非営利Tech集団「ZIAI」がAIを活用したSNS自殺関連キーワード検知システムのβ版をリリース

非営利Tech集団「ZIAI」がAIを活用したSNS自殺関連キーワード検知システムのβ版をリリース

任意団体NPO「ZIAI」は1月13日、SNS上に投稿された自殺関連キーワードを自動で収集し、アカウント名や投稿内容を整理して一覧化、ワンクリックで該当者へのアプローチを可能にする自殺検知システムのβ版をリリースしたと発表した。

令和元年の自殺者総数から逆算すると、日本では毎日55人が自殺しており、自殺死亡率(人口10万人あたりの自殺者数)もG7中で最下位という。特に10代後半から20代の男女では、死亡原因の第1位が自殺という状況が続き、自殺による経済損失は年間数千億円にのぼるとされる。

その対策として、現在の日本では、自殺に関連するキーワードを主要インターネットメディアに記載・検索・投稿すると、厚生労働省や関係NGO、各地域の相談窓口が自動的に表示されるものの、これらはいわゆる「プル型」の仕組みとなっている。

政府としてもSNSを活用したオンライン相談の取り組みを強化しているものの、年間53万人とされる自殺未遂者の推計に対し、年間のSNS相談件数は約2万件、つまり全体の4%に過ぎないという。

ZIAIは、SOSを受け身で待つのではなく、社会からその声を拾い上げる「プッシュ型」の仕組みが必要不可欠としている。

AI自殺検知システムは、インターネット上の自殺関連投稿データをリアルタイムで自動収集し、ハイリスク者に対して連絡を行う。アカウント名や投稿内容を整理して一覧化し、AIアルゴリズムとプロのカウンセラーの視点を掛け合わせ、ハイリスク者と判定された方のみにワンクリックでメッセージを送ることが可能。

今後はオンライン相談を実施する関連NGOや教育・医療機関と連携し、返信者に対するオンライン・オフライン双方での介入を進めることで、社会からSOSの声を拾い上げる世界の実現を目指す。

非営利Tech集団「ZIAI」がAIを活用したSNS自殺関連キーワード検知システムのβ版をリリース

ZIAIは、自分を殺すのではなく、自分を愛せる社会を創ることをミッションとした非営利Tech集団。ハイリスク者の感性分析によるアルゴリズム開発やSNS自殺検知システム開発など、テクノロジーを軸にした自殺予防の仕組み作りを行っている。

メンバーは社会起業家やスタートアップのCTO、海外在住のデータサイエンティストなど、それぞれが本業を持つスペシャリストで構成されている。

自殺行為自体を未然に防ぐことは、この問題の根本的解決ではなく、それに至った背景や原因を取り除いて初めてその対象者にとって意味のある活動になるという。今後もZIAIは、テクノロジーを軸に、国や地方自治体、医療や教育機関、NGOとの有機的な連携を促進し、自殺念慮(死にたい気持ち)を予防するための解決策を模索し続けるとしている。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:いじめAI / 人工知能(用語)自殺自殺防止自傷行為メンタルヘルス(用語)日本(国・地域)

Facebookライブにアップされた自殺動画の拡散防止に失敗した各SNSの理由

あるFacebook(フェイスブック)ユーザーが自分が自殺するところをライブ動画としてアップロードした。その動画がTikTok、Twitter(ツイッター)、Instagramに拡散した。YouTubeでは何千回も再生され、それにともなう広告収入を集める動画が今現在も多数流れている。ソーシャルネットワークはさまざまな努力はしているものの、拡散防止に失敗したことは明らかだ。多数の暴力的コンテンツ、フェイクニュースの拡散を防止できなかったことが思い出される。

オリジナルの動画がフェイスブックにアップされたのは2020年8月末だったが、その後、主要な動画プラットフォームにコピーされた。多くは無害なイントロを流した後で自殺の場面に移る。この手法は、はるか以前からプラットフォームによる審査をごまかすために多用されてきた。こうした動画は視聴した人々が違法な内容だ気づいて手動で通報するが、その時点ではすでに大勢が問題のシーンを見せられしまった後だ。

これはいろいろな意味で新型コロナウイルスは人工的に作り出されたものだとする陰謀論がSNSで拡散された際の手法に似ている。ソーシャルネットワークは、多大のリソースを投入してこのような陰謀論が猛威を振るうことを防ごうとしたが失敗した。

大型ソーシャルネットワークは、利用約款に違反する動画を即座に削除する高度なアルゴリズムを装備しているにも関わらず、これまでのところ規約違反動画が狙いとする最も重要な点を防ぐことができていない。多くのユーザーが過激な場面を目にしてしまっている。

Ronnie McNutt(ロニー・マクナット)氏の自殺動画が、最初にアップロードされたのは8月31日だった。システムがこの動画を削除したのは公開後3時間近く経ってからだった。その時には視聴回数は膨大なものになっており、多数のコピーが作られていた。多数のユーザーによって通報されていたにも関わらず、なぜこのような過激で暴力的かつ利用約款に明らかに違反する動画にはが長時間公開されたままになっていたのか?

先週発表されたコミュニティ規定施行レポートでフェイスブックは 暴力的あるいは性的な内容のコンテンツを審査するという報われない仕事に1日中携わる人間の担当者(多くは外部の契約者)がパンデミックのために不足していたことを認めた。

審査担当者の人員が不足していれば 、当然ながらフェイスブックとInstagramにおける自殺、自傷、チャイルドポルノなどのコンテンツの審査も遅れ気味になる。

また違法なコンテンツをみ全員が通報するとは限らないため、通報件数だけでは違法性の程度を判断することが難しい。

しかし自殺したマクナット氏の友人でポッドキャストの共同ホストを務めていたJosh Steen(ジョッシュ・スティーン)氏はTechCrunchの取材に対して次のようなメールを返しており、このライブ動画は自殺シーンのはるか以前に規約違反として通報されていたという。「彼をよく知っているし、またこのような動画がどのように処理されるかについても知識があるので、あのストリーミング動画は、何らかのかたちで介入があることを期待していたのだと信じる。これは仮定に過ぎないが、本人の気をそらすことができてさえいれば、彼が自殺をすることはなかったはずだと思う」。

この点についてもフェイスブックに取材したが、回答は「ライブストリームにいち早く介入できる方法がなかったか検討しているところだ」という型通りのものだった。ともあれ、そういう方法の確立を強く期待する。

しかし、こうした動画が一度配信されてしまうと、フェイスブックにはその拡散を防ぐ方法はない。過去にも自殺や暴力的な場面がライブストリームで放映されたことは多数ある。ただし今回、他のソーシャルメディアの対応は明らかに遅すぎだ。TikTokはこの動画を「おすすめ」ページに入れていた。無責任なアルゴリズムによって、何百万という人々がこのシーンを見ることになってしまった。なるほどこの動画をプラットフォームから完全に削除するのは難しかったかもしれないが、少なくとも「おすすめ」に入れて積極的に拡散すること防止するなんらかの手立てが取られて良かったはずだ。

YouTubeもいわば事後従犯だ。スティーン氏のグループの動画はキャプチャーされ、無数の営利目的のサイトがYouTubeにアップして広告料を稼いだ。スティーン氏は自殺動画をコピーし、広告を付加してSquarespaceやMotley Foolで流した例のスクリーンショットを送ってきた。

最大の動画配信プラットフォームがこのように無責任な態度を取り、悪質なコンテンツを排除するための方策を取らなかったように見えることは非常に残念だ。例えばTikTokは、契約違反の動画を繰り返しアップロードしたユーザーのアカウントを凍結するとしている。しかしそうしたユーザーを排除する前に、何度も繰り返される悪質な動画の投稿を許す必要があるのだろうか?

一方、フェイスブックは繰り返し通報を受けていたにも関わらず、この動画をが規約違反であると断定するのを躊躇したようだ。さまざまなかたちでの再アップロードが、禁止されることなくしばらく続いた。もちろんこれは審査のスキを突かれ、いくつかの動画がすり抜けてしまったのだとも考えられる。何千もの動画が大勢のユーザーの目に触れる前に削除されている。しかしフェイスブックのように、何十億ドル(数千億円)もの資金と何万人もの人員を割り当てている巨大企業が、これほど重大な規約違反動画を削除するために躊躇した理由がわからない。

フェイスブックは8月上旬に「通常の審査体制に戻した」と述べたとされている。しかしスティーン氏は「AIテクノロジーはパンデミック期間中に大きく進歩していた。だからライブストリーミングだから防止できなかった、あるいはその後の拡散を防げなかったというのはおかしい」と主張する。

「(乱射犯がモスクを襲った)クライストチャーチ事件で、私たちはライブ動画のバイラルな拡散の危険性についていくつか重要な教訓を得た。これは広く知らせる必要がある。ライブストリーミングが視聴された総数、共有された回数、それらが視聴された回数などだ。私はこれらの数字はライブ映像のインパクトを正しく認識する上で極めて重要だと考えている。特にどの時点でライブストリームのビューが急増したのかというデータが重要だ」とスティーンは述べている。

TwitterとInstagramでは、自殺動画アップロードするためだけに多数のアカウントが作られた。また自殺者のハンドル名を利用した多数のフェイクアカウントが作られている。一部の動画には「自殺」や「死」といったタグさえ付加されている。こうしたアカウントには、利用規約を破った動画をアップロードする以外の目的がないのは明らかだ。フェイクアカウントやボットアカウントを判別できるはずのアルゴリズムは何をしていたのか?

筆者が見つけたYouTubeチャンネルには、マクナット氏の自殺を利用して50万以上のビューを得ているものがあった。オリジナルの動画にはプリロール広告が付けられ、無害であることを装ったコンテンツとして始まるが、やがて興味を抱くユーザー向けに自殺シーンが表示される。私がYouTubeにこの動画を報告すると、プラットフォームはこのアカウントの収益化を停止し、問題の動画を削除した。しかしスティーン氏らは、何日も前に同じこと報告していた。次にこうしたことが起こった場合、あるいは別のプラットフォームで現に起こりつつあるかもしれないが、メディアが記事にしない限り、プラットフォームは責任ある措置を取ろうとしないのではないかと考えざるを得ない。

こうしたプラットフォームが目的としているのは、規約違反に対する措置をなるべく穏やかなものにして目につかないようにし、ユーザー離れを防いでビジネスへの影響を最小限にすることだ。他のソーシャルネットワークでも見られたが、もし厳格な削除措置がビジネスに悪影響を与えるようであれば、そういう措置は取られない。

しかし、今回の事態あるいは以前の事態が示すように、これはソーシャルネットワークサービスが必要とする重要な要素を欠いている。現在の状況をリアルタイムで共有できる動画配信サービスは、ビジネスとして極めて大きな利益を上げることは明らかだ。しかし同時に、恐るべき行為の映像をそのまま流してしまうというリスクをはらんでいる。

スティーン氏は「こうした(ソーシャルメディア)は非協力的であり、また正直ではない。我々の抗議に対して、ソーシャルメディアが責任ある対応をしなかったことを繰り返し見てきたことにより、改革を求めるハッシュタグ「#ReformForRonnie」を作った。何らかの変革がなければ、こうしたことはいつまでも続くだろう」と述べている。

もちろんスティーン氏は親しい友人を失い、その死を悲しんでいる人間であることは考慮に入れ必要がある。しかし友人の自殺が乱用され不当にコピーされて、故人が笑い者にされている状況に対して巨大動画プラットフォームが中途半端な対応しかしないことについて、強い不満と怒りを感じていることにも留意すべきだ。

スティーン氏はメジャーなソーシャルネットワークに対して、人々は何らかの声を上げるべきだとしてこのハッシュタグを広める運動をしている。どうすればこうした事態を防げたのか?すでにアップロードされた動画についての対応は、どのように改善されるべきなのか?どのようにすれば故人を愛した人々の意思をより尊重できたのか?もちろんこれらすべては完全に実現するのが極めて困難な課題だ。しかしそれが、プラットフォームが何も努力をしないことの言い訳になってはならない。

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画像:Florian Gaertner / Getty Images (Image has been modified)

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

FacebookにAIを活用した自殺防止・通報機能――ライブビデオでの自殺を機に本格的対策

このソフトウェア・テクノロジーは多くの命を救うためのものだ。FacebookはAIを利用した「プロアクティブな探知」機能を実装する。これはコンテンツをスキャンして自殺の可能性を示唆する投稿を抽出し、自殺の危険性が発見されたユーザー、あるいはその友達に対し、必要に応じてメンタルヘルス専門家などのリソースを提供できるようにする。

また地域で自殺防止のために活動している人々に通報する機能もある。AIを利用して憂慮すべき兆候がある投稿にフラグを立て、これを人間のモデレーターが精査する仕組みだ。従来のように投稿を読んだメンバーからの通報を待って行動するのにくらべてはるかに素早い対応が可能になるという。

Facebookでは以前からAIを利用して問題のある投稿を判別する実験を行ってきた。今回は自殺防止通報という分野でこれを大々的に実際の機能として展開する(当面アメリカが対象)。Facebookでは世界中でAIを利用した投稿スキャンを行っている。例外はプライバシー関連法が複雑なEUだけだ。

Facebookでは特に危険性が高い投稿を優先してモデレーターが介入し、あるいは地元の自殺防止対策組織に通報する。Facebookでは自殺防止に対応するモデレーターを増員し、専門的な訓練を施し、24時間体制で待機させる。また自殺防止に活動しているSave.org、National Suicide Prevention Lifeline、Forefrontなど80箇所の地域パートナー組織と提携して対象者に緊急に助力を提供できるようにしたという。【略】

[アップデート:Facebookの最高セキュリティー責任者、Alex StamosはAIが投稿をスキャンすることに対する懸念に答える真剣なツイートを投稿した。]

AIが怪しい/こわい/悪意を持つ等の点は永久に残るリスクだ。だからこそ現在、データ処理にあたって利便性〔と危険性〕に適切な基準を設けること、偏見が忍び込むことに留意することが重要となる。なおGuy Rosenのチームは優秀であり、機械学習の成果を生かすまたとないチャンスだと期待している。

Facebookではこれまで自殺の危険性がある投稿について人力でリスクを判断していたが、今後はAIを用いて文章、画像を分析してスクリーニングを行う。このシステムは“are you OK?”(大丈夫かい?)や“Do you need help?”(何かできることはない?)のようなレスポンスにも着目するという。

現在のFacebookの自殺可能性通報の仕組

AI、人間のモデレーター、ユーザー一般からの通報などを組み合わせれば先月、父親である男性がFacebook Live上で自殺したような悲劇を防ぐために役立てることができるだろう。ライブビデオというのは自殺を不当に美化するような影響を及ぼす可能性がある。また何が起きるか予測できないままに大勢の人間が同じシーンを見ることになる。録画されたビデオであれば公開前にプラットフォーム側で審査し、問題があれば公開を保留できる。したがってライブビデオの利用にあたって新たな予防措置が導入されるのはやむを得ない。

今後は、メンバーがどんな形にせよ自殺を示唆するような投稿を行った場合、 Facebook AIはそれを積極的に検知してフラグを立てる。これに基づいて自殺防止の専門的訓練を受けた人間のモデレーターが適切な対処方法を検討することになる。

フラグが立てられた場合、Facebookのテクノロジーはテキストなりビデオなりのどの部分が自殺の危険性を示唆するのかハイライトして示す。これによりモデレーターは大量のコンテンツから問題部分を選り分けるために時間を費やさずにすむ。特にビデオの場合、全編を見るには非常に時間がかかる。AIは暴力やヌード描写など以上にユーザーからの自殺の危険性の通報を重視する。Facebookによれば自殺通報を最優先処理事項とすることにより、地元関係機関への連絡が従来の2倍以上に速くなるとしている。

差別について目をうるませて話すマーク・ザッカーバーグ。母校、ハーバードでの卒業式のスピーチ(5月)

Facebookのモデレーターは地元のパートナーから適切な言語による機関を選ぶ。これには自殺防止の電話ホットラインや警察、消防などの当局が含まれる。モデレーターは対象のユーザーの居場所や過去の精神状態について参考となるデータを収集して連絡する。また友達を探して危険が感じられることを伝え、連絡を依頼することもある。AIチームのリーダー、Rosenは「われわれの目標は、やがて全世界であらゆる言語でこのサービスを提供し、即刻必要なサポートが提供できるようにすることだ」と述べた。

去る2月にFacebookのCEO、マーク・ザッカーバーグは「〔Facebook上で〕自殺が起き、そのいくつかはライブストリーミングされるという恐ろしい出来事があった。誰かが事前に気づき、適切に通報していればこうした悲劇は防止できたかもしれない…人工知能はこの面で優れたアプローチを提供できると思う」と書いている

20億人からのユーザーをかかえるFacebookがこうした措置に踏み切ったのは賞賛されるべきだ。Facebookはユーザーがつながり合える仕組みを作ったが、そればかりではなく、不幸にも、ある種のリアルタイムの無法地帯を作り出してしまった。Facebook Liveは自他に暴力を加え、それを見せびらかそうとする衝動を持ったユーザーにも好適なとチャンネルとなっている。.

世界的なコミュニケーション・プラットフォームの構築には他のテクノロジー企業以上の重大な責任が伴う。Facebookはこうした責任を受け入れていくしかないだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+