ボディカメラの装着で警官に対するクレームが93%減少

METHUEN, MA - AUGUST 20: Methuen police officer Nick Conway wore a body camera while he wrote a citation on Saturday August 20, 2016. In May, the Methuen Police Department, with little fuss, became the first major law enforcement agency in Massachusetts to start using body cameras, putting them on 47 patrol officers after a six-month trial run last year. (Photo by Matthew J. Lee/The Boston Globe via Getty Images)

ケンブリッジ大学の研究によれば、警察官へのウェアラブルカメラの装着を義務付けると、警察官に対する苦情が大幅に減ることがわかった。特定の警察署にて一部の警官に対してカメラの装着を義務付けた場合、カメラを装着しない警官の振る舞いも変化するようでもあるとのこと。

データは7つの警察署から集めたものだ。2014年および2015年に収集し、記録時間はトータルで140万時間で、対象となったのは1,847人の警察官だ。データはCriminal Justice and Behavior誌に掲載され、こちらでPDFを閲覧することもできる。

カメラを装着する警察官は、1週間毎にランダムに選ばれた(全体の半数の割合で装着させた)。装着が義務付けられた警察官は、他人と話すシーンでは常にカメラをオンにしておくことが義務付けられた。カメラがどのような効果をもたらすのかについては、警官への不満の多寡を指標として用いた。たいていの警察署では、問題行動のあぶり出しのために一般市民から寄せられる不満などについて計測してもいるので、カメラの効果を確認しやすいという意味もあった。

カメラ装着実験を行う前年は、警官の行動に対する不満申し立て件数は1539件となっていた。そしてカメラの装着実験を行った2年目には、不満申し立ての件数は113件に減少したのだった。

Figure from the paper showing how much complaints were reduced in each experimental site.

実験を行った警察署における、不満申し立て件数の減少率

この結果を見る限り継続した研究ないしカメラの採用を本格的に検討すべきであるようにみえる。もちろん不満の申し立てが、必ずしも警察官による不適切な対応を示すというわけではないが、苦情の申し立て件数が減れば、調査のための時間も費用も削減することができる。また、研究では、カメラを積極的に採用すべきかもしれないもうひとつの変化も指摘している。

すなわち、カメラを装着した警察官に対する不満申し立てと、非装着の警察官に対する不満申し立て率に、違いが見られなかったのだ。

これはちょっと気になる話だ。公平な証拠を記録に残すカメラの存在が、警察官および市民の双方を冷静にして、カメラが存在する場合にトラブルが減少するという方が正しい帰結であるように思える。しかしカメラを装着しない警察官に対する不満申し立ても同じように減っているのだ。

「カメラで収集したデータを何度もみるうちに、警察官側に振る舞いを変えるべきだという意識が生まれたのかもしれません。それにより、コミュニケーションがうまくいくようになったという可能性もあります」と、研究のリードオーサーであるBarak Arielはニュースリリース中で述べている。「100%近く苦情申し立て件数が減っている中、他に考えられる要因は見当たりません」。

研究社たちは「contagious accountability」と名付けている。カメラに監視されていなくても、ただしい振る舞いをしようとする人が増えていく、というような意味だ。

この調査からは、警官が自らの振る舞いを大きく変えたのか、それとも苦情申し立て側(ないし被疑者など)が慎重になっているのかはわからない。両者が相乗効果を示しているのか、あるいは別の要因があるのかもしれない。そうしたことを明らかにしていくためには、さらに詳細な調査が必要ともなるだろう。ただ、調査の結果をいろいろとみてみる限り、他の要因が考えられるにしても、警官側の振る舞いが変わった可能性が高いようにもみえる。

今後、さまざまな角度からの検討が望まれるのはもちろんのことだ。しかしここに示される結果は十分に魅力的に見える。警察はウェアラブルカメラの導入に前向きであるべきなのかもしれない。

Arielおよび共同執筆者のAlex Sutherlandは、CambridgeのFestival of Ideasにて今回の研究成果を発表することになっている。近くに住んでいて興味のある方は、ぜひでかけてみてはどうだろうか。

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(翻訳:Maeda, H

グラフェンを電極として使用すると効果的な脳移植が可能になる…二つの大学の研究より

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厚さ1炭素原子の超薄炭素結晶シート、グラフェン(graphene)は、それを通常のバルク材から取り出せるようになって以来この10年あまり、科学者たちを興奮させてきた。なぜなら、この特殊な炭素結晶体により、電子工学と生物学の混合が可能と思われてきたからだ。

Cambridge Graphene Centreとイタリアのトリエステ大学が行い、ACS Nano誌に載った最新の研究は、有効性が高くて柔軟性に富む脳移植が、この素材により可能であることを示唆している。今日の、シリコンやタングステンなどの剛体でできている電極には、術後痕における信号の喪失という問題があったが、グラフェンを使用するバイオデバイスでは、それがないことが期待される。

この研究の中心命題は、人間の脳は柔らかい組織でできているから、電極にもそのような可撓性があるべきだ、という点にある。またグラフェンは、生体適合性(biocompatibility)が優れている、と見なされている(ただしその毒性については、現段階で結論が出ていない)。

この、ケンブリッジ大とトリエステ大の研究が含意しているのは、将来的にはグラフェン製の電極を安全に脳に移植できるのではないか、という点だ。それによりたとえば、失った感覚を取り戻したり、四肢の麻痺を治癒できるのではないか、と思われる。癲癇やパーキンソン病などの治療も、可能になるかもしれない。このような将来の可能性はきわめてエキサイティングだが、現状はまだ理論の段階にすぎず、実用化は遠い先だ(ラットの脳の培養試験ではグラフェンの利用がすで成功している)。

研究者たちの注記によると、以前、ほかの研究集団が、特殊処理をしたグラフェンと脳内のニューロン(脳の神経細胞)を対話させる可能性を示したが、しかしその特殊処理をしたグラフェンはS/N比がきわめて低いという問題があった。何も処理をしないグラフェンは、グラフェンの重要な特性のひとつと言われているように、伝導性がとても高いので、良質な電極を作れる。その脳細胞との相性も、ラットの脳のニューロンでは良好だった。

トリエステ大学のLaura Balleriniは、声明文の中で次のように述べている: “われわれは初めて、グラフェンをニューロンに直接インタフェイスすることに成功した。そのときわれわれは、ニューロンが脳の活動を示す電気信号を生成することをテストし、それらのニューロンがその神経信号伝達特性を正常に保持していることを確認した。これは、被覆をしないグラフェンを用いる脳神経接合部(シナプス)の活動に関する、初めての機能研究である”。

科学者たちは、この研究が、神経とインタフェイスするための電極としてグラフェン製の新しい素材を使っていくための研究開発道程の、“最初の一歩”にすぎない、とほのめかしている。だから、グラフェン製のバイオデバイスが来年のCESに登場することはありえない。登場はおそらく、20年後か。

彼らが次の研究課題としているのは、グラフェンのさまざまな形状による、対ニューロン効果の違いだ。また、生物学的応答性を良くする(シナプスの性能と神経の活性化能力)ための素材の調整も、課題となる。

“この研究が、より良い脳深部移植技術の道を拓(ひら)き、脳の活力増進とコントロールを可能にする高感度で無用な副作用のない技術の実現に、つながることを期待したい”、とBalleriniは付言している。

 

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

イギリスのケンブリッジ大学が現代ウェールズ語の研究にTwitterを利用

Twitterはすごい、のまた一例: ケンブリッジ大学の言語学者たちが、ツイートを分析して、イギリスのケルト語系言語の一つであるウェールズ語の使われ方の変化を調べている。ウェールズ語はウェールズの住民の1/6(約56万人あまり)が使っているにすぎないが、でもその多くがツイートもウェールズ語でやっているため、研究の出発点となるには十分な量の生(なま)データが得られるのだ。

ケンブリッジ大学の理論および応用言語学部(Department of Theoretical and Applied Linguistics)のDavid Willis博士は、研究におけるTwitterの役割を次のように述べる…中でもとりわけ言語学にとって有益なのは、それが日常的な会話言語であることだ。つまり、人が日常使っているとおりの言葉であること:

言葉の日常の用例を拾おうとするときの難題は、回答者が緊張して構えることなく、こちらが求めるふつうの言葉を語ってくれることだ。特定の構文について、それがどの地方の人びとの言葉かを知りたいとき、通常なら、相当な時間をかけて試験的研究を行わなければならない。しかしTwitterなら、人びとが実際に使っている言葉そのものを、30分で捕捉できる。

私の中心的な関心は言語のシンタクス–文の文法的構造にある。そして私の長期的なねらいは、ウェールズ語方言のシンタクスの総覧集を作り、言語の今日的な使われ方と、その変化の原因となっている多様な影響要素を理解することだ。そのために必要なのは、ウェールズ語を話す人口を構成している多様なセクタから口語の実例を集めて、時空双方にわたる比較を行うことだ。

Twitterを利用することによってWillisは、ウェールズ語が今どのように変わりつつあるかという、変化の諸側面を同定できた。そしてそのデータを利用して、次のフィールドワークで行う口頭インタビューのための質問を作った。

これまでの研究で同定された言語学的変化には、代名詞や多重否定形の使い方が、ウェールズ語を家庭で学んだか学校で学んだかによって違うことが挙げられる。学校で学んだ者のウェールズ語には、英語的な構文が紛れ込みやすいのである。

研究社たちによると、ウェールズの人口の約1/5はウェールズ語で学校教育を受けるので、言語の取得場所の違いに関するこのようなデータは、ウェールズ各地における今後のより適切な言語教育方針の確立に資するであろう。たとえば、第二言語としてのウェールズ語はどの形のものを教えるべきか、あるいは、学校でもウェールズ語の方言と書記言語(書き言葉)としての標準ウェールズ語の両方を認めていくべきか。

下の画像は駐車(ウェールズ語で‘maes parcio’)に関するお喋りのツイートだが、これが今後の言語教育の方針確立に役立つのだ。そのわずか140文字の情報片が、これだけクールにお役に立つとは。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))