T-MobileとSprintの合併を司法省が承認、衛星放送のDishが携帯事業に参入へ

米国時間7月26日、米司法省はT-Mobile(Tモバイル)とSprint(スプリント)の超大型合併を承認した。この合併により加入者数で米国で第3位と第4位のモバイルキャリアが単一の会社となる。T-Mobileは260億ドル(約2兆8255億円)をSprintに支払う。

反トラスト法をクリアするため、SprintがBoost Mobileなどのプリペイド携帯事業をDish Networkに売却することが合併の条件となる。この条件に基づき、900万人のプリペイド携帯のユーザーはDishに移るが、向こう7年間はT-Mobile、Sprintの携帯網にアクセスできる。

TechCrunchはこの4月にT-MobileとSprintが合併で最終合意したが、米政府の承認が課題と報じている。T-MobileはドイツのDeutsche Telekom(ドイツテレコム)、Sprintは日本のソフトバンクのそれぞれ子会社だ。

この合併は両社間で合意をみていたが、規制当局による審査に時間がかかっていた。これはAT&T、Verizon(ベライゾン)と合併後の3社が米国の携帯電話加入者の95%を占めることになるからだ。先月、ニューヨーク州、カリフォルニア州の司法長官を代表としていくつかの州の司法省が合併を承認しないうよう求めて訴訟を起こしていた。訴状によれば、この合併は競争を制限することにより料金の上昇を招き、長期的にみて消費者の利益を脅かすからだという。ニューヨーク州司法長官のLetitia James(レティーシャ・ジェームス)氏はTechCrunchに対して次のよう述べた。

合併の条件としてT-Mobileが約束する(プリペイド携帯などの事業をDishに移管するという)措置は、そもそも市場に健全な競争がなければ無意味となる。競争を促進するという口実のもとに政府が恣意的に第4位のキャリアを創設しようとすることに我々は深刻な懸念を抱いている。これは消費者にもテクノロジーのイノベーションにとっても有害な結果をもたらす。

カリフォルニア州司法長官の広報担当者はTechCrunchに対して「我々は引き続き合併条件を検討している」と述べた。州司法省による訴訟は以前として合併を妨げるハードルになり得る。Consumer Reportsの上級政策担当弁護士であるGeorge Slover(ジョージ・スローバー)氏は次のように批判した。

報じられている合併は実績ある競争者であるSprintを消滅させ、携帯事業者としてまったく実績のない新参のDishを4位の事業者にしようとするものだ。Dishは衛星放送事業者であり、独自に携帯を構築、運用した経験はまったくないため、ゼロからのスタートなる。携帯電話事業が寡占とならないことを保証するためにDishの参入が必要とされたわけだが、同社が携帯電話事業で現在Sprintが占めている地位に到達するまでには(到達できるとしても)何年もかかるだろう。

一方、合併推進派は現在の米国の携帯電話事業はVerizon and AT&Tが圧倒的に優勢であり、合併はT-Mobile、Sprinがこれら上位2社との競争を助けるものだとしている。合併が実施されればT-Mobile(合併後はT-Mobileが存続会社)は米国において8000万人のユーザーを持つことなり、それぞれ1億人以上の契約者をもつVerizon、AT&Tに迫るサイズとなる。T-MobileとSprintはそれぞれAT&T、Verizonに対する競争力の強化と巨大な建設費を要する5Gネットワークの実現には両社の合併が必要であると主張していた。司法省はこの主張を認めたかたちだ。

司法省反トラスト法部門のトップであるMakan Delrahim(マカン・デラヒム)氏はWall Street Journalに対し次のように述べた

この合併とこれに付随する取り決めにより、現在利用されていないか、利用が著しく不十分である電波帯域を米国の消費者が必要とする高品位な5Gネットワーク建設のために活用することできるようになる。

T-Mobileは合併の意思を固めた後、実現に向けて何年も非常にアグレッシブなロビー活動を行ってきた。特にCEOのJohn Legere(ジョン・レジャー)氏を始めとする経営陣は4月以降、ワシントンDCのトランプ・インターナショナル・ホテルで滞在費など19万5000ドルを使っている。

【Japan編集部注】TechCrunchは、Verizonに属するウェブメディアだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook