田んぼの自動抑草ロボットを開発する有機米デザインが2億円を調達し実用化を加速

田んぼの自動抑草ロボットを開発する有機米デザインが2億円を調達し実用化を加速

山形県を拠点とする「地方都市の課題を希望に変える街づくり会社」ヤマタガデザインのグループ会社、有機米デザイン(本社は東京都小金井市)は5月25日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による2億円の資金調達を行ったと発表した。引受先はTDK。この増資により資本金などの合計は、資本準備金1億3908万円を含め3億1626万円となった。

有機米デザインは、田んぼの除草の手間を最小化するための自動抑草ロボットを開発するなど、有機米栽培ノウハウの確立に向けた研究開発を行う企業。2012年、元日産自動車のエンジニア2人を中心に始まった自動抑草ロボットの開発は、ヤマガタデザインに母体が移行し、やがて実用化を促進するため、2019年にヤマガタデザインの100%出資により有機米デザインとして独立した。同時に東京農工大学との共同研究契約を締結し、2020年には11都県の農家と連携して実験を重ねた。

自動抑草ロボットは、代掻き(しろかき。田んぼに水を張り土を攪拌して平らにならす作業)の後の田んぼを自律航行して、水をかき混ぜ泥を巻き上げることで水中に差し込む光をさえぎり、水面下の雑草の成長を抑制するというもの。除草剤を使用しない米の有機栽培は、慣行農法にくらべて10アールあたりの粗収入が2倍近くになる一方で、労力が大きく増える。特に除草にかかる労働時間は5倍に上るといわれているため、自動化への期待が高まっているとのこと。これまでの実験で自動抑草効果が確認され、同社では量産化に向けたさらなる改良を加えているところだ。現在は、条件の異なる全国17都府県に75台のロボットを投入し、実証実験を行っている。

TDKとは、2019年12月から協業の可能性を検討し始め、2020年4月から実証実験などで連携してきた。今後はTDKのバッテリーマネージメント技術や量産技術などの開発面でサポートを受け、数年以内の実用化、事業化を目指すという。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:農業 / アグリテック(用語)資金調達(用語)食品(用語)有機米デザイン(企業)ヤマタガデザイン(企業)日本(国・地域)

農場は工場ではない

【編集部注】著者のGunnar LovelaceはThrive Marketの創業者である。

今日の食糧のほとんどは工業化農業(industrial agriculture)によって生産されている。それが問題だ。

工業化された農業は、本質的に農場を工場へと転換する。ここで例えば遺伝子組み換え農作物(トウモロコシ、大豆、小麦)や家畜(牛、鶏、豚肉)などを機械的生産手段で作るためには、化学肥料、農薬、大量の灌漑用水、そして石油が必要とされる。

こうしたこと全てが、見えない危険なコストを孕む、石油と農薬に大きく依存した、持続可能性がなく時代遅れのシステムへとつながる。工業化農業は私たちの国土の表土を急速に損ないつつある。専門家たちは、私たちがより持続可能な農作手段に移行しなければ、収穫量が6割以下になるだろうと警告している。

また、農地に対して農薬を継続的に使用することで、土壌、水系、そして私たちが呼吸する空気が汚染されていく。最近の研究によれば、93%のアメリカ人がグリホサートに対する陽性反応を示しているが、この物質は最も利用量の多い除草剤であり、WHOによって発癌の可能性ありとして分類されているものだ。

しかし、これがいつまでもそうあらねばならないというわけではない。技術に裏打ちされた有機農法への移行によって、私たちの表土は守られ、合成物質に対する依存は減らされ、今日排出されているCO2の全量を補足することさえ可能なのだ。

「私たちが食べる方法が、世界がどのように使われるかに対して大きな影響を与えます」

Wendell Berry

ここに基本に立ち返り、そしてより良くして行くために役立つ3つの提案がある。

有機農法

工業化農業の主な推進要因は、1エーカーあたりより多くの食糧を栽培することによって農場をより生産的にすることだ。これを実現するために、農業従事者たちは化学合成品と機械化に頼るだけでなく、失敗する確率が少なく、多量の農薬に耐えることができる遺伝子組み換え(GM)種子を使用する。

一般に有機農法は、化学合成品やGM種子の助けを借りないため、工業化された農家と同等の収穫高を挙げることはできないものと誤解されている。これは事実ではない。近年明らかになった長期的な研究によれば、様々な作物に関して、工業的農法と有機的農法の間には収穫量の差がないことがわかっただけでなく。平均的には、有機農法を用いた作物は従来の作物に比べて2倍の収益をもたらしていることもわかったのだ。

さらに、遺伝子組換え作物は、非常に高レベルの有毒除草剤、特にモンサントの除草剤Roundupの有効成分であるグリホサートに耐えるようにデザインされている。過去20年間に約118万トン以上のグリホサートが米国内の作物に散布されている。GM作物(米国で栽培された大豆の94%ならびにトウモロコシの89%)は高レベルのグリホサートに耐えることができるため、植物はこの有毒な化学物質を吸収し、食糧、水系、空気へと拡散し、最終的には私たちの体に入ることになる。

現代的な有機農法への転換は、農家により多くの利益をもたらすだけでなく、遺伝子組み換えに無縁で栄養的にも優れた作物を生み出す。これは私たちの環境に対して大いなる恩恵を与えるものだ。

Farmers Business Networkは、農業専門家たちのための、専門的なソーシャル・ネットワーク兼データ共有プラットフォームだ。

効率的なエネルギーと水の利用

有機農法と21世紀の技術を組み合わせることで得られる、大きな利点がある。例えば太陽電池で駆動される無線タグを使用するような革新的な灌漑技術は、極めて高い精度で作物に水を供給することが可能で、農場に影響を与えずに劇的な節水を実現することができる。私たちはThrive Market Collectionプロダクトのために有機トマトを調達するにあたり、同種の技術を効率の観点から活用して、年間約1040万リットルの水と400万キロワットの電力を節約しているパートナーを発見した。

カリフォルニアには、水を使わずに植物に栄養を与える「乾地農法(dry farming)」技術を使っている農家もいる。健全な土壌中に含まれる水と栄養を用いて作物を維持しているのだ。

持続可能な農法の実践に焦点を当て、水の効率を高めるための、より革新的な技術の利用への移行によって、持続可能な農場は将来の水不足に生き残ることができるだけではなく、反映することができるようになる。

農場に設置されたArable Pulsepodは、地表から作物に関するデータを収集する。

土壌管理

私たちの農業システムの工業化には気候の要素があり、それが私たちの表土を破壊している。専門家たちは、私たちが化学肥料や農薬に頼って1つの作物を集中生産する、破壊的な工業化農業の習慣から、より持続可能な農法へと移行しなければ、収穫量が6割以下に減少するだろうと予測している。

そここそが、現代の有機農法が入り込むべき場所だ。有機農法について考える人の多くは、通常はその行為自身の美徳について意識し、より風味豊かで、一般的にはより倫理的に生産されていると考えている。これは事実だが、有機農法は健康な土壌作りを促進するため、環境にも良い。

土壌が健康で、農薬や化学肥料が使われていない場合、栄養循環、水のろ過、保水などの一連の重要な機能を発揮することができる。栄養循環は、有機農産物が従来の農産物よりもはるかに美味しくなる主たる理由だ、栄養素が詰まっているからだ。さらに、健康な土壌は、化学肥料を含む土壌よりも多くの水分を保持することができる。土壌有機物が1%ずつ増加すると、1エーカー(約0.4ヘクタール)当たり2万ガロン(約7万6000リットル)の水がより多く土壌に保持される。

健康な土壌には空中から二酸化炭素を取り込む力もある。Rodale研究所の発表によれば、もし私たちが、明日世界の農場を有機農法に移行すれば、今日排出されている全ての二酸化炭素を吸収することができるということだ。

食物を消費するあなたは、現在の農業システムのアクティブなプレイヤーだ。そして私たちの農業の未来への鍵を握っているのだ。工業化農法から生み出された持続可能ではないプロダクトを購入する代わりに、有機農法のプロダクトを購入するようにすることで、私たちは持続可能な農業基盤により多くの資源を注ぎ込むことができる。そのことは、入手しやすさを向上させ価格を引き下げるだけでなく、私たち全員のための持続可能な未来を生み出すことができるのだ。

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: TYLER OLSON/SHUTTERSTOCK