登録者3万人超のデイワークアプリ「ワクラク」が全国約700店舗の飲食店へ導入

デイワークアプリ「ワクラク」を提供中のWakrakは1月7日、全国約700店舗の飲食店を運営するジーテイg-tasteストへのサービス導入を発表した。ジーテイストはワクラクの活用により、各店舗のアルバイト人員不足の解消を目指す。

ワクラクは面接なしで1日単位で働け、即時に給与が支払われるデイワークサービス。アプリ内で雇用契約締を締結・発行できるのが特徴で、利用者は好きな日に職場に直行すればすぐに働ける。利用するにはアプリをダウンロード後、プロフィールを入力して契約書の発行するだけ。現在、登録者3万人を超えているという。店舗側は、募集日時や内容を専用の管理画面で入力しておくことで、条件に合致する契約者が現れると通知が届き、契約書と顔写真や名前、年齢、プロフィールを確認するだけでいい。

ジーテイストは、焼肉専門店「焼肉屋さかい」などの焼き肉店のほか、回転寿司、大衆居酒屋、イタリアンなどの外食店舗をフランチャイズ事業を手掛けている企業だ。チェーン店を中心に飲食店はシステム化、平準化が進んでおり、初めて働く店舗であっても経験者であれば即戦力として活躍できることが多いだろう。

ワークシェア系サービスとしては昨年20億円の資金調達を発表した時間単位で働けるタイミーもある。人手不足が深刻で黒字閉店する店舗も増えている中、こういったサービスはこれから重宝されそうだ。

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左から、ワンデイワーク代表取締役社長の飯島芳之氏、Wakrak代表取締役の谷口怜央氏

デイワークアプリの「ワクラク」を運営するWakrakは10月25日、三越伊勢丹ホールディングスの子会社ワンデイワークと協業し、同じくデイワークアプリである「ワンデイワーク」を開発し、11月1日よりサービス提供を開始することを発表した。

ワクラクは「1日単位のワーク探し」「面接なしで雇用契約締結」「給与振込申請」が行えるデイワークサービスだ。ワンデイワークは三越伊勢丹ホールディングスが10月に100%子会社として設立した。

TechCrunch JapanではWakrak代表取締役の谷口怜央氏、ならびにワンデイワーク代表取締役社長の飯島芳之氏に、新サービス、そして協業の狙いについて話を聞いた。

ワンデイワークの狙いは百貨店、小売業にける慢性的な人手不足の解消

ワンデイワークいわく、百貨店や小売業は慢性的な人手不足に悩まされている。代表取締役社長の飯島氏によると、アパレルの販売員は結婚や出産を機に、30歳くらいで職場から離れるケースが多い。

派遣社員やパートタイムのメンバーだけでは人手不足問題を解消できなくなりつつあったが、もう一方で、百貨店や小売業のOGやOBの多くはより「柔軟な条件」で勤務することを前提に「再度同じ職場で働きたい」と考えていた。「働きたい意欲を持つ方の力を十分に活用しきれていないという課題があった」と飯島氏は言う。

だが、家庭の事情や育児、家族の介護などを理由に退職してしまった従業員が、再び単日や短時間で働き始めたいと思っても、最適な仕事を見つけるのが難しいという状況が顕在化していた。飯島氏いわく、従業員が復帰する際には「週5勤務」を求められるケースが多く、そのような条件は多くの人たちにとって厳しい。そこで飯島氏が目をつけたのが、「デイワーク」だ。

ワンデイワークでは、単日や短時間で働きたい人をより柔軟に人材確保を行いたい雇用主を繋ぐ。求人検索(求職者募集)、申し込み、契約書締結、給与の受け取り(支払い)などの手続きがアプリ上で完結する。まずは関東近郊で三越伊勢丹が運営する百貨店の店舗や事業所を中心にワンデイワークを導入し、販売経験をもつOGやOBなど「眠っている労働力」を活用する。その後は他の商業施設や小売り業態にも拡大していく予定だ。11月中にはAndroid版ならびにiPhone版のアプリも提供開始される。

飯島氏いわく販売員の約7割が女性。そのため、「家庭の事情や育児、家族の介護などを理由に退職してしまった」女性がワンデイワークのメインターゲットだと思われる。同サービスでは2020年度中に約1万ユーザーの稼働を目指す。

ワンデイワークとの協業、Wakrakの狙いは

Wakrakもデイワークアプリ「ワクラク」を運営しているが、同社にとってワンデイワークとの協業にはどのようなメリットがあるのだろうか。

Wakrak代表取締役の谷口氏は「僕たちには入っていけない業界もある」と話す。だが、ワンデイワークスは三越伊勢丹ホールディングス子会社社のため、「百貨店名の力」がある。そのため、Wakrakがリーチできないエリアへのアプローチをしていただける、というのが協業に至った一番の理由だ。

「僕たちにはWakrakというサービスを広めていくというミッションがある一方、デイワークという働き方も普及させていかなければならない。協業という形で他企業と連携し、対応できる業界を広げていきたい」(谷口氏)。

Wakrakは現在、飲食業界を中心に、物流、小売、アパレル、エンタメ、農業、オフィスワークなど、様々な業界の課題解決している。そして前述の通り、今後はワンデイワークに続く「協業企業」を募集していくことで、業界の幅を広げていく。谷口氏いわく「ユーザーとユーザーのリアルタイムのマッチングはあったものの、法人とユーザーをリアルタイムで繋げるものは今までになかった」ため、デイワークアプリの立ち上げは難しい。だが「僕たちにはそれなりの知見があるため、ゼロイチで作るよりも、僕たちが入り込むほうが初期の立ち上げはしやすいのではないか」と加えた。

また、谷口氏いわく、Wakrakの強みは「どのような人に仕事を表示するのか、またはしないのか」などといった、法人とユーザーを繋げるアルゴリズムの部分。「企業は『安くて優れた人材』が欲しいと考えているが、価格(安さ)で勝負をしてしまっても仕方がない。そのため、どれくらい相性の良い人をお送りできるかというところを技術的な強みとして持っていたい」(谷口氏)。

谷口氏は以前の取材で、資格やスキルが必要となる業界でのワクラクの活用、専門性が必要となる仕事でもワクラクを通して求職できることを目指すと説明し、以下のように述べていた。

「A社で自分が築き上げた価値や役職は、B社に移った瞬間にまた1から積み上げなければならない。だが、アプリやサービスの中に自分の評価が溜まっていくならば、どこで働こうが関係がない。ブルーカラーだけではなくてホワイトカラーも、ありとあらゆる仕事をこのサービスを通して行える、かつ、やりたくないことをやめられる。そのような世界観を僕たちは持っている」(谷口氏)。

そして本日Wakrakとの協業を明かしたワンデイワークの飯島氏も同様に考えている。販売職から培われる専門性の高いスキルは他業種でも活かせるのではないか、という考えだ。

「我々のワンデイワークも含めて、谷口氏が考える『デイワーク』というフィールドに一度戻ってきていただくと、その人の将来がより広がるようにしていきたい、と考えている。我々の販売というフィールドだけではなく、(ワンデイワークのユーザーが)ワクラクが扱っているような案件に繋がっていくように、将来的にはしていきたい」(飯島氏)。

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Wakrak代表取締役 谷口怜央氏

デイワークアプリ「ワクラク」運営のWakrakは11月22日、オプトベンチャーズ、ANRI、ドリームインキュベータを引受先とする第三者割当増資による総額1億円の実施を発表した。調達した資金をもとに同社は導入企業・利用者拡大に向け開発・体制を強化するとともに、現在サービスの中心は東京となっているが地方への展開も実施していく予定だという。

ワクラクは「1日単位のワーク探し」「面接なしで雇用契約締結」「給与振込申請」が行えるデイワークサービスだ。ユーザーは「アプリのダウンロード」「プロフィールの入力」「契約書の発行」の3ステップで仕事が決定できる。要するに、履歴書や面接を受ける必要がない。登録者は学生やフリーター、主婦がメインで、登録者数は2万人を超える。Wakrakのミッションは“いつでも、どこでも、なんでも、好きなことができる世界を作る”こと。そんな風に自由で楽しく働けるワークスタイルを実現できるようなサービスとなっている。給与も最短で翌日振込なのも魅力的だ。

活用している企業は飲食店、ホテル、物流企業、EC企業、IT企業など。Wakrakいわく導入の目的には「即時性」と「コスト削減」などがあげられるという。初期費用や月額費用が一切かからず、Wakrakはユーザーの給与の10%分を求人企業から徴収するのみ。手数料の平均は600円なのでコストカットにつながる。また、ユーザーの大半はリピーターとなり2回3回と同じ企業でワークを行うことから“スポットでの雇用は合わない”という企業も利用しているそうだ。

競合として、人手が足りない飲食店などのお店と暇な時間を有効活用したい人たちをマッチングするサービス「タイミー」などもあるが、月に数千件のワークが行われているというワクラクは今後どのような方向を目指しているのだろうか。Wakrak代表取締役 谷口怜央氏は「次のフェーズはデータを貯めていく段階だ」と話した。

Wakrakは2017年6月に設立された。当時の企業名はSpacelookでサービス名は「Spacework」だった。正式ローンチした2017年9月以降、サービスへの「ニーズがあるかどうかは確信が持てた」と谷口氏は話す。需要が明らかになり、これからは「誰がどこで働いたことがあって、何が得意で不得意だったかなどのデータを作らなければならない」という。これまでのワクラクは簡易なものだったが、データを取る仕組みを構築するために「裏側をしっかりと作り込んだ」そうだ。

「一人が3、4回働いたデータには価値がないと思っている。これが10、20回となってきたときにやっと価値があるものとなる。そのためには仕事の数が必要なので、事業者・ユーザーを増やすことを徹底して行なっている」(谷口氏)

それを経て谷口氏が目指しているのが、資格やスキルが必要となる業界でのワクラクの活用だ。サービス業以外の専門性が必要となる仕事でもワクラクを通して求職できることを目標としている。

「A社で自分が築き上げた価値や役職は、B社に移った瞬間にまた1から積み上げなければならない。だが、アプリやサービスの中に自分の評価が溜まっていくならば、どこで働こうが関係がない。ブルーカラーだけではなくてホワイトカラーも、ありとあらゆる仕事をこのサービスを通して行える、かつ、やりたくないことをやめられる。そのような世界観を僕たちは持っている」(谷口氏)

そんなWakrakは2018年10月30日、01Boosterと愛知県庁が主催の「あいちアクセラレーター」に採択されたと発表している。これを通じて、愛知県内の企業に向けて今後の人手不足解消の新たなサービスとしてワクラクの導入がさらに加速することとなるという。単に愛知県内の飲食店やホテル、清掃会社、物流企業、イベント会社などへ導入を進めるだけでなく、自動車関連技術を有する技術者のデータ登録を実施することも併せて発表している。これは「サービス業以外の領域での展開を検討するための実証実験」なのだと谷口氏は説明した。今後は他の領域でも実証実験を行う予定だ。

取材中、谷口氏は「“やりたくないこと”をやっている人たちが“やりたくないこと”をやめて、“やりたいこと”をできるようにしたい」と話していた。近い将来、専門性が強い仕事に就く人でもより自由に簡単に働ける未来が到来することに期待したい。