伊藤忠テクノロジーベンチャーズが100億円規模の5号ファンド設立、伊藤忠は20億円を出資

ベンチャーキャピタル事業を展開する伊藤忠テクノロジーベンチャーズ(ITV)は5月19日、「テクノロジーベンチャーズ5号投資事業有限責任組合」(5号ファンド)の設立を発表した。ファンドサイズは、同社過去最大規模となる100億円で、親会社の伊藤忠は出資約束金総額の5分の1となる20億円を出資する。

GP、LPの顔ぶれは以下のとおり(五十音順)。

  • GP(無限責任組合員):伊藤忠テクノロジーベンチャーズ
  • LP(有限責任組合員):伊藤忠商事、伊藤忠テクノソリューションズ、KJホールディングス、コネクシオ、センチュリー、独立行政法人中小企業基盤整備機構、ベルシステム24ホールディングス、みずほ証券、三菱UFJ銀行、りそな銀行

ITVは2000年に設立された伊藤忠のコーポレートベンチャーキャピタル。1980年代から伊藤忠が培っていたシリコンバレーを中心とした有力ベンチャーキャピタルとのネットワークやノウハウを生かし、アーリーステージを中心としたスタートアップに対して投資を進めている。2000年設立の1号ファンドから2015年設立の4号ファンドまでの運用総額累計290億円超、累計投資先社数は150社超となっている。国内では、メルカリ、ラクスル、ユーザベースなどへの投資実績もある、

一方の伊藤忠商事は、ITVを含めた広範囲な国内外のスタートアップとのネットワークを生かし、ミドルおよびレイターステージを中心としたスタートアップへの出資および協業を進めていた。具体的には、医療系SaaSを提供するカケハシや、貸付ファンドのオンラインマーケットを運営するファンズへの出資。後払い決済サービスを提供するPaidyや企業のデータ活用を支援するウイングアーク1stは、持分法適用会社化している。

調剤薬局向けクラウド「Musubi」開発のカケハシが26億円調達、伊藤忠やアフラックが株主に加わる

カケハシは10月31日、シリーズBラウンドで第三者割当増資による26億円の資金調達を発表した。引き受け先は既存株主のDNX Venturesやグロービス・キャピタル・パートナーズのほか、新たに伊藤忠商事、電通ベンチャーズ、アフラック・イノベーション・パートナーズ、みずほキャピタルが加わった。今回の資金調達により累計調達額は約37億円となる。そのほか既存の引き受け先は以下のとおり。

  • STRIVE
  • 伊藤忠テクノロジーベンチャーズ
  • 千葉道場2号投資事業有限責任組合
  • Coral Capital(旧500 Startups Japan)
  • SMBCベンチャーキャピタル

カケハシは、調剤薬局向けのクラウドシステム「Musubi」を開発している2016年3月設立のスタートアップ。患者の疾患や年齢、性別、アレルギー、生活習慣、検査値などのデータを基に最適化した服薬指導をサポートする。季節に応じた対応や、過去の処方や薬歴などを参照した指導内容の提示も可能だ。データを入力していくことで各種情報が蓄積され、より高い精度で患者に最適な服薬指導やアドバイスを自動提案してくれる。

Musubiはタブレットを使用するサービスで、服薬指導中に患者と薬剤師が一緒に画面を見ながら、話した内容をタップするだけで薬歴の下書きを自動生成できるのも特徴だ。調剤薬局といえば、医師から出された処方箋を手渡して薬をもらうだけの場所になりがち。通常は「(処方された薬を)ジェネリック医薬品に切り替えますか」「お薬手帳を持っていますか?」ぐらいの会話しか発生しない。

こういった環境にMusubiを導入することで「かかりつけ薬局」としての存在感が増すという。患者にとっては、診察を受ける医療機関はさまざまでも、薬を受け取る調剤薬局を1つに決めておくことで薬歴が集約されるので、調剤薬局で市販薬を購入する際の服薬指導やアドバイスの精度も増すはずだ。小児科や皮膚科などは平日でも混み合っていることが多く待ち時間が長い。深刻な症状を除けば、調剤薬局に相談して解決というケースも増えるだろう。

カケハシによると、今回調達した資金のうちの大半は、Musubi事業の拡大と新規事業の創出に必要な人材に投資するとのこと。同社は2019年2月に大阪に拠点を開設するなど首都圏以外での事業展開を進めている最中だ。

8つのプロペラで空⾶ぶクルマが年内に有⼈⾶⾏試験へ、SkyDriveが15億円調達

SkyDriveは9月30日、第三者割当増資および助成⾦で総額15億円調達したことを発表した。累計調達額は20億円。今回の第三者割当増資の引き受け先には、既存投資家であるDrone FundとZコーポレーションに加え、STRIVEと伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、環境エネルギー投資が加わった。同社は今回調達した資金を、2019年内の有⼈⾶⾏試験に向けた開発に投下していく。また、今回の第三者割当増資のリードインベスターを務めるSTRIVE代表パートナーの堤 達⽣⽒がSkyDriveの社外取締役に就任する。

SkyDriveは、航空機・ドローン・⾃動⾞エンジニアを中⼼して2016年に結成された有志団体CARTIVATORが前身。2018年12⽉に、電動で⾃動操縦と垂直離着陸が可能な無人の空⾶ぶクルマの屋外⾶⾏試験を開始。最近では愛知県・豊⽥市と「新産業創出へ向けた『空⾶ぶクルマ』開発に関する連携協定」を締結し、2019年6⽉に豊⽥市に⾶⾏試験場をオープンしている。同社は、2019年内の有⼈⾶⾏試験のあと、2020年夏のデモフライト、2023年の発売開始、2026年の量産開始を目指している。

同社によると、当初は有志団体として2020年夏のデモフライトを目標に機体を開発していたそうだが、効率よく移動できる日常的な交通手段やエンターテイメントとしての空飛ぶクルマの可能性を感じ、多くの利用者が利用できる未来を目指すために事業や技術開発の加速させるために株式会社化したとのこと。

無⼈試作機での屋内⾶⾏試験

この空飛ぶクルマは、4か所に搭載した8つのプロペラで空を飛び、地上走行には3つのタイヤを使う。サイズは通常の自動車よりひと回り大きく、大人2人が乗車して高度150~300m程度を飛行することを想定しているとのこと。すでに、機体フレームや飛行ユニット、飛行制御の最適化により、無人状態でさまざな形態での安定飛行が可能になっている。

有人飛行試験については、まずは大人1人が乗車することになるという。技術的にはすでに実現可能な段階になっており。現在は機体の安全をより担保するため、モーターやアンプ、フライトコントローラーなどの耐久試験、機体トラブル時の乗員保護の試験などを進めている。

2023年からの一般販売に向けて同社は、既存の航空機レベルの安全性の確保、バッテリーの長寿命化などによる航続距離延長(現時点では20分強)、多くの人が空飛ぶクルマを受け入れてくれる社会受容性の向上、離発着上や飛行経路などのインフラ構築などがカギになるとしている。正式な予定販売価格は発表していないとのことだが、まずは3000万円程度の価格設定になるという。ただし、将来的には量産効果によって自動車レベルに価格を下げることが可能とのこと。

空飛ぶクルマの価格が自動車並みの数百万円に収まり、周辺住民の理解が進んで離発着できる場所が増えれば、移動手段としてだけでなく物流にも大きな変革をもたらすの間違いない。道路行政を主体とした公共事業のあり方も変わるかもしれない。