音声アシスタントなどのシステムにその知識を与える、会話型AIを作っているロンドンのWluperが、130万ドルのシード資金を獲得した。ラウンドをリードしたのは“ディープ・テック”専門のVC IQ Capitalで、これにSeedcamp, Aster, Magic Ponyの協同ファウンダーZehan Wang博士らが参加した。
2016年に創業し、最初はJaguar Land RoverのInMotion Venturesが支援していたWluperの“会話型AI(conversational AI)”は、初めはナビゲーション製品を対象にしていた。同社のAI技術は自称“目標指向の対話(goal-driven dialogue)”と呼ばれ、目標を絞ることにより、従来よりも自然な会話でナビゲーションのさまざまなタスクを支援する。
それを可能にする‘秘密のソース’は、ナビのような音声アシスタントを支えるAIは特定の、狭い、専門的分野のエキスパートになった方が良い仕事ができる、というWluper独自の信念だ。
Wluperの協同ファウンダーHami Bahraynianはこう述べる: “AlexaやSiriのようなインテリジェントなアシスタントも、本当に良いなと感じるのは、それらがユーザーの意図を正しく理解しているときだけだ。しかし実際には、理解していない場合がほとんどだ。それは、音声認識そのものの欠陥ではない。それは、フォーカス(対象、主題、テーマの特定化)を欠いていることと、その種のシステムの共通的な欠陥である論理的判断能力(‘推理’)の欠如だ。彼らはみな、いろんなことをそこそこできるけれども、どれ一つ完全ではない”。
AIが“一般的な”会話能力を持つのは15年か20年以上先と思われるが、そこへ向かうための中途的な目標は、Bahraynianによると、目的を絞った“インテリジェント・エージェント”を作ることだ。
“われわれがやっているのは、まさにそれだ”、と彼は言う。“われわれは、ドメインエキスパート(特定分野の専門家)の会話型インテリジェンスを作っている。それは、一つのことしかできないし、理解しない。でも、たとえば、輸送に関することなら何もかも完璧に知っている”。
この分野特定により、WluperのAIは、ユーザーが言ってることに関する明確な…見当はずれでない…想定ができる。そのため、複雑な質問でも自然に理解する。ひとつのクエリに複数の意図が含まれている場合や、前の質問のフォローアップ質問も理解するので、“本当の”会話ができる、とBahraynianは言う。
さらにまたWluperは、NLPパイプラインの“理解能力”の次に来るべきものとして、マシンの“知識取得能力”に関してR&Dを継続している。会話型AIというパズルが完成するための重要な必須のピースがその能力だ、と同社は考えている。
“自然言語で尋ねられたユーザーのクエリを正しく理解したとしても、適切で有益な情報を正しい場所から取り出して提供することは、それよりもさらに難しい。現在多く使われているルールベースのアプローチでは、応用性がゼロなのでまったくスケールしない”、とBahraynianは付言する。
“この問題を解決するためにわれわれは、従来の手作り的な方法に別れを告げて、マシンの知識取得を最適化するための新しい方法を探している。もっと意味のある結果を返せるためには、定型データと非定型データとの正しいバランスを見つける必要がある”。
そしてWluperのシード資金は、エンジニアとリサーチサイエンティストの増員による、同社の研究開発能力の拡張に充てられる。