Mars 2020のミッションは順調に進行中で、来年には打ち上げが予定されている。火星に送り込まれるハイテク装備の新しい探査機の中には、これもハイテクのヘリコプターが仕込まれている。ほとんど大気が無いに等しい惑星でも飛べるように設計されたものだ。火星の上空を実際に飛行する機体が送り込まれるのは初めてのことなので、その開発者たちは期待に胸を膨らませている。
「次の飛行では、火星の上を飛びます」と、JPLでこのプロジェクトのマネージメントを担当しているMiMi Aung氏は、ニュースリリースの中で述べている。最終版にかなり近いエンジニアリングモデルは、1時間以上飛行することができた。しかし、今回の2回の短いテスト飛行は、この小さな機体が実際に遠くの惑星上を飛ぶ前の、最初と最後の飛行となった。もちろん、ロケット打ち上げによる「飛行」は除いての話だ。
「ヘリコプターが試験室の中を飛び回っているのを見て、私は過去に同じ空間でテストされた歴史的な機体のことを考えずにいられませんでした」と、彼女は続けた。「この試験室は、Ranger Moonの探査機から、Voyager、Cassiniなど、これまでに火星に送り込まれた探査機のミッションを実現させてきたのです。その中に、私たちのヘリコプターがあるのを見て、私たちも宇宙探査の歴史の小さな一部になろうとしているのだと感じました」。
火星で活動中のヘリコプターの想像図
火星を飛ぶヘリコプターは、地球を飛ぶヘリコプターと、それほど大きくは違わない。もちろん、火星の重力は地球の1/3で、大気の濃度は1%ほどしかないから、相応の違いはある。たとえれば、地球の10万フィート(約3万メートル)上空を飛ぶようなものだ、とAung氏は説明した。
ソーラーパネルを備えているので、それなりに自力で探査できる
テストに使用された装置は、単に真空に近い状態を作り出すだけでなく、空気を火星に近い希薄な二酸化炭素混合ガスに入れ替えることができる。ただし、「重力軽減」システムは、ヘリコプターをワイヤーで軽く吊って、低重力をシミュレートするだけだ。
飛行高度は、なんと2インチ(約5cm)で、2回のテストの合計で1分間ほど浮上しただけ。それでも、このチームにとっては、1500ものパーツからできた4ポンド(約1.8kg)の機体を梱包して、火星に送り込む準備ができたことを確認するのに十分だった。
「素晴らしいファーストフライトでした」と、テストを担当したTeddy Tzanetos氏は語った。「重力軽減システムは完璧に機能しました。もちろんヘリコプターも完璧です。2インチの高さでホバリングできれば、必要なすべてのデータを収集できるのです。それで、この火星用のヘリコプターが、火星の薄い大気の中でも設計通りに自律飛行できることが確認できます。それより高く上がる必要はないのです」。
Mars 2020の探査機が着陸してから数ヶ月後に、このヘリコプターは分離され、最長でも90秒ほどテスト飛行を数回繰り返す。それが、大気より重い機体による別の惑星での最初の飛行となる。つまり、水素ガスを詰めた気球によるのではない、動力による初の飛行なのだ。
その機体は、ほとんど自動操縦で運航される。というのも、通信に往復で半時間もかかるので、地球から司令を送って操縦するのはさすがに無理なのだ。ヘリコプターは太陽電池とバッテリーを備えていて、小さな着陸用の足も取り付けられている。探査機から出発して、離れた場所を30日間以上も飛行することを試みる。その際には、約3メートルの高さで、探査機から数百メートルも離れた場所まで飛行することになるはずだ。
Mars 2020は、来年の夏には打ち上げの準備が完了すると見込まれている。目的地に到着するのは2021年のはじめごろだ。もちろん、それまでの間も、CuriosityとInsightは向こうで活動している。火星の最新情報は、まだまだ続々と入ってくるはずだ。
(関連記事:NASA chooses the landing site for its Mars 2020 rover mission)
(関連記事:NASA shows off the design for its Mars 2020 rover)
画像クレジット:NASA/JPL
[原文へ]
(翻訳:Fumihiko Shibata)