米国を本拠地とする電気通信事業者のVerizon(ベライゾン)*はB2Bビデオ会議プラットフォームの老舗のBlueJeans Network(ブルージーンズネットワーク)の買収に5億ドル(約539億円)近い金額を注ぎ込んだとウォール・ストリート・ジャーナルがスクープしている。
ベライゾンのスポークスマンは売却価格は5億ドルに近いことは認めたが、正確な金額は開示しなかった。Crunchbaseの記録によると、約10年前の創業以来、ビデオ会議プラットフォームのBlueJeans Networkは、米投資家NEA主導による2015年のシリーズEラウンドで約1億7500万ドル(約189億円)を調達している。
この取引に関するベライゾンのプレスリリースでは「没入型ユニファイドコミュニケーションポートフォリオ」拡大を目的とする、企業グレードのビデオ会議とイベントプラットフォーム買収の正式契約が発表された。
同プレスリリースでは「顧客はベライゾンの高性能グローバルネットワーク上で、BlueJeans Networkの企業グレードのビデオ体験ができるようになる。プラットフォームはベライゾンの5G商品計画の中核にも組み込まれ、遠隔医療、遠隔教育、フィールドサービス業務などの高成長部門でのセキュアでリアルタイムのエンゲージメントソリューションを提供する」としている。
Verizon Business(ベライゾンビジネス)CEOのTami Erwin(タミ・アーウィン)氏は声明の中で「私たちの働き方は常に変化している。企業と公共部門の顧客には、エンタープライズ対応のセキュアで手間のかからない、既存のツールと統合できる包括的な製品スイートが絶対に必要だ」と補足した。「ここ数カ月、あらゆる規模とセクターの事業で、コラボレーションとコミュニケーションは最優先事項になっている。BlueJeans Networkのビデオプラットフォームをベライゾンビジネスの接続ネットワーク、プラットフォーム、ソリューションに組み合わせ、顧客のニーズに応えることを非常に楽しみにしている」と述べている。
この買収は、 新型コロナウイルス感染症(COVI-D19)のパンデミックの影響を受けて世界中のホワイトカラーが自宅で会議に出席するようになったことによるビデオ会議の急増時期に重なる。
ただしここ数週間のビデオ会議の急激なブームで最も名が知られているのは、BlueJeans Networkのライバル企業であるZoomだ。Zoomは最近、同社プラットフォームを利用する1日の会議出席者数は12月の1000万人という控えめな数から、3月には2億人に急増したと発表している。
このような急激な成長と一般ユーザーの利用に伴いZoomには厳格な精査が行われ、その結果、セキュリティとプライバシーの懸念による多数の警告(一部には禁止も)が発生した。2020年4月初めに同社は、ユーザーが急増し、その点検により表面化した多数の問題解決に集中するため、商品開発を当面凍結すると発表し、この急成長に多少の陰りが見えている。
単純に利用数のみで比較すると、B2Bに焦点を絞り続けているBlueJeans NetworkはZoomより規模が小さいことには違いない。同社のスポークスマンはTechCrunchに対して、現時点でARRは1億ドル(約108億円)、顧客は1万5000人を超えると語っている(ユーザーの中にはFacebookやディズニーも名を連ねる)。
ベライゾンにとって最も関心が高いのは有料ユーザーだろう。これは、新型コロナウイルス感染症の影響によってデジタル化が加速期を迎える遠隔医療、遠隔教育、フィールドサービス業務の領域になる。一方でロイターによると、一般的にキャリアは、パンデミックで増加した使用数を収益に還元できていないらしい。これは新型コロナウイルス危機の間に株価を襲った固定費、負債、市場の混乱が重なった結果である。B2Bツールを買収することは、ネットワークによる収益を増やす一案かもしれない。
BlueJeans NetworkのCEOであるQuentin Gallivan(クエンティン・ギャリバン)氏は声明の中で「BlueJeansの世界クラスの企業向けビデオコラボレーションプラットフォームと信頼のブランドを、ベライゾンビジネスの次世代エッジコンピューティングイノベーションと組み合わせることで、大きな差別化要因を持つ魅力的なソリューションを両社の顧客に提供できる」と述べている。また「当社はベライゾンのチームに加わることに大きな期待を寄せ、ビジネスコミュニケーションの未来はここから始まると確信している!」という。
ベライゾンは4月16日、BlueJeans Networkの創業者と「主要社員」が買収の一環として同社に加わり、BlueJeansの従業員は取引の完了次第、ベライゾンの従業員になると述べた。これは通常の完了条件に応じて、第2四半期になると予測される。
ブルージーンズの共同創業者であるKrish Ramakrishnan(クリシュ・ラーマクリシュナン)氏は以前にもイグジットを遂げた経験がある。自社のスピンアウトの間に、自らも働いたことのあるネットワークの大手Cisco(シスコ)に数社のスタートアップを売却している。
*注:ベライゾンはTechCrunchを運営するベライゾンメディアの親会社でもある。
画像クレジット:David Ramos / Getty Images
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(翻訳: Dragonfly)