美容クリニック向けSaaS「medicalforce」を展開するメディカルフォースが1億円調達、サービス開発および採用を強化

美容クリニック向けSaaS「medicalforce」を提供するメディカルフォースは3月18日、プレシリーズAラウンドにて総額1億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先はDNX Ventures、ANRI、個人投資家2名。調達した資金は、medicalforceの開発とチームの採用強化にあてる。また、シードラウンドおよびデットでのファイナンスを含めた累計調達額は約1億3000万円となった。

medicalforceは、美容クリニックの現場業務のデジタル化および経営支援を目指すサービス。予約、問診、カルテ、会計といった日常業務をすべて一元管理することが可能。「予約はGoogleカレンダーで、カルテは保険診療向け電子カルテ」など個別のシステムを使っている場合に発生する、情報がバラバラなためにダブルチェックの手間や集計が煩雑になるという課題を解決できる。また、予約・カルテ・会計の集約情報を基にLINEやメールでのメッセージ発信も行なえる。経営管理ダッシュボード、リマインド・ステップ配信などのCRM機能を搭載しており、経営面においても効率化を図れる。

美容クリニック向けSaaS「medicalforce」を展開するメディカルフォースが1億円調達、サービス開発および採用を強化

医師を退屈なデータ入力から解放、AI駆動の転写プラットフォームDeepScribeが約34億円調達

AIを活用した医療用転写プラットフォームのDeepScribe(ディープスクライブ)は、Index VenturesのNina Achadjian(ニーナ・アチャドジアン)氏がリードし、Scale.aiのCEOのAlex Wang(アレックス・ワン)氏、FigmaのCEOのDylan Field(ディラン・フィールド)氏、既存投資家のBee Partners、Stage 2 Capital、1984 Venturesが参加したシリーズAラウンドで3000万ドル(約34億円)を調達した。DeepScribeの今回の資金調達は、2021年5月に発表された520万ドル(約6億円)のシードラウンドに続くものだ。DeepScribeは、医師を退屈なデータ入力から解放し、患者にフォーカスできるようにすることを目的に、Akilesh Bapu(アキレッシュ・バプ)氏、Matthew Ko(マシュー・コー)氏、Kairui Zeng(カイリュー・ゼン)氏によって2017年に設立された。

2019年、DeepScribeは患者と医師の自然な会話を要約するアンビエント音声AI技術を発表した。DeepScribeのアイデアは、バプ氏とコー氏の体験が発端だ。バプ氏の父親はがん専門医で、文書作成が父親のワークライフバランスに与える負担を目の当たりにした。一方、コー氏は、乳がんと診断された母親のケアを管理していたとき、診療記録の負担が患者のケアに対する認識にどのような影響を及ぼしているかを目の当たりにした。

母親が受けていたケアに不満を感じたコー氏は、バプ氏とその父親に助けを求めた。そして、診察記録の重要性を理解し始めた2人は、近年の人工知能や自然言語処理の飛躍的な進歩が、この状況を改善するために活用されていないことに気づいた。そこで、この問題を解決するプラットフォームを構築すること決意した。

「この分野の製品を調査した後、75%以上の医療従事者がこの分野の文書作成ツールを使っているのに、それでもなぜ彼らが半日近くをメモ書きに費やしているのか疑問に思いました」と、コー氏は電子メールでTechCrunchに述べた。「製品をテストした後、私たちの結論は、この分野の既存の製品では医師が会話を要約する必要があるために問題を解決していない、というものでした。音声テキスト化ソリューションは、あなたがが話した内容を正確にコンピュータの画面上のテキストに変換することしかできませんでした。医師が求めていたのは、患者との自然な会話を理解し、要約することができるアンビエントAIでした。この洞察をもとに、私たちは世界初のアンビエントAIスクライブ、つまり現在のDeepScribeの構築に着手しました」。

医師がアプリケーションを起動すると、DeepScribeは会話を録音し、要約して、医師が選択した医療記録システムに統合する。アプリは、聞きながら患者の診察を録音し、診察記録を準備する。その後DeepScribeは、電子カルテ (EHR) のフィールドにメモを直接アップロードし、医師は適切なEHRフィールドに完全に準備されたメモを確認し、署名することができる。

このアプリケーションはおしゃべりに対応していて、会話には医学的に関連する情報のみが含まれる。また、医師の会話スタイル、好みの言い回し、文章の好みなどを聞き、学習することで、AIスクライブは継続的に賢くなるという。

過去1年半の間に全米で医師400人超がDeepScribeを利用し、50万件以上の患者・医師間の会話を処理してきた。DeepScribeによると、同社のプラットフォームを活用することで医師は1日平均3時間を節約でき、コストは人間による記録の約6分の1だ。これまでに、同社は医師の文書作成にかかる時間、250万分以上を節約した。信頼性に関しては、20日間の使用後、医師はメモ1枚につき平均1回以下の修正しか行わなかった、とDeepScribeは話す。

DeepScribeは、今回の資金調達によりDeepScribeの成長が加速し、今後も医療文書作成ワークフローとヘルスケア全体の改善と変革に取り組んでいくと話す。自社の技術を複数の大規模医療システムに展開し、エンジニアリングチームを成長させ、自社のAIをより多くの医師の手に渡すことを目指している。

「当社のロードマップには多くのものがありますが、最もワクワクさせるのは、純粋な要約以外の可能性です」とコー氏は話す。「音声が未来の医療の構成要素になると信じていて、お馴染みのケアの診断と治療を変換する能力を持っています。サービスの提供を通じて収集したデータを活用し、医師に効率化を提供するにとどまらず、患者の転帰を改善したいと考えています」。

画像クレジット:DeepScribe

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(文:Aisha Malik、翻訳:Nariko Mizoguchi

Oracleが電子医療記録会社Cernerを約3.2兆円で買収、ヘルスケアに進出

ホリデーウィークはニュースが少ないなんて誰が言っているんだ?Oracle(オラクル)は、年末の記事執筆に疲れたテック系ジャーナリストのために、米国時間12月20日、いくつかのビッグニュースを提供してくれた。この大手データベース企業は、電子医療記録会社のCernerを、総額283億ドル(約3兆2000億円)で買収すると発表した。

「OracleとCernerは本日、OracleがCernerを1株あたり95ドル(約1万800円)、株式総額にして約283億ドルをすべて現金で支払い、買収することで合意に至ったと、共同で発表しました」と、同社はプレスリリースで述べている。

今回の買収により、Oracleは成長市場であるヘルスケア分野に大きく進出することになる。Synergy Research(シナジー・リサーチ)によれば、Oracleが最近起ち上げたクラウドインフラストラクチャ事業は一桁台に低迷しているというが、Cerner買収はこの事業の強化にもつながるはずだ。

Constellation Research(コンステレーション・リサーチ)のアナリストであるHolger Mueller(ホルガー・ミューラー)氏は、買収を繰り返してきたOracleの歴史の中でも、今回は最大の買収になると述べている。

「Oracleにとって、これは賢明な行動です。同社のテクノロジーをヘルスケア分野にさらに深く浸透させ、現在と、そして特に将来の、多くの作業負荷をOracle Cloud(オラクル・クラウド)にもたらすことになります。Oracleが、最大かつ最速で成長している垂直型産業を買収するということは、いうまでもありません」と、ミューラー氏は筆者に語った。

この成長の可能性を、OraclのSafra Catz(サフラ・カッツ)CEOが見逃すはずはない。「当社がその事業を世界の多くの国に拡大していく中で、Cernerは今後何年にもわたって巨大な追加収益成長エンジンとなるでしょう。これはNetSuit(ネットスイート)を買収したときに採用した成長戦略とまったく同じです。違いは、Cernerの収益機会がさらに大きいということです」と、カッツ氏は声明で述べている。

だが、カッツ氏が国際的な事業拡大について語っている間に、Microsoft(マイクロソフト)が2021年4月、Nuance Communications(ニュアンス・コミュニケーションズ )を197億ドル(約2兆2000億円)で買収すると発表し、ヘルスケア分野で同様の取り組みを行っていたことにも注目しておくべきだろう。しかし、この買収は英国の規制当局からの逆風に直面している。年が明けて今回の買収が進むにつれ、同じ様に規制当局の監視にぶつかることになるかどうかは、興味深いところだ。

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Cerner側では、10月に社長兼CEOに就任したばかりのDavid Feinberg(デヴィッド・フェインバーグ)氏が、これを株主にとっての好機と見て掴まえることにした。もちろん、同氏はこの買収を、他の多くのCEOと同じように、独立した会社としては不可能な方法で市場を拡大するための手段と捉えている。

「Oracleのインダストリービジネスユニットに参加することで、電子医療記録(EHR)の近代化、介護者の体験の改善、そしてより接続された高品質で効率的な患者ケアを実現するための、当社の活動を加速させる、これまでにない機会を私たちは得ることができます」と、フェインバーグ氏は声明で述べている。

米国時間12月20日朝、このニュースを受けてOracleの株価は2.68%下落し、一方、Cernerの株価は0.92%とわずかに上昇した。

現時点で今回の発表は、米国証券取引委員会への正式な申請を含む一連のステップの最初の段階に過ぎない。現在の規制環境の中、この買収が順調に進んで最終的に完了するかどうかは、まだわからない。

画像クレジット:Justin Sullivan

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

リピート率59%アップ!電子カルテ軸の鍼灸プラットフォームで受療者、鍼灸院、見込み客それぞれの課題を解決

日本マイクロソフトが10月11日から14日にかけて開催中の「Microsoft Japan Digital Days 2021」では、生産性や想像力を高め、組織の競争力に貢献するソリューションや、その導入事例について学べるプログラムが提供されている。

Day 1の10月12日13時35分に行われたセッション「世界の人々の健康をサポートする鍼灸メーカーがSaaS事業を提供するに至るまで(真のDXとは何かについて)」をレポートする。

登壇したのは、鍼灸鍼をはじめ医療機器の開発・製造・販売を行ってきたセイリン ICTプロジェクトリーダー 菊地正博氏とAzureを使ったeコマース開発を得意とするシグマコンサルティング プロジェクトリーダー 木下浩之氏だ。

鍼灸業界の発展を阻む課題をプラットフォームで解決

「鍼灸業界の発展を支えるプラットフォーム」というサブタイトルで進められた当セッション。2020年9月に「鍼灸つながるカルテ」「はりのマイカルテ」をリリースした背景がセイリン菊地氏の口から語られた。

鍼灸治療を受ける人(受療率)は年間560万人で、国内人口の約5.6%。受療したことがあるもののリピートにつながらない人は約2000万人いる。

「肩こり 鍼」などで検索するような鍼灸に興味のある見込み客は約670万人、健康やボディケアに関心のある層は2400万人いるものの、実際に鍼灸治療を受けるに至っていなかった。

鍼灸業界の発展には、受療したもののリピーターになっていない人や見込み客をいかに呼び込むかが課題だが、それには、立ちはだかる負のスパイラルを断ち切る必要があるという。

負のスパイラルには、受療者、鍼灸院、見込み客、他業界の抱くイメージや体験などがある。

受療者側には「施術の効果を感じられない」「本音を言いづらい」「保険適用外で治療費が高い」というもの、鍼灸院側は「来てくれなくなった理由がわからない」「それゆえ施術や接客レベルを上げようがない」「サービス改善のモチベーションが上がらない」というもの、見込み客にとっては未経験ゆえ「怖い」「効果が不明」「マッチする鍼灸院を探せない」という負の感情が、医療施設や介護施設など他業界からは「鍼灸による成果のエビデンスがない」「信頼できる鍼灸師が少ない」「連携するメリットが見いだせない」ため紹介・連携できないという課題があった。

そこで、セイリンではそれらの課題を解決する最適解が電子カルテを軸とした鍼灸プラットフォームであると考えた。

単なる電子カルテであれば、すでにさまざまな医療機関で採用されているが、これは、施術側が治療を記録するためだけのものではない。治療内容とともに、日常生活で気をつけるべき点などのフィードバックを患者に提供し、鍼灸師は受療者からの満足度に関するフィードバックや相談を受けられるようになっている。これにより患者の満足度は上がり、鍼灸師もサービスや技術向上のモチベーションを上げられる。

さらに、患者の症状と施術内容を鍼灸データベースに蓄積することで、これから施術しようとしている鍼灸師には最適な施術のレコメンドを、医療施設や介護施設には鍼灸治療を使うことのメリットなどを含むエビデンスを提供可能になる。

患者から受け取った満足度評価や感じられた効果も蓄積され、その情報は4月1日にリリースした鍼灸院検索サイト「健康にはり with はりのマイカルテ」でいずれ検索可能になり、新規ユーザーが自分にマッチする鍼灸院を探すのに役立てられる。

つまり「鍼灸つながるプラットフォーム」のシステムを導入することで、これまで鍼灸業界の発展を阻害してきた負のスパイラルを断ち切れるというわけだ。

とはいえ、タッチポイントであるアプリの使い勝手が悪ければ鍼灸師も受療者も手間と感じてしまう。

鍼灸師が使う電子カルテ「鍼灸つながるカルテ」はPC、タブレット、スマートフォンのマルチデバイス対応なうえ、入力しやすさを確保しているという。

また、治療前後の変化、治療内容など、通常、自分のものであるのにアクセスできないカルテの内容を鍼灸院から患者へ患者側電子カルテ「はりのマイカルテ」を通じて共有することで、受療者が施術の効果を実感でき、通院のモチベーションを上げられるような仕組みを作っている。

さらに、通常であれば鍼灸院に到着後に記入する問診票の内容をアプリを通じて事前に伝える仕組みもあるため、現状を落ち着いて入力できるうえ、到着後の待ち時間が減るというメリットがある。鍼灸師にとっては、患者が来院する前に情報を得られるので、前もって施術準備を行える。

患者に記載してもらった情報も含めた電子カルテの情報は、ビッグデータという形で鍼灸データベースに蓄積するが、それは教科書にも記載されていない内容だ。師匠たちから受け継いできた「暗黙知」が、システムに入れるすべての鍼灸師に共有され「形式知」となることが、業界全体のメリットになる。

また、蓄積された情報はエビデンスとしても機能するため、鍼灸治療を選んでもらえるよう介護施設や医療施設に交渉できるようになるため、また見込み客の認知度が上がるため、新規受療者の増加も見込める。

リピート率アップについては、鍼灸院「ニイハオ鍼灸院」の導入事例が紹介された。「はりのマイカルテ」導入前後3カ月で比較したところ、アプリ利用患者50人の来院平均回数が2.09回から3.32回へ59%アップ。未利用患者43人の平均来院回数が1.66回から1.71回であったことを考えると、カルテ共有の効果が高かったことがうかがえる。

菊地氏は、4月にリリースした受療者向け鍼灸院検索サイト「健康にはり」内の情報を定期的にアップデートしていくことで「針灸初心者でも安心して治療を受けてもらえるようにしたい」という。

最後に「鍼灸つながるプラットフォームにより、鍼灸治療に関する知を次世代に伝えること、針灸業界の発展を支え、受療率5%を15%にアップさせることを行っていきたい」と今後の抱負を語った。

針灸業界の発展を支えるプラットフォームをさらに下から支える

シグマコンサルティングの木下氏は、同社がAzureを使ったeコマースの知見をどのように鍼灸つながるプラットフォームに活かしたかということについて解説した。

これまで、針灸業界には同様のサービスがなかったため、ニーズを聞き取りながらゼロベースで実装。Azureがあったからこそ、1年半という短期間で行えたことを強調した。

とはいえ、カルテ情報の取り扱いには高度な機密性が要求される。

ここで、シグマコンサルティングの知見が活きてくる。eコマースでは、クレジットカード情報など財産に関係する情報のやり取りが必要になる。シグマコンサルティングには、PCIDSS(Payment Card Industry Data Security Standard。クレジットカード業界のセキュリティ基準)といったセキュリティ事項に対応した実績あり。今回のプラットフォームのシステム構成にも、Azure AD B2Cの認証の仕組みを導入することで堅牢なシステムをすばやく構築した。

データベースにはSQLを利用することで拡張性を担保しつつ、SaaSビジネスで重要なランニング費用低減を図ったという。

これまで器具販売を中心に営業してきたセイリンがSaaSビジネスを成功させるための事業支援も行ってきた。その中にはセイリンだけでなく、導入する鍼灸院へのサポートも含まれる。

セイリンには、営業活動の目標値として「鍼灸院が同システムを導入することによって成功体験を得る」というものを設定した。そのうえで、営業活動を可視化し、営業プロセスを見直ししやすくして商談内容に一定の品質が保たれるようにした。

鍼灸院へは、プラットフォームを利用することで成功体験を得られるようカスタマーサクセスチームを立ち上げて対応した。カルテの電子化、受療者とのコミュニケーション促進、予約業務の効率化など、いくつかのポイントを押さえて支援。サクセスが明確化されたことで、KGI・KPIも明確になり、次なるカスタマーサクセスを実現するためにプロジェクトを改善する必要があり、その点でも支援したという。

「これらの支援により、組織は自走型へと変化する。シグマコンサルティングは、開発からビジネスの成功までをサポートしていける」と、木下氏は締めくくった。