皮膚に貼り付け可能な極薄スキンディスプレイをフルカラー化、東京大学と大日本印刷が共同研究

東京大学 染谷隆夫博士 大日本印刷 スキンディスプレイ

東京大学染谷隆夫博士(大学院工学系研究科長・教授)の研究チームと大日本印刷(DNP)は、独自の伸縮性ハイブリッド電子実装技術を進化させた、薄型で伸縮自在なフルカラーのスキンディスプレイの製造に成功したと発表した

同研究成果は、東京大学大学院工学系研究科とDNP研究開発センターの共同研究によるもの。フルカラースキンディスプレイは、皮膚上に貼り付けた状態で外部から送られた画像メッセージを表示可能。曲面形状に追従できる独自の伸縮性ハイブリッド電子実装技術で、12×12個(画素数144)のカラーLEDと伸縮性配線をゴムシートに実装し、フルカラー化に成功。9000色以上の色表現が可能となった。

また、表示部・駆動回路・BLE(Bluetooth Low Energy)通信回路・電源を一体化。表示部の駆動電圧は3.7Vで、表示スピードは60Hz、最大消費電力は平均100mW(ミリワット)となっている。

制御回路とバッテリーは表示エリアの外周近傍に実装しており、配線ケーブルが不要。手の甲に貼り付けたスキンディスプレイに外部からBLE通信で表示内容を制御できる。

東京大学 染谷隆夫博士 大日本印刷 スキンディスプレイ

染谷隆夫博士の研究チームとDNPは、伸縮性を備え、曲面に自由に追従できる電子回路基板を目指して研究開発を進めている。

同チーム独自の伸縮性ハイブリッド電子実装技術は、柔軟な基材を曲げ伸ばししても抵抗値が変わらない電極配線が可能。さらに、剛直な部品を実装しても伸縮時に断線しにくい工夫を盛り込んでいるという。信頼性を向上させた結果、比較的大きな部品を使っても壊れにくい回路が作れるようになった。

この実装技術の有効性の実証を兼ねて開発したスキンディスプレイには、12×12個(画素数144)の1.5mm角サイズのフルカラーLEDを薄いゴムシートに2.5mmの等間隔で埋め込んでる。全体の厚みは約2mmで、130%までの伸縮を繰り返しても電気的・機械的特性が損なわれない。薄型・軽量で伸縮自在なため、皮膚に直接貼り付けても人の動きを妨げることがなく、装着時の負担が大幅に低減されるとしている。

曲がるだけのディスプレイはすでに商品化されているが、伸び縮みするディスプレイや皮膚に貼り付ける可能なレベルの極薄ディスプレイは、研究開発段階の試作品が数件報告されているだけという。同チームは、2009年5月に世界初となる伸び縮みする16×16個の有機ELディスプレイ、2016年8月に厚さが1μm(マイクロメートル)の極薄の有機EL素子で7セグメントのディスプレイ、2018年2月には、同研究の先駆けとなる単色スキンディスプレイを発表した。

同研究では、発光素子として無機半導体を発光材料としたLEDと独自の伸縮性ハイブリット電子実装技術を駆使することで、従来の伸縮性ディスプレイよりも圧倒的な大気安定性と機械的耐久性を同時に達成。伸縮自在なディスプレイを皮膚にフィットさせ、かつ人の動きに追従させた状態で、数百個のLEDが1画素の故障もなくフルカラー動画を表示できたのは世界初としている。

DNPは、間もなくスキンエレクトロニクスの実用化検証を開始するという。

大日本印刷が出資、ブロックチェーン活用によるデジタル作品の売買技術を持つBlockPunk

大日本印刷は2月19日、シンガポールを拠点とするスタートアップ「BlockPunk」(ブロックパンク)と戦略パートナーとしての提携を発表した。シンガポール拠点のシードステージベンチャーである「SeedPlus」(シードプラス)が主体となり、BlockPunkに130万シンガポールドル(約1億円)を投資。大日本印刷は、SGInnovate, Hustle Fund、Entrepreneur Firstともに、このラウンドに加わる。

BlockPunkは、デジタル作品をオンラインで売買できるプラットフォームを開発。改ざんが事実上不可能なブロックチェーンを使用することで、作品の希少性、真贋性を保証し、二次販売を可能にするという。同社は、Netflixでアニメ部門を統括していたJulian Lai-Hung(ジュリアン・ライハン)氏と、イエール大学でコンピューターサイエンスの博士号を取得後、Linkedinでプロダクトマネージャーを勤めていたJatin Shah(ジャティン・シャー)氏の2人が創業した。

大日本印刷はプレスリリースで「日本政府はブロックチェーンをクリエイターの権利を保護するための重要な技術だと認識しており、日本のアニメやアート、エンターテイメント業界に適用するために、BlockPunkと協力していくことを楽しみにしています」とコメントしている。

容易にコピーできてしまうため、写真はもちろん、アニメやイラストなどデジタル作品の著作権保護は非常に難しい。自分が撮影した写真や描いたイラストが無断コピーされ、いつのまにか第三者が販売している、フリー素材として拡散しているという問題は後を絶たない。日本の最大手印刷会社である大日本印刷がBlockPunkの戦略パートナーとなることによって、電子書籍を含むデジタル作品の強固な著作権保護の仕組みが早急に構築されることを期待したい。