中国政府、通信事業者にVPNの利用禁止を要求

インターネット検閲の回避を可能にするVPNソフトウェアに対する中国政府の弾圧が深刻になりつつある。

Bloombergの報道によると、中国政府は国営通信事業社に対して、自社ネットワークで顧客がVPNアプリを実行できなくするよう要請した。情報筋によると、政府はVPNブロックを2018年2月1日から有効にする意向だと同誌は伝えている。

こうした動きの与える影響は甚大だ。China Mobile(中国移動通信、利用者8.6億人)、China Unicom(中国聯通、同2.68億人)、およびChina Telecom(中国電信、同2.27億人)は同国の三大通信事業者でありいずれも国営企業だ。

VPNのブロックが有効になると、利用者は政府がブロックしているウェブサイトをアクセスできなくなる。これには、Facebook、TwitterなどのSNSだけでなく、中国での利用に適さないとされるニュースサイトやウェブページも含まれる。New York TimesとWall Street Journalを始めとする国際ニュースサイトも中国でブロックされていると、検閲監視サービスのGreat Fireは報じている。

情報アクセスが制限されるだけでなく、包括的なVPN阻止は中国を拠点とする企業や従業員の仕事を困難にする。最近のSCMPの記事は、中国のVPN排除の影響を受けている個人を特集している ―― 例えばGoogle Docsを使った情報共有に頼っている環境調査員や、海外の芸術家と仕事をしている上海拠点の収集家などが紹介されている。

検閲回避に対する監視強化の予兆はあるものの、実際にブロックが行われるどうかはさだかでない。2015年、中国政府は北西部新疆自治区で一部のVPNユーザーのモバイル利用を禁止した。新疆は多くの少数民族が居住地で、インターネット検閲の実験台にしばしば使われてきた地域だ。しかし全国レベルの禁止は、これまで以上に過激で広範囲にわたる。

過去数年間、中国政府はVPN事業者といたちごっこを続けてきた。今年1月、中国企業がVPNを提供するためには政府のよる認可が必須になった。その結果、多くの地域サービスが実質的に違法になった。

VPN事業者に対しても政府は動いている。最近政府は中国の人気VPNサービス2社を強制的に閉鎖させたが、海外拠点の事業者は今も追求を逃れている。それは、こうした極端な手段をとってVPNの利用を完全に排除しようとしている理由の一つなのかもしれない。

Bloombergの記事のひと月前、中国は広範囲にわたるサイバーセキュリティ法を制定し、海外企業はその影響を受ける可能性がある。2018年に有効になる新法案の影響範囲はまだ明らかになっていないが、一部のデータを中国国内に保存することを要求していることから、表現の自由を推進する各組織に懸念をもたらしている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

EFFが緊急の公開書簡をテクノロジー企業に送付、新政権でインターネットの監視と検閲が強化されることを危惧

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インターネットの自由とオープン性を守ろう、という趣旨の、テクノロジーのパイオニアたちによるご意見番的非営利団体Electronic Frontier Foundation(EFF)〔日本語Wikipedia〕がこのほど、今後インターネットの監視や検閲が増えるかもしれないので用心しよう、とテクノロジー企業に訴える公開書簡を発行した。その中でEFFは、インターネットのコントロールやインターネットの中立性、そして言論と報道の自由に関する、Trumpと彼のアドバイザーたちの声明文を引用している。

書簡はこう述べる:

次期大統領Donald Trumpと彼のアドバイザーの多くが、監視と検閲を段階的に強化し、それによってインターネットの中立性やプライバシー、そして暗号化の未来に脅威をもたらす主旨の発言をしている。Electronic Frontier Foundationは、テクノロジー企業がわれわれと共に一致団結して、インターネットのユーザーを守ることを求めたい。当団体と多くのテクノロジー企業との協働により、世界中の人びとを結びつけ活気づけるために作られた技術が、抑圧のための道具へと徴用されないことを、確実化できる。

 

EFFはWired誌のフルページ広告で、テクノロジー企業が不要なログやユーザーデータを消去するよう求め、また2017年の新年の願い(ウィッシュリスト)で、“Facebookがユーザーに本名の使用を強制することをやめて、各ユーザーが自分のアカウント上で自由な名前を使えるようにする”ことと、“Twitterがダイレクトメッセージのエンドツーエンドの暗号化を可能にすること”を、要請している。

EFFはまた、政府内の指導的立場の人たちなどに向けた、上記各テーマの詳細な論点も提供している。

インターネットの自由が今後どうなるのか、それを予言するのは時期尚早だが、警戒と準備を怠らないことは重要だ。私たちのコミュニケーションはネット上で行われることが多くなっているから、古い時代遅れの法規等は私たちを傷つける障害物にしかならないだろう。何も悪いことをしてなければ、何も隠すものはない、は依然として正しいけれども、やはりすべての人に、各人に、自分の言論や、コミュニケーション、私生活等の秘密を、守りたければ守れる権利があり、しかもその権利行使の選択は、スイッチを切り替えるぐらいに簡単容易でなければならない。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))