3Dプリンタで出力されたLiberatorというピストルは実際に発射可能であることが分かった。そこで3D兵器、自家製兵器について基本的な事項をここで確認しておこうと思う。
本当に作動するのか? イェス。少なくとも1発は本体を損傷させずに発射できたようだ。上のビデオでは1発しか発射されていないが、ForbesのAndy Greenbergは何回か発射したところを見たという。
これは本物のピストルといってよいのか? ノー。これはピストルというよりいわゆるジップガンだ。ジップガンというのは鉄パイプ、釘、輪ゴムなどで組み立てられた即席、手製の火器を言う。大怪我したり死んだりする危険が十分あるのにスリルを求めてこんなもの作るガキども(その中には作り方を見せてくれた私の父も含まれる)は、弾を鉄パイプに詰め、輪ゴムに取り付けたクギを用意する。輪ゴムをひっぱって離し、雷管を叩いて発射を試みるわけだ。ビデオのLiberatorも似たような仕組で、スプリングで釘を雷管に打ち付ける。
この銃の銃身にはいちおう溝が刻まれているが命中精度はごく低いだろう。ごく小型の380口径の弾頭を使う。もちろん人を殺せるが、威力は低い。
誰でもプリントできるのか? イェス。3Dプリント用のファイルをダウンロードすればよい。あとは3Dプリンタだけあればよい。
オリジナルの製造者は高精度のStratasys Dimension SST 3Dプリンタを利用しているが、Makerbotでも出力可能なはずだ。
しかし私は手持ちのReplicatorで出力して試してみようとは思わない。そこまで無謀ではない。私は3Dプリンタ・メーカー各社に問い合わせてみたが、どこも火器への応用に関してはノーコメントだった。誰も安全は保証しないということだ。しかし家庭用プリンタで出力可能なことは間違いない。
合法的なのか? いちおうはイェス(だが、私は弁護士ではない)。火器の製造に当たってはFederal Firearms Licenseを取得しなければならない。この銃を製造するには「破壊的装置および破壊的装置のための弾薬、徹甲弾薬の製造者」のライセンスが必要だ。このライセンスは誰でも申請できる。ただしこれまではライセンスの取得が困難というよりもむしろ火器製造のための工具が高価なためにあえて自家製の火器を作ろうとする人間が少なかった。それがStratasysの高性能プリンタでも8000ドル、無謀なら2000ドルの家庭用プリンタでも製造可能になったという点が問題となる。
また金属探知機による探知が不可能な火器の製造を禁止する法律(1988年)に適合させるよう、この銃には金属部品が組みこまれている。
というわけでこの銃を合法的に製造することは可能だ。
こうした火器の製造を止めることはできるか? できないだろう。
次にどうなる? 冷笑的な連中の議論が喧しくなるだろう。あるものは「すぐに3Dガンによる殺人が起きる」と主張するだろう。そして3Dプリンティング全体が恐ろしいものだとみなされるようになる、あれやこれやの規制と取締が必要だと言うだろう。銃規制推進派、反対派はそれぞれに過激な議論を繰り広げるだろう。
ここでは感情的な極論を排した冷静でバランスの取れたアプローチがぜひとも必要だ。
冷静な議論をするものは、今回のLiberatorガンそれ自体は実用的な火器というよりコンセプトを実証したモデルに過ぎないと見るだろう。3Dプリンティング・テクノロジーはあらゆる製造業のあり方を一変させつつある。したがって火器製造にも影響が及ぶというのは論理的必然だ。銃の自家製造は今に始まったことではない。アメリカでは昔から行われてきた。ただし3Dプリンティングは今後それを以前よりかなり容易にすることになる。
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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+)