン・フレームワーク「NVIDIA Metropolis」を活用
  • アバターのアニメーション:2Dおよび3DのAIによるフェイシャルアニメーションとレンダリングの技術「NVIDIA Video2Face」と「NVIDIA Audio2Face」を使用
  • これらの技術がアプリケーションに組み込まれ、「NVIDIA Unified Compute Framework」を使ってリアルタイムで処理される

フアン氏のアバターを使ったデモでは、同僚とのリアルタイムの会話が披露され、生物学や気象科学などの話題について語った。また、別のデモでは、レストランの2人の客にカスタマーサービス担当アバターが対応し、ベジタブルバーガーとフライドポテトと飲み物の注文を受けることができた。さらに、騒々しいカフェでビデオ通話をする女性の音声を正確に聞き取り、その言葉をリアルタイムで書き写し、その女性と同じ声とイントネーションで、ドイツ語、フランス語、スペイン語に翻訳して見せたとのことだ。

地元の独立系書店を支えるBookshop.orgでの売上好調、Amazonとの競う未来を見据える

もしグーテンベルクが生きていたら、多忙なエンジェル投資家になっていただろう。

2020年の新型コロナウイルス(COVID-19)によるロックダウンの最中に書籍の売り上げが急増したことを受けて、この控えめな書き言葉が突如としてVCや創業者たちの間で脚光を浴びるようになった。アルゴリズムを使ったレコメンデーションエンジンのBingeBooks、ブッククラブスタートアップLiteratiやその名のとおりのBookClub、ストリーミングサービスのLitnerdなど、新規プロダクトや資金調達の途切れのない華麗な行進を私たちは目にしてきた。またGloseLitChartsEpicなども、イグジットを果たしたか、そのポテンシャルを有している。

しかし、多くの読者の想像力を捉えたのはBookshop.orgであり、オンラインストアを構築してAmazonのジャガーノート(絶対的な力)に対抗するための、地元の独立系書店にとって頼りになるプラットフォームとなっている。新型コロナのパンデミックが広がり始めた2020年1月にデビューを果たした同社は、読書エコシステムに深い愛情を持つ勤勉なパブリッシャーである創業者のAndy Hunter(アンディ・ハンター)氏のヘッドラインとプロフィールを急速に蓄積していった。

1年半が過ぎた今、状況はどうなっているだろうか。幸いなことに、書店を含む小売店に顧客が戻ってきているにもかかわらず、Bookshopは低迷していない。ハンター氏によると、8月の売り上げは7月に比べて10%増加しており、2021年は2020年と同程度の売り上げを達成する見込みだという。同氏は5月のBookshopの売り上げが前年同月比で130%増加していることを挙げ、その予測値を説明した。「当社の売り上げは加法的であることが示されています」と同氏は述べている。

Bookshopのプラットフォーム上には現在1100のストアがあり、3万以上のアフィリエイトが本のレコメンデーションをキュレートしている。これらのリストはBookshopのオファリングの中心となっている。「こうしたレコメンデーションリストは、書店だけでなく、文学雑誌、文学団体、本愛好家、図書館員などからも得られています」とハンター氏はいう。

公益法人であるBookshopは、すべてのeコマース事業と同様、在庫を移動することで収益を上げている。しかし差別化要因として、アフィリエイトやプラットフォームセラープログラムに参加している書店への支払いがかなりリベラルであることが挙げられる。アフィリエイトには売り上げの10%が支払われ、書店自身はプラットフォームを通じて得た売り上げからカバー価格の30%を受け取る。さらに、Bookshopのアフィリエイトと直販の10%が利益分配プールに入れられ、それが加盟書店と共有される。同社のウェブサイトによると、Bookshopはローンチ以来、書店に1580万ドル(約17億2700万円)を支払っている。

同社は最初の1年半で多くの開発を行ってきたが、次の展開はどのようなものになるのだろうか。ハンター氏にとって鍵となるのは、可能な限りシンプルな方法で顧客と書店の両方を魅了し続けるプロダクトを構築することだ。「オッカムの剃刀(『必要なしに多くのものを定立してはならない』という原則)を堅持します」と同氏は自身のプロダクト哲学について語っている。すべての機能について「エクスペリエンスへの付加が行われますが、顧客を混乱させることはありません」。

もちろん、言うは易く行うは難しではある。「私にとって目下の課題は、顧客に対して圧倒的な魅力を放ちながら、書店が当社に求めていることすべてを実現するようなプラットフォームを作り、最高のオンライン書籍購入および販売エクスペリエンスを創出することです」とハンター氏。このことが実際的に意味するものとしては、(書店での買い物のような)プロダクトの「人間味」を維持しつつ、書店がオンライン上での優位性を最大化するのを支援する、というものであろう。

Bookshop.orgのCEOで創業者のアンディ・ハンター氏(画像クレジット:Idris Solomon)

例えば、同社は書店と協力して、検索エンジン発見のためのレコメンデーションリストの最適化に努めているとハンター氏は説明する。SEOは、従来の小売業界で身につけるようなスキルではないが、オンラインで競争力を維持する上では欠かせないものだ。「Googleで第1位にランクインするような本のレコメンデーションを生み出すブックリストを当社のストアたちはいまや有しています」と同氏はいう。「2年前であれば、こうしたリンクはすべてAmazonのリンクだったでしょう」。ハンター氏によると、同社はEメールマーケティング、顧客とのコミュニケーション、そしてプラットフォーム上でのコンバージョン率の最適化に関するベストプラクティスも積み重ねているという。

Bookshop.orgは何万ものリストを提供しており、アルゴリズムによるレコメンデーションよりも「人間的」なアプローチで本を探すことができる

顧客に向けては、Bookshopは今後、シリコンバレーのトップ企業の間で人気のアルゴリズムによるレコメンデーションモデルを避け、それよりもはるかに人間味のあるキュレーションのエクスペリエンスを提供しようとしている。何万ものアフィリエイトを擁していることから「活気あふれるミツバチの巣のような一大拠点です【略】本を取り巻く多様なエコシステムを構成する機関や小売業者も存在しています」とハンター氏。「彼らは皆それぞれの個性を持ってますので、それを発揮してもらいたいと考えています」。

やるべきことはたくさんあるが、暗い雲が地平線を脅かさないということでもない。

Amazonはもちろん、同社にとって最大の課題だ。Kindleデバイスの人気は非常に高く、これによりAmazonは物理的な販売では得られない強固な囲い込みを手に入れたとハンター氏は指摘する。「DRMおよびパブリッシャーとの契約がありますので、電子書籍を販売してそれをKindleで読めるようにすることは非常に困難です」と同氏は述べ、その結びつきをMicrosoftがWindowsにInternet Explorerをバンドルしたことになぞらえた。「法廷に持ち込まれることになるでしょう」。人々がKindleを好んでいることは事実だが「Amazonを気に入っているとしても【略】健康的ではないことを認識する必要があると思います」。

著者はハンター氏に、本の分野で資金提供を受けるスタートアップの数や、その資金がBookshopを締め出す可能性について懸念しているかどうかを尋ねた。「ブッククラブスタートアップは、本、そして本に関する会話を最大のオーディエンスの前に置くことで成功を収める」とハンター氏は考えている。「そうすれば誰もが成功するでしょう」。しかし「破壊」へのフォーカスに憂慮を示し「既存の独立系書店やコミュニティのメンバーと提携する形で成功することを願っています」と語った。

結局のところ、ハンター氏の戦略的な懸案事項は競合他社に向けられたものではなく、本が廃れているかどうか(廃れてはいない)という問題でもない。より具体的な課題は、現在のパブリッシングエコシステムが、一握りの本だけが成功することを保証しているという点にある。

「ミッドリスト問題」とも呼ばれるが、ハンター氏は最近の本の大ベストセラー体質を案じている。「1冊の本がほとんどの酸素を吸い取り、話題やトップ20の本の大半を吸い上げてしまう一方、若い作家や多様性のある声による優れた革新的な作品は、それに値する注目を集めることができません」と同氏は述べている。常に読者を最大の勝者に押しつけるレコメンデーションアルゴリズムではなく、リストによる人間的なキュレーションがより活気ある本のエコシステムの維持に役立つことを、Bookshopは期待している。

Bookshopが創業3年目を迎えるにあたり、人間に焦点を当て、店舗での豊富なブラウジングエクスペリエンスをオンラインの世界にもたらしていきたいと、ハンター氏は考えている。究極的には、それは志向性に関するものである。「どこで、どのように買い物をするかについての小さな決断のすべてを伴いながら、私たちは自分たちが生きる未来を創造しているのだということ、そしてそうした決断をどのように熟考するかについて、強く意識し続けるべきだということを、人々に理解してもらいたいと心から願っています」と同氏は語る。「Bookshopが単なる市民的な義務を果たす場所ではなく、楽しく買い物ができる場所であることを私は望んでいます」。

画像クレジット:MirageC / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

ウェブサイトに個人識別情報を利用しないレコメンデーション技術を企業に提供するCrossing Minds

Crossing Mindsの創業者。左から、セバスチアン・スラン氏、アレクサンドル・ロビケット氏、エミール・コンタル氏(画像クレジット:Crossing Minds)

私たちが見るメディアやショッピングの世界ではたいてい下の方に小さな枠があり、そこには似ている、あるいは他の人が利用したコンテンツや商品が表示される。

消費者はウェブサイトがもっとパーソナライズされることを期待している。ということは、ウェブサイトはあなたが見たいものを見せるために、あなたを知る必要がある。

Crossing Mindsは、CEOのAlexandre Robicquet(アレクサンドル・ロビケット)氏がEmile Contal(エミール・コンタル)氏およびGoogle Xの創業者でスタンフォード大教授のSebastian Thrun(セバスチアン・スラン)氏とともに始めた会社で、2018年にTechCrunchが開催したDisrupt Battlefieldでコンシューマ向けアプリのHaiを発表した。このアプリはユーザーに本、音楽、番組、ビデオゲーム、レストランなどのエンターテインメントを提案するものだった。

2年間でアクティブユーザーは数千人、そしていくつかの大企業を顧客として獲得したが、提案に課題があったため中断してB2Bにピボットした。

ロビケット氏はTechCrunchに対し「パーソナライズはあらゆるところにあり、今後進化する検索もフィルタリングされるようになるでしょう。1つの企業向けのレコメンデーションエンジンやAPIを作るのではなく、多くの企業にスケールして提供できるものを作ることが重要です」と語った。

同氏は、消費者の最大60%がサイトの新規ユーザーであるため、ゼロからの出発である「コールドスタート」が問題になることがあるという。さらに同氏は、サードパーティのcookieの価値が下がり、プライバシー関連の法律が厳しくなり、リアルタイムで現在と過去のウェブセッションをリンクするのが難しいといった障壁もあり、サイトの訪問者を知る方法はほとんどないと補足した。

Crossing Mindsはこうした課題に取り組み、オンサイトのアクションをもとに提案をする方法を開発した。これにより個人を識別する情報を使わずに、顧客は企業を簡単に見つけて関わりを持つことができる。

Crossing Mindsは同社のデータベースと関連づけ、KPIに基づいておよそ2週間でモデルを構築できる。このSaaSモデルはレコメンデーションごとに課金される。

米国時間10月18日にCrossing MindsはシリーズAで1000万ドル(約11億4500万円)を調達したと発表した。このラウンドを主導したのはRadical Venturesで、これまで投資していたIndex Ventures、Partech、Lerer Hippeauも参加した。ロビケット氏は今回の資金をエンジニアリングチーム、製品開発、カスタマーベースに投入し、リーダーシップチームを充実させる考えだ。

Crossing MindsはPenguin Random House、Danone、Inkboxなどにサービスを提供している。ロビケット氏は、利用企業は売上が平均で93%、クリックスルー率は120%増加したと推計している。

Radical Ventures共同創業者のTomi Poutanen(トミ・ポータネン)氏は、Inkboxなどの企業は「Crossing Mindsと連携したときにルビコン川を渡る」ことができたという。同氏は、コンバージョン、リピート販売、チャーンの指標によって経済的な手法が成長すると述べた。

例えばInkboxは2月にCrossing Mindsを利用し始め、Crossing Mindsによればメールのクリックスルー率が250%増、カート追加が250%増、新規ユーザーのオンサイトのコンバージョンが68.6%増の結果がすでに見られるという。

ポータネン氏は「アレクサンドル、エミール、セバスチアンはユニークなものを持っています。数学とディープテックに関する経歴や学位の基盤は、他にはなかなかありません。彼らはプロダクトの価値とその使い方を深く理解しています」と述べた。

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(文:Christine Hall、翻訳:Kaori Koyama)