マイクロソフトと米軍がARヘッドセット「HoloLens 2」ベースのIVAS供給契約を1年延期、2022年9月へ

マイクロソフトと米軍がARヘッドセット「HoloLens 2」ベースのIVAS供給契約を1年延期、2022年9月へ

Courtney Bacon/US Army

今年の春、米陸軍とマイクロソフトはARヘッドセット「HoloLens 2」をベースとした統合視覚補強システム(Integrated Visual Augmentation System:IVAS)の供給で、向こう10年間(基本5年、オプション5年)の契約を結びました。この契約は2021年9月30日から開始され、マイクロソフトは順次ARゴーグルの供給を開始する予定でしたが、Reutersが報じたところでは予定日を過ぎてもデバイスの納入は始まっておらず、契約開始日が1年先送りの2022年9月からになったと伝えられています。

延期の理由は定かではありませんが、マイクロソフトはこの10月上旬、国防総省の監察官からシステム的な要件を満たすかどうかの監査を受けています。とはいえ、監査の結果が延期につながるものかはわかりません。米陸軍はIVAS契約に「完全にコミット」していると述べており、9月にもテストを実施していました。このテストは来年9月まで定期的に行うとのことです。

ちなみに、IVASは戦闘支援と訓練の両方で利用できるようになっており、戦闘の現場でもまるでSF映画やゲームなどにみるHUD表示のように、ゴーグル内に隊の位置やその他重要な情報を表示確認できます。暗視機能も備え夜間や地下といった暗い場所での作戦遂行にも利用が可能です。訓練の場においては演習に関する情報を提供し、インストラクターが特定の技術向上のためのメニューを提示するのに活用されます。

なお、米軍とのHoloLens契約に関しては、正式な契約に至る以前から、マイクロソフト社内に反発の声が聞かれました。従業員たちの一部は、自社の技術が軍を直接支援して、実際の戦争をゲームのように感じさせてしまうことに反対しています。しかし、サティア・ナデラCEOは契約を翻す考えはないと主張してきました。もし仮にマイクロソフトがこの契約を失ったりすれば、会社としての収益とHoloLens事業そのものに大きな打撃となることは間違いありません。

(Source:DoD(PDF)Engadget日本版より転載)

MicrosoftがARヘッドセット12万台を米軍に提供へ、最大2.4兆円の契約

AR / VRデバイスのキラーユースケースは文字どおり兵器ということになるかもしれない。米国3月31日、Microsoftは、Holo Lensテクノロジーをベースにした何万台もの拡張現実ヘッドセットを米陸軍に提供する契約を獲得したことを発表した。同社によればこの契約は10年間で218億8000万ドル(約2兆4240億円)にもなるということだ。

Microsoftは、IVAS(統合視覚増強システム)準拠のARヘッドセット12万台を陸軍に納入する。HoloLens 2は現場将兵のニーズに合わせて機能がアップグレードされている。

MicrosoftのAlex Kipman(アレックス・キップマン)氏は「このプログラムはユーザーの状況認識を強化し、さまざまなシナリオでの情報共有と適切な意思決定を可能にします」とブログで述べている。

この契約は、Microsoftが2018年に米軍に拡張現実テクノロジーを提供するために獲得した2年間、4億8000万ドル(約531億7000万円)の契約に繋がるものだ。この契約には、納入されたデバイスの評価結果によりさらに10万台以上のヘッドセットの追加オーダーが生じるる可能性があることが定められていた。Microsoftの広報担当がTechCrunchに送ったコメントには「拡張現実テクノロジーは従来より多くの適切な情報を部隊に提供し、意思決定を助けます。今回の新しいミッションはMicrosoftと国防省との長年にわたる信頼関係に基づき、さらに拡張するものです」と述べていた。

Microsoftによれば、今回の発表は「プロトタイプの提供から本格的な量産と実戦部隊への配備への移行を意味する」ものだという。

12万台のヘッドセット納入というのは、これまで大規模な応用が乏しかった拡張現実テクノロジーにとって最大スケールの展開だ。Microsoftは政府契約による資金を確保したことで将来的に民生機器や企業利用のレベルのデバイスを開発するベースとなるテクノロジーの開発に取り組むことができる。拡張現実テクノロジー業界の大手企業には軍との契約に消極的だったり反対意見を述べるところも多いが、Microsoftは軍事部門から契約を得ることに積極的だ。

関連記事:マイクロソフトが「HoloLens 2」を出荷開始、日本でも

カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:MicrosoftHolo Lensペンタゴン

画像クレジット:US Army

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(文:Lucas Matney、翻訳:滑川海彦@Facebook

マイクロソフトのHoloLens 2を実機テスト、やはりすごかった

今週、マイクロソフト(Microsoft)はバルセロナのMWCでプレスカンファレンスを開催し、混合現実ヘッドセット、HoloLensの新しいバージョン発表した。Microsoftが2015年に最初のデモを公開したとき、「こんなことができるわけがない。フェイクに違いない」と疑った専門家さえいた。たしかにリアルタイム・トラッキング、ジェスチャー認識、(当時としては)高精細度ディスプレイをスタンドアローンのパッケージにまとめるのは困難な事業で、それまで誰もこうしたプロダクトを見たことがなかった。

次世代プロダクトが発表されるまで4年もかかったわけだが、これはMicrosoftがユーザー、デベロッパーからのフィードバックを慎重に検討して方向性を決めようとしていたからだろう。Microsoftがアップデートを急ぐ必要を感じなかったのは事実上ライバルがいなかったせいもある(例外はMagic Leapかもしれないが、このプロダクトは依然としてごく初期段階にある)。

私はMWCでHoloLens2の実機をテストする機会があった。初代HoloLensに大きなショックを受けたが、新バージョンは、さまざまな意味でオリジナルの自然な進化と感じられた。つまり、装着したときの快適性は向上し、狭かった視野は十分に広くなった。操作性、対話性も改善され、アプリの使い勝手も大きくアップした。ハードウェアの現代のスペックも適合する水準に引き上げられている。

新バージョンをテストするとまず気付くのは、立体視に重要となる両目の間隔の測定とカリブレーションが自動的に行われることだ。これは簡単に言えばミニゲームのようなもので、小さな光点が動き回るのを目で追うだけでいい。すると視線トラッキング・システムがユーザーがどこを見ているかを認識し、システムを調整する。このプロセスが終わると、小さい仮想ハチドリが現れてユーザーの手に着地する。ユーザーはここで新しいHoleLensの視野の広さを実感するかもしれない。この鳥の位置では初代のHoloLens 1の小さな視野には収まらなかったはずだ。

念のために言っておくが、HoloLens 2の体験はMicrosoftのビデオが信じさせようとしているレベルにはまだ達していない。 たとえばARイメージは唐突に現れ、突然消える。しかし視野が十分広くなっているので依然ほど煩わしくは感じない。解像度のスペックは初代とほぼ同じで、私には差は感じられなかった。

もうひとつ、HoloLens2を装着してですぐに気付くのは快適性だ。この点ではMicrosoftの主張は単なる宣伝ではなかった。初代製品は頭を締め付ける感覚があった。その上、私の場合、ともすればずり落ちてきた。デバイスを被っていることを常時意識させる重量もあった。新製品も頭の後ろで小さなノブを回して頭に締めつけるのだが、はるかに快適に感じる。実際の重量は数グラム軽くなっただけだが、重量配分や装着部分が改善されたのだろう。ユーザーが眼鏡をかけていても、デバイスの重量は鼻にはかかっていないので、圧力が増えて不快な思いをする心配はない。

さらに大きな違いは、HoloLens 2は簡単にフリップアップできることだ。つまり本当のバイザーになっている。ユーザーはHoloLensを通して外界を見るわけだが、必要があれば顔の前から跳ね上げておくことができる。

新しいHoloLensをテストすると、すぐにメニュー、ボタン、スライダーに出くわすことになる。初代バージョンでは、手の動きのトラッキングは十分ではなく、デバイスとの対話方法として自然に感じられなかった。HoloLens 1では認識を確実にするために特別なジェスチャーを使う必要があった。新バージョンではスマートフォンと同様に仮想アイコンをタップできる。スライダーが表示されたらつかんで動かすことができる。MWCで紹介されたMicrosoftのデモ・アプリケーションではこうした操作がうまく利用されている。

またマーケティング戦略上の違いもあった。今回、MicrosoftはHoloLens 2がビジネスユーザー向けであることを明確に述べた。すべてのデモはそうしたユースケースを考えている。ユーザーが壁を突き抜けてきたエイリアンを射ったり、リビングのテーブルの上で仮想Minecraftをプレイするような時代は終わった。MicrosoftのD365混合現実アプリ担当マネージャーの Lorraine Bardeen氏が私のインタビューに答えて語ったところでは、最初のバージョンでは確かにMicrosoftは多様な実験を歓迎した。しかしすでにHoloLensが適するユースケースは明確になっている。

Bardeen氏は「たしかに私たちは当初、『これを使ってなんでもできる』と言いました」と述べた。 しかしHoloLens 1の出荷が始まると「箱のフタを開けたらすぐに特定の業務に役立つ」ような製品を望むユーザーが多いことが判明した。もっともその一方でHoloLensをカスタマイズ可能なオープンなシステムにしておくという約束も守っている。したがってゲーム・デベロッパーがそう望むなら、HoloLens向けゲームを開発したり既存のゲームを移植したりすることは可能だ。

とはいえ、3500ドルからというユニット価格を考えれば、これは明らかにコンシューマー向けデバイスではない。HoloLens 2に人気ゲームが登場することは当分期待しないほうがいいだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

MWC開幕、Microsoftが大きく改良されたHoloLens 2を発表

今日(米国時間2/24)、スペインのパルセロナで開幕したMWCでMicrosoftはHoloLens 2発表した。 HoloLens 2はMicrosoftの最新版のMR(混合現実)ヘッドセットで、視野は2倍に拡大され、画面精細度、操作性ともにアップしているという。Microsoftによれば「快適性は3倍になった」ということだ(ただしMicrosoftの測定の基準ははっきりしない)。

今年後半、HoloLens 2はアメリカ、日本、中国、ドイツ、カナダ、イギリス、アイルランド、フランス、オーストラリア、ニュージーランドの各国で販売される。予定価格は3500ドル。

現行HoloLensの問題の1つは、視野が狭いことだった。見たいものが正面にあってあまり大きくない場合はHoloLensが生む効果は素晴らしい。しかし顔を少し動かしたり、大きな対象を見ようとすると、ディスプレイが切手くらいのサイズしかないことに気付く。今回発表されたHoloLens 2は、オリジナルの2倍の視野があるという。今日のキーノートでHoloLensの開発責任者、Alex Kipmanはデバイスの発達の歴史を振り返ってこう述べている。

Kinectは家庭に入ることができkた最初のスマート装置でした。これがMicrosoftにHoloLensを作成させたのです。 […]ここ数年、デベロッパー、企業、スタートアップはすべて何かはビューティフルであると同時に役立つプロダクトを作ろうと努力してきました。

その結果の一つがHoloLensだったわけだ。これはソフトウェアとハードウェアが一体となって機能するプロダクトだ。 HoloLensのために、MicrosoftはWindowsのカスマイズ版を開発すると同時に、オブジェクトを見つめて人差し指でタップするエアータップや手をつぼみ型にして開くブルームのようなHoloLens特有のジェスチャーを利用してARオブジェクトと対話する新しい仕組みを開発した。HoloLens 2ではインタラクションがさらに自然になり、オブジェクトを簡単にタップできる。ヘッドセットの視線トラッキング機能も改良され、システムはユーザーが見つめている場所を正確に知ることができるようになった

Kipmanは「HoloLens 2はユーザーに適応します。 われわれは進化したインタラクションのモデルを構築することとによりユーザーがホログラムと対話する能力を大幅に向上させました」と強調する。

デモではスライダー操作などによりHoloLensアプリケーションの操作がいかに自然かつ高速になったかの説明に力を入れていた。たとえばスライダーは指のタップで呼び出し、レバーをつかんで動かすことができる。Microsoftトでは、HoloLensがきわめて高精度で指の動きをトラッキングできることを示すために10本の指で演奏できるバーチャル・ピアノを作成した。同社はこれを「もっとも直感的対話性」と呼んでいいる。’

HoloLensのプロトタイプが最初の発表は2015年レッドモンドの本社キャンパスで開催されたMicrosoftのサプライズイベントだった。MWC 2016が終了して数日後に招待のみで開催されたイベンドで実機が紹介され、8月に発売された。 つまり新しいハードウェアのリリースまでに4年かかったことになる。これは長い時間だが、MicrosoftとしてはHololensの開発にデベロッパーを呼び込むためにプラットフォームの安定を優先したのだろう。

またMicrosoftは今日、デベロッパーをサポートするために、MicrosoftはAzureのHoloLens向けサービスを多数発表した。 これには、空間アンカーやハイポリゴンのコンテンツをHoloLensにストリーミング配信するのに役立つリモート・レンダリングなどが含まれる。

重要なのはMicrosoftがHoloLensをコンシューマー向け製品として位置づけたことはない点だ。なるほどTechCrunchはHoloLens上のゲームを紹介したこともあるが、このプロダクトの焦点はあくまでビジネス、教育関連のアプリケーションにある。この傾向は新製品でも変わっていない。たえば医療アプリケーションのデモで複数のユーザーが1つのホログラムに対して共同作業を行うことができることを示した。この機能は新製品で実装されたわけではないが、MicrosoftがHoleLensテクノロジをどのように位置づけているかを示していると思う。

エンタープライズ向けアプリケーションではデバイスの機能をカスタマイズできるオプションも提供される。

MicrosoftのCEO、サティア・ナデラ「世界に対するわれわれの見方を変えることは実際に世界を変えることになる」と4年前のHoloLens発表の際のスピーチを引用した。ナデラは「現実世界と仮想世界を一体化することがわれわれの働き方を変えると信じている」と述べた。

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滑川海彦@Facebook Google+

MWCでの発表を控えてMicrosoftからHoloLens 2のティーザービデオ

バルセロナで今月下旬に開催されるMWC(Mobile World Congress)で発表予定の製品でいちばん注目を集めているのはスマートフォンではない。Microsoftの次世代HoloLensヘッドセットだ。発表は2月24日(米国時間)と予告されている。Microsoftはさらに話題を盛り上げようとして予告ビデオを公開した。

実際、このビデオに内容はあまりない。ぼんやりとチップのようなものが写り、ケーブルがうねり、氷が溶けかける。そういったイメージが連続する。具体的情報を明かしたくない場合に大企業が製作するティーザーの典型だ。

しかし重要なのはビデオの内容よりもこのビデオの背後に誰がいるかだろう。このビデオを公開したMicrosoftのテクニカル・フェロー、Alex Kipmanは初代HoloLens開発のキーパーソンだ。つまりHololens 2を予告する最適任者ということになる。現行ヘッドセットは拡張/複合現実のブームに先駆け過ぎていたきらいがあった。しかし今やARはテクノロジー企業がこぞって力を入れる分野になっている。第2世代のHololensを発表するには理想的な環境だ。

報道によればこのヘッドセットにはQualcomm 850と新しい運動センセーが搭載される。また価格も引き下げられ、小型化されるという。これによってMicrosoftは拡張現実分野のリーダーの位置を確立することを狙っているようだ。

MWC 2019についてのわれわれの予想はこちら.。

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滑川海彦@Facebook Google+