エンタープライズ・インターネット、2015年のトレンド、トップ10

編集部:この記事の執筆者、Alison Wagonfeld はEmergence Capitalのオペレーティング・パートナー

われわれのEmergence Capitalは、ファウンダー、マーク・ベニオフ、デビッド・サックスといったビジョナリーを通じて、Salesforce.comやYammerのような画期的なエンタープライズ・クラウド・サービスに投資するチャンスを得てきた。こうしたサービスは世界中で次世代のビジネスのインフラを作っている。2015年が近づいてきたのを機会に、われわれが投資を考えているエンタープライズ・ソフトウェアの最新のトレンドのトップ10をご紹介しよう。

未来を予測するにあたって、Emergenceでは5人のパートナー、Gordon RitterJason GreenBrian JacobsKevin SpainSanti Subotovskyが長時間のディスカッションを行った。

1. 垂直に特化した特定業種向けクラウド・アプリケーション(インダストリー・クラウド)が普及する

この10年間、ソフトウェアが汎用化(水平化)を進めてきた。Salesforce,、Yammer、Boxなど、すべて業種を問わずに利用できる。これに対してわれわれは次の10年は特定の業種の特定の課題を解決することに特化する「垂直化」、あるいはインダストリー・クラウドが進むと考えている。

2. 企業は有料のエンタープライズ・モバイル・アプリを利用し始める

Appleが口火を切ったスマートフォン革命によって、モバイル・コンピューティングがビジネス分野にも広く利用されるようになった。しかし現在のモバイル・アプリにはまだビジネス・ユースのためには欠けている部分が多い。

われわれのゼネラル・パートナー、Kevin Spainは最近開催されたエンタープライズ・モバイル・フォーラムで次のように述べた。「世界に非デスクワークの労働者が25億人も存在する。これらの人々にモバイル・ビジネス・ネットワークを提供するのは巨大なチャンスだ。ユーザー1人あたり年40ドルの売上があれば新たな1000億ドル市場が誕生する。2015年にはモバイル・ビジネス・アプリケーション市場の売上が急速に伸びると予想する」。

3. コンシューマー向けテクノロジーが引き続きエンタープライズに越境してくる

われわれはコンシューマ向けサービスとエンタープライズ・サービスの融合を図るのを得意としている(たとえばFacebook -> Yammer)。ゼネラル・パートナーのJason Greenはこの傾向が2015には一層加速すると考えている。「エンタープライズ・テクノロジーはコンシューマ向け分野で起きているイノベーションに遅れを取らないよう努力しなければならない。Facebookも新しいビジネス向けプロダクト、Facebook@Workをテスト中だ。ウェアラブルデバイスの一部もビジネス利用が始まるだろう。私はiPadがタブレットのビジネス化に果たしたのと同じような役割をApple Watchがスマートウォッチの世界で果たすのではないかと考えている」。

4. IoT〔モノのインターネット〕は標準化が進み、コンシューマ、ビジネス両分野で実用化が本格化する

エンタープライズIoTの潜在市場は巨大だ。 ゼネラル・パートナーのBrian Jacobsはこの分野でも2015年に大きな進展があると見ている。「1年後には、納得性の高いユースケースが実現しているだろう。キラー・アプリの登場と共に普及は急速化する」。別のゼネラル・パートナー、Kevin Spainは「ドローンや各種の無人機(UAV)とセンサー・テクノロジーがエンタープライズ市場にも導入されるだろう。これによって農業、電力などの社会インフラ、不動産など、従来データ収集をきわめて高価で時間のかか航空機に頼っていた業界にイノベーションが起きる」。

Google Glassはまだコンシューマ製品としてはブレークしていないが、2015年には産業用途で数多くの有力な応用が生まれるだろう。特に医療分野が注目だ。患者を診察、処置中の医師はひんぱんに両手がふさがった状態でさまざまなデータにアクセスする必要がある。ゼネラル・パートナーのKevin Spainは「Google Glassでカルテを見られるAugmedixを利用した医師は口をそろえてこれなしではやっていけないと語っている。医師たちはカルテ処理の効率化で日に2時間も節約でき、その時間を患者の診察に向けられるようになった」

6. Bitcoinにも効果的なユースケースが現れ、アメリカ国外にも普及し始める

パートナーのSanti Subotovskyは「2015年はBitcoinにとって大きな転機となる。すでに基本的インフラは整備されている。2015年にはBitcoinをプラットフォームとして多くのアプリが開発されるだろう。アメリカ以外の国でも何百人もの起業家がBitcoinアプリの開発に取り組んでいる。2015年にはその中からキラー・アプリが登場するだろう」考えている。

7. 「UIなし」の生産性ツールへの第一歩

ゼネラル・パートナーのGordon Ritterは「伝統的な意味でのユーザー・インタフェースは次第に背景に消えていくだろう」と考えている。「われわれがデータを入力するためにキーを叩いたりタップしたりしている時間は無駄に使われている時間だ。生産性ツールが本当に生産性を高めるためには入力方法のイノベーションが必要だ。最小限の時間と労力で最大限のデータを正確に入力できるテクノロジーが必要だ。2015年にはそうした「UIなし」の生産性ツールへの第一歩が踏み出されるだろう」という。

8. 2015年にはベンチャーキャピタルの利益率が最高となるだろう

現在シリコンバレーはバブルであるのかという議論に決着はついていないが、われわれは2015年はベンチャーキャピタルにとって過去最高の年となるだろうと予測している。ゼネラル・パートナーのJason Greenは「マーケットの反応は良い。テクノロジー業界には基本的にまだ大きな発展の余地がある。リスクを取る余裕もここしばらく見られなかったほど拡大している」と言う。ゼネラル・パートナー、Brian Jacobsも「株式上場は好調だ。 来年は新分野のソフトウェア企業の成熟にともなって集中化が起き、M&A市場も活性化するだろう」と同意する。

9. 100億ドルが新たなスタンダード

スタートアップの会社評価額の水準が適正かどうかについては議論があるが、今や10億ドルの評価額は当たり前になっている。ゼネラル・パートナー、Jason Green: は「ちょっとクレージーだが、2015年にはユニコーン〔大成功したスタートアップ〕と呼ばれるためには10億ドルではなく、100億ドルの評価を受ける必要があるようになるのではないか」と述べた。

10. 描写的URL (.photography、 .wineなど)が普及する

2015年にはインターネットのドメイン名が拡大され、伝統的な.com、.net、.org、国名略号に加えて、さまざまな描写的ドメイン名が一般化するだろう。2014年に数百の新しいドメイン名がリリースされた。2015年にはGoogleやDonutsのサービスを通じて、こうした業種に特化した多様なURLを多くの企業が採用するだろう。

〔日本版:現在利用可能なTLDリスト。ちなみに地名TLDには.tokyo、.osaka .kyoto、.nagoyaが含まれる〕

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


企業のクラウド共有・同期サービスの人気調査は意外な結果―1位はBoxではなかった

今週、451 Research はエンタープライズが利用する同期・共有クラウド・サービスに関する市場調査の結果を発表した。その結果はかなり意外だった―すくなくとも私は驚いた。というのも、エンタープライズ市場において最も人気のある同期・共有サービスがBoxでもMicrosoft OneDriveでもなかったからだ。一番人気は企業のIT部門が嫌っているはずのDropboxだった。

451 Researchは10月に1000人以上のIT部門のプロに「会社でどんな同期・共有ツールを利用しているか」という聞き取り調査を行った。その結果、回答者の40%がDropboxを利用していると答えた。これは他を引き離して断然トップだった。2位はOneDriveでわずか25%、次いでGoogleが20%だった。エンタープライズ市場に特化しているはずのBoxは15%に届かず4位だった。他のサービスはいずれも10%以下だった。

また調査した企業のうち、有料版を利用していたのは18%に留まった。この意味するところはまだ明らかでないが、この市場が極めて早期の段階にあると推測する根拠にはなりそうだ。つまりどのプレイヤーにも今後大幅なビジネス成長の余地があるということだ。

レポートの執筆者の一人、Alan Pelz-Sharpeは、私の取材に対して「クライアントの話の中には必ずDropboxが出てきた。率直に言わせてもらえば、企業は社員が現にいちばん利用しているサービスを選ぶ傾向にあると思う。これは現実的な態度だ。5000人の社員がDropboxを使っているときに会社として別のサービスを導入して社員に乗り換えさせるのはたいへんな手間だ」と語った。.

451 Researchによれば、企業の規模が大きくなるにつれて、利用されるツールは次第に高価で複雑なものになっていく傾向が見られたという。このような大企業で人気があったのはクラウドではなく、EMC、OpenText、Citrixなど、要するに既存のエンタープライズ・サービスだった。

もうひとつ重要な発見は、IT部門が管理しておらず、社員が個人的に利用しているITサービス(シャドーITと呼ばれている)についてはどの会社も皆目知識をもっていないという点だった。このレポートはIT部門の把握している範囲での利用状況を示すものなので、実態はこれとかなり異なる可能性はある。IT部門は、社員が実際に使っているサービスに対するコントロールを完全に失っているという印象だったという。【中略】

エンタープライズ向け同期・共有サービス市場についてはこれまでデータがほとんど存在しなかった。サービス・ベンダーの宣伝文句が大いに幅を効かせてきた分野だけに、451 Researchのレポートは確実な統計を得る出発点として貴重だ。しかし正確なな市場像を得るにはまだ遠い。今後に期待したい。

グラフは451 Researchの好意により許可を得て再掲

画像: CanStockPhoto (c)

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


Fordの前CEOでMSのCEO候補と噂されたAlan MulallyがGoogleの取締役に就任

これは早かった。Ford Motor Companyの前社長、CEOが退職してすぐにGoogleの社員駐車場に空きを見つけたようだ。

Googleは先ほど、Alan Mulallyを取締役と監査委員会の委員に任命したことを発表した。任期は2014年7月9日からとなっている。

MulallyはFordとBoeingでCEOとして連続して成功を収めてきた。特にFordの場合、アメリカ自動車産業を襲った危機の最中に就任し、同社をハイテクに対応させた。Mulallyは何度かCESに登場しており、TechCrunchは 2011年のCESでビデオ・インタビューしている

またMulallyはSteve Ballmerの後任CEOの最有力候補として繰り返し名前が上がった。今年の1月にはMulallyは「MicrosoftのCEOを引き受けるつもりはない。Fordに2014年いっぱいとどまる」と公式に声明を発表した。半年たたないうちにFordを辞めてGoogleに移ったのだから、この点ではMulallyは計画を変えたようだ。

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