アップル対クアルコム、4月の10億ドル訴訟に先立って別の特許裁判がスタート

Apple(アップル)がQualcomm(クアルコム)を訴えた。と思ったらQualcommがAppleを訴えた。するとAppleがQualcommを反訴。QualcommもAppleを反訴。

この2年、AppleとQualcommの関係はだいたいこういう具合に推移してきた。こうした特許訴訟は一部の市場でAppleにかなりの不便をもたらしている。2017年1月、AppleはQualcommのビジネスの核心的をなすIP(知的所有権)のライセンス料金を不当とする訴訟を起こした。その結果Appleは自社デバイスの製造にあたってQualcommのIPを避けることとなった。

このドラマは次第に興奮の度合いを強めており、いよいよ数週間後にクライマックスに突入する。つまりAppleの10億ドルの訴訟の審理が始まる。これに比べるとやや地味だがAppleがモデムでQualcommの特許を侵害していたかどうかを判断する裁判がサンディエゴ連邦地裁で開始される。

2017年半ばから2018年後半にかけて販売されたiPhoneの消費電力と起動時間の改善に関するこの事件を審理するのはDana Sabraw連邦判事だ。Reuters(ロイター)の記事によれば、Qualcommはこの期間に販売されたiPhoneの特許権侵害によって1台あたり最大1.41ドルの損害を受けたと主張しており、これが認められればQualcommは総額で数千万ドルを得る可能性がある。

Qualcommは、Appleに対してすでに小さな勝利を収めている。同社は、iPhoneの一部の機種についてドイツと中国で販売差し止めを勝ち取った。しかし中国での販売差し止めはまだ実行されておらず、Appleはドイツでは判決に従ってiPhoneに若干の修正を加えた。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

スタートアップのための知的財産戦略

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【編集部注】著者のBenjamin Lehbergerは登録特許弁護士で、St. Onge Steward Johnston & Reensのパートナーである。

知的財産保護は、ほとんどのスタートアップにとって重要な考慮事項である。特許などの知的財産権保護手段を取得することによって、競争を最小限にし、他者からの侵害請求に対する防衛手段として利用することができる。知的財産権はまた、資金とパートナーシップを引き寄せ、強固なものにすることができる。スタートアップのための知的財産戦略を策定する際には、以下のことを考慮して欲しい。

申請は迅速に、それまでは秘密に

特許申請のためのあなたの時間は限られている。開発の初期段階で特許は想定されているべきである。米国の場合、発明者は、最初に発明を公開してから特許申請を行うまでに1年間の「猶予期間」が与えられている。その後では手遅れだ。とはいえ、そんなに長く待つべきではない。2013年に、米国の特許制度は、先発明主義から先願主義に切り替わった。この用語上では僅かに違うだけの変更が、特許保護を遅らせた者への悲劇へと繋がる可能性がある。

従前の先発明制度の下では、たとえ先に申請をした者がいたとしても、あなたが最初に考案したという証拠を示し、発明に対する地道な努力を続けていれば、その発明に対する最初の考案者と認められ特許を得ることが可能だった。しかし今日では、特許庁に駆け込む早さを競うレースになっている。誰がその発明を最初に考案したものかに関わらず、最初にその特許を申請したものが「勝つ」のだ。

特許はスタートアップにとっての貴重な資産だが、それらはパズルの1片に過ぎない。

また、特許出願をするために1年間の「猶予期間」は、米国以外のほとんどの国には存在しないことに注意することが重要だ。海外でも特許保護を求めることを計画している場合には、特許出願を提出する前に発明を公表すると、海外における知的財産権を危険な状態に晒すことになる。したがって、申請は迅速に、それまでは秘密に。

発明が進化するにつれ、追加申請を

あなたのスタートアップが自社の製品を開発し続けていく過程では、それぞれの新しい機能に対して特許保護の可能性を検討して欲しい。初期に特許を申請しただけで、その後申請を行わなかったスタートアップは、実際に特許が発行されたときに、作っている製品が最初の特許の適用範囲を遥かに逸脱していることに気がつくかもしれない。そのとき製品は、保護が範囲が不足しているか、あるいは特許で全く保護されなくなっている可能性もある。

定期的に特許保護を再評価し、発明の新機能に対する申請を考慮することが重要である。製品が急速に進化している場合は、特許出願をするまでの1年以内に、仮特許出願あるいは連続した仮特許出願を行うことを考慮して欲しい。

特許の発行を待つことはない

特許には時間がかかる。審査を早める方法も存在しているが、平均的には、米国特許庁によって付与される特許のためには2年以上が必要である。特許出願の約30パーセントは全く受け入れられずに終わる。

発行された特許を持つことは、あなたのスタートアップのための資金を集め、マーケットにおける地位を確保することに役立つ。しかし、発明の商品化を、特許の発行まで待っていてはならない。常にスタートアップを前進させ、開発を続けよう。その過程で更なる問題を解決し、それがさらに重要な発明に導く可能性もあるのだ。また一方で、あなたのブランド、評判、収益を構築することになる。

意匠特許を検討しよう

特許の議論をする際に、焦点はしばしば通常特許(utility patent)に向かいがちだが、意匠特許(design patent)も包括的な知的財産戦略の一環として考慮されるべきである。一般に、通常特許は製品の使われ方や動き方を保護するものであるのに対して、意匠特許は製品の見た目を保護するものである。2015年の終わりまでに、米国特許庁は920万件以上の通常特許を発行したが、意匠特許の件数はわずか74万6000件ほどに留まっている。

意匠特許は通常特許を補足したり、通常特許が適用できないときの代替として利用したりする際に、重要な価値を提供することができる。ソフトウェア特許は、米国ではまだ適用可能である。しかし、AliceとCLS Bankが争った訴訟に対する最高裁の判断により、ソフトウェアに関連した発明の通常特許の取得は、より難しく予測できないものになっている。意匠特許は、ソフトウェア関連発明に関する特定の特徴、特にグラフィカル・ユーザ・インターフェースを保護するためには有効な選択肢である。

意匠特許の有効期間は15年で、通常特許の20年と比べるとやや短いが、これもコストのうちである。また、意匠特許は多くの場合、通常特許よりもはるかに迅速に得ることができる。

特許のみに依存してはならない

特許はスタートアップにとっての貴重な資産だが、それらはパズルの1片に過ぎない。スタートアップが成功するには、まず第1に良い製品やサービスを必要とする。特許庁は新規性があり自明ではない発明に対して特許を与える。しかしながら、特許を受けたからと言って、必ずしも良い発明であるとか、誰かが購入したいと思うものであるというわけではない。あなたが保護しているものが、保護に値するものであるかを確認して欲しい。

そして第2に、ユニークなブランドを構築して、登録商標でそれを保護すべきだ。商標とは、ある者の商品の由来を識別子、他のものと区別するための、単語、フレーズ、シンボル、あるいはデザインだ。強く分かりやすい商標を持つことは、競争相手からあなたを区別するためにとても重要な価値がある。そして特許とは異なり、登録商標は使用し続ける限り、期限切れになることはない。商標は、特許のような厳格な申請期限を持っていないが、早期に行動を始めて商標のクリアランスを検索し、あなたがその商標を使う際の競合がないことを確認することがベストだ。

最後に、スタートアップ事業の種類に応じて、著作権及び企業秘密保護もまた、知的財産戦略の中で考慮されるべきである。スタートアップを始める際には、知的財産の専門家と、どのようなタイプの知的財産戦略があなたの企業に相応しいかについて、相談して欲しい。

(訳注:本文中の特許関連の話題はすべて米国の話である。文中にもあるように長らく続けられてきた先発明主義は先願主義へと切り替わったため、比較的日米でも似たようなコンセプトで考えられるようになった。参考:米国の特許制度

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(翻訳:Sako)