「DELISH KITCHEN」提供のエブリーが約20.6億円を調達、累計調達額は54.3億円に

レシピ動画メディア「DELISH KITCHEN」など複数の動画メディアを展開するエブリーは12月28日、WiL、伊藤忠商事、GMO VenturePartners、Ad Hack Venturesおよび既存株主であるDCM Venturesを引受先とした第三者割当増資により、約20.6億円を調達したことを明らかにした。

同社は2015年の9月創業。2016年6月に約6.6億円、2017年3月に約27億円を調達。今回の調達と合わせて累計の調達額は54.3億円になるという。これまでグロービス・キャピタル・パートナーズ、DBJキャピタル、SBIインベストメント、SMBCベンチャーキャピタル、グローバル・ブレイン、INTAGE Open Innovation Fund、SEGNEL VenturesなどのVCに加え、エウレカ共同創業者の赤坂優氏など複数の個人投資家が出資している。

エブリーではDELISH KITCHENのほか、ライフスタイル動画メディア「KALOS」、ママ向け動画メディア「MAMA DAYS」、ニュース動画メディア「Timeline」という4つのサービスを展開。同社では今回の資金調達を踏まえて、さらなる事業拡大に取り組む。

特にDELISH KITCHENは現在レシピ動画メディア市場を牽引するサービスのひとつに成長している。2016年12月のアプリリースから半年後の2017年5月にには600万DL、同年11月には900万DLを突破。レシピ動画の本数は1万本を超え、アプリおよびSNSアカウントでの動画再生数は月間で5億2000万回以上だという(11月時点)。DELISH KITCHENの詳細については11月に公開されたインフォグラフィックに詳しい。

DELISH KITCHENでは2018年1月末から人気雑誌や書籍、料理研究家によるプレミアムレシピの掲載を開始。出版社や料理研究家とのレシピの共同開発に加えて広告パッケージ展開にも取り組む方針だ。

レシピ動画についてはdelyが提供する「kurashiru(クラシル)」が12月に1000万DLを突破したほか、レシピサイトの雄であるクックパッドも12月から料理動画事業を本格化することを発表。料理動画数No.1を目指し、代官山に料理動画の撮影スタジオ「cookpad studio」をオープンしている。

「今までにないカルチャーの届け方を発明したい」インスタストーリーメディア「lute」が8000万円を調達

「インスタ映え」が2017年の流行語大賞候補になるほど、日本国内でも知名度が高まり多くのユーザーを抱えるInstagram。中でも24時間で投稿が消えるStories(ストーリー機能)は若い世代を中心によく活用されている。

そんなInstagram Storiesを使って様々な短尺動画コンテンツを配信しているのが、カルチャー系メディア「lute」だ。同サービスを提供するluteは11月17日、gumi ventures、Candee、allfuzおよび個人投資家から総額8000万円を調達したことを明らかにした。

luteは分散型の動画メディアとして2016年にβ版をリリース。ライフハッカー編集部を経てエイベックス・デジタルに入社した五十嵐弘彦氏が、社内の新規事業として立ち上げたのが始まりだ。もともとはアーティストのMVやライブ映像、ドキュメンタリーといった動画をYouTubeを中心に展開していた。

そこから主戦場をInstagramに移し、2017年8月にInstagram Storiesメディアとして正式にスタート。同時期に独立する形でluteを設立、五十嵐氏が代表取締役社長に就任している。

「デジタルネイティブ世代は、MacBookなどPCを持ってない人も多くiPhoneで動画コンテンツを視聴する。そのような世代で特にカルチャー系の情報に関心が高いユーザーが集まっているのがInstagram Storiesだと考えた」(五十嵐氏)

luteで配信されるコンテンツには、アーティストが影響を受けた映画やMVなどの作品をバイオグラフィーと重ねながらプレゼン形式で紹介する「マイベスト」や、長尺のインタビューの中から印象的な一言をピックアップした短尺動画を「インタビュー」などがある。

「情報過多の社会においては、若い人達が1つのコンテンツに対して使ってくれる時間も限られる。luteのミッションは素晴らしいカルチャーのエッセンスを短時間に凝縮して届けること」(五十嵐氏)

動画自体は短尺ですぐに視聴できるものだが、スワイプアップ機能を使って商品ページや長尺の本編インタビューへ誘引するなど、Storiesの特徴を踏まえてコンテンツの見せ方を工夫している点は興味深い。先日Instagramでハッシュタグをフォローできる機能についても紹介したが、配信先のプラットフォーム自体が日々進化している。五十嵐氏の話では、新しい機能も活用しながら今後より楽しいコンテンツを作っていきたいということだ。

「人気を集めるコンテンツは動画というよりも雑誌の感覚に近いものが多いなど、3ヶ月取り組んできた中でわかったことも多い。Storiesはシンプルな設計だが、その中でユーザーと連動して楽しめるようなコンテンツや今までにないカルチャーの届け方を発明したい」(五十嵐氏)

また現在luteではカルチャーメディアに加えて、マネージメント事業や受託事業も手がけている。「エンタメ業界はビジネスモデルの転換期を迎えている。(複数事業を連携させながら)アーティストなどが稼げるビジネスモデルを作っていく」(五十嵐氏)

ダイエット特化の分散型メディア「Lifmo」、運営元が5000万円調達

FacebookやInstagramで1分の料理動画をよく見かけるようになったが、Lifmo(リフモ)は同じ分散型メディアでも女性向けのダイエット動画を手がけている。本日Lifmoを運営するワンダーナッツは総額5000万円の第三者割当増資の実施を発表した。引受先はANRI、Skyland Ventures、エンジェル投資家らだ。

Lifmoはパーソナルトレーナーが監修しているダイエットに適した体幹強化エクササイズやトレーニング動画を制作しFacebookInstagramTwitterで配信している。今月にはLifmoのiOSアプリもリリース予定だ。

ワンダーナッツは中山善貴氏が2015年12月に地元である三重県で創業した。創業当初はブログ運営やソーシャルマーケティングを行っていたが、その後東京に来て女性向けダイエットの分散動画メディアを本格的に展開することに決めたという。

サービス開発にあたっては中山氏自身がPCユーザーでなかったこともあり、当初からスマホを軸としたサービスを考えていたという。

「起業しようと思うまでパソコンは持っていませんでした。周りの友人もパソコンをほとんど持っていないんですよ。みんなどうやってスマホを使っているかを考えた時に、それはアプリやソーシャルだと思い、そこを軸にサービスを考えました」。

ダイエット動画にしようと決めたのは、自身もダイエットをした経験があったからと話す。中山氏はパーソナルトレーナーの指導を受け、1ヶ月で8キログラムの体重減を達成した。ただ、パーソナルトレーナーの指導を受けるのに、1ヶ月で10万円ほどかかった。誰でも手頃にパーソナルトレーナーと同じ指導を受けられないかと考え、Lifmoを開発したという。

最近TwitterやInstagramでダイエット専用アカウントを作って、ダイエット仲間とダイエットに役立つ情報や動画をシェアしているユーザーも多いと中山氏は説明する。1人だと挫折してしまいやすいが、SNSでつながっているユーザー同士で情報交換をすることで、ダイエットを続けるモチベーション維持になっているという。Lifmoはそうしたダイエットをしているユーザーの間でもシェアされ、現在の月間総再生数は100万回以上になったそうだ。

今回調達した資金は、開発とマーケティングに充てるという。マネタイズに関してはアプリ内課金、あるいはプロテインやダンベルといったダイエット用品が入ったパッケージを提供するなどの方法を検討していると中山氏は説明している。

分散型料理動画メディア「もぐー」運営のスタートアウツ、億単位の資金調達

エブリーの「DELISH KITCHEN」、delyの「Kurashiru Food」、そして7月にローンチしたBuzzFeedの「Tasty Japan」など、この数カ月でなにかと話題を振りまいている分散型の料理動画メディア。今回もそんな分散型動画メディアを運営するスタートアップの資金調達発表のニュースだ。分散型動画メディア「もぐー」を運営するスタートアウツは7月29日、環境エネルギー投資、アドウェイズ、みずほキャピタル、山田進太郎氏(メルカリ代表取締役社長)、East Venturesを引受先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額や出資比率は非公開。ただし関係者によると、調達額は数億円規模と見られる。

バイラルメディアからのピボット

スタートアウツ代表取締役の板本拓也氏

スタートアウツ代表取締役の板本拓也氏

スタートアウツは2013年の設立。代表取締役の板本拓也氏は「中学生の頃から起業をしたいという思いがあった」と語る。大阪大学の学生だった2013年の春、Twitterを通じてEast Ventures(EV)パートナーの衛藤バタラ氏と交流したことを契機に、いよいよ起業することになる。

「そこから上京して、シェアハウスで生活しつつサービスの開発を始めました」(板本氏)

会社を設立したのは2013年3月。当時、East Venturesの出資先の多くは六本木一丁目のとあるビルに集まっていた。メルカリ、BASE、CAMPFIREなどなど。創業期の各社を横目に見つつ1人で開発を続けた。

いくつかサービスを立ち上げてはピボットしたが、2013年12月には動画のバイラルメディア「Whats」をローンチした。サービスを1年運営してユーザー数は伸びていたが、ビジネスとしての成功は難しい状況だった。次のプランを考える中でたどり着いたのが分散型の料理動画メディア、もぐーだった。

「もともと動画まわりのビジネスに興味があったんですが、Whatsではコンテンツを自社で持っていいなかったし、メディアのコンセプトも薄かった。これがはっきりしないとユーザーが付いて来ないことに気付いていませんでした」

「ただ個人的な思いとして、コンシューマー向けのサービスしかやりたくなかった。例えば人々の生活のベースになるようなもの。料理や食ならば、普通は1日3回接触する、『ジャンル自体』にファンの居る領域だと考えました」

ターゲットは主婦層、今後はリアルイベントも

スタートアウツでは現在、Facebookのほか、TwitterやInstagram、YouTubeでそれぞれ1日2本程度、プラットフォームごとに最適な長さに編集(例えばTwitterは尺短め、Facebookは長めだそう)した動画を配信している。動画で重視しているのは「動画を観るだけで料理が作れるかどうか」だという。「エンターテインメントとしてすごい動画もあります。でももぐーのターゲットは実際に料理を作る主婦です」(板本氏)

競合サービス同様、すでにクライアント企業とタイアップ動画の制作にも取り組んでいる。「価格設定は競合よりも安価。今はマネタイズのフェーズというよりは、付き合うクライアントを増やして、ニーズを聞く機会を作るフェーズ」(板本氏)。また競合差別化施策の一環として、料理教室を開催したりもしている。今後は動画制作だけでなく、こういったリアルイベントなども行っていく予定だ。