米海軍でTikTokが使用禁止に、国家安全保障上の懸念から

TikTokは、インターネットの歴史の中でも、最も急速に成長しているソーシャルネットワークかもしれない。しかし急速に大きくなっているのは、むしろセキュリティ上の脅威であり、米国の対中国強硬派による攻撃の的となってきた。

その最新の展開は、米国海軍が発行した通知から知ることができる。その内容は、ロイターサウスチャイナ・モーニング・ポストが報じた。それによれば、TikTokは、もはや米軍人のデバイスにインストールすることは許されず、米軍のイントラネットから排除される可能性もあるという。

これは、この非常に人気のあるアプリが直面している災難の直近の一例に過ぎない。最近、ミズーリ州選出のJosh Hawley(ジョシュ・ホーリー)上院議員が率いる議会は、中国などの外国政府とデータを共有する可能性のある他のハイテク企業とともに、TikTokと、Sequoiaが支援する親会社ByteDanceに対して、国家安全保障に関する査察を要求した。機密通信の漏洩に対する懸念により、米国政府は最近、同性愛者のソーシャルネットワークアプリGrindrを、買収先の中国企業、Beijing Kunlunから買い戻すことも要求した。

太平洋を挟んだ両国の関係の悪化によって、両国間でIT企業をうまく運営することは、ますます困難になっている。私が最近TechCrunch上で議論したように、Shutterstockは、同社のストックフォトプラットフォーム上で、中国政府が難癖をつけそうな写真を検索することを、意図的に難しいものにしてきた。重要な収入源を失わないようにするための方策だ。

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同様の試練は、Googleと、同社の中国に特化した検索エンジン、Poject Dragonflyにも見ることができる。もちろんNBAの問題もしかりだ。

ここで興味深いのは、両国の企業が、それぞれ両国政府の政策に苦労していること。ByteDanceのような中国企業は、標的にされることが多くなり、米国市場から追い出されようとしている。そして米国企業も、中国で足場を築くのに長いこと苦労してきた。以前に比べれば平等な競争の場になってきてはいるかもしれないが、そうであるべきほど自由な市場にはなっていない。

中国と米国との貿易摩擦が続く中、両国の政治家が設定した境界線内にうまく収まることのできない企業には、ますます損害が降り掛かっている。将来、このような分断を埋めることができるIT企業が登場するかどうかは、残念ながら、今のところ不透明だ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

タッチスクリーンをやめて機械的なノブとダイアルに戻す米海軍

10人の水兵の命を奪うことになった海上での衝突事故を受けて、米海軍は一部の船で、不人気のタッチスクリーンによるインターフェースを廃止し、伝統的な機械式のコントロールを採用することにした。「そうできるからといって、そうすべきだとは限らない」と、米海軍の当局者は、廃止されつつある新技術について語っている。

問題の衝突事故は、2017年の8月に、U.S.S. John S.McCainと石油タンカーとの間で発生した。舵を取っていた水兵が船のコントロールを失い、タンカーの進路を遮ってしまった。その結果発生した衝突によって10人が死亡し、58人以上が負傷した。

米国家運輸安全委員会による調査結果は、最近になって発行された。それによると、本質的にはその水兵が船の操舵方法を理解していなかったことが原因だという。その背景には、適切な訓練が施されず、ドキュメントも整備されていなかったことがある。Northrop-Grumman(ノースロップ・グラマン)が設計したIBNS(Integrated Bridge and Navigation System、統合ブリッジナビゲーションシステム)は、さまざまな機能が組み込まれた2つのタッチスクリーンを備えている。最近の車のダッシュボードに組み込まれ、車内の温度やラジオをコントロールするツマミやボタンを備えたタッチスクリーンと、それほど違わないように見える。正確に言うと、上の写真は問題となったシステムそのものではなく、それと同様のものだ。

しかし、システムが複雑なのために、ある水兵が、実際には船の片側ある1つのスロットルしかコントロールしていない状態で、船のすべてのスロットルをコントロールしていると勘違いした。そのため、John S. McCainは接近中のタンカーの進路に向かって急旋回してしまったのだ。

「事故後の聞き取りによって明らかになった水兵の誤解と、John S McCainに恒久的に配属されている他の乗務員の誤解が、IBNSに関する資格認定プロセスと、訓練について、かなり根本的な問題を浮き彫りにした」と、報告書は結論づけている。

判明したのは、わずか1年前にインストールされたこれらのシステムが、実際にどのように動作するものであるか、ということも、危機的な状況において必要とされる操作を迅速に実行することができないものであることも、本当は誰も理解していなかったということ。そこで米海軍は、駆逐艦に装備されていたこのシステムを廃棄しようとしている。

米国海軍技術者協会主催のイベントで講演した海軍少将のビル・ガリニス(Bill Galinis)氏は、USNI Newsの報道によると、すべては軽率だったと述べたという。

包括的レビューの対象となった艦隊からフィードバックを受け取るようになり、目が覚めるような感覚を味わいました。それは、私の心の中で「そうできるからといって、そうすべきだとは限らない」というカテゴリーに分類されたのです。私たちは、クラス51(駆逐艦)用に特化した操舵コントロールシステムを作ったのです。複雑過ぎました。ガラスの下にタッチスクリーンがあり、それで何でもできるというものでした。私たちは機械式のスロットルを廃止しました。それに対して艦隊からもたらされたフィードバックが、もっとも重要だったのでしょう。使いものになるスロットルを付けてくれ、というものでした。

少なくとも例のインターフェースを備えている駆逐艦クラスの艦船には、その使いものになるスロットルが装備されることになる。契約上の手続きも順調に進み、交換作業も非常に単純なものなので、該当する艦船は、来年以降、本当の機械式のコントロールを備えたものとなるはずだ。今回の騒動が、海軍や陸軍で使われているコンピューターベースのタッチスクリーン方式のコントロールを、より広範に見直すことにつながるのではないか、と考えるのは当然のこと。確かに、将来的には、少なくとも一部の船舶は、よりコントロールしやすいものになるべきだろう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

NASAや米海軍用のソフトロボットを開発するBreeze Automation

サンフランシスコにあるソフトロボット工学のスタートアップであるBreeze Automationは米国時間4月18日、カリフォルニア大学バークレー校で開かれたTechCrunchのTC Sessions、Robotics + AIイベントのステージに登場した。共同創立者でCEOのGui Cavalcanti氏がステージに立ち、同社がNASAや米海軍といった組織から委託されている仕事を紹介したのだ。

Cavalcanti氏が、前回TechCrunchのステージに登場したのは、2016年9月だった。その際は、パイロット用のサングラスと米国旗を身にまとい、戦闘ロボットリーグのMegaBots共同創立者としての登場だった。このBoston Dynamics出身者の最近の仕事は、控えめながらずっと真剣なものになっている。水中や宇宙空間のような危険な状況でのミッションに取り組むものだ。

サンフランシスコにある研究開発施設、Otherlabの一部として設立されたBreezeは、適応力の高いソフトロボット工学というコンセプトを開拓している。この会社のロボットアームは、中に空気を含んだ織物のような構造を採用している。

「Otherlabが約7年間に渡って発展させてきたコンセプトは、Fluidic Robot(流体ロボット)、油圧ロボット、そしてPneumatic Robot(空気圧ロボット)を非常に安価に開発するというアイデアです」と、Cavalcanti氏はイベントを前にしてTechCrunchに語った。「環境に対して高い耐性があり、非常に軽い素材で作られたものです。当初は、最もシンプルなロボットとはどのようなものか、そして最も軽いロボットとは、という問いから始めました。そしてそのアイデアが、繊維と空気で作られたこれらのロボットとして結実したのです」。

Breezeは、そうした原理を構造全体に適用したことによって、ソフトロボットの分野で多くの競合から差別化することができた。既存のロボットアームの先にソフトなグリップを付けたようなものとは根本的に異なるのだ。

「すべてが、大規模な工場から外に飛び出した瞬間に物を言います。そのとき、ロボットが現実の世界とどのように関わり合うのかという問題が、より切実なものになるのです」と、Cavalcanti氏は続けた。「私たちがやろうとしているのは、ソフトロボット工学に関する研究の成果をもっと取り入れ、完全に密閉されたシステムであることの利点を活かし、空気のように本当に柔軟な動力源によって動作させることです。予測不可能な、雑然とした環境で動かそうとした際に、何だかわからないものにぶつかったとします。周囲の状況をセンサーによってくまなく把握できるとは限らないからです。そんな場合、マニピュレータとアーム全体をソフトなものにすることには大きなメリットがあります。単なる作動体では、そうはいきません」。

Breezeは、現在進行中の仕事についていくつか説明してくれた。その中には、米海軍用に開発されたシステムもあった。HTC Viveヘッドセットを使って遠隔操作するものだ。他にも、NASAとの協業で開発を進めているロボットシステムもあった。中枢となるドライブシャフトを必要とせず、伝統的なロボットシステムからの脱却を可能とするものだ。

「今御覧いただいているのは、それなりの荷重がかかるロボットの関節ですが、全体を射出成形で作成することができます」と、Cavalcanti氏は説明する。「金属製のシャフトは必要ありません。ベアリングや、その類のものもまったく不要なのです。射出成形された部品、つまりプラスチックのパーツを組み立てれば、ロボットのできあがりです」。

Breezeが獲得した資金の大部分は、現在のところ米海軍やNASAのような連邦政府との契約によるものだが、同社はこの先、徐々に民間との契約にシフトしていこうとしている。「私たちの現在の使命は、技術をさらに強化して、実社会でのアプリケーションに対応させることです。今は、ほぼ100%それに集中しています」と、彼は言う。「そこを確かなものにできれば、私たちが探求したいと考えている民間用のさまざまな用途の可能性が開けるはずです」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)