FacebookがARが日常生活になるスマートグラスを2021年に発売、Ray-BanブランドのLuxotticaともコラボ

Facebook Connectイベントでは、コンシューマー向けウェアラブルARデバイスを開発中であることが発表された。Facebook(フェイスブック)はARとVRに本格的に努力を集中し始めている。昨年までOculus Connectと呼ばれていたイベント名をFacebook Connectに変更したのもその表れだが、OculusデバイスもFacebook Reality Labsという新たなブランドの下に再編していくようだ。

今回のFacebook Connectイベント自体がバーチャル開催されたのはグッドタイミングだった。バーチャル登場したMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、「拡張現実(AR)メガネへの第一歩」として来年、かなりのAR能力を備えたスマートグラスをリリースする計画だと述べた。.

ザッカーバーグ氏はまた、Facebookは高級アイウェアとしてRay-Ban(レイバン)ブランドのLuxottica(ルックスオティカ)を発売すると述べた。ザッカーバーグ氏によればRay-Banとの提携によってコンシューマーが望むようなファッション性や多様な機能を提供することができるようになるという。

「プロダクトはまだここでお見せできるような段階になっていないが、開発と販売においてパートナーと複数年の提携契約を結び、来年スマートグラスを発表できることを報告できるのはうれしい」という。どんな機能を備えるのかなど具体的な内容はほとんど発表されなかったが、TechCrunchの取材に対して「現在開発中のプロダクトにディスプレイ機能は付属しない」と確認した。Google GlassよりもSnapが2016年にリリースしたSpectaclesに近いのだろう。

Facebookは以前から本体ソフトウェアに統合できるウェアラブルARグラスの開発を続けてきた。2018年には独自のARグラスを開発していることを確認し、ARプロダクトの責任者であるFicus Kirkpatrick(ファイカス・カークパトリック)氏は当時、TechCrunchの取材に対して「こうしたプロダクトが現実のものになるよう努力している」と答えている。

今月に入ると、現実の環境下でARグラスがどのように機能するかをテストするため、少数の特別に訓練された社員や契約社員がFacebookのキャンパス内をウェアラブルグラスを着用して歩き回るのが目撃されるようになった。これはFacebook Reality Labsが実行しているプロジェクトAria呼ばれるAR研究イニシアティブの一環だという。

今回のデモの一部ではないが、関連するARプロダクト開発の状況を示すビデオも公開されている。まだ理論的には可能性ではあるが、ビデオではARグラスが現実の光景の上にオーバーレイすることでナビゲーションを容易にしたり、ミュージックストアの店先で好みの音楽を推薦したり、出掛けに何か忘れ物をしたことを注意したりするようすが描写されている。
 
 Reality Labsの研究室内では解決できない問題も多い。外を歩き回るテスターが、こうしたプロダクトが必要とするのはどのようなセンサーなのか、収集すべきデータとすべきでないデータの判別などの問題について解決のヒントを与えるかもしれない。

Facebook自身もこのところプライバシー問題でさまざまな批判にさらされているが、Google Glassが消費者向けプロダクトとして成功しなかった理由がまさにここにあったことを想起しているかもしれない。

Reality Labsの責任者であるAndrew Bosworth(アンドリュー・ボスワース)氏は「我々はどんなARデバイスにせよ一般に販売される前に広範囲かつ入念なテストをテストを繰り返す」と強調した。ボズワース氏はARグラスに現在プロジェクトAriaで開発中のデバイスはまだプロトタイプの段階まで達していない。あくまで将来の製品開発の準備のためのの先行的研究だ」と述べた。このデバイスはHUD(ヘッドアップディスプレイ)も備えていないという。

【編集部追記】2019年9月のアップロードだが、Reality Labsのビデオには記事内で紹介されているシナリオがイメージ動画化されている。

Facebook Connect 2020

画像クレジット:Facebook

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

FacebookがQuest 2向けのフィットネストラッカー「Oculus Move」発表、オンラインフィットネス業界に参入

Facebookは、Questの最新版であるQuest 2向けのスイート製品として、フィットネストラッカー「Oculus Move」を追加した。

同社の拡張現実と仮想現実の将来の計画を発表するFacebook Connectイベントの一部として米国時間9月16日に発表されたOculus Moveは、PelotonやZwiftのような企業に数億ドルと数十億の評価をもたらしたフィットネスと健康管理の流行にFacebookが参加する試みだ。

発表は、アップルが米国時間9月15日に発表したFitness+と呼ばれるフィットネスのサブスクリプションサービスに続いている。

Oculus Moveは、OculusユーザーがBeat Saberや専用のフィットネスアプリで消費カロリーを確認するためのものだ。Oculus Moveのダッシュボードを利用することで、QuestやQuest 2の所有者は、VRアプリでフィットネスの全体目標を把握できるようになる。毎日のフィットネス目標を設定できるほか、ヘッドセットを装着している間にどれくらいのカロリーを消費したか、どれくらいの時間アクティブに活動したかを確認することも可能だ。

この新機能により、FacebookのQuestヘッドセットは、Tonal、F45、Strava、Zwift、Pelotonなどのフィットネスハードウェアやソフトウェア企業と同じ市場に参入することになる。

Oculus Moveはまもなく利用可能となり、まずは現在予約受付中のQuest 2で使える。Facebookは間違いなくフィットネスハードウェアやソフトウェアをQuestデバイスの守備範囲に入れようとしている。

Facebook Connect 2020

画像クレジット:Dan Bruins

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(翻訳:TechCrunch Japan)

FacebookがOculus Riftのラインを正式に打ち切る

Facebook(フェイスブック)がRiftを正式に終了させることになった。同社は米国時間9月16日、イベント名を、Oculus Connectから新しく名前を変えたFacebook Connectのオンラインイベントで最新のヘッドセットを披露したが、PCベースのOculus Rift Sの販売を来年初めに終了することも明らかにした。

Facebookは新しいOculus Quest 2 のみを販売し、PC VRに関心のあるユーザーは、同社が2014年にリリースした 「Oculus Link」 ソフトウェアを使用すれば、自分のヘッドセットをPCに接続できる。

Oculusの広報担当者がPC VR製品ラインについてTechCrunchに送ってきた声明では「将来的にRiftやPC専用のヘッドセットを作る予定はありません」と終了したことをハッキリと認めている。

当初のOculus Riftは、Kickstarterでのキャンペーン、Facebookの買収、開発キットのいくつかの公開延期を経て、2016年初めに最初の製品の出荷を開始した。

Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)CEOが2018年に同社の3つの製品ラインである、Oculus Go、Oculus Quest、Oculus Riftを披露して以来、同社は製品提供を約束し、PCやスマートフォンを必要とせずに操作できるスタンドアロン型の提供を全面的に進めてきた。

今年、FacebookはGoとRiftの両方のラインの終了を発表した。デバイスの品ぞろえの縮小は、最新の Quest 2ヘッドセットへ注力の影響を受けたと思われるが、同社のVRヘッドセットの全製品ラインでは何カ月も品不足が続いており、その中には大々的に宣伝されているQuestヘッドセットも含まれていた。2020年のほとんどの期間、入手できないか、在庫が少ない状態だった。

2018年に戻って、TechCrunchはOculusがRift 2の社内開発を突然キャンセルしたこと、Oculusの共同創業者Brendan Iribe(ブレンダン・イリベ)氏が、同社のPCベースのハードウェアの方向性や「完全な再設計 」を棚上げにしたことへの不満を理由に、同社を去ることになったと報じた。後日、OculusがRift Sと呼ばれるより控えめにアップデートされたヘッドセットをリリースする予定であることを報告したが、これは Questのインサイドアウトトラッキング(外部センサーではなくヘッドセットに搭載されたカメラなどを使うトラッキング方式)機能を採用したものだった。

数カ月後にFacebookがRift Sを発表したとき、彼らは完全に自社開発されているQuestとは異なり、PCベースのヘッドセットはLenovoと一緒に設計・開発されていることを明らかにした。当時、Oculusの共同創業者であるNate Mitchell(ネイト・ミッチェル)氏は、その後に同社を離れているが、このデバイスを「革命というよりもRiftの進化」と分類し、このデバイスが完全な続編ではないことを示していた。

本日の発表から明らかなのは、OculusがスタンドアローンVRを拡充する方向に進んでおり、ゲーミングPCを所有するユーザーが、SteamVRのようなプラットフォーム向けに構築された既存のコンテンツやタイトルへのアクセスを、継続できるようにすることを意図している。

Oculusが、PCベースのバーチャルリアリティを同社の将来にどれだけ重要視しているかは明らかではない。Quest 2は、まもなくベータ版を終了する予定のOculus Linkソフトウェアを介してPCに接続できるが、同社がこれまでと同じペースでPCベースのコンテンツに投資を続けるとは考えにくい。

Oculusの開発者戦略責任者Chris Jurney(Chris Jurney)氏は事前説明会で、同社がPC VRコンテンツへの投資を縮小する計画があるかどうかを尋ねられたとき、「以前に発表されたPCタイトルの開発が継続していることを指摘する一方で、『Quest』のためのゲームを作ることは『開発者が主導権を握っている』と強調した。

Facebook Connect 2020

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(翻訳:TechCrunch Japan)

スタンドアロンVRヘッドセットOculus Quest 2が登場、本日予約受付開始、10月13日月発売で64GBは3.7万円

米国時間9月16日、Facebookは大型のバーチャル・イベント、Facebook Connectを開催した。これは昨年までOculus Connectと呼ばれていたものだ。内容は豊富で、VRヘッドセットのOculus Questには強力な新モデルQuest 2はほぼすべての面で改善されている。新モデル登場は以前からリーク情報が流れていたが、本物はそれ以上だった。

まずOculus Quest 2は現行モデルに比べて100ドル安く、10%軽い。またサイズも少し小さい。カラーは薄いグレーとブラックの2種類が用意される。CPUのパワーは2倍、メモリーも強化され、ディスプレイの解像度もアップしている。予約は今日から受け付ける。出荷は来月10月13日の予定だ。

日本国内でもOculusサイトで先行予約受付中で価格は配送料込みで、64GB版が3万7100円、256GB版が4万9200円。ビックカメラ、ヤマダ電機、ヨドバシカメラ などの大手家電量販店での予約受付を開始しており、税別価格は64GBモデルで3万3800円、256GBモデルで4万4800円。

新しいヘッドセットはゲームそのほかの既存のQuest向けコンテンツと完全に互換性がある。チップセットはSnapdragon XR2を採用しており、現行モデルよりはるかに強力だが、デベロッパーが早急にQuest 2専用アプリを作ることはなさそうだ。新しいCPUとGPUによる性能改善は主としてディスプレイの精細度アップとバッテリー駆動時間の延長、バッテリーの小型化に生かされたたようだ。

  1. Oculus Quest 2

    画像クレジット:Lucas Matney
  2. Oculus Quest 2

    画像クレジット:Lucas Matney
  3. Oculus Quest 2

    画像クレジット:Lucas Matney
  4. Oculus Quest 2

    画像クレジット:Lucas Matney
  5. Oculus Quest 2

    画像クレジット:Lucas Matney
  6. Oculus Quest 2

    画像クレジット:Lucas Matney
  7. Oculus Quest 2

    画像クレジット:Lucas Matney
  8. Oculus Quest 2

    画像クレジット:Lucas Matney
  9. Oculus Quest 2

    画像クレジット:Lucas Matney
  10. Oculus Quest 2

    画像クレジット:Lucas Matney

Quest 2は近くOculusが販売する唯一のヘッドセットとなる。スタンドアローンのOculus Goはすでに販売が中止されており、パソコンに接続するRiftシリーズも今回終了が発表された。

以下に昨年4月に登場した現行のQuestと比較したスペックを上げておこう(日本における価格等はOculusサイト参照)

Quest 2 仕様

価格:299 ドル(64GB)、399ドル(256GB)
カラーバリエーション:2種類
チップセット:Snapdragon XR2(メモリー6GB)
重量:503g(10%軽量化)
寸法:幅142.5×高さ102×奥行き191.5mm(ストラップを含む)
ディスプレイ:リフレッシュレート72Hz、解像度1832×1920ピクセル(単眼)、高速スイッチング液晶
音声入出力:スピーカー、マイク内蔵
バッテリー駆動時間:2〜3時間
調整可能IPD(瞳孔間距離):58、63、68mm
付属品:新型コントローラー

さらに多数のフィーチャーがあるが、詳しくは詳しいレビュー記事(翻訳中)参照していただきたい。

Facebook Connect 2020

画像クレジット:Facebook

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Ubisoftが新Oculus向けにアサクリとスプリンターセルのVRタイトルを発表

VRをめぐる最大の不満の1つは、ゲームプラットフォームの世代を悩ませているのと同じ問題、つまりコンテンツだ。ことわざにもあるように「ゲーム機のよさはゲームのよさだけ」である。しかし、米国時間9月16日に開催されたFacebook Connectイベントでは、Oculusはゲーム業界最大の2つのフランチャイズを今後発売されるタイトルに追加した。

Ubisoft(ユービーアイソフト)はこのイベントで、Assassin’s Creed(アサシン クリード)と Splinter Cell(スプリンター セル)をVRに持ち込むことを発表した。詳細はいまのところ不明だが、Ubisoftは両タイトルを「VR用に作られた新作」と呼んでおり、既存のゲームの単なる移植ではないことを示唆している。

両作品の制作は、Ubisoftの子会社であるRed Stormが指揮を執っている。Red Stormは、90年代後半からTom Clancy(トム・クランシー)のタイトルを手がけてきたゲーム開発会社だ。2017年の「Star Trek: Bridge Crew」などのVRタイトルも手がけてきた。

タイミングを含めた詳細な情報は、発売に近づいてから追ってお伝えする。それがいつであろうと。
Facebook Connect 2020

画像クレジット:Ubisoft

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(翻訳:TechCrunch Japan)

EUのウェブサイトにおけるGoogleアナリティクスとFacebook Connectの使用禁止を求め集団訴訟が発生

欧州のプライバシーキャンペーングループであるnoybは、欧州連合司法裁判所(CJEU、EU最高裁)が「EUと米国の間の主要データの転送協定を安全ではない」として却下してから1カ月後、GoogleアナリティクスおよびFacebook Connectを介して米国にデータを送信していることを特定した101サイトのウェブサイト運営者を対象に訴えを起こした。

訴状に記載されているのは、Eコマース企業、出版社、放送局、通信事業者、ISP、銀行、大学などだ。具体的には、Airbnb Ireland、Allied Irish Banks、Danske Bank、Fastweb、MTV Internet、Sky Deutschland、Takeaway.com、Tele2などが含まれている。

noybはウェブサイト上で「EUの主要ウェブページのHTMLソースコードを分析すると、多くの企業がEU最高裁による重要な判決から1カ月が経過した今でも、GoogleアナリティクスやFacebook Connectを使用していることがわかります。これらのツールは米国の外国情報監視法であるFISA 702などに明確に該当するものです」(noybプレスリリース)と記載している。

「両社は、データ転送についての法的根拠を持っていないようだ。グーグルは『Privacy Shield』(EU-US Privacy Shield、EUと米国間で商用目的での個人データの交換を規制するためのフレームワーク)が無効になってから1カ月経ったいまでもPrivacy Shieldに頼っていると主張している。Facebook(フェイスブック)は米国の監視法がEUの基本的権利の本質に違反していると裁判所が認めたにもかかわらず『SCCs』(Standard Contractual Clauses、標準契約条項)を使い続けている」とある。

TechCrunchでは、EUと米国間でのデータ転送における両社の法的根拠について質問した。フェイスブックの広報担当者は「フェイスブックは個別のケースについてコメントしていない」と述べたが、米国時間8月17日に投稿されたの同社ブログ記事で「広告や計測製品のデータ転送メカニズムとしてPrivacy Shieldに依存している」ことを明らかにした。同社は「EU最高裁の判決を受けて、当社はこれらの製品のSCCへの移行を進めています。これを反映させるためにそれぞれの条件を更新し、より多くの情報を提供していきます」とコメントした。

プライバシー問題に詳しい人なら、noybの創設者であるMax Schrems(マックス・シュレムス)氏が、2015年にEUと米国のデータ協定であるSafe Harbor(米欧間の越境データ移転に関する二者間協定)の破棄(未訳記事)を実現した最初の訴訟の責任者だった(未訳記事)ことを知っているだろう。そして同氏の最新の訴状により、EUと米国間のPrivacy Shieldも却下された。同氏は実際にはフェイスブックによる別のデータ転送メカニズム(SCC)の利用をターゲットにしており、データ管理者であるアイルランドのDPC(Data Protection Commission、データ保護機関)に介入して同ツールの利用を停止するよう促している。

規制当局は裁判所に出廷することを選択したため、EU-US間のデータ転送協定の合法性に対する懸念が広がった。その結果、EU最高裁は欧州委員会が米国にいわゆる 「妥当性合意」 を与えるべきではなかったと判定し、Privacy Shield下での活動を禁止したわけだ。

この判決は、米国がEUユーザーの情報を処理するための特別な取り決めを持たないまま、データ保護の観点から「第三国」とみなされるようになったことを意味している。

さらにEU裁判所の判決では、EUのデータ監視機関はEUの人々のデータがSCCを介して第三国に転送されることにリスクがあると疑われる場合、介入する責任があることも明確になっている。

欧州のデータ監視当局は、違法となったPrivacy Shieldにいまだに依存している企業には猶予期間がないことを速やかに警告(未訳記事)した。

この件に関連するnoybの最新の訴えは「前述の101サイトのいずれも、各サイトに埋め込まれたGoogleアナリティクスやFacebook Connectを通じてウェブサイト訪問者のデータを米国に転送し続ける有効な法的根拠を持っていない」というものだ。

シュレムス氏は声明で「我々は、各EU加盟国の主要なウェブサイトのフェイスブックとグーグルのコードを検索しました。これらのコードスニペットは、各訪問者のデータをグーグルやフェイスブックに転送しています。両社とも、処理のためにヨーロッパに住む人々のデータを米国に転送していることを認めています。そして、これらの企業には、NSA(米国家安全保障局)のような米国政府機関がデータを利用できるようにする法的義務も負っています。GoogleアナリティクスもFacebook Connectもウェブサイト運営に必要不可欠なツールではありまえん。しかし、両ツールは置き換えられるか、少なくとも無効化できるサービスでもなかった」と述べている。

EU最高裁のいわゆる「Schrems II」裁定以来、実際にはセーフハーバー協定が頓挫して以来、米商務省と欧州委員会は難局に直面している。無効になったPrivacy Shieldを置き換えるために、新たなデータ協定をまとめなければならない(未訳記事)のだ。

しかし、米国の監視法の抜本的な改革がなければ、米国の国家安全保障上の優先事項とEUのプライバシー権との法的な対立を議論するそれぞれの議員による3回目の発議も、同様に失敗する運命にある。

この件に関する高等テクニックとして「データの流れを維持して『通常通りのビジネス』を継続するために、実際には時間を稼ぐことを目的としているだけだ」と皮肉な見方をする人もいるかもしれない。

しかし、現在では、米国の監視法が存在しないかのように振る舞う戦略には、大きな法的リスクが伴う。

これもまたシュレムス氏の発言だが「フェイスブックとグーグルがEUの顧客にデータ責任について積極的に警告しない場合、法的責任の枠内に入る可能性があります」と先月のEU最高裁の判決について指摘している。「裁判所は、米国側のデータ受信者がこれらの集団監視法に該当する場合、SCCを使えないことを明確にしました。米国企業はまだEUの顧客にその逆の論理で説得しようとしているようですが、これは誤っています。SCCの下では、米国でのデータ受信者はEUからのデータ送信者にこれらの法律を通知・警告しなければなりません。これを怠ると、該当する米国企業は実際に金銭的な損害を被った場合に責任を負うことになります」と説明する。

noybのプレスリリースにもあるように、GDPRの罰則制度はEU側のデータ送信者と米国側の受信者の世界的な売上高の4%にもおよぶ可能性がある。

クラウドファンディングで資金を募ったnoybは、EUの規制当局に行動を起こすよう圧力をかけ続けることを約束し、EUのデータ処理業者に米国のデータ転送の取り決めを見直すよう求め、「EU最高裁による明確な判決に適応する」ことを要求している。

ほかのタイプの法的措置も、GDPRの枠組みを利用し始めている。今月初めにオラクルとセールスフォースのトラッキングCookie使用に対する2つの集団訴訟が起こった。この集団訴訟に資金が集まったことに注目だ。TechCrunchがGDPRが2018年に発効されたときに記事にした(未訳記事)ように、訴訟が現実のものになりつつある。

米国の監視法とGDPRでEU最高裁による明確な判決が存在することで、データ処理の面ではすべて問題ないかのように見せかけたいと考えている米国の大手IT企業の利益は減少しそうだ。

なおnoybは、EUの諸機関が迅速な法的秩序の下でデータ処理を行えるようにするためのガイドラインやなども無料で提供(noybプレスリリース)している。

シュレムス氏は最新の訴えについて「我々は、いくつかのことを再調整するために時間が必要であるのは理解していますが、一部の企業が単にEUの最高裁判所の判決を無視しているように見えることは容認できません」とコメントを付け加えた。「この無視しているという事実は、ルールを遵守している企業に対しても不公平です。我々は、GDPRに違反した管理者および処理者、そして休眠状態ともいえるアイルランドのDPCように裁判所の判決を執行しない規制当局に対して、徐々に措置を講じていくつもりです」と続けた。

TechCrunchでは、アイルランドに拠点を置く法人が運営している思われるウェブサイトを対象とした最新のnoybの訴えに対してどのような措置を取るかを尋ねるため、アイルランドのDPCに連絡を取った。

フェイスブックのSCCの使用に対するシュレム氏の2013年の最初の訴えもまた、アイルランドで起こされた。米国のテック企業大手は同国にEU本部を設置することが多い。同氏がDPCにフェイスブックのSCC使用停止を命じるよう求めた要求は、約7年が経過しているほか5件の苦情が出ているにもかかわらず、いまだに実現していない。フェイスブックやグーグルのようなテック大手に対する国境を越えたGDPRの訴えが増加していることを考えると、当局は依然として何もしていないという非難に直面している。

アイルランドのDPCは、これらの主要なGDPRの訴えに対して、いまだに最終的な決定を下していない。しかし、規制当局が怠ってきたことを問い正す集団訴訟が準備されていることからも、DPCとすべてのEU規制当局がGDPRに準拠することを求める法的圧力は高まるばかりだ。

今夏の初め、欧州委員会はGDPRの運用開始から2年間のレビューの中で、GDPRの施行が一様に「積極的」に行われていないことを認めた(未訳記事)。

「欧州データ保護委員会(EDPB)とデータ保護当局は、より首尾一貫した、より実践的なガイダンスを提供することで、真の意味で共通の欧州文化を創造するための作業を強化しなければならない」と欧州委員会の価値観・透明性担当副会長であるVěra Jourová(ヴィエラ・ジョウロヴァ)氏は述べ、GDPRが機能しているかどうかについて、欧州委員会として初めて公開評価を実施した。

TechCrunchは、フランスの個人情報規制当局であるCNILにも連絡を取り、noybの訴えを受けてどのような行動を取るのかを尋ねた。

7月の判決を受けて、フランス当局はEDPBとともに「正確な分析を行っている」(CNILプレスリリース)と述べ、「判決がEUから米国へのデータ転送におよぼす影響について、できるだけ早く結論を出す」ことを目指していると述べた。

その後、EDPBのガイダンスが発表された。明らかなのはPrivacy Shieldに基づくデータ転送は「違法である」こと。そして、EU最高裁の判決はSCCの使用を無効にするものではないが、その裁定は、使用を継続するための非常に適切な許可を与えたにすぎない。

Techcrunchが先月報告したように、SCCを使用してデータを米国に転送できるかどうかは、データ管理者が「米国の法律が転送されたデータの適切な保護レベルに影響を与えない」という法的保証を提供できるかどうかにかかっている(未訳記事)。

「SCCに基づいて個人データを移転できるかどうかは、移転の状況を考慮した評価の結果、および実施することができる補足的な措置に依存する」とEDPBは付け加えた。

画像クレジット:Artur Debat / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)