Dell、まもなく(再び)上場へ

Dellは、2013年にIT業界最大級のレバレッジド・バイアウトで非上場会社になったが、このたびやや複雑な手順を経て 再び上場することを今日発表した。ファウンダーのMichael DellとSliver Lake Partnersが主に経営を司る。

Dellのレバレッジド・バイアウトは、かつてのTV CM “dude, you’re getting a Dell” に象徴される同社のPC供給業者としての歴史の最終ページを飾った。同社はその波にのって市場を支配するまでにいたったが、コンピューターがノートパソコンやモバイル端末へとシフトし、複雑な作業はAmazon Web Service、Azure、Google Cloudなどのクラウドサービスに分散されるようになるにつれ、Dellは複雑な環境の中を渡り歩きながら、PC時代の先を見越した大きな業務転換を迫られた。これでDellは気まぐれな公開市場に付き合わざるを得ず、会社に必要な早急な転換よりも短期的な悲観主義に悩まされることになる。

取引は同社のVMWareに連動する株式を売りに出すもので、その連動株式をDell Technologies株に転換することでDellが再び公開企業になる。それらの株式は最終的にNYSEで取引される。同社のファウンダーがSliver Lake Partnersとの約250億ドルの取引で非上場会社にしてから約5年になる。Sliver Lake Partnersは会社の約24%を保有し、一方Dell氏は72%を保有し引き続き同社のCEO・会長を務める。今回のやり方はIPO手続きを回避することで、投資家候補が会社を調べ上げる膨大な時間を排除できる。

Dellは、最近の四半期で売上214億ドル、対前年比19%増を達成し、過去1年間では売上824億ドル、純損失23億ドルだった。さらに同社は、2016年にEMCと合併して以来総額130億ドルの負債を返済したことも報告した。すべては、パソコンを売るだけではない新しいビジネスを探る同社の変遷の一部だが、オフィスに置かれるパソコンの需要は今も世界中に存在する。幅広いITサービスの提供者へと事業を拡大するにつれ、同社は自身を近代的エンタープライズツール提供会社と位置づけようとしているのかもしれない。そうすることで、公開市場で堅実に立ち振る舞うとともに、会社の価値を正しく評価する手段を投資家に提供できるだろう。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Dellに関する噂に真実味――再上場ないしM&Aで巨額負債解消に動く可能性あり

Dellが抜本的な組織再編を検討しているという情報はすでに耳にしているかと思う。Dellは巨額の負債を解消するために思い切った手段を採る必要に迫られている。 赤字の大きな部分は2015年にDellが670億ドルでEMCを買収したことに起因している。

Dellに関する噂は先週金曜から流れ始めた。これにはいくつかのシナリオがあり、ひとつはDellが再上場するというもの、もうひとつは VMware株式の残りの部分も買い取るというものだ。しかしVMwareの完全買収が負債の解消にどのように役立つかは不明だ。そして今日(米国時間1/29)、CNBCは3つ目のシナリオを示した。それによるとVMwareが逆にDellを買収するという。

VMwareの株価はDellが買収するという情報で小幅ながらアップした

ともあれ私は金曜にDellに連絡してみた。予想通り、Dellの回答は「われわれは噂や憶測にはコメントしない」というものだった。しかし事情に通じた知人の話によれば、実際Dellは上記のシナリオ3つのをすべて検討しているが、まだ結論は出ていないという。

報道によれば、DellはEMCとの合併で生じた赤字を現在も460億ドル抱えているという。 BloombergのKiel Porterが指摘しているとおり、この額は利子の支払だけで20億ドルの負担だ。しかし新しい税制では利子支払の減価償却への参入が一部認められなくなるため、Dellの負担額の増大は実質では20億ドルよりかなり多くなるはずだ。利子支払はDellにとって前途に立ち塞がる暗雲であり、取締役会が抜本的対策を検討し始めたというのもおそらくこのあたりに原因があるだろう。

こう聞けば問題は赤字をあちこちに移すなにやら巧みな会計上の操作が検討されていると思うが、Gold and Associatesのプリンシパル、Jack Gold, のツイートによれば、トランプ政権による新税制と過熱気味の株式市場を組み合わせた有利な解決策を探っているのだという。

「株価は記録的水準に達しているが、これが将来も続くという保証はない。上がった株価はいつか最後に下がる。Dellはこのチャンスを利用して再上場し、キャッシュをかき集めようとしているのだろう。税制改革もこれを助けそうだ」とGoldはTwitterに投稿している。

2016年にDellがEMCを買収したとき、Dellがどうやってこのとき生じた負債を返済していけるかという疑問が生じた。そこでDellはEMCの事業の一部を売却するだろうと観測された。事実、2016年にDellはソフトウェア事業を20億ドルで売却した。また傘下のコンテンツマネジメント会社、Documentumも手放した。EMCは2003年にDocumentumを17億ドルで買収していたが、Dellは2017年1月に同社をOpenTextに売却した(額は不明)。驚いたことに、DocumentumはEMCとの提携関係を大部分維持した。

当時の観測は、DellはVMwareの8割を所有しているのだから、過半数の株式を所有し続けるものの、一部を売りに出すだろうというものだった。実際VMwareは株式市場では独自の企業として上場されていたのでこれは可能だった。 しかしDellはVMware株式を売却せず、噂によれば、残りの2割の株式も買収することを検討しているという。あるいは逆に小さいVMwareが巨大なDellを飲み込むことになるかもしれない。

つまりところ、問題はなぜDellはEMCを買収する必要を認めたのかという点に戻ってくる。一部ではこの大型買収が賢明だったか疑う声が出ていたものの、Oracleの会長、ラリー・エリソンは素晴らしい決断だと賞賛した。Oracleはクラウド化の過程にあり、巨額の資金を必要としたためEMCの買収には手がでなかったのが残念だったようだ。たしかにクラウド化には非常に巨大なデータセンターが必要なる。

もちろんここで述べたシナリオは現在のところ噂に過ぎない。Dellはまったく動かない可能性もある。しかしマイケル・デルと資金係のSilver Lake Partnersは大胆な手段を採ることで知られている。Dellが抱える巨額の負債は大胆な行動が必要だと示唆している。そこで近々Dellが上で述べたような手段、あるいはまだ噂に上っていない手段を採用したとしても驚いてはなるまい。

画像: Gary Miller/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Dell、EMCを670億ドルで買収。IT業界史上最高額

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IT業界史上圧倒的最大(*)の契約によって、Dellは今日、パートナーのMSD PartnersおよびSilver Lakeと共にEMCの買収に合意した。買収金額は670億ドル、1株当たり33.15ドルだ。

これは先週噂されていた1株当たり27ドルを大きく上回り、去る5月にAvagoがBroadcomに払った370億よりもはるかに大規模だ。

この契約でさらに興味深いのは、Dellが評価額250億ドル前後と、サイズがEMCのほぼ半分と小さいことだ。

EMCで最重要な部分は何といってもVMWareで、今回の契約にも含まれ今後も個別の上場企業として継続するが、EMCは非公開企業としてDellの一部となり、同社の公開企業としての長い歴史に幕を下ろす。

合併によってDellとEMCは、世界最大の民間統合IT企業になる、とEMCの発行した声明文に書かれている。

予想された通り、Dellが新会社を率い、長年務めたEMC CEOのJoe Tucciは退任する。Tucciは何度か引退を延期しており、それはふさわしい後任を見つけられなかったためだった。Michael Dellが合併後の組織を経営する。

この種の合併につきものの問題は、確立したカルチャーを持つ2つの巨大企業が、いったいどうやって一つになるのかである ― そしそれはまだわからない。

コーネル大学ダイソン応用経済経営校のAija Leiponen准教授は、両社が問題を抱えている可能性を指摘する。

「多くの合併は実際に企業価値を下げ、自身を再生し復活することに問題のあった2社が合併して成功することは稀だ。よってこの合併は極めてリスキーだ。EMCとDellはコンピューター業界で相補的な分野にいるので、もしもすべてがうまくいけば両社が別々でいるより価値は高まるかもしれない。しかしそれは、大きな「もしも」である」と彼女は言った。

Dellは、近年コモディティー化したサーバービジネスから撤退し、プライベートクラウドコンピューティングとストレージによって企業ユーザーに深く侵入し、IBM、HPをはじめとする伝統的メーカーやPure Storage等の新参メーカーと競合することを目録んでいる。

「Dellは、クラウドインフラストラクチャーで最後に残る一人になりたがっているようだ」と、Constellation Researchのファウダー、R Ray WangはTechCrunchに話した。

これがDellにとって巨大な賭けであるという事実は避けようもなく、契約実現のために新たな財政パートナーを見つけざるを得なかったが、実際この分野で競争できる規模を得るためには、それが唯一の方法だった。

EMCにとって、これはTucciが15年以上続けたリーダーの立場を去る最高の花道であり、株主にも期待しうる最高の価値を残した。CNBCはTucciが、「契約には、同社が他の買い手を探すことが許され、より有利な契約を見つけた場合にはEMCの違約金を安くする、”Go-Shop”条項がある」と語ったと報じているが、誰かがこの種の金額をEMCに出す可能性は極めて小さい。

契約は2016年中頃に締結される予定であり、当然規制当局による承認の対象となる。また、契約完了後にDellがEMCの一部、特にVMwareを売って支払いの足しにするかどうか、今後注目したい。

この契約の噂は先週浮上し始め、本誌で報じるうちにも噂は強まっていたことから、何かがある可能性は高かった。そして、実際そうなった。

【原注*】 Aol(TechCrunchの親会社)による2000年のTime Warner買収は1060億ドルで実際にはさらに大きかったが、あれはメディア/ITの契約だった。DellのEMC買収は、史上最大のIT買収だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

フラッシュメモリだけでストレージサービスを提供するPure Storageが大枚$150Mを調達

フラッシュメモリによる高速ストレージサービスを提供しているPure Storagが、T. Rowe PriceやTiger Global Managementおよび一般投資家たちが率いる投資ラウンドにより、1億5000万ドルを調達した。過去の投資家、Greylock Partners、Index Ventures、Redpoint Ventures、Samsung Ventures、およびSutter Hill Venturesもこのラウンドに参加した。これで同社の総資本は2億4500万ドルになる。同社の発表によると、今回の投資は同社をIPOに向かわせる契機になる。

今エンタプライズ市場ではフラッシュストレージがホットだ。ビッグデータ時代の顧客は、ハードディスクのようなメカニカルなストレージからは得られない高速なデータ転送を必要としている。ソリッドステートなフラッシュメモリには回転ディスクや読み書きアーム/ヘッドといった可動部品がないので、ハードディスクよりもはるかに高速にデータを移動できる。

Pure Storageはpure-flashな(==フラッシュメモリのみの)システムを提供することによって、今のデータ時代の商機に乗じようとしている。同社はストレージ技術のリーダーEMCと直接的に競合する。EMCのサービスのベースはあくまでもハードディスクによるストレージプールだったが、昨年XtremIOを買収してフラッシュ市場への一歩を踏み出した。また6月にはアプリケーションサーバ上に仮想SANを構築するScaleIOを買収して、“ソフトウェア定義型ストレージ”がもたらすスケーラビリティとエラスティシティ(伸縮自在性)にも積極的な色気を示している。

だからPure Storageがこのところ、巨額な資金導入に走るのも当然である。EMCのような強敵に対抗できるだけの、ストレージサービスのハードウェアベースを…ディスクではなくメモリで…構築する費用は相当なものである。

Network ComputingのHoward Marksは6月に書いた記事で、Pure Storageは競合他社であるIBMやViolin Memoryなどよりも深い機能集合を構築した、と言っている。しかし同社の事業規模がEMCやNetAppなどのそれに近いものになり、ストレージ市場にまた新しい巨人が誕生するのかどうか、それが同社の今後に横たわる最大の期待、あるいは疑問符だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))