世界最大のSPAC合併で配車サービスGrabがNASDAQ上場へ

配車とデリバリーの会社Grab(グラブ)は米国で上場する計画を発表した。シンガポール拠点の同社は配車サービスアプリから、フードデリバリーや送金ができるeウォレットのような金融サースなどいくつかの消費者サービスを提供する東南アジアのスーパーアプリへと進化した。

同社はシンガポール、マレーシア、カンボジア、インドネシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナムでサービスを展開している。Crunchbaseによると、同社はこれまでにソフトバンクのビジョンファンドなどから100億ドル(約1兆924億円)を調達している。

上場するのにGrabはAltimeter Growth CorpというSPAC(特別買収目的会社)との合併を選んだ。Altimeter Growth Corpは米国拠点の上場している空白小切手会社だ。このプロセスを経ての上場は米国では外国企業であるGrabにとってずっと簡単なものであるはずだ。

取引が完了すれば、世界最大のSPAC合併となる。Grabはティッカーシンボル「GRAB」でNASDAQに上場する。

発表の一環として、Grabはいくつかの指標や大きな数字を明らかにした。2020年の同社のGMV(販売総額)は約125億ドル(約1兆3649億円)だった。そして合併による同社の評価額は396億ドル(約4兆3241億円)となり、同社は現金45億ドル(約4913億円)を保有する。

東南アジアにおけるフードデリバリーとオンデマンドモビリティはまだ成長する余地があるとGrabは考えている。獲得可能な最大市場規模は520億ドル(約5兆6779億円)から2025年までに1800億ドル(約19兆6545億円)に急拡大すると見込む。

「誰でもデジタル経済の恩恵を受けられるようにアクセスを広げるという目的に向けた旅路におけるマイルストーンです。東南アジアが新型コロナウイルスから立ち直るのに、これはより重要な役割を果たします。新型コロナは当社にとっても非常に厳しいものでしたが、事業の耐久性について学ぶところがかなりありました」とGrabの共同創業者でCEOのAnthony Tan(アンソニー・タン)氏は声明で述べた。

「当社の多様化したスーパーアプリ戦略はデリバリーを行うドライバーパートナーをサポートし、収益性を改善しながらの成長達成を可能にしました。上場企業となる現在、当社は我々のコミュニティの経済を強化すべく、一層懸命に取り組みます。というのも東南アジアが成功すれば、Grabも成功するからです」と同氏は付け加えた。

Altimeterは自社のスポンサー株に3年の売却禁止期間を設けることに同意した。これはしばらくの間、AltimeterがGrabにコミットし続けることを意味する。

カテゴリー:モビリティ
タグ:GrabSPACAltimeter Growth CorpNASDAQ東南アジア

画像クレジット:Grab (Image has been modified)

原文へ

(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

配車サービスGrabが東南アジアでの新型コロナワクチン接種拡大を支援するプログラムを発表

東南アジアの配車サービス・オンデマンドデリバリー大手Grab(グラブ)は米国時間2月3日、新型コロナワクチン接種へのアクセスを拡大するためのプログラムを発表した。同社の目標は、2022年までに全従業員、ドライバー、配送パートナーを対象にワクチン接種を実施することだ(医学的に接種を受けられない人を除く)。また、Grabは各国政府と協力し、アプリを通じてワクチンに関する情報を提供すると述べ、ラストマイルのワクチン配布や、接種センターへの送迎サービスを提供するための協議を行っているという。

同社は現在、東南アジア8カ国で事業を展開している。シンガポール、カンボジア、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、 そしてベトナムだ。Grabは、各国政府のワクチン接種プログラムを支援しようと名乗りを挙げた多くの民間企業の仲間入りをしたことになる。米国ではMicrosoft(マイクロソフト)、Oracle(オラクル)、Salesforce(セールスフォース)、Epic(エピック)などのハイテク企業がその中に含まれる。一方、中国最大の配車サービスであるDidi Chuxing(滴滴出行)は、13カ国のワクチン接種プログラムを支援するために1000万ドル(約10億5000万円)の基金設立を約束している。

「少しでも早く集団免疫を獲得できれば、我々の地域社会と経済の再建を早急に開始することにつながります。パンデミックとの戦いのいくつかの大きな局面で、官民のパートナーシップは重要な役割を果たしてきました。このコラボレーションは続けていくべきです」。

ドライバーと配送パートナーに対しては、国のワクチン接種プログラムでカバーされていない新型コロナワクチンの費用を助成するとGrabは述べている。また、同社はグループ長期医療休暇保険を拡大し、ワクチン接種による潜在的な副作用の結果としてドライバーが失った収入をカバーするという。従業員とその近親者においても、各国のワクチン接種プログラムでカバーされていない費用はすべてGrabが負担するとのこと。

ワクチン教育の面では、Grabのアプリは政府や保健当局の情報を目立つように表示し、新型コロナワクチンに対する国民感情を理解するためのユーザーアンケートを実施していく。Grabによると、同社アプリは2億1400万回以上ダウンロードされているという。

関連記事:GrabやAnt Groupがシンガポールのデジタル銀行免許を取得

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Grab 新型コロナウイルス

[原文へ]

(文:Catherine Shu、翻訳:Nakazato)

GrabやAnt Groupがシンガポールのデジタル銀行免許を取得

テック大企業が金融サービス商品を拡大するのを許容する流れがあるなか、シンガポールは12月4日、Ant Group(アントグループ)やGrab(グラブ)などを含む4社にデジタル銀行を運営する免許を付与した。

シンガポールの中央銀行、シンガポール金融管理局(MAS)はデジタル銀行候補を選ぶのに「厳格な、メリットベースのプロセス」を適用したと述べた。これらのデジタル銀行は試験運営を開始するが、他の企業に同様の免許を付与するかどうかもレビューする、とMASは話した。

TikTok(ティクトック)の親会社ByteDance(バイトダンス)を含む計21社がデジタル銀行の免許を申請し、うち14社が申請要件を満たした、とMASは明らかにした。大手企業は金融サービスへの事業拡大を急成長地域で売上高を大幅に伸ばす大きなチャンスだととらえている。

MASは、新しいデジタル銀行が2022年初めから営業を開始すると見込んでいると述べた。Ant GroupとGrab以外の残る2つの免許はインターネット大手Sea(シー)が完全所有する企業と、それからGreenland Financial Holdings、Linklogis Hong Kong 、Beijing Cooperative Equity Investment Fund Managementのコンソーシアムに付与された。

Grab-SingtelとSeaは従来の銀行と同じように顧客に銀行口座とデビットカード、クレジットカード、その他サービスを提供できる。大口のデジタル金融業務を行うAnt所有の企業とGreenland Financialのコンソーシアムは、中小企業向けにサービスを提供する。各社いずれも実在店舗を展開する必要はない。

「新しいデジタル銀行が既存の銀行とともに成長し、特に現在十分なサービスを受けられていない事業所や個人への金融サービスの質という点で業界のレベルを上げると考えています」とMASのマネージングディレクターRavi Menon(ラヴィ・メノン)氏は声明文で述べた。英国やインド、香港などいくつかの国は、テック企業がデジタル銀行を運営できるようにするために近年規制に手を加えた。

配車サービスのGrabと通信会社Singtelはデジタル銀行の完全免許を申請するために昨年コンソーシアムを組成した。両社の経験と専門性は「より多くの人が自分の資金をうまく管理して自分自身や事業、家族のために経済状況を改善することができるようにする、という我々の目標の達成を支えます」とGrabのグループCEOで共同創業者のAnthony Tan(アンソニー・タン)氏は声明文で述べた。

Ant Groupは「これまでにAnt Groupはかなりの経験を積み、特に中小企業のニーズに応えるためにパートナーの金融機関と共に展開してきた中国において成功を収めました」と声明文で述べた。「シンガポールの金融サービス分野において、より強固で深いコラボレーションを全ての参加企業と展開していくことを楽しみにしています」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Ant Group、Grab

画像クレジット:ROSLAN RAHMAN / AFP / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

相乗りサービスは新型コロナで大打撃、東南アジア大手のGrabがその適応方法を語る

世界中の相乗り(ライド・ハイリング)サービスが新型コロナウイルスの感染拡大で大打撃を受けているが、Grabも例外ではなかった。同社は東南アジアで最も評価の高いテック系スタートアップの1つで8カ国で事業を展開している。同社の輸送事業は、3月と4月に移動制限令が発令されたことで急減した。

しかし、同社はすでにいくつかのオンデマンド物流サービスを運営しているという強みを持っていた。Disrupt 2020では、Grabのグループ・マネージング・ディレクターを務めるRussell Cohen(ラッセル・コーエン)氏が、前例のない危機に同社がどのようにしてテクノロジーを適応させたかについて聞いた。

同氏によると「危機が始まったときに、私たちはリーダーシップグループとして席を立ち、特に東南アジアでは、課題の規模が非常に巨大であることがわかりました」と振り返る。

Grabのドライバーアプリでは、すでに相乗りとオンデマンド配送のリクエストを切り替えられるようになっている。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、14万9000人以上のドライバーが初めてオンデマンド配送を開始したそうだ。この数には、感染拡大中に失われた収益を補うためにプラットフォームに参加した数万人の新規ドライバーも含まれている。

課題は、消費者の劇的な需要増加に対応するための配送サービスのスケールアップであり、顧客にリーチするための新たな方法を必要としていた加盟店にも対応することでした。コーエン氏によると「3月と4月には8万社弱の中小企業が同社のプラットフォームに参加した」という。その多くはこれまでオンラインデリバリーを手掛けたことがなかったため、Grabはセルフサービス機能のリリースを迅速に進め、加盟店が簡単にサービスに登録できるようにした。

コーエン氏は「これは東南アジア経済の大規模な分野で、数週間のうちに効果的にデジタル化されました」と語る。

新規加盟店の多くは、以前は現金決済しか利用していなかったため、Grabはデジタル決済に対応させる必要があったが、このプロセスは同社の金融部門であるGrab Financialがキャッシュレス決済、モバイルウォレット、送金サービスのためのGrab Payなどのサービスをすでに提供していたため、スムーズに移行できたという。

Grabは「Grab Merchant」と呼ばれる新しいツールパッケージもリリースした。これは加盟店がオンラインでライセンスと認証を提出することで、オンラインビジネスを立ち上げることを可能にするだけでなく、データ分析などの機能を備えている。

ニューノーマル、不確実性のためのモデリング

新型コロナウイルス対策の戦略の一環として、Grabは各国の自治体や政府と協力して配送を効率化することに取り組んでいる。例えば、シンガポール政府と協力して9月に開始した「GrabExpress Car」(Grabプレスリリース)と呼ばれる試験的プログラムを拡大し、より多くのGrabの相乗り車を食料品や食料品の配達に利用できるようにした。従来、これらの配達の多くはバイクが使われていた。

シンガポール、カンボジア、インドネシア、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、タイ、ベトナムなど、Grabの各市場の状況はまだ変化している。ロックダウン命令を解除した市場もあれば、新たな感染拡大に対処し続けている市場もある。

コーエン氏は、相乗りはGrabの多くの市場で徐々に回復していると述べた。しかし、同社はさまざまなシナリオをモデル化し、再閉鎖の可能性や、消費者と加盟店の両方の行動の長期的な変化を考慮に入れて不確実な将来に備えているという。

「予測不可能性というのは、私たちがよく考えていることです」と同氏。同社のビジネスモデルは、配送が大きな部分を占めているが、移動制限が解除された国でも、顧客はまだオンラインでの買い物を好むからだ。

新型コロナウイルスはまた、Grabのいくつかの市場でデジタル決済の採用を加速させた。例えば、Grabは3カ月前にフィリピンでGrabPayカードを発売(Grabプレスリリース)したが、これは新型コロナウイルスの懸念を受けて非接触決済を利用する人が増えてきたからだ。

オンデマンド配送については、同社は即日配送サービスであるGrabExpressを拡張し、もともとは相乗り用に開発された技術を応用して、ドライバーが集荷と配送をより効率的に計画できるようにしている。これは新型コロナウイルスの感染拡大の経済的影響によって、消費者の価格意識が依然として高いため、配送サービスのコストを下げることに役立つ。

「消費者の購買行動が変化したので、私たちは供給側、つまりドライバー側ついてを考えるとき、柔軟性を持つようにしなければならないということです」と同氏は締めくくった。

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)