香港で6歳児からプログラミングを教えるFirst Code Academyが順調に成長…現代社会の必須の第三外国語に

selected-2586

[筆者: Josh Steimie]…デジタルマーケティングサービスMWIのCEO。同社のオフィスは合衆国と香港にあり、彼はCMOs at Work: How Top Marketers Build Customer Loyaltyの著者。

———-

#ILookLikeAnEngineerの人気の高まりとともに、プログラマのステレオタイプが壊されつつある。First Code AcademyのファウンダMichelle Sunも、そんなプログラマのステレオタイプ像から外れた人物の一人だ。同社は、6歳から上の子どもたちに、プログラミングを教えている。

自分にその気はなかったのに、ある種の集団セクハラ事件を契機にILookLikeAnEngineerを始めざるをえなかったIsis Wengerと同様、Sunも若くて女性で美人で、そしてプログラマだ。多くの人が、この4つのうちの1つは他の3つとミスマッチだ、と思うかもしれない。でもSunは、まさにそれによって、プログラマのステレオタイプをぶち壊そうとしているし、そこからさらに次の歩みを始めようとしている。

Sunは香港生まれだが、ここでは3歳にも満たない子どもたちが名門幼稚園の面接試験を受け、その後も子どもたちは学歴競争に明け暮れる日々を送る。

子どもたちのすべての関心や興味を、学歴競争が踏みにじる。若い脳を、丸暗記主義が支配する。香港の地下鉄の駅には、入試専門の家庭教師のポスターが氾濫している。まるで彼らが、ポップスターであるかのように。

香港っ子の目標は何だろう? 銀行やそのほかの金融企業に安定的な職を得て、企業内の出世の階段を上(のぼ)っていくことだ。でもSunは、それが未来に向かう理想のキャリアパスだとは思っていない。“これからの世界は、成績優秀な学生など求めていない”、と彼女は語る。“自分の記憶から情報を取り出すことだけが上手な人間は、もはや必要とされない。そんなことは、Googleがやってくれる。私たちにとって本当に必要な人間は、何かを創り出して、世界をもっと良い場所にできる人たちだ。そしてプログラミングは、子どもたちをそんな道の上に乗せる”。

SunはFirst Code Academyを始めるまでに、いくつかの起業を経験した。たとえばその中の、二人がお互いにスマートフォンをぶつけ合えば情報を共有できるBumpは、2013年にGoogleに買収された。スケジュールを共有するソーシャルメディアBufferも、彼女の作だ。Bufferを作ったあと彼女は、また新しいホットなアプリを作ることではなく、別の方向へ関心を向けた。

Sunはこう語る: “最初私は、テクノロジとその製品が多くの人びとに与えるインパクトに、心を惹かれた。プログラミングは最初のスタートアップを作ったときに始めた。そのとき、デベロッパのチームと一緒に仕事をして、彼らがやってることの中身に関心を持った。技術者たちと、もっと内容のあるコミュニケーションをしたかった。そこでまず、プログラミングに関する本を山のように読んだ”。

それから彼女は、女性のためのソフトウェアエンジニア育成校として有名なHackbright Academyに入学した。その、毎日一日中プログラミング漬けという環境の中で、プログラミングのスキルを磨いた。

selected-2581
“Hackbrightでは、LinkedInやDropboxのような大きなテクノロジ企業が主催するハッカソンに参加した。そして、プログラミングの能力があれば仕事も人生も無限の可能性が開けることを確信した”。

卒業後ベイエリアで仕事をしていたSunは、中学校の女子生徒たちにプログラミングを教える機会に遭遇し、そのときの経験から、あらためてアジアにおける教育について考えるようになった。香港に帰国した彼女は、児童生徒にプログラミングを教える教育をアジアでも始めよう、と思い立った。彼女のFirst Code Academyは最初、女の子だけの一日かぎりのプログラミング教室だったが、その後の2年間で、6歳から18歳までの学齢層に、さまざまなコースを提供するようになった。

“私たちの使命は、次世代の人たちに、テクノロジを利用するクリエイターになれるための力をつけていくこと”、とSunは語る。“この世代でリーダーになる人たちは、どんな分野でも、テクノロジをしっかり理解していることが、必須の要件だ。テクノロジだけでなく、医療でも法律でも金融でも何でも”。

クラウドベースのBIソフトウェアを提供しているDomoのCMO Heather Zynczakも、同じ考えだ。ZynczakもSunと同じくプログラマ出身だが、Domoにおけるマーケティングの仕事をうまくやるためには、その経験と知識が必須だ、と痛感している。

Zynczakは語る: “最初に就職したのは、今AccentureになってるAndersen Consultingだったけど、そこでプログラミングをやらされた。週に80時間、プログラムを書いたが、その経験があったおかげで、今の私はCTOとも話ができるし、ソフトウェアシステムを選べるし、だれかが‘multi-tenancy systems’*なんて最新のテクノロジ用語を使っても、すぐに理解できる”。〔*: multi-tenancy systems, ref1ref2。〕

本当に必要なのは、何かを創り出して、世界をもっと良いところにできる人たちだ。そしてプログラミングは、子どもたちをそんな道に乗せる。
— Michelle Sun

Zynczakは続ける: “マーケティングも最近はますますデジタル化し、テクノロジの導入が進んでいるから、プログラミングの経験は今の私の本業にも役立つ”。

Sunはこう語る: “プログラミングは読み書きの次のリテラシーだ。英語の次に、誰もが学ぶ必要のある外国語だ。中国とビジネスをするためには中国語を学ぶ必要があるのと同じように、ビジネスだけでなく今の社会で生活するために勉強する必要のある新しい言葉が、プログラミングだ”。

SunのFirst Code Academyは、同社のオフィスと、香港市内の学校で教えている。カリキュラムは5年で、6歳から始まる。コースはプログラミングの基礎に始まり、最後は生徒が完全なアプリ/アプリケーションを自分で作れるようにする。

また、プログラミングを学んでいる子どもとまともな会話ができるようになりたい、という親の要望に応えて、親子教室も開いている。それは効果を上げている。また、今年の夏は3人の生徒がMITの招待でボストンへ行き、自分たちのアプリケーションを見せた。最近ではシンガポールでも体験教室を開いている。

selected-2796
Sunによると、いくつかの点でアジアは、プログラマに向いた環境だ。“アジアの子は算数や理科がよくできるし、そのほかの学科の成績も良いから、プログラミングの上達も早い。でも卒業して子どもでなくなった人たちのための、簡便な勉強と体験の場がない。大学に入ってやっとプログラミングの基礎を教わるのでは、遅い。一般的に新しい言葉は、大人よりも子どもが早く覚える。子どもたちはプログラミングを、遊びや趣味として学んでいく”。

First Code Academyでプログラミングを勉強するようになると、そのほかの重要な生活スキルも身につく。たとえば失敗を悪と見なすアジアの文化的規範を無視し、むしろ失敗から、重要な学習体験を得る。そういう前向きの姿勢が、日常の生き方にも反映する。Sunによると、失敗をおそれて、人前では話もできない慢性ビビリ少年がある日入学してきた。

“最初の二つのコースを終えたころから、彼は問題の答を確信をもって大声で言えるようになった。彼は、失敗は全然OKだ、ということを学んだ。自分が作ったアプリケーションがクラッシュしたら、問題を見つけ、直し、それを、ちゃんと動くようになるまで何度も繰り返す。人生も、それと同じよ”。

画像提供: Kevon Cheung(First Code Academy)

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

新経済サミット2013:シリコンバレーのエコシステムを日本に作るには何が必要か

新経済サミット2013

シリコンバレーではスタートアップが次から次へと立ち上がる。投資家が彼らに資金提供し、成長を加速させIPOやバイアウトを成し遂げる。成功した起業家は再度スタートアップするのであれ、投資家サイドにつくのであれ、またシリコンバレー内で活動を続ける。この様子を見て世界各国から人材が集まり、さらに質と量が増していく。このような好循環エコシステムがシリコンバレーにはある。

このエコシステムは日本では作ることができないのだろうか。また、できるならば何が必要なのだろうか。本日開催された新経済サミット2013のセッションの1つではシリコンバレーで活躍するベンチャーキャピタル(以下、VC)と起業家が共に登壇し、この疑問についてもディスカッションが行われた。

このセッションに登壇したのはEvernoteのPhil Libin氏、DomoのJosh James氏(AdobeにバイアウトしたOmniture創業者、2006年NASDAQ上場企業最年少CEO)、ApceraのDerek Collison氏(Google、VMware出身)、DCMの茶尾克仁氏、500 StartupsのGeorge Kellerman氏で、モデレータはライフネット生命の岩瀬大輔氏が務めた。

このトピックで彼らが口を揃えて言及したのは「日本人は悲観的」ということだ。EvernoteのPhil Libin氏はよく日本を訪れるそうだが、いつも日本人から「日本は何がダメなのか?」と聞かれるという。海外の人は日本をポジティブに捉えているが、当の日本人は日本がダメだとネガティブに思い込んでしまっている。近隣諸国の中国や韓国では自国をポジティブに考えている起業家が多く、日本とは正反対なんだそうだ。

今回の登壇者であるPhil Libin氏のEvernoteは売上の30%が日本からのもので、DomoのJosh James氏が以前立ち上げたOmnitureも同様に売上の20%を日本が占めていたという。また、Phil Libin氏によると100年以上存続している世界の企業3,000社のうち、2,500社は日本の会社だ。

世界のIT市場のマーケットシェアでも日本は多くの割合を占めているなど、悲観的になる要素は他国から比べると少ないように思えるかもしれない。ではシリコンバレーを楽観的に捉え、日本を悲観的に捉えさせてしまう要素は何なのだろうか。

DCMの茶尾克仁氏は日本で起業するインセンティブが少ないことは1つの要因だという。例えば、中国では起業すると税金がかなり免除される。スタートアップに参加する人達にとっては金銭的なインセンティブが欠けており、シリコンバレーではストックオプションが当たり前だが、日本では存在を知らない人も多い。このようなインセンティブの欠如は解決すべき問題だという。

また、日本の起業家は自信が欠如しているとApceraのDerek Collison氏はいう。日本人は会話の中で「私にはできないと思う」と発言する人が多いが、シリコンバレーでは自信を持って「それはできる」と出来もしないことですら言う人が多いの出そうだ。才能や技術力に関しては差は無いが、自信を持たないだけで差が出ているのだ。

最後に言及されたのはヒーロー的存在。アメリカではスティーブ・ジョブズやビル・ゲイツといったヒーロ的存在の起業家が居たり、マーク・ザッカーバーグのように若くして成功した起業家をヒーローのように扱う。しかし日本ではIT起業家が若くしてIPOしても一瞬だけ盛り上がり、その後はすぐに落ち着く印象がある。これはサービスの規模や生活の中でそれに触れる時間なども関係しているのかもしれないが、アメリカのように社会的にIT起業家をヒーロー扱いするようなムード作りは大切だという。

IT起業家の社会的印象と言えば、日本ではまだ親や身内の反感を買うことも多々あるだろう。だが、このような出る杭を打たれるような雰囲気は変えなければシリコンバレーのようにはならない。このセッションの終わりに、500 StartupsのGeorge Kellerman氏は会場に居る起業家を立たせ、「彼らを祝福してください。彼らはリスクを取り、次の世代のビジネスを作っているのです。」と拍手を求めた。次に全員を立たせると「日本だと出る杭は打たれますよね? でも、皆で立てば杭は出ません。皆で日本を変えましょう!」と締めくくった。