これは誰にでも起こり得ることだ。iPadに新しくて派手なモデルが登場し、自分が持っているモデルはもはや最新で最高の新しいものではなくなってしまった。しかし、今回のiPadにはこれまでそれなりの実績がある。10年前、このデバイスはタブレット端末とは何かを再定義し、無数の競合他社が脱落した中で、 カテゴリのトップで支配的な場所を維持してきた。そしてアップルは最近、iPadを累計5億台超を販売したことを発表している。
一方、最近はデバイスは自社ブランドの中で存在感が薄くなっている。標準的なiPadは、iPad ProやiPad Airと比較すると、普通のiPadになってしまった。今回発表された第8世代のiPadは、アップルが提供するタブレットのエントリーレベルの製品だ。最近開催されたアップルのハードウェアイベントでは、iPad Airが中心的な役割を果たしたが、iPadにも少しだけ愛が注がれていたように思う。
第8世代のiPadは、画面サイズが9.7インチから10.2インチに拡大したほか、アクセサリーを取り付けるためのデバイス側面のスマートコネクターなど、最近の世代でおなじみのデザインを踏襲している。なお、本体サイズはiPad Airとあまり変わっていない。
また第8世代iPadは、Lightningポートを搭載する残り少ないiPadシリーズだ。Lightning規格はいまとなっては時代遅れになりつつあるが、第8世代iPadは古いアクセサリーとの互換性を維持できるぶん、余計な追加出費を節約できるというメリットもある。なお、充電器は前モデルの12W仕様よりも大容量の18W仕様のものが付属する。
今回の最大のアップデートは、当然のことながら内部構造の刷新だ。第8世代iPadは、Apple A12 Bionicプロセッサーを搭載した、2年ぶりのアップデートなる。A12は2018年に登場したiPhone XSシリーズなどが採用するSoCだ。ちょっとややこしくなるが、iPad Airは昨年にA12を搭載し、今回登場した新モデルでA14 Bionicににアップグレードされた。つまり第8世代iPadは、iPad Air よりも1世代前のSoCを搭載する製品なのだ。
一方、iPad Proは現在A12の強化版にあたるA12Z Bionicを搭載している。混乱してきたと思うが、ここで知っておくべき重要なことはiPadがエントリーレベルのモデルでありながら、A12を搭載しているという点だ。
ディスプレイは他のモデルよりも小さく、iPad Proが備える120Hzのリフレッシュレートや明るいディスプレイではない。True Toneディスプレイ技術やFace IDも搭載されておらず、ホームボタン兼用の伝統的なTouch IDが採用されている。スピーカーは2基を内蔵しており、iPad Proに搭載されているクアッドスピーカーに比べて音量は不足しており、特に横向きでタブレットで映画を見ているときに若干の不満を感じる。
バッテリーでの連続稼働時間は公称10時間となっており、他のデバイスとあまり変わりはない。実際に充電なしで1日中使ってみたが、娯楽目的のために1日数時間だけ使うようなユーザーにとっては、数日ごとに充電するぐらいで十分だ。
iPadは標準のSmart Keyboardや第1世代のApple Pencilには対応しているが、新しいMagic Keyboardは使えない。PCの代わりになるものを真剣に探しているのであれば、iPad Proの購入をじっくり検討したほうがいいかもしれない。iPad+Smart Keyboardはメールの送信などには便利だが、文字入力を頻繁に行うなど、それ以上に頻繁に文字入力が必要な用途では力不足かもしれない。
iPadは、このラインの中でもプライスパフォーマンスに優れた働き者だ。32GBのWi-Fiモデルがで税別3万4800円からと、iPadの中では最も安価なモデルとなる。iPad Airの10.9インチで64GBのWi-Fiモデルが税別6万2800円、iPad Proの11インチで128GBのWi-Fiモデルが税別8万4800円からだ。さらにはホリデーシーズンに向けて、セール価格での販売も確実視されている。実際にこれを書いているいま、米国のアマゾンではエントリーレベルの32GBのWi-Fiモデルが299ドル(約3万1500円)まで値下げされていた。
実際のところ、ほとんどのユーザーにとって第8世代iPadは、ほとんどのアプリを使うためには十分以上の性能を備える。前述のように、電子メールをチェックするためのデバイスを探している人には最適だ。また、いくつかのウェブサイトを訪問する、モバイルゲームをプレイする、Netflixを見るというった用途にも満足のいく使用感を得られるだろう。第8世代iPadは、かつてのアップルタブレットの中のメインストリームではなくなったが、立派なデバイスであることに変わりない。
画像クレジット:Brian Heater
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(翻訳:TechCrunch Japan)