人工衛星で地表温度データを収集・解析するHydrosatがさらに11.4億円の資金調達

地理空間データのスタートアップであるHydrosat(ハイドロサット)は、地表温度分析製品の商業化を加速するため、シードラウンドで1000万ドル(約11億4000万円)を確保した。

Hydrosatは、赤外線センサーを搭載した人工衛星を使って地表の温度データを収集することを目指している。同社がサブスクデータ分析プロダクトとして販売する予定の温度データでは、水ストレス、山火事の脅威、干ばつに関する理解を深めることができる。カリフォルニア州での記録的な干ばつの年、米国西部で歴史的な火災シーズンが終わる今、その3つが将来も起こると予想することは極めてやさしい。

Hydrosatは、継続的な情報収集を計画している。各衛星が地球上のあらゆる範囲を継続的に監視するため、それぞれの衛星に特定の地域を監視させる必要がないという意味だ。

「環境モニタリングや農林業における多くの利用例で、そのことが非常に有益になっています。我々はデータを、将来のためにライブラリに保存しているため、その日、翌週、翌々年など、いつでも使えるのです」と同社のCEOであるPieter Fossel(ピーター・フォッセル)氏は最近のインタビューで語っている。

6月に500万ドル(約5億7000万円)の資金調達を完了後、またすぐに資金調達を行うことにしたのは「チャンスがあった」からだとフォッセル氏はいう。「我々は、ヨーロッパに拠点を置くすばらしいグループであるOTB Venturesと繋がりをもちました。同社はレーダー衛星のICEYEをはじめ、この分野の先進的な企業に出資してきました」。

「これまで既存の投資家シンジケートから得たサポートもありましたが、それに加え、この新しい投資家と一緒に仕事をする機会に恵まれたのです」とフォッセル氏は付け加えた。

今回の追加資金は、商用のサブスクリプション向けアナリティクス製品の2022年初頭の発売や、同年後半に宇宙サービスプロバイダーのLoft Orbitalと共同で実施する最初の衛星ミッションを十分に検討するために使用される。また、同社は、市場投入までの時間短縮のために従業員を大幅に増やすことできる。

画像クレジット:Hydrosat

同社は、資金調達のニュースと同時に、スイスの多国籍テクノロジー企業であるABBと協力し、宇宙で使う熱赤外機器を製造することを明らかにした。ABBは、これまでにNASA(米航空宇宙局)、カナダ宇宙庁、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)、および民間企業向けにイメージャーやセンサーを製造してきた。ABBが製造した赤外線イメージャーは現在、同名の会社が運営する温室効果ガスの排出量を検出・測定する宇宙機「GHGSat」に搭載されている。

また、Hydrosatは、NASAのランドサットプログラムの熱赤外データの調整を行っているロチェスター工科大学と提携している。同社が政府機関との取引を成功させるには、すでに政府機関と取引実績がある企業や機関との契約の確保が鍵となりそうだ。

Hydrosatは、すでに欧州宇宙機関との契約と、米空軍および国防総省との3つのSBIR(Small Business Innovation Research)契約を獲得した。空軍との契約の一環として、同社はニューメキシコ州の高高度気球に第1世代のイメージャーを搭載し、宇宙との境界まで飛行させた。同社にとって重要な技術的マイルストーンとなった。熱赤外画像を収集し、その処理と調整が正確に行えるようになったからだ。

また、同社は商業分野にも目を向ける。フォッセル氏は、農業や環境分野の企業とすでに契約を結んでいると付け加えたが、詳細は明らかにしなかった。

中期的な目標として、同社は16機の衛星を打ち上げたいと考えている。フォッセル氏によると、衛星群の数は、同社が提供できるデータの頻度ほど重要ではないという。中期目標を理解するには、データ収集の頻度が鍵となる。同社は、地球上のあらゆる場所で毎日熱赤外画像を撮影できるようにしたいと考えている。「それが中期的な目標であり、衛星群の規模は単にそれを実現する手段にすぎません」。

今回の資金調達ラウンドはOTB Venturesがリードし、Freeflow Ventures、Cultivation Capital、Santa Barbara Venture Partners、Expon Capitalも参加した。

画像クレジット:Hydrosat

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

商業赤外線衛星で政府機関より細かい地表温度データを収集・分析するHydrosat、地球の危機に関するデータ提供を目指す

地表温度データをモニタリングするだけで、その地表エリアに関する多くの情報を学ぶことができる。Hydrosatの共同創業者兼CEOであるPieter Fossel(ピーテル・フォッセル)氏は、TechCrunchにこう説明してくれた。「例えば、作物畑にストレスがかかっている場合、植物自体のストレスの徴候より前に、地面の温度が上昇しているはずです」。今回、新たに500万ドル(約5億5000万円)のシード資金を獲得したことで、同氏はHydrosat初の地表面温度アナリティクス製品を顧客に提供したいと考えている。

今回のシードラウンドは、Cultivation Capitalが新たに立ち上げたGeospatial Technologies Fundが主導し、Freeflow Ventures、Yield Lab、Expon Capital、Techstars、Industrious Ventures、Synovia Capital、そしてミシガン大学が参加した。

2017年末に設立されたこの地理空間データ分析スタートアップは、熱赤外センサーを搭載した衛星を使って地表温度データを収集する予定だ。地表温度は農業データ以外にも、山火事のリスクや水ストレス、干ばつなどの情報を提供できる。フォッセル氏のように、気候変動がすでに地球に力を及ぼし始めていると考えるなら、これらはすべて重要な変数だ。

地上温度のデータはNASAや欧州宇宙機関(ESA)などのレガシー機関で収集されているが、あまり高い頻度では収集されておらず、時には特定の場所の地表温度が16日に1回程度しか読み取られないこともあり、高い解像度でもない。Hydrosatは、このような既存のデータギャップを埋めたいと考えている。同社はマルチスペクトル赤外線カメラを使って他の帯域のデータも収集しているが、主なバリュープロポジションはサーマルデータだ。

最初の衛星は、2022年後半にSpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットでLoft Orbitalと組み地球低軌道に向かう予定だ。このミッションは、約1年前に心臓発作で他界したHydrosatの前CEOであるJakob van Zyl(ヤコブ・ファン・ジル)氏にちなんで名付けられた。衛星打ち上げというと華やかさが増すようだが、フォッセル氏は同社が「コンテンツ企業であり、データ企業であることが第一」と強調している。

「当社はまた、地表面温度製品の上に、作物の収穫量予測、干ばつ検知、灌漑管理などを目的としたアプリケーションを開発しています。なぜなら、これらはすべて基本的に水ストレスが原因であり、ここで挙げたアプリケーションはすべて、基本的に当社のコア製品である地表面温度データによって実現されるからです」と同氏は語った。

Hydrosatの最初の顧客は、ESAとの契約や、米国空軍および国防総省との3つのSBIR(中小企業技術革新研究プログラム)契約など政府機関だった。しかし今回の資金調達により、同社は製品を商業顧客に提供することが可能になる。商業顧客には、農業関連企業や保険会社、さらには地表データの収集に加えて分析を行いたいと検討している企業などが考えられる。

「(Hydrosatは)おそらく、我々が注力している農業分野からスタートしますが、業界を超えて広がっていく可能性があります。というのも、気温は、環境、水、ストレス、食糧など、当社が対象としている分野以外でもさまざまな活動のシグナルだからです」とフォッセル氏は説明する。「気温は経済活動のシグナルでもあります。防衛やセキュリティの観点からも、温度には多くの優れた使用例があります」とも。

将来的には、Hydrosat社はグローバルなモニタリングを可能にするために、16機の衛星を打ち上げる予定だ。しかし、これはあくまでも中期的な計画だとフォッセル氏はいう。長期的な計画としては、さらに衛星を打ち上げたり、データを充実させるためにバンドを追加したり、分析レイヤーを構築することが考えられる。「その先にあるのは、干ばつ、食糧安全保障、水ストレス、山火事、防衛・安全保障などへの応用を可能にする基盤データを提供することです」と同氏は付け加えた。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Hydrosat人工衛星地表温度資金調達農業自然災害SpaceX

画像クレジット:Hydrosat

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)