建設工事受発注プラットフォーム運営のクラフトバンクが体制変更とともに約3.5億円の資金調達

建築工事の受発注プラットフォームを運営するクラフトバンクは6月15日、昨今の建設業におけるDX需要を鑑み、経営ガバナンス体制を新たにするとともに、総額約3億5000万円の資金調達を実施したと発表した。

クラフトバンクは、2020年4月より日本最大級の施工力データベースを活用した「クラフトバンク協力会社紹介」サービスを展開。2021年5月には、内装工事会社として社内DXを推進してきた実績を基に「クラフトバンク建設DX相談窓口」を開設し、建設業界のDXに向けた経営者支援をスタート。登録工事会社数は約2万3000社に上る(2021年6月時点)。

同社は内装工事業を運営する現ユニオンテックのR&D部門として約3年間、マッチング事業および受発注事業を展開してきた。そしてプラットフォーム事業に特化した企業体を設けることで、よりスピード感をもって建設業のDXに貢献すべく、2021年4月15日に会社分割を実施。取締役会および株主総会における決議を経て、社外取締役にはDCM Ventures General Partnerの本多央輔氏が、社外監査役としては前スペースマーケット取締役執行役員CFO/CHROの佐々木正将氏が就任した。

また、ユニオンテックの既存株主であったDCM Venturesとみずほキャピタル、デライト・ベンチャーズ、三菱UFJキャピタル、高野秀敏氏(キープレイヤーズ代表取締役)、城下純一氏(前ロスチャイルドジャパン会長)ら個人投資家より、総額約3.5億円の資金調達を実施。さらに2021年6月より、あらゆる構造物の検査・調査・診断を行うジャストと資本業務提携を締結した。

今回調達した資金により、新規プロダクト開発の加速、プロダクトマネージャー/エンジニア/デザイナーをはじめとする人材の採用強化を行うとしている。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:CraftBankユニオンテック日本(国・地域)

ユニオンテックが建設職人マッチングサービスを「CraftBank」にリブランド、詳細な企業プロフィールで精度高める

ユニオンテックは3月16日、同社が運営している建設職人と建設現場をマッチングするサービス「SUSTINA」のブランド名を変更することを明らかにした。新しいブランド名は「CraftBank」となる。実はCraftBankという名称は、同社が運営する建設職人とコンシューマーをマッチングするBtoCサービスですでに使われていたが、今回のリブランドではCraftBankの従来サービスを終了したうえで、SUSTINAのサービスを移管することになる。

同社は2000年創業の建設会社。最近ではネット事業に力を入れており、建設会社であることを生かして、アナログな処理が多い建設業界のデジタルトランスフォーメーションを自社自ら進めている企業だ。スタートアップではないが、ネット事業に充てるための資金として2019年にはVCから約10億円を調達した。なお新CraftBank(旧SUSTINA)は、2019年に千葉県を中心に発生した台風による被害を受け、人手不足が深刻だったブルーシートの張り替え作業の職人の募集に活用された。

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同社社長の韓 英志氏は、SUSTINAを既存のサービス名であるCraftBankにリブランドした狙いについて「当初BtoC向けにサービスを提供していたCraftBankですが、実際には不動産業者など法人が建設職人を探すサービスとして活用されていた側面もありました」と説明する。サービスの詳細は異なるが、CraftBankもSUSTINAと同様に結果的にはBtoB向けのサービスになっていたわけだ。

また実際に工事現場で職人の声を聞いたところ「ユニオンテックが提供しているマッチングサービスの内容を知っている職人は多いのですが、サービス名としてはCraftBankのほうが浸透していたことも理由です」と語る。

新CraftBankのサービスの軸となるのは企業データベース。同社がこれまで各種ネットサービスを運用している中で感じたのが「ネットだけのマッチングには限界ある」ということ。自社のPRが得意な会社もあれば、掲載情報が少ない会社もあり、ネット上ではそういった公開情報だけで連絡をとるかどうかを判断するしかない。そこで同社は新CraftBankに登録している建設職人や工務店の詳細な情報を収集してマッチングの精度を高めることに決めた。

この取り組みは昨年から進めていて、当初は同社の建設部門で実際に取引のある業者からデータ収集を開始。現在では新CraftBankに登録している1万5000社のうち約5000社の企業プロフィールをデータ化済みだ。ちなみに企業プロフィールのヒアリングは1社あたり30〜40分かけているという。今後は1日50社のペースで収集する予定で「年内に1万5000社のデータを収集したい」と韓氏。

企業プロフィールとして各業者からヒアリングするのは、主要取引先、対応可能⼯事、希望⼈⼯単価、保有資格、加入保険など。なお、ヒアリングする項目についてはも同社の建設部門のスタッフとの数回にわたるディスカッションで決定したそうだ。「実際に新CraftBankのサービスを自社の工事案件に利用したところ、2019年12月から2020年2月までの3カ月間で80.4%のマッチング率を達成した」という。

一般的に建設現場では、1社がすべての作業を請け負うことはなく、鳶、基礎、電気、左官など工事内容によって業者を使い分ける。マンション建設など大規模工事になると発注する業者は20社を軽く超え、決められた工事期間内でそれぞれの業者が請け負う仕事の日程をスケジューリングする必要がある。しかし、天候や資材の調達状況、工事現場の状態などでスケジュールどおりに進まないことがほとんど。一方、受注する業者側は、工事日程が近い複数の仕事を同時に受けた場合、スケジュール遅延により一方の受注を完遂できないリスクが生じる。そのため、1人親方や社員が数人の工務店では一度受けた仕事が終わらないと次の仕事を受けられないこともしばしば。結果、ある程度融通が利く、取引実績のある業者内で仕事を仲介しあうという悪循環に陥っている。

新CraftBankではデータベースを活用してこういった悪循環を断ち切るのが狙いだ。同社プラットフォーム事業部でマネージャーを務める黛 尚太郎氏は「自社サービスながら当初は懐疑的でしたが、実際に使ってみると自分たちのコネクションを使って業者を探すよりも手間と時間が大幅に減りました」と語る。「心配していた工事の質は落ちず、むしろ上がったケースもありました」と続ける。ちなみに同氏は、もともとは同社の建設部門に所属しており現場監督経験もある人物だ。

ユニオンテックでは今回のリブランドに併せて、月額利用料のかからない「フリープラン」、月額2万円の「ライトプラン」に加えて、月額3万円の「ライトプラン+面談サポートお試しパック」という料金プランを新CraftBankに追加する。

新CraftBankでは、全国の建設職人や工務店を29工種、約1万5000社から希望条件で絞り込むことが可能だが、フリープランでは同時に2件まで、ライトプランでは同時に10件までという制限がある。自社の工事案件を掲載できる数、協力会社を募集できる数についても、それぞれ2件、10件だ。ライトプランではそのほか、協力会社募集の入稿を新CraftBank側に任せられるサービスある。

ライトプラン+面談サポートお試しパックでは、ライトプランのサービスに加えてユニオンテックの専門スタッフが当日〜5営業日に工事会社の面談承諾を得たうえで、最適な1社を紹介するサービスが付帯する。この新プランこそが、同社が独自に収集したデータベースを生かしたサービスだ。同社では今後、大手施工主などと連携して、下請け業者のデータベース化をさらに進めていく計画だ。韓社長は「大手と取引実績のある業者のうち80%程度は担当者変更などで取引が途絶えているケースが多いのですが、ユニオンテックではこの80%の業者を掘り起こしてデータベースにまとめ、生きたデータとして新CraftBankで活用したい」と話してくれた。

新型コロナウイルスの影響は建設業界でも深刻で、中国生産が多いトイレ設備などは資材が届かず工事が中断している現場もあると聞く。精度の高い建設職人のマッチングこそ、いま建設業界に必要なサービスではないか。

建設職人マッチングのユニオンテック、設立20年目にして米VCから約10億円調達、なぜ?

ユニオンテックは2月18日、シリーズAラウンドとしてDCMベンチャーズを引受先とする9.7億円の第三者割当増資を発表した。大規模な資金調達は、2016年10月のみずほキャピタルからの1億円に続き2回目、同社としては史上最大規模となる。DCMベンチャーズは、米国シリコンバレー発祥のベンチャー・キャピタル(VC)だ。

写真左から、ユニオンテック代表取締役社長の韓 英志氏、同会長の大川祐介氏、DCMベンチャーズでジェネラルパートナーを務める本多央輔氏

設立20年の建設会社が初のシリーズAラウンド資金調達

ユニオンテックは、2000年にクロス職人だった現会長の大川祐介氏がユニオン企画として設立。当初はクロスや床など内装仕上げの工事業を手がけていたが、ショップやオフィスの内装・管理などの空間事業にも進出し、2004年に現社名に変更した。2005年には設計デザイン事業、2009年にはグラフィック・ウェブデザイン事業に進出するなど、さらに事業を拡大。そして2016年には、施工主(ハウスメーカー、設計事務所、工務店)と職人を結びつけるB to Bのマッチングサービス「TEAM SUSTINA」(現・SUSTINA)のサービスを開始。2018年には、個人と職人を結びつけるB to Cの工事マッチングアプリ「CraftBank」の提供を始めた。

ユニオンテックの沿革

同社は2018年9月3日に新体制を発表。代表取締役社長を務めてきた大川氏が代表取締役会長に、代表取締役社長には取締役副社長の韓 英志氏が就任した。韓氏は、リクルートホールディングスでエグゼクティブマネージャーを務め、投資ファンドの設立や海外でのM&Aを手がけていた人物。2018年4月に同社入社後、約9カ月での社長就任となった。

2000年設立で20年目を迎えた同社が、なぜいまごろシリーズAラウンドでの資金調達なのか?代表取締役会長の大川氏と、代表取締役社長韓氏に話を聞いた。

とにかく建設職人の働き方を変えたい

大川氏によると「DCMベンチャーズの人と人脈、そしてなによりもビジョンに共感した」という。今回の資金調達により、DCMベンチャーズでジェネラルパートナーを務める本多央輔氏が社外取締役に就任し、SUSTINAやCraftBankなどのネット事業について協力していく体制が整った。

建設業界の問題点

創業者社長から会長になった大川氏は現在、建設職人の働き方やイメージの改革に取り組んでいる。「建設業界には職人をきちんと評価する仕組みが必要で、ユニオンテックで利用している人事評価システムを他社に開放します」という。同社の職人評価システムは、作業スキルはもちろん、コミュニケーション能力など多岐にわたり、評価ポイントは数十項目におよぶ。この職人評価システムにより「職人は自分の能力を客観的に判断できる。親方は職人の報酬を決める判断材料に使える。そして、第三者からは職人の与信情報にもなる」と大川氏。

大川氏は建設業界の現状について「40〜50代が主力で若手の職人人口が少ない。働き方改革によって若年層の職人を増やしたい」とも語る。建設業界では、施主(発注者)が決めた期間内で工事を終えなければならず、「納期が遅れると賠償問題になることもあり、期日厳守は当たり前。しかし、人手不足や天候不良などの不可抗力もある。そもそもの納期がギリギリだと、ネットなどを駆使して業務を最大限効率化したところで限界があり、結局は職人にしわ寄せが来る。その結果、残業や夜間作業、休日返上などが発生して労働環境がどんどん悪化していく」と大川氏。

このような建設業界の問題点を解決するため、大川氏は2018年に一般社団法人として「日本SHOKUNIN総研」を設立。同団体では、2019年4月に前述の職人評価システムをベースにした建検(建設キャリア検定)を開始、2019年12月に「ベスト職人賞」と呼ぶアワードを開催予定だ。

さらに同団体では、職人同士の定期的なミートアップも実施している。「建設業界ではこれまでも、例えば地域ごとに左官職人の集まりなどは開催されてきました。しかし、ほかの職種の職人と出会うことが少ないので、なかなか仕事が広がらないんです」と大川氏。こういった問題解決のためにミートアップを主催し、建設業界内の異業種人材交流を積極的に進めている。

ユニオンテックとしても、2018年12月にデニム地の新ユニフォームを発表するなど、3K(きつい、危険、汚い)という建設業界のイメージ払拭を目指す。

市場規模は51兆円超、いまアクセルを踏むとき

代表取締役社長の韓氏は「以前(みずほキャピタル)のように金融機関からの調達も考えたが、SUSTINAやCraftBankに先行投資していくうえで長期的なサポートが望めるDCMベンチャーズを選んだ」とコメント。続けて「ユニオンテックの空間事業は年間30数億円の売上があり、現在はそこから出た利益の数億円を毎年ネット事業に投入している。しかし、それではスピードが遅い。建設業界の現状を早急に打破することを目指し、目一杯アクセルを踏むことを決めた」とのこと。DCMベンチャーズは、シードステージ、アーリーステージの投資を中心とするVCで、創業20年を迎える企業に投資するのは異例だ。

「SUSTINAは現在、7000社ほどの大小の建設会社が登録していますが、2019年5月には1万社を目指したい」と韓氏。前述のようにユニオンテックの空間事業の売上は30億円超だが「実はそのうち40%程度が100万円未満の少額案件なんです。そして、資材の発注や職人の招集などは現在でも電話業務が中心なので効率がなかなか上がらない。こうした業務についてもクラウド化による効率化を図りたい」とのこと。

大川氏は「現在のSUSTINAは、急なスケジュール変更や職人不足など『困ったとき』に使われることが多いサービスですが、もっと使いやすいように改良して施工主や職人がいつでも使えるサービスにしたい」とコメント。前述の新ユニフォームの発表時には、建設業界に「カッコイイ」「稼げる」「けっこうモテる」という新しい3K定義への挑戦も宣言。「工事が設計図どおりに進むことはほとんどなく、AIといえども職人の仕事は奪えない」と、建設ラッシュが続く現在における建設職人の重要性を力強く語った。

市場規模51兆円超と自動車業界に次いで巨大な建設業界。仕事は山ほどあるのに、職人が全然足りていない。ユニオンテックは、職人の働き方改革と職人人口の増加を目指し、リアルとネットで事業を推進していく。

建設業界は51兆円超の市場規模