Teslaは今日(米国時間5/2)、同社の微粒子フィルターがいかに効果が高いかを示す詳細情報を披露した。ネタバレ注意:こいつはすごい。車の中の空気をきれいにするだけでなく、車の〈外〉の世界もきれいにする。なぜこれが重要かは、明白ではないかもしれない。同社は非常に限定された顧客を想定していて、これは中国とインドへの市場進出の鍵となるかもしれない。
はっきり言って、車内空気清浄機は何ら新しくない。1970年代後半から高級車に塔載され始め、1980年代半ばからはさらに多くの車種に採用されている。HEPAフィルターはさらに新奇だが、それはこのレベルの浄化をするためにはそもそも車の密閉度が高い必要があり、従来の自動車設計では優先されていなかったためでもある。
Teslaの生物兵器防衛モードは、準致死量の汚染物質を数分のうちに検出不能にまで減らすことができる。すばらしい。さらに、車の外の汚染レベルも著しく下がっていることにも注目されたい。
HEPAフィルターを使うこと自体想像しにくいが、さらに生物兵器防衛モードでその上を行くことは、単なる派手な見世物行為なのか? 〈なぜ〉Teslaがこんなことをしているかは、まだ誰も解明していないようだ。
Teslaのブログには、いくつか自明な理由が書かれている。生物兵器について話せば見出しになる(上を見てごらん!)。しかし本当の論点は、工業規格の微粒子フィルターを使うことによって、Tesla Model SおよびModel Xが、工害のひどい環境に適していることを示すことだ。
もちろん現在のTesla車には様々な特徴があるが、一つないことと言えば「安い」ことだ。
この2つを合わせると、Teslaのターゲット顧客層のベン図が見えてくる。膨大な金銭を持ち、夥しい量の汚染に悩まされている人々だ。
工害は世界的問題だが分布は平等ではない
世界の公害都市トップ1000の約7%は米国にあり、これがパズルの1つ目のピースだ。自国市場のために特によく設計された車を作ることは常識だ ― 特に、公害に関して有利な立場にある電気自動車メーカーなら。
残りのデータも実に興味深く、なぜこの会社にとってこれが重要であるかのヒントを与えてくれる。インド、中国、トルコ、フランス、ドイツは、いずれもトップ1000に多くの都市を抱えている。どの市場も同じように裕福というわけではないが(これらの国々の一人当たりGDPは大きく異なる)、これらの国に、高級車を買える ― そして買う ― 人々が数多くいることは否定できない。
最も重度な公害に苦しんでいる国に限ると、データは大きく変わる。下のグラフは、WHOが「最も汚染されている」とする PM 2.5 が 25 µg/m³ を越える都市だけを見ている。
公害が中国経済を苦しめていることは明らかであり、最近の報告によると同国GDPの何と6.5%もが、公害対策関連に費されている。
インドもひどく苦闘している。この国は世界の公害都市トップ20のうち13を占めている。ちょうど今日(米国時間5/2)、Death By Breathと題された20分のドキュメンタリーが公開され、デリー、パトナ、グワーリヤル等の空気汚染がいかにひどいかが紹介されている。
両国で興味深いのは、Teslaが実行しようとしていることにとって、まさしく完璧なターゲット市場であることだ。
「HEPAフィルターは、Teslaを公害地域に最適な車にする」と考えることは、誤った方向だと私は信じている。むしろ逆だ。Teslaは大成功したい市場を探していて、高度なフィルターを加えた純粋な〈理由〉は、それらの市場がひどい公害問題に悩まされているからだ。
Teslaは大量の車を売る
既に書いたように、車にHEPAフィルターを使うことは決して新しくないが、それをウリにすることは少なかった。むしろ巨大な燃料食いのSUVが、室内は世界一きれいでも、走ることで問題の原因になっているという事実によって少々割引かれてきた。純電気自動車会社であるTeslaは、途上国の富裕層に対して、ユニークな特徴を堂々と提供することができる。自分たちの吸う空気のことと、問題の一部にならないことの両方を気にかけている人々だ。
高級車の世界では、Teslaの価格は比較的平均に近い。この分野には様々な選択肢があり、強力な差別化要因は著しい効果を生む。EVであることはアピールの小さな部分にすぎないが、北京、香港、デリー、ドーハといった、公害の蔓延と富の集中がベン図で重なるピークでは、その効果は倍増する。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)