感謝祭の直前にMicrosoftのブログがモバイル・メールアプリのAcompliを買収するつもりだとうっかり漏らしてしまった。この記事はすぐに削除されたが、今日(米国時間12/1)、両社は買収を公式に確認した。2億ドルの買収の一環として、24人ほどのAcompliチームはMicrosoftに参加する。
Recodeが最初の2億ドルという数字をつかんだが、われわれも別途この金額を確認した。支払いは全額キャッシュだという。
買収のニュースを伝えるAcompliのブログ記事によると、「18ヶ月前、われわれはモバイルメールは改善できるというという考えのもとにチームをスタートさせた。今日、われわれはテクノロジー、人材、販売力ともに大きな組織の一員となって努力を続けることとなった。Acompliのビジョンを世界中の何億人ものモバイル・ユーザーに拡大するチャンスだと期待している」ということだ。
AcompliはRedpointその他のベンチャーキャピタルから730万ドルを調達して、メール、カレンダー、ファイル共有をモバイルから一括管理できるパワーユーザー向けツールの開発にあたってきた。CEOのJavier Soltero、Kevin Henrikson、J. J ZhuangらのAcompliチームに投資することに「まったくためらいはなかった」とRedpointのSatish Dharmarajは、今朝のブログで書いている。
Microsoft社内で、AcompliはOffice 365事業部内の独立グループとしてiOSとAndroid向けメールアプリの開発に当たる。Acompliアプリ自体はすでにMicrosoft Exchangeメールをサポートしており、Office 365のファイルにもアクセス可能だが、Microsoftの買収にともなってさらに本格的な統合が行われるのだろう。
AcompliアプリがMicrosoft Exchangeのライバルのメールサービスのサポートを終了する計画がないというのは興味深い点だ。現在このアプリはExchangeの他に Gmail、Google Apps、iCloud、Yahooなどをサポートしている。Acompliの初期のユーザーの大部分はMicrosoftのライバルのサービスを使っていた。つまりMicrosoftはライバルのサービスのメール・クライアントをサポートすることになる。AcompliのユーザーにはMicrosoftのメール(Exchange、Outlook.com /MSN/Hotmail)やクラウドサービスを使わない、いわゆる「Google化してしまった」企業ユーザーも多い。
これはMicrosoftにとって大きな方針の転換だ。2年前だったらMicrosoftがGmailをサポートするメールクライアントを運営するなどとは想像できなかっただろう。
もちろんMicrosoftが期待しているのはAcompliのビジネス上の可能性だ。Microsoftとの交渉が始まる前に、 AcompliはすでにFortune 500の大企業をパートナーとしてエンタープライズ・システムの実験を行っていた。最終的な目的は大企業向けの有料メールシステムの構築だろう(現在、Acompliは無料アプリで、App StoreとGoogle Playに登録されている)。
Acompliが最終的にどのようにMicrosoftのビジネスに統合されるのか、Microsoftブランドに切り替えられるのか、他のMicrosoftブランドの製品とバンドルされるのかなどまだ不明な点が多い。しかし当面Acompliは他の生産性ツールとの統合ではなく、メールに集中するものとみられる。Acompliの核心はやはりメール処理であり、カレンダーやファイル共有機能はあくまでメールを補完するという位置づけだ。
Microsoftは最近モバイル分野に努力を集中しているが、その戦略は以前と異なり、Microsoftの世界に閉じこもるのではなく、エコシステム全体と協調していくことを目指している。これはMicrosoftという巨人にとって驚くべき新思考といえるだろう。Microsoft、自身がDropboxのライバル、OneDriveを運営しているにもかかわらず、最近、Dropboxとより密接な連携を目指す提携を発表している。
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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+)