PCやスマホで建機・重機を遠隔操作できる「Model V」を東大発ARAVが提供開始、後付け装着でも利用可能

建設現場のDX・自動化を目指す東京大学発スタートアップのARAVは6月18日、スマホ・PCなどで建設機械(建機)を遠隔操作できるようにするシステム「Model V」の提供を開始した。10~20年以上前に発売されたような古いタイプの建機でも、改造することなく後付けで装着することで遠隔操作が可能になる。

現在建築現場では、「年間死亡者数が多い」「若者の就業率が低く高齢化が深刻」「建設・採掘の人手不足が加速」といった課題があり、安心・安全な働きやすい環境を整備することが急務となっている。

  • 年間死亡者数が約300人以上おり、全産業の33%前後と危険な現場
  • 29歳以上の就業者が11%。全産業と比較して若者の就業率が低く高齢化が深刻
  • 建設・採掘の有効求人倍率が約16%と人手不足が加速

また建築現場の建築機械についても、「粉塵が舞っている」「『高所や斜面での作業』といった環境要因を改善し、作業員が働きやすい環境を作りたい」「『夏は暑く冬は寒い』という季節要因にとらわれず作業をしたい」といったニーズがあるという。

ARAVではこれらの課題を解決するため、インターネット経由で建機を遠隔操作可能なシステムを開発・提供してきた。そして今回、過去に提供してきたシステムを改善・パッケージ化し、Model Vとして提供を開始した。ARAV調べ(2021年5月31日現在)では、スマートフォンやノートPCなどマルチデバイスに対応し、独自技術でセキュアにインターネットを介し建機を遠隔操作できるのは同社のみとしている。

Model Vは、エッジコンピューターやアタッチメントなどのハードウェア、遠隔操作組み込みソフトウェア、操作時のインターフェースを含むシステムとして構成されている。プロダクトを建設機械に取り付けることで、スマートフォン・タブレット・PCなどの通信機器から遠隔操作が可能になる。

PCやスマホで建機・重機を遠隔操作できる「Model V」を東大発ARAVが提供開始、後付け装着でも利用可能

プロダクトイメージ。画像は制作途中のものにつき、実際の仕様とは異なる場合がある

PCやスマホで建機・重機を遠隔操作できる「Model V」を東大発ARAVが提供開始、後付け装着でも利用可能

取り付けイメージ。画像は制作途中のものにつき、実際の仕様とは異なる場合がある

また遠隔操作時にスマートフォン・タブレットを利用している場合は、タッチ操作に対応。専用・汎用のコントローラーを取り付けるとより快適に操作できるという。無線・有線の汎用コントローラー、ジョイスティックコントローラーなども接続でき、ARAVは操作者に合わせたインターフェースを用意するとしている。

東大発ARAVがスマホ・PCで建機建機を遠隔操作できる「Model V」を提供開始、後付け装着でも利用可能

ノートPCとジョイスティックコントローラーを組み合わせた利用イメージ

東大発ARAVがスマホ・PCで建機建機を遠隔操作できる「Model V」を提供開始、後付け装着でも利用可能

スマホを利用した操作イメージ

なお「Long Range Ver.」と「Short Range Ver.」の2種類があり、Long Range Ver.では、1141km離れた土地からも遠隔操作が可能だ(実証実験を伴う接続可能距離の最大実測値)。過去に富士建と行った共同の実証実験では、東京・佐賀間で遠隔操作に成功しており、離れた県での使用も問題なく行なえるという。

Short Range Ver.では、100kmまでの接続・操作が可能としている。これは、「現場と本社」「現場と操作者がいる場所」などの距離が100km圏内であることが前提の場合に適しているそうだ。

 

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建機の遠隔操作や自動操縦で建設現場のDXを進める東大発スタートアップARAVが6300万円を調達

カテゴリー:モビリティ
タグ:ARAV(企業)遠隔操作 / リモートコントロール(用語)建設 / 建築(用語)、重機 / 建機 / 建設機械(用語)、東京大学(組織)日本(国・地域)

建機の遠隔操作や自動操縦で建設現場のDXを進める東大発スタートアップARAVがシードラウンドで6300万円を調達

建設現場のDXを進めるARAV(画像は同社HPより)

建設現場のDXを進めるARAV(画像は同社HPより)

建設現場のDX・自動化を目指す東京大学発スタートアップのARAVは3月8日、シードラウンドにおいて第三者割当増資による6300万円の資金調達を行ったと発表した。引受先は東京大学協創プラットフォーム開発(IPC)となる。今回の資金調達で建機の遠隔操作システムパッケージ化などを進めていく考えだ。

ARAVは2020年4月に設立し、ロボット工学を用いて建機の遠隔操作や自動操縦に取り組み、既存の重機に後づけするプロダクトを開発している。建設現場のDXを促進し、研究・開発・実証実験を通じて収集・解析したビッグデータを活用することで、建設現場が抱える課題の解決を目指す。

会社設立から1年経たずにARAVは事業を大きく拡大する。

2020年4月に設立して以来、同社は国土交通省の「建設現場の生産性を向上する革新的技術」に選定されたほか、伊藤忠TC建機と建設機械の遠隔操作実用化に関する開発業務委託契約も結んでいる。

伊藤忠TC建機とは、ARAVの建設機械遠隔操作装置技術をベースに災害対策用遠隔建設機械操作システムの早期実用化を目指す。今後、実際の救助や普及作業を行う消防組織、地方自治体、災害救助犬組織とも連携し、実証実験を行う予定だ。また、現在10社以上の建機メーカーらと遠隔および自動化の共同開発を行っているという。

今回の調達資金では事業投資と採用活動の強化していく。特に遠隔操作システムのパッケージ化や自動制御システム開発を行う方向だ。

遠隔操作では、災害時や製鉄所といった過酷な労働環境下における対応を進め、実用化を目指す。一方、自動制御システムは単純な反復作業がともなう現場を改善していくため、開発に注力していく。

この他にもARAVは、建機メーカーだけでなく建機のリース会社とも提携して、特殊な建機を購入せずに遠隔操作や自動運転できる建機を日本中で利用できる環境を整備していく。

ARAVの白久レイエス樹代表は東大IPCからの資金調達について「取引先企業様と実証実験した成果を踏まえた量産化準備に向け、β版の生産体制を構築するための人材採用を強化し、ベンチャー企業としてさらなるDXソリューションを提供できるよう取り組んでいく」とコメントした。

日本生産性本部の調査によると、建設業界は年間60兆円という市場規模を持ちながら、1990年代以降の労働生産性は横ばいとなっている。労働時間は他産業と比べて年間300時間も多く、過酷な労働環境は若年層の定着率低下を招く一因となっている。しかし、国交省によると、業界内の労働人口における高齢者(60歳以上)は全体で4分の1以上を占めるなど、人手不足の改善、生産性向上が大きな課題となっている。

カテゴリー:ロボティクス
タグ:ARAV建設DX日本資金調達