たとえ盗まれても、バッテリーが切れても本人以外はビデオ撮影を中止できないParachuteの強力新機能

モバイル機器の安全を守るアプリParachute(パラシュート)で米国時間6月1日から利用可能になった新機能は、権限のない人間がiPhoneを奪ってライブストリーミング撮影を止めようとしても、止められなくするというものだ。スマートフォンの電源を切ろうとしても撮影は止まらない。George Floyd(ジョージ・フロイド)氏への警察の蛮行に対する、そして米国の司法制度にある組織的な人種差別主義に対する抗議活動が国中に広がる中でのタイムリーなアップデートだ。

フロイド氏殺害の目撃者が撮影した動画が、デモや抗議活動の引き金となった。その動画は、この事件を実証する主要な資料として、ずっと貢献し続けている。

Parachuteのアプリは、TechCrunch Disrupt 2015で最初にローンチされた際(未訳記事)には「Witness」(ウィットネス)と呼ばれ、スマホ世代の人たちの間では、長い間、緊急通報ボタンとして重宝されていた。問題に遭遇したときに緊急連絡先に警告を発することを目的に開発されたアプリで、通話、メッセージ、電子メールの送信と同時に、ライブ動画、音声、現在位置も今いる場所から直接発信できる。

またこのアプリには、ライブ動画を撮っていることを知られないよう画面を黒くして、こっそり撮影できるオプションもある。さらにParachuteは事件の撮影チャンスを高めるために、表裏両方のカメラで同時に撮影することもできる。動画はスマートフォンからParachuteのプラットフォームに送られ、スマートフォンからは撮影の証拠が消去される。緊急連絡先にリンクを送れることに加え、後に電子メールで直接送られてくるそのリンクから動画をダウンロードすることも可能だ。

しかし、ユニークな機能とは裏腹にローンチから数年間、このアプリの人気は限定的だった。アプリ情報の調査会社Sensor Tower(センサー・タワー)のデータによれば、米国のアプリストアでのParachuteのダウンロード数は10万件に達していないという。Parachuteはユーザー数の公表を拒んでいるが、この1週間は米国と香港で大きな動きを見せている。

「Superlock」(スーパーロック)という名のこの新機能の導入は、Parachuteの動画記録機能に人々の興味を取り戻すための試みでもある。

Superlockは、Apple(アップル)のGuided Access(アクセスガイド)と連携して機能する。アクセスガイドは、アプリ内のチュートリアルで説明されているが、次のように設定する。iPhoneの「設定」から「アクセシビリティ」の中の「アクセスガイド」を開き、そのオプションを「オン」に切り替える。

その後、アプリに戻って電源ボタンをトリプルクリックし、画面右上の「スタート」ボタンをタップして6桁のパスコードを打ち込む。このパスコードは、今後、撮影を止めたいときに必要になる。再び電源ボタンをトリプルクリックし、先ほど設定したパスコードを入力して、画面左上の「終了」ボタンをタップする。

設定が完了すれば、電源ボタンをトリプルクリックするだけで、ParachuteをいつでもSuperlockモードに切り替えられる。電源ボタンをトリプルクリックしてパスコードを入力しない限り、動画撮影は継続され、iPhoneはロックされる。

この手順では、Parachuteで事件の撮影中に通常表示される停止用の「X」ボタンは使わない。誰かがiPhoneを取り上げて撮影を止めてしまうのを防ぐためだ。

「iPhoneのバッテリーが切れたり、壊れたり、強制再起動された場合でも、Superlockは再起動後も撮影を継続するように設定できる」とParachuteは説明している。またSuperlockは、動画のプレビューを不能にする機能と組み合わせることも可能なため、誰にも知られずに撮影ができる。

Parachuteではまた「バックグラウンドで走らせておいて、他のアプリに切り替えて使うこともできる」と同社は説明する。

権限のない人間がパスコードを推測しようとしても、誤った数字の組み合わせを短時間に何度も繰り返すと、一定時間ロックされるようになり、間違えるごとにその時間が延びていく機構が働く。これは、iPhoneで間違ったパスコードを何度も試せないように一定時間操作をロックする機能によく似ている。

Parachuteのビジネスモデルでは、事件動画の保存期間は撮影から3カ月後に切れるようになっている。デバイス、連絡先、警告、事件、ストレージの上限がないフルコースの利用料は月額9.99ドル(約1000円)。月額2.99ドル(約320円)のお得な「ライト」コースもある。

新機能は本日からiPhoneで利用できる。

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(翻訳:金井哲夫)

インド政府が再びインターネットを遮断、今回はアッサム州とメガラヤ州

インドでは、12月13日からアッサム州とメガラヤ州でインターネットが遮断され、日本時間12月14日午前3時で36時間に及んでいる。物議をかもしている広範な市民に関わる新しい法律への抗議を抑制するのが目的だ。

320万人が暮らすアッサム州とメガラヤ州で行われている今回のインターネットの遮断措置は、ウェブ上での人々のコミュニケーションや情報へのアクセスを阻止するという、世界のさまざまな政府に広がる憂慮すべき傾向の最新の事例だ。

しかもインドは、6億5000万人の利用者を擁する世界第2位のインターネット市場でありながら、世界のどこよりも長く遮断措置を続けている。

12月12日、インドのラム・ナト・コビンド大統領は、前日に議会を通過した市民権修正法案を承認した。この法律は、自国のイスラム教少数派ではなく、3つの隣国(アフガニスタン、パキスタン、バングラデッシュ)からの非イスラム教少数派移民に市民権取得の道を開くというもの。

この法律が可決されるや、以前から3つの隣国からの移民に悩まされてきたインド北東部のアッサムとメガラヤの2つの州で、街頭抗議行動が巻き起こった。メガラヤ州ではメッセージサービスも停止されている。

政府の市民権州政法案に反対するデモ隊が放火した車両の残骸ごしに見える兵士たち。2019年12月13日、グワーハーティーにて(写真:BIJU BORO/AFP via Getty Images)

この事態を沈めるために、インド政府は軍隊を送り込み、インターネットを遮断した。こうした措置は、過去に国連から人権侵害と断定されている。

アッサム州の当局者は、「Facebook、WhatsApp、Twitter、YouTubeなどのソーシャルメディア・プラットフォームは風評の拡散、感情を煽る写真、動画、文章などの情報の伝播に利用されるめに、法と秩序を乱す恐れがある」と話している。今のところ、この2つの州でインターネットがいつ再開されるかは、公式には発表されていない。

メディアの人間同士が情報交換をできなくする、あるいはニュースや情報への接触を禁ずる施策は、一部の国では状態化しているものの、その数はインドの足下にも及ばない。

2018年に国家によるインターネットの遮断措置が行われた回数

デジタル人権団体Access Now(アクセス・ナウ)は、今年の初めに、2018年に記録されたインターネット遮断件数196件のうち、インドだけで134件を占めると伝えた。ニューデリーに本拠地を置くデジタル権利擁護団体Software Law and Freedom Centre(ソフトウェアの法と自由センター)が運営するサービスInternet Shutdowns(インターネット・シャットダウンズ)によれば、今年はインドで91件のインターネット遮断措置が記録されているという。

ジャンムーとカシミールでは、8月にインド政府が大半のイスラム教徒自治区の自治権を剥奪した後、インターネットを133日間にわたり遮断した。しかし、いまだ一部しか再開されていない

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(翻訳:金井哲夫)