Apple Watch Series 5のレビューは難しくない。昨年のSeries 4とそれほど大きく変わるところもない。大型ディスプレイ、触覚的に強化されたデジタルクラウン、転倒検出など前任機が獲得した利点を、そのまま受け継いでいる。その上、際立った特徴として、常時表示ディスプレイがある。毎年のように、独創性に富んだものを提供してくるApple Watchは素晴らしい偉業と言えるだろう。
アクセシビリティの観点からすると、すでにSeries 4で優れていたと思われる点は、すべてこのSeries 5にも受け継がれている。これは、これまでで最高のApple Watchであり、市販されているものの中では、アクセシビリティの点でもっとも優れたスマートウォッチだと言い切れる。それでも、いくつか気になることもある。
常時表示
私がレビューしたのは、Apple(アップル)から送られてきた44mmスペースグレーのアルミニウムケースのモデルだ。このSeries 5を長く使えば使うほど、常時表示ディスプレイについて複雑な気持ちにならざるを得ない。
時計として全体的に見た場合、この新しいディスプレイの意義は、何のためらいもなく認めることができる。その一方で、実際に使ってみるとこの常時表示ディスプレイには期待を裏切られることがあるのも事実だ。決して常時表示が悪いというわけではない。現状の実装では、視覚障がいのある私のニーズにマッチしない部分があるということ。
問題は明るさだ。現状の常時表示ディスプレイは、そのまま手首に視線を移して時刻を確認するには私にとって十分な明るさがない。私の場合、きちんと見えるようにするにはどんなデバイスでも常に最大の明るさに設定する必要があるので、その点は問題となる。他のレビューワーは「Watchを何気なく見下ろして時刻を見られるのは、機械式時計と同じ感覚で素晴らしい」というようなこと書いている。当然ながらそうした人たちは、私よりはるかに優れた視力を持っているのだろう。私は、文字どおりにそうすることができないのだ。そのため、これまでのApple Watchと同様に、手首を軽くひねるようにして時刻を確かめている。そうすることで、私の設定ではApple Watchの画面の明るさが最大となり、ようやく何時なのかわかるというわけだ。
これに関しては、ウォッチフェイスがアナログでもデジタルでも、まったく関係ない。例外は、Numerals Duoフェイスの「塗りつぶされた」スタイルを使う場合だけ。数字が非常に大きいので、何の問題もなく時刻が読み取れる。このフェイスは、コンプリケーションはサポートしていないものの、私の悩みの解決策にはなる。常時表示の状態で、画面の明るさが足りないことに対する回避策としては、十分機能するからだ。
私も、watchOSがディスプレイを暗く保つ技術的な理由は理解しているつもりだ。それでも「常にオン」モードでの輝度を調整する方法がないのは残念だ。アップルもそのような機能を将来追加するかもしれない。アクセシビリティの設定として意義があるはずだ。現状では、常時表示ディスプレイが一般的にいかに良いものであろうと私にとってはあまり意味がない。というわけで、私にとってはSeries 4でもSeries 5でも実質的にあまり違いがない。それは、Series 5としての魅力が失われてしまうことを意味する。Series 5を選ぶ最大の理由は、常時表示ディスプレイにある。オフに設定することもできるが、それではSeries 5の意味がなくなってしまう。
もし将来、常時表示ディスプレイが改善されれば、その時は、逆に私にとって大きなメリットをもたらす。頻繁に腕を持ち上げる必要がなくなるからだ。私はWatchを、右手首に装着している。これは、脳性まひのせいで体の右側が部分的にまひしているためだ。そのため、時刻を確かめたり、通知をチェックするために手首を上げるのは苦痛だし、それだけで疲れてしまうこともある。常時表示の状態で見えるようになれば、それもだいぶ改善されるだろう。ずっと明るく表示し続けるようになれば、Watchを見るために手首をねじる必要もなくなる。私だけでなく、同じような悩みを持つ人の苦痛や疲労を、和らげてくれるはずだ。
パッケージングには問題アリ
オリジナルのApple WatchであるSeries 1からSeries 3までは、Appleは「オールインワン」の製品としてWatchをパッケージングしていた。言い換えれば、バンドはWatch本体に固定されていた。そのままつかんで、すぐに使うことができた。Watchを箱から取り出すだけで、自分に似合うかどうか、iPhoneとペアリングする前から確かめることができたのだ。
昨年のSeries 4から、AppleはApple Watchのパッケージングを変更した。バンドとWatch本体は、別々に箱に収まっている。腕に巻く前に、まずバンドをWatch本体に取り付ける必要がある。私の以前のレビューでは、この変更は「退化」だと評価した。もちろん、なぜそうなっているのか、営業的な理由は理解している。このSeries 4のパッケージング方法は、Series 5でも継続されている。まったく残念だ。
このような構成についての問題は、昨年のレビューで私が書いた通りだ。つまり、Watchとバンドがバラバラになっていることでフラストレーションを感じる人もいるということ。認知的負荷と細かな運動能力の両面で、困難を感じる場合がある。私も、製品レビューワーとしての経験は長いが、それでもレビュー用の製品を組み立てているとき、イライラする気持ちを抑えきれないほどだった。
常時表示ディスプレイの明るさを暗く設定している理由と同じように、Apple Watchのパッケージがこうなっている理由も完全に理解している。新設されたApple Watch Studioを利用して、ケースの素材や、さまざまなバンドを自由に組み合わせることができるのを考えれば、それも当然だろう。これは、アクセシビリティと、その支援技術に関するレポートが、いかに重要かを示す端的な例だ。製品のパッケージがどうなっているかといったことを事細かに報告することは、障がいのある人にとって非常に重大なことなのだ。アップルの製品が、これだけ崇められている理由の1つは、そのパッケージの洗練されたシンプルさにある。製品を箱から取り出すことは、新しいApple Watch、iPhone、あるいはiMacを使い始める際の、最高の体験であるべきもの。特に障がい者にとってはそうなのだ。もしそれが、まるでジグゾーパズルのように、あれこれいじらなければならないものだと、その悪い印象はずっと後まで残ってしまう。私はなんとかすることができたが、できない人も多い。これは心に留めておくべき重要なことだ。すべては可能な限りアクセシブルでなければならない。
結論
Apple Watch Series 5が素晴らしい製品であることは間違いない。最もアクセシビリティに優れた、最高のApple Watchという称号を与えることができる。ただし、注釈が必要だ。私は、Series 5にアップグレードしたいという強い願望は持っていない。それでも正直に言うと、先月のイベント以来、チタニウムの誘惑はずっと頭の中に渦巻いている。常時表示ディスプレイに関して指摘した問題は、ソフトウェアのアップデートだけで簡単に解決できるはずのもの。もしアップルが明日にでも、明るさを調整するスライダーを追加したら、私は即座に1台発注するつもりだ。しかし今のところ、常時表示は常に明るいわけではない。これは最悪。
ともあれ、Apple Watch Series 5は、だれにでも勧められる製品だと心底思っている。私の弱い視力のせいで、そのままでは常時表示ディスプレイを見るのは難しい。そういう人は私だけではないはずだ。しかし、それによって、これが最高の、最もアクセシビリティに優れたスマートウォッチであるという事実は揺らがない。しかも他に大差をつけている。常時表示ディスプレイも、時間が経てば、世代を重ねて洗練されたものになるに違いない。それまでは、Series 4とwatchOS 6が、私にとってかなりイケてる組み合わせなのだ。
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(翻訳:Fumihiko Shibata)