Facebookよ、本気なのか?

Facebook はビデオカメラを作っている。同社はそれを家庭に設置して、きょろきょろと落ち着きがないながらも瞬きは一切しない目玉で周囲を見回し、いくつもの耳を持つパネルに向かってユーザーが、愛する家族や友人への個人的な見解を話して欲しいと考えている。

その名はPortal。キッチンのカウンターの上やリビングルームや、友人や家族とおしゃべりをしたい場所ならどこにでも置くことができる。Portalは対象人物が動いても常に画面に収まるように追跡をして、気楽なビデオチャットが続けられるようにしてくれる。背景の雑音もカットされるので、会話がクリアーに聞こえる。気の利いた道具だが、目からウロコというほどではない。それでも便利そうではある。あなたの知っている人は、みなFacebookに登録している。または登録していたか。いずれにせよ、そうなると話が違ってくる。

いつも間が悪いFacebook

多くのユーザーがFacebookの利用を限定または縮小したいと考えている今、Facebookは家庭にその居場所を求めている。Portalは音声で起動するため、つねにキーワード(この場合はHey Portal)に聞き耳を立てている。Amazon Alexaの音声コマンドにも対応する。問題は、Alexaがつねに聞き耳を立てている機能上の性質と、隣の部屋の会話の断片まで聞き取ってしまうという悪い癖のために、すでにかなりの数のユーザーが「気味が悪い」と感じていることだ。Facebookは世界最大のソーシャルグラフを持っているのだろうが、2018年にはFacebbokの利用を抑えようとしている。増やそうとは思っていない。

FacebookはF8でPortalを発表する予定だったのだが、Cambridge Analyticaを始めとする数々のスキャンダルが持ち上がったために中止したという。大量のデータ流出事故の直後にこの製品をリリースしたことから、今出さなければ、これ以上この製品を持ちこたえることができなくなり、葬り去るよりほかになく、暗雲から抜け出すチャンスをしばらく失うことになるからだと読み取れる。FacebookのPortalは、ユーザーが毎日歩き回りながら、互いにつながれるというFacebookの新しい道を切り開くものだ。しかし、当初の出荷予定日から数カ月が経過したが、依然として最悪に間の悪い状態は続いている。

(本文は英語)

この8年間、Facebookは折あるごとに、自分たちはハードウエア企業ではなく今後もそうなるつもりは一切ないと主張してきた。
私は、5年前、あの謎多きメンローパークの記者会見で前から2列めに座っていたときのことを憶えている。記者たちは、ついに伝説のFacebook Phoneが登場するとささやきあっていた。しかし、Mark Zuckerbergが紹介したのはGraph Searchだった。2003年と比べて、市場のタイミングが改善されたかどうか、はっきと述べるのは難しい。プライバシー擁護の問題で、Facebookは警告を受けてきた。それでも、ユーザーはあまり深く考えることなく、日常的にFacebookに出入りしている。Facebook中毒を断ち切った友人は、いまだに異例な存在だ。容赦なく社会的行動に影響を与えるソーシャルメディアの分析が、日常の気楽な会話の話題になることはない。それを話し合っているのは、幻滅した技術系記者だけだ。

Facebookを信じる(か否か)

Onion紙の大見出しを飾るこのタイミングはともかく、Facebookもどうやら自覚しているようで、Portalは「プライバシーとセキュリティーを重視して作られている」と話している。さらに、いくつかの約束も明言している。

「Facebookは、みなさんのPortalによるビデオ通話を聞いたり、見たり、記録したりはしません。Portalでの会話は、あなたとあなたの相手の外に出ることはありません。また、Portalの会話は暗号化されます。そのため、あなたの会話は常に安全が保たれます」

「セキュリティーを高めるために、AI技術を利用したSmart CameraとSmart Soundは、Facebookのサーバーではなく、Portal本体の中で実行されます。Portalのカメラは顔認証を行いません。あなたが誰であるかを特定しません」

「音声で利用する他の機器と同じく、Portalは、あなたがHey Portalと言ったあとの声による命令のみをFacebookのサーバーに送ります。Portalの音声履歴は、Facebook Activity Logでいつでも消去可能です」

まともに見えるが、普通の内容だ。どの製品も、最初に動向を伺っておいて、後になって広告の蛇口を全開にしてきたFacebookのことなので、いつこれが変わるとも知れない。たとえば、Portalのカメラは顔を識別しないが、Facebookには強力な顔認証エンジンがあり、主要製品の境界線が曖昧であることでも知られている。こうした性質は、監視役がいなくなることで、さらに悪い方向に進む恐れがある。

Facebookの信頼は、標準レベルに達していない。このところ失墜した信頼を取り戻すためには、かなりのレベルでのユーザーの信頼を築かなければならない。非現実的な信頼レベルだ。そこで、新たな生きる道へと舵を切ったわけだ。

ハードウエアは難しい。Facebookはハードウエアのメーカーではないし、同社が扱っているOculusが、唯一、製造、マーケティング、そしてセキュリティーという難題に挑戦したソーシャル・アプリ以外の製品、つまりハードウエアだ。2012年、Zuckerbergは、Facebookにとってハードウエアは「いつだって間違った戦略」だと宣言した。その2年後、FacebookはOculusを買収したが、それは、初期のモバイルブームが去った後、船を失った将来のためのプラットフォームを確保しておくのが目的だった。Facebookがハードウエア企業になりたがっているサインではない。

念のため:Facebookの存在理由は、ユーザーから個人情報を抽出することにある。そのため、ビデオチャット、メッセージ、キッチンに馴染む全展望監視システムといった個人生活に密着した製品は、ユーザーのプライバシーと真逆の方向性のビジネスモデルを持つ企業に依存するのがいちばんだ。そうした企業はFacebookだけではない(Googleもだ)が、ユーザーを惑わして過度な信頼を持たせるに値するものとして、Facebookの製品は決して特別ではない。

意識調査

現在、消費者である私たちの力は限られている。Facebook、Apple、Amazon、Google、Microsoftといった一握りの巨大な技術系企業は、表面上は便利な製品を作っている。私たちは、それがどれほど便利か、その便利さと引き換えに、どれだけのプライバシーを提供できるかを決断するようになっている。これは駆け引きだ。嫌な駆け引きだ。

消費者として、それには受け入れるだけの価値がある。いちばん信用ならない企業はどこだろうか。その理由は?

もし、Facebookが、その主力製品(つまりFacebookそのもの)にたしかなセキュリティーを施すことができないとなれば、まったく異質な製品、つまり物理的な製品への実験的な進出も信頼性を失う。22億3000万人のユーザーを抱えるソフトウエア・プラットフォームのセキュリティーを確保することは、非常に難しい。そこへハードウエアを加えれば、今のその心配を複雑化させるだけだ。

安全な選択を行うために、セキュリティーの一部始終を知る必要はない。信用が力になる。自分の感覚を信じることだ。その製品が簡単なテストに合格しなかったなら、その気持を信じて、使うのを止めよう。その前に、キッチンのカウンターに置かないようにしよう。

もし、安全にウェブサイトにログインしたり、ストーリーをシェアできるという信頼感をFacebookが与えてくれないならば、つねにカウンターの上に置かれ、極めて機密性の高いデータを収集できる能力を持つスピーカーを、Facebookが我が家に持ち込むことを許せるはずがない。長くなったが、早い話が、止めておけ、ということだ。信頼すべきではない。もう、みなさんはお気づきだろうが。

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(翻訳:金井哲夫)

Twitterの暴挙に怒りの声続々

Twitterは本日(米国時間6月21日)、「サービスとしての信頼と安全」を提供するスタートアップSmyteの買収を発表した。Twitterプラットフォーム上での、いじめ、嫌がらせ、スパム、そしてセキュリティに関する問題により効果的なアプローチを行うことが目的だ。しかし同社はまた、これまでSmyteが提供してきたAPIへのアクセスを、警告なしに即座にシャットダウンした。このためSmyteの既存の顧客たちは新しいサービスに移行する時間をとることができなかった。

この変更により、Smyteの既存顧客たちは立ち往生し、彼ら自身のプラットフォームの安全性に関わる、業務上の問題を抱え込むことになった。

言うまでもなく、多くの人たちがこの状況に満足しておらず、その不満をTwitterに向けて投げかけている。

Smyteのウェブサイトによれば、その顧客には、Indiegogo、GoFundMe、npm、Musical.ly、TaskRabbit、Meetup、OLX、ThredUp、YouNow、99 Designs、Carousell、Zendeskなどが含まれている。こうした有名ブランドたちが、Smyteの機能セットをさまざまな方法で利用して、不正、いじめ、ハラスメント、詐欺、迷惑メール、その他のセキュリティ問題に対処していたのだ。

以前Twitterは、TechCrunchに対して、Smyteの既存顧客に対するビジネスは、徐々に終わらせて行くと説明していた。しかし実際に行われたことは、買収を発表し、実質的にSmyteを停止させ、皆を窮地に追い込むことだった。

影響を受けた人たちからの報告によれば、Smyteはクライアントにほとんど警告することなく、また準備する時間も与えずに、APIへのアクセスを無効にしたという。顧客たちが電話を受けた直後に ―― バーン ―― サービスが消滅したのだ。複数年にわたる契約を結んでいた顧客も存在した。

そして何度も繰り返して言うが、Smyteは虐待や不正を防止するサービスを提供するプロバイダーであり、ビジネスを一晩で中止してしまうようなものとは考えられていなかった。

npmの場合には、これは一部業務停止につながっている。

Twitterはコメントを拒否しているが、影響を受けたSmyteの顧客たちに電話をかけて、新しいサービスプロバイダーへの橋渡しを始めていることがわかった。

このスタートアップがTwitterに買収されることで、既存の顧客に対して打撃を与えたことは、どちらの会社にとっても良い影響を与えていない。特にTwitterが約束した今後の「信頼と安全」を考えると、これは皮肉と言う他はない。

信頼だって?

一体どんな信頼を提供するつもりやら?

 

(訳注:この記事の原題は”Twitter ‘smytes’ customers”というものだが、これは「打撃を与える」という意味の”smite”と会社名の”Smyte”をかけたもの)

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(翻訳:sako)