Y Combinatorデモ・デー―TechCrunchが選ぶ今年の夏学期の有望スタートアップ8チーム

今日(米国時間8/20)、Y Combinatorの2013年夏学期のデモ・デーが開催され、45のスタートアップがそれぞれ全力で売り込みのプレゼンを行った。われわれTechCrunchチームは25人の著名なベンチャーキャピタリストの意見も聞きながら、もっとも有望そうな8チームを選んだ。今回、普段よりもわれわれの意見が一致したので選ぶのが楽だった。

全45チームのそれぞれについての紹介はBatch 1Batch 2Batch 3の各記事を参照されたい。以下、順不同でわれわれの推薦チームを簡単に紹介する。

SpoonRocketオンデマンドのオーガニック料理宅配サービス

SpoonRocketのデモではフードサービス2.0とか料理のUber とかいったバズワードが飛び交った。しかしこのスタートアップのこれまでの実績を検討するとそれも誇張ではないと思える。このサービスはオーガニック素材の一般向け料理と菜食主義者向け料理を作って宅配する。一種類が6ドルだ。最速10分で配達できるという。その秘密は、まず毎日2種類の料理しか用意しないところになる。これによってコストを大幅に削減できる。配達車は保温装置つきだ。SpoonRocketによれば、通年換算で200万ドル相当の売上実績があり、毎週112%も成長しているという。現在はカリフォルニアのバークレーで営業しているが、学生が夏休みだというのにこの好調ぶりはすばらしい。将来は全米の大都市圏に展開する計画だ。

SpoonRocketについてのわれわれの記事

Panorama Education: 学校のデータ処理

Panoramaには大きな野心がある。生徒、教師、両親から得たビッグ・データを分析して全米の学校jすべてに提供しようというのだ。

ただしスタートはささやかなプロジェクトだった。3人の共同ファウンダーがYale大学の1年生だったときに、地元のニューヘイブン地区の公立学校のデータ分析を手がけたのがきっかけだったという。この5月にファウンダーたちがYaleを卒業したとき、Panoramaはずっと大規模なサービスに成長しており、合計50万ドルの売上を得ていた。現在全米の3600の学校がPanorama Educationにデータ処理を依頼している。Panoramaでは全米から収集したデータを提供することであらゆる学校が教育の質を向上させるのを助けられると期待している。

われわれの記事

Amulyte: お年寄りの安全モニタ

アメリカには2000万人のお年寄りがいる。Amulyteではお年寄りの安全を図るためにペンダント型のオンライン・デバイスを提供しようと試みている。このデバイスはGPS、Wi-Fi、加速度計を利用してユーザーの行動をモニタし、異常を検知した場合は携帯電話網を経由して家族などに急報される。

ペンダントは149ドルで安全モニタ・サービスは月額29ドルだ。現在年金生活者の居住施設と提携して実験を行いサービスの改良を図っている。こうした老人介護ビジネスはアメリカだけで100億ドル市場だ。

AmulyteについてのTechCrunch記事はこちら

Buttercoin: Bitcoinを利用した迅速、低料金の国際送金

国際送金は年間5000億ドルにも上る巨大ビジネスだ。同時に手数料が高額であることで悪名高い。

Buttercoinはbitcoinを利用することで、国際送金を迅速かつ低料金で合法的に実現しようというサービスだ。 Bitcoinを使う新しいテクノロジーのおかげでライバルより20万倍も迅速な送金が可能だという。また各地の免許を持った金融機関と提携することですべての取引が完全に合法的なものになっている。

Buttercoinはbitcoinによる国際送金自体からは手数料を徴収しない。ユーザーが他の通貨とbitcoinと交換する際に少額の手数料を課する。

Buttercoinに詳しい説明はこちら

True Link: お年寄り向けクレジットカード

True Link Financialは認知力に障害のあるお年寄りユーザー向けの支払い手段を提供しようとしている。こうしたユーザーは詐欺やいかがわしい売り込みにひっかかる危険性がある。

True LinkはVisaのネットワークを通じてこのクレジットカードを利用した取引を逐一モニタし、不審な点がないか、ブラックリストに載っている業者との取引がないかをチェックする。アメリカにおける高齢者のクレジットカード利用額は年間19億ドルにもなるという。

詳しい紹介記事はこちら

EasyPost: 発送を効率化する

テクノロジー系企業にとってはUPS、USPS、FedExなどの古臭いレガシーな運送システムは頭痛の種だ。EasyPostは運送業者とテクノロジー企業の間に立って独自のRESTful JSON APIを提供することによってこの問題を解決しようとしている。テクノロジー企業は最も有利な料金を素早く見つけ出せるし、発送した商品のトラッキング情報などもリアルタイムで得られる。料金は1個あたり5セントだが、260億個という膨大な運送商品数の相当部分を取り込もうという野心を抱いている。事実、このサービスは毎月179%の急成長ぶりだ。すでに7万個のトラッキングを実施して、SVAngelを含む投資家から85万ドルを調達している。ライバルにはPostmasterShipHawkなどというサービスがある。

EasyPostについての以前の記事。.

Standard Treasury: 一般銀行向けAPI

Standard Treasuryは一般銀行に対して口座間資金移動のような処理を簡単にするためのAPIを提供しようとしている。現在、アメリカ最大の5行を含む16の銀行と交渉中だという。交渉がまとまれば、200万ドルから1500万ドルの収入となる。

Standard Treasuryについての記事。.

7 Cups Of Tea: 「聞いてあげる」サービス

誰でも一生のうちにはどうして人に悩みを聞いてもらいたいという苦しい状況をに落ち込むものだ。離婚、家族の病気、将来への不安等々だ。このとき選ぶ道は2つある。家族と友だちは無料で話を聞いてくれるが、その忍耐力には限度がある。心理セラピーは効果的かもしれないが料金も敷居も高い。7 Cups of Teaはこの2つの中間のオプションを狙っている。訓練を受けたボランティアの聞き手を見つけることができるオンラインマーケットだ。 料金は無料ないし寸志のお礼でよい。7 Cups自身はやりとりされる料金の40%の分配を受ける。ローンチは8週間前だが、これまで着実な成長を示している。現在活動中の「悩みの聞き手」は160人で毎週1800回ものセッションをこなしているという。

7 Cupsについての記事

この3ヶ月かそれ以上サービスの立ち上げに努力してきたファウンダーたちに健闘を祈る。

この記事の執筆にはColleen Taylor、Kim-Mai Cutler、Ryan Lawler、Jordan Crookが協力した。

〔日本版:Yコンビネーター シリコンバレー最強のスタートアップ養成スクール(TechCrunch Japanの滑川、高橋共訳)にはY Combinatorの歴史と内幕が詳しく描写されている。〕

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


老人在宅モニタ機器の情報化とネットワーク化とモバイル(移動)化を初めて実現したAmulyte

テレビコマーシャルから流行語になった“I’ve fallen and I can’t get up”(転んじゃって起きれないの)は、今やお笑いネタにもされているが、でも実際にあなたのおじいさんおばあさんがそんな状況になったら笑い話ではすまされない。

カナダのWaterloo大学の同級生Jaclyn KonzelmannとPerry Haldenbyにも祖父母がいるので、今出回っている高齢者用のモニタリングシステムのどーしょーもない限界に気づき、もっと良いものを作ろう、と思い立った。それが、Y Combinatorの支援で立ち上がったAmulyteとその製品、ご老人用のより“スマートな”救命ガジェット(lifeline)だ。

Konzelmannは開口一番、“これまでの製品はどれも、30年前の技術を使って基地局だけに接続する”、と言う。そもそも、それを身につけた状態でずっと家の中にいるならよいが、ばあちゃんがちょっと散歩に出かけたときはどうなるのだ? バスに乗って遠くの友だちを訪ねた、なんて“想定外の”事件が起きたら?

ばあちゃんは、予約価格99ドルを払って、Amulyteを買うべきだったのだ。同社の、その名を“お守り(amulet)”に借りたガジェットは、首にかけたりポケットに入れておく小さなペンダントで、シンプルな外見だが中身は濃い。Amulyteはセルラー無線、WiFi、GPS、加速度計、そして全体をコントロールするマイコンを搭載しており、しかも電池は一週間もつ。最終製品はスピーカーとマイクを搭載して双方向通信ができるようになる予定だが、この小さなペンダントにそれらを詰め込むのが難しい。

もちろん、部品はユーザには見えず、見えるものは真ん中にある大きな’help’ボタンだけだ。そのボタンを押すと、あらかじめ設定されている連絡先全員に、音声やテキストで緊急情報が行く。深刻な状態なら、救急サービスも呼び出せるが、その区別の方法は目下検討中だ。

また緊急時でなくても、当人の身体情報をいつでもチェックできる。活動のレベルや位置などだ(WiFiを使うので屋内でもよい)。それらの情報はリアルタイムで送られ、介護担当者などがリモートで状態を知ることができる。もちろん、異変があれば駆けつける。

このような、ネット接続型のハードウェアの多くがそうだが、Amulyteもその利用に課金するつもりはない。Konzelmannは曰く、ハードウェアの代金だけでコストは十分にカバーできる。ただし月額30ドルの会費を払うと、携帯電話的にも使えるし、またAmulyteの健康モニタポータルにもアクセスできる。

老人モニタ器具/システムの革新を目指すスタートアップは、Amulyte以外にもある。バージニア州のBeCloseは昨年、独自の在宅モニタリングシステムを発売したし、Livelyは人間ではなく、家中のいろんな物の位置や状態を追う。それらの中でAmulyteの差別化要因は、家の外でも使えるし、介護者をはじめ複数の連絡先に情報が行くことだ(緊急時送信と常時モニタリングの両方)。文字通り“スマートな”製品だと言える。

ただし製品の完成と発売は数か月後だ。今二人はもっぱら、デザインを磨き上げ中で、いろんなプロトタイプ機を地元の老人ホームでテストしている。評判は概して良いが、消費社製品としての完成は来年初頭とのこと。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))