NFTゲーム大手Dapper Labsの次なる挑戦はアバター用デジタルアクセサリープラットフォーム「The Warehouse」

100億ドル(約1兆1374億円)を超える取引量を記録したNFTの大ヒットイヤーが終わろうとしている中、昨今のNFTプロジェクトの開発者たちは、今日のドルを追いかけるか、明日のユーザーを追いかけるかというジレンマに直面している。

Dapper Labs(ダッパー・ラボ)は、NBAのトップショットをヒットさせた2021年の主流ブレイクアウトの1つを作った会社で、投資家に対し、後者に賭ける開発者を惹きつけることができると納得させようとしている。最近の時価総額が76億ドル(約8674億円)に達した同スタートアップは米国時間12月13日、その追求の成果の一部を提示し、スターのためのアバターを提供するスタートアップGenies(ジーニーズ)とのパートナーシップによるプロダクトを披露した。それは野心的なNFTストアで、ユーザーがアニメのアバターを作ったり、NFTのアクセサリーを身につけたりできるようにし、Web3デジタルアイデンティティのハブとして機能することを目指していく。

「The Warehouse」と呼ばれるこの新しいプラットフォームは、招待制の小規模なユーザーネットワーク向けにローンチされ、今後数カ月のうちに、徐々により幅広いユーザー層に提供される予定であると両スタートアップはTechCrunchに語った。

この新しいプラットフォームでは、ユーザーは、Geniesアプリ内で作成する3Dアニメのアバターに、DapperのブロックチェーンネットワークFlow(フロー)で作られるマスクや靴、バックパックなどのデジタルアクセサリーを装着することができる。Geniesによると、店舗の大部分のアイテムは20ドル(約2270円)未満で販売されるが、それは特に一次販売に限定されるという。これらの商品の所有者が個々のアイテムの二次販売の市場を決めることになる。The Warehouseではローンチ時に二次的なマーケットプレイスが有効化される予定はなく、Geniesのチームは、この取り組みがやがて、再販価値ではなくプロダクトへフォーカスするコミュニティを生み出すことを期待している。

画像クレジット:Genies

Geniesはすでに、同社のネイティブモバイルアプリ内でデジタルアパレルやアクセサリーを販売する試みを行っているが、この投機的事業にはブロックチェーンやNFT関連の要素は含まれていない。GeniesのNFTエコノミーへの進出は、Dapperという特定ブランドのブロックチェーンに対する賭けである。Bitcoin(ビットコイン)やEthereum(イーサリアム)のようなネットワークほど分散化されていないかもしれないが、手数料の安さ、トランザクション能力の高さ、そしてクレジットカード処理やパスワードを忘れてしまうユーザーのようなWeb3「ラグジュアリー」に優しい開発者プラットフォームなど、切り離すことのできないユーザー利益の数々を提供するものだ。

Flowだけが、より安価な手数料とオンボーディングのしやすさを備えた消費者フレンドリーなブロックチェーンへの唯一の賭けではないことは確かだが、Dapperは将来の成功を約束して投資家から6億ドル(約684億9300万円)を調達した。Wax(ワックス)やSolana(ソラナ)のような競合するレイヤー1のチェーンでは、開発者がプラットフォームの強みとコインホルダーのウォレットを利用しようとしているため、ここ数カ月でネイティブのNFTプロジェクトからより多くの動きが見られている。ベンチャー投資家たちは2021年中に、Ethereumブロックチェーンを「ロールアップ」プロダクトでスケールしようとするいくつかの新たな暗号資産ユニコーンを立ち上げた。これにより開発者は、ネットワークのセキュリティを活用しながら、セカンダリーチェーン上での取引の処理とバンドルを進めることができるようになる。

2021年初めのNBA Top Shotの急成長はDapperに大きな注目を集め、月間取引額は2020年12月の100万ドル(約1億1400万円)弱から2021年2月には2億2500万ドル(約256億8300万円)近くに達した。最近においては、Top Shotのバイヤーとトランザクションのネットワークは最も顕著なライバルAxie Infinity(アクシー・インフィニティ)よりもはるかに下に位置している。暗号資産アナリティクスを行うサイトCryptoSlam(クリプトスラム)によると、Axie Infinityは2021年11月時点で、Top Shotの6万4000人に対して52万人を超えるユニークバイヤーを擁していた。Top Shotがその部隊を立ち上げて以来、NFT市場は爆発的に拡大している一方で、新たな高トラフィックプロジェクトの大半はEthereumを採用しており、そのネットワークを流れる何千億という流動的な暗号資産の活用を図っている。

画像クレジット:Genies

The Warehouseのローンチは、Dapperにとって特に大きな節目となる。Dapperは、Top Shotでの失敗から学びながら、開発者を惹きつけ、再び注目を集めることを期待している。Top Shotは拡大するオーディエンスへの対応に初期の段階から苦労しており、Dapperがますます多くのNFT Momentsを発行し続けることで、アーリーアダプターの一部は自分たちのNFTの価値を失い、フラストレーションを感じてきたという経緯がある。

「Genies WarehouseはNBA Top Shot以来最大のFlow向けリリースであり、同様の成功を期待しています」とDapper LabsのCEOであるRoham Gharegozlou(ロハム・ガーレゴズルー)氏は声明で述べている。

Geniesは今のところ知名度が高いわけではないが、同スタートアップの著名なパートナーは間違いなくその名を馳せている。何年も前から、アバターのスタートアップが現れ「デジタルアイデンティティ」のパイの一部を獲得しようとしてきたが、ゲームメーカーはサードパーティシステムの採用に興味を示さず、セレブたちはソーシャルメディアの影響力を分析するのに忙しくて、仮想世界のことをわざわざ考えることもなかった。

Geniesは、最近の記憶ではどのスタートアップよりも、ウェブの未来への明らかにニッチなビジョンを備えたプロダクトに対するセレブとのパートナーシップネットワーク構築に成功しているが、2021年はNFTをより熱心に公に受け入れたことで、投資家の間でシェアが高まっている。Geniesは先週、Universal Music Group(ユニバーサルミュージックグループ)と提携し、同グループのレコーディングアーティストのアバターやデジタルグッズをホストすることを発表した。Geniesはすでに、Justin Bieber(ジャスティン・ビーバー)氏、J Balvin(J・バルヴィン)氏、Cardi B(カーディ・B)氏などの著名なミュージシャンやアーティストたちとパートナーシップを結んでいる。

2021年5月にGeniesは、Mary Meeker(メアリー・ミーカー)氏のベンチャーファンドBond(ボンド)の支持を獲得し、同ファンド主導で6500万ドル(約74億2200万円)のシリーズB資金調達を行っている。

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NFTはテック業界やベンチャー投資家クラスに受け入れられているものの、消費者においては、何年もの間ゲームの中で購入してきたものと同じように見える高価なデジタルアイテムが、どのようにオンライン体験に革命を起こすのかについて、依然として懐疑的な見方が存在していることを示すエビデンスが多くあるようだ。

チャットアプリのDiscord(ディスコード)は2021年11月、CEOのJason Citron(ジェイソン・シトロン)氏がNFTウォレットプラットフォームMetaMask(メタマスク)との統合のスクリーンショットをツイートしたことで、ユーザーから激しい反発を受けた。多くの批判的なものを含む何千ものリプライが殺到した後、シトロン氏はそれが単なる「社内コンセプト」であり、同社には「現時点で組み込む計画はない」こと、そして「Web3には多くの利点があるが、当社の規模で取り組む必要がある多くの問題もある」ことを明確にしたツイートを続けた。

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DapperもGeniesも、The WarehouseのデビューでNFT業界の重荷の一端を断ち切ろうとしている。

「これはアバターの1万プロフィール画像プロジェクトでも、NFTや暗号資産に文化を持ち込むものでもありません」とGeniesのCEOであるAkash Nigam(アカシ・ニガム)氏は語っている。「私たちはこれを、消費者に向けたメタバース全体に広がるデジタルアイデンティティを創造するための第一歩だと考えており、ウェアラブルな創造ツールを未来の消費者と才能ある人々に提供することを目指しています」。

画像クレジット:Iann Dior

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(文:Lucas Matney、翻訳:Dragonfly)

ただ1つのNFT動画を表示するディスプレイでデジタルアートの再構築を目指すInfinite Objects

NFT(Non-fungible token、代替不可能なトークン)とは、デジタル所有権の概念の再構築を目指すものだ。アートハードウェアのスタートアップのInfinite Objects(インフィニット・オブジェクツ)が、デジタルアートやコレクターズアイテムの再構築を目指すことで、そうした資産の物理的なコピーの制作に大きなチャンスを見出そうとしている。

このスタートアップが作るのは、ただ1人のアーティストによるただ1つの動画を表示するだけで、他には何もしないディスプレイだ。このディスプレイには、追加のアプリをダウンロードしたり、自分の写真をアップロードしたり、時間や天気を確認したりすることはできない。たとえInfinite Objectsの別のアート作品が欲しい場合でも、ダウンロードをすることはできず、そのサイトに行って、欲しいアート作品が入った別のディスプレイを購入しなければならない。それぞれのディスプレイの裏面には、作品に関する情報やエディション番号、シリアル番号が刻まれていて、物理的なディスプレイと表示されている作品が密接に結びついている。

Infinite ObjectsのCEOであるJoe Saavedra(ジョー・サアベドラ)氏はTechCrunchに対して、今回の600万ドル(約6億6000万円)のシード調達には、主導したCourtside VCや、NBA Top Shot(NBAトップショット)を開発運営しているDapper Labs(ダッパーラボ)をはじめとする多くの投資家が参加しているという。

長い間Infinite Objectsは、NFTなしで運営されるNFTプラットフォームだった。同社は2018年からアーティストたちと協力して、1人のアーティストのデジタル作品を連続して表示し続ける物理的なディスプレイ(ほとんどの場合数量限定)を制作してきた。もちろん、ユーザーたちはそうしたデジタル作品をInfinite Objectsのウェブサイト上で好きな時に見ることができる。だがその価値はアーティストの作品の公式コピーを所有できる点にある。どこかで聞いたような話では?

2021年初めにNFTが投機的資産として広く認知されたとき、インターネットユーザーがデジタルアートの将来やデジタル希少性について議論し始めたことから、サアベドラ氏はそれを大きなチャンスだと考えた。彼のチームはその時点ですでにNFTに取り組んでいて、2020年の12月にはアーティストのBeeple(ビープル)氏と提携し、彼がNifty Gateway(ニフティゲートウェイ)というプラットフォームで販売していたNFTの「物理的なトークン」をリリースした。これは、ビープル氏がクリスティーズのオークションで6900万ドル(約75億円)の落札価格を達成して、美術界では知らないものがいなくなる数カ月前の出来事だ。

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サアベドラ氏は、彼の会社が制作するものによって、NFTの世界で活躍する企業やクリエイターが自分たちの資産をより親しみやすく、一般の人たちに理解してもらえるようにできる大きなチャンスがあると考えている。また同時に、購入したデジタルアートを、NFTを単なる盲目的な所有から実際に鑑賞できることに焦点を当てたものに変えるチャンスでもあると考えている。

「所有権がともなうことを考えると、500ドル(約5万5000円)とか5000ドル(約55万円)でNFTを購入すことはエキサイティングですが、それを見せるためにスマートフォンのSafariを開かなければならないという行為はエキサイティングではありません」とサアベドラ氏はTechCrunchに対して語る。「私たちがデザインしたこの物理的な器は、ブロックチェーンをまったく理解していない人でも、限定版の物理的商品を理解している人ならば、とても理解しやすいものです」。

サアベドラ氏は、アート作品をただ循環表示させる他のデジタルディスプレイには否定的だ。彼は、アートの所有者が望めば、そのNFTの画像をテレビに表示させることもできるが、それは単にアートを「豪華なスクリーンセーバー」として使っているだけだという。

Infinite Objectsのチームは、NFTの世界にはもっと大きなチャンスがあると考えているが、具体的にどのような取り組みになるのかについては堅く口を閉ざしている。今回の支援者リストに、興味深いことにNBA Top Shotの生みの親であるDapper Labsが含まれていることは、ヒントになりそうだ。Dapper Labsは、Flow(フロー)と呼ばれる独自のブロックチェーンを構築していて、サアベドラ氏は会話の中で、それがEthereum(イーサリアム)ネットワークよりもスケーラブルで持続可能であると称賛を惜しまなかった。先ごろDapper Labsは、初のサードパーティ向けNFTプラットフォームを発表した。この発表は、今回のラウンドのまた別の投資家でもあるアバタースタートアップのGenies(ジニー)との提携と同時に行われた。Dapper Labsはデジタルアクセサリーのストアを2021年夏に立ち上げる予定である。

今回のラウンドには、erena Ventures、Betaworks、Brooklyn Bridge Ventures、GFR Fund、Kevin Durant & Rich Kleiman、Genie、Ashton Kutcher(アシュトン・カッチャー)氏のSound Venturesも参加している。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Infinite Objects資金調達NFTアートDapper LabsGenies

画像クレジット: Infinite Objects(フレーム内の作品はNatasha Tomchin)

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(文:Lucas Matneyk、翻訳:sako)