ソーシャルアプリのIRLが最初の買収としてデジタル栄養の企業AeBeZe Labsと契約

SoftBank(ソフトバンク)が投資しているソーシャルアプリで、最近ユニコーンになったIRLが、最初の買収を行った。同社が価額非公開で進めている買収の相手は「デジタル栄養」企業のAeBeZe Labsで、そのIPポートフォリオには、IRLをより健康的で倫理的に設計されたソーシャルネットワーキングアプリにする、という目標が書かれている。

AeBeZeの共同創業者は元eBayの「グローバル・チーフ・キュレーター」Michael Phillips Moskowitz氏と、元MediumのプロダクトリードBrad Artizinegaで、彼らはAeBeZeのチームのそのほかのメンバーと共にIRLに加わり、同社の発見システムやそのほかの機能を作っていく。

IRLは、Facebookをあまり利用しない25歳未満の若者が主なユーザーで、ソーシャル化されたカレンダーとグループメッセージングとイベントを合わせたようなアプリだ。最初は、リアルの世界のイベントを見つけることが主な用途だったが、パンデミックの渦中にはフォーカスがバーチャルイベントに移った。そして今日ではその両方を提供し、グループチャットやユーザープロフィール、グループカレンダー、クロスプラットホームのサポートなどの機能もある、本格的なソーシャルネットワーキングアプリに育った。

この買収の前までは、IRLの収益化路線には広告が含まれず、広告は健康的なソーシャルアプリの構築を阻害する、と見なされていた。収益を広告に頼ると、そのアプリで過ごす時間を増やすために、ユーザーがのめり込むような体験を設計しなければならない。しかしIRLが狙ったのは、ユーザーを彼らの関心対象に接続することによる収益化だ。何らかのコミュニティの有料サブスク、イベントのチケットの購入などがその例で、IRLは彼らが得た売上の一部をいただく。

今度AeBeZeを買収したことによって、その技術により、ユーザーが関心を持つイベントやコミュニティの推薦(リコメンデーション)がもっとスマートになる可能性がある。またそれと同時に、なぜこんな推薦をもらったのか、その理由がもっと透明になる。今日のソーシャルネットワークではつねに、なんでこんなもんが来たんか分からん、というコンテンツがフィードに紛れ込むので、IRLのこのやり方は他と一線を画すものだ。


画像クレジット: AeBeZe Labs/IRL

AeBeZe Labsは、IPのポートフォリオを作っており、その中には消費者や米軍の将兵、エンタープライズのパートナーなどを対象とするソリューションがある。たとえば気分を追跡する消費者アプリMoodriseや、空軍用のモバイルツールDaybreak、YouTubeのコンテンツを分析するMoodTubeなどだ。出願している特許は16あり、特許が下りたのは3つ、審査中が13だ。そして同社の特殊な用語である「Digital Nutrition」(デジタル栄養)は、同社の登録商標だ。

その作品の多くは、ユーザーの「デジタル栄養」(主にネット上の視聴や参加体験)が脳心理学に及ぼす影響を、理解し自覚することの学習に関連している。そして、その学習で得た知識は、問題のあるインターネット利用やそのほかの危険な行為に導く習慣の防止に役立つ。


画像クレジット: AeBeZe Labs/IRL

これは、現代のソーシャルネットワークが、ユーザーの依存性/中毒性の心理をベースとして構築されていることと対照的だ。たとえばプルしてリフレッシュするジェスチャーや、新しいコンテンツを配布するアクションは、脳神経回路中に中毒性のドーパミンを放出する。あなたもきっとご存知のドキュメンタリー「The Social Dilemma」は、大手テクノロジー企業がプロダクトを、ユーザーを操作するために設計している、そのやり方を詳しく紹介している。

IRLがとくに関心を寄せているのが、AeBeZeのDaybreakだ。このモバイルカレンダーは終始、ユーザーの気分を追跡する。また、ユーザーの気分を高揚させるコンテンツを紹介し、それらを見る時間帯を一日の中に設定する。


画像クレジット: AeBeZe Labs/IRLのDaybreak

IRLの創業者でCEOのAbraham Shafi氏は次のように説明する。「私たちはインターネットに親密さを持ち込みたいし、基本的に、先人たちから学びたい。今は、ソーシャルメディアがドーパミンやセロトニンの放出について知っていることを利用して、さまざまな習慣や習慣的パターンを、私たちにとって不健康なものの周辺に作り出している。私たちは、それに手を染めないことに極めて関心があるが、しかし実際には、彼らとは反対に、健康的な習慣を作るものを提供している。自分一人で有意義な習慣を作るのではなく、友だちと一緒に作れるように」。

Shafi氏によると、IRLはDaybreakの技術を統合する計画だ。そうなると、ユーザーがアプリを立ち上げたとき、その日その時の自分の気分にマッチしたコンテンツに出会うだろう。Daybreakのユーザーがしているように、アプリを立ち上げたとき質問に答えて自分の気分を報告する機能になるかもしれない。

「それが正しく機能するためには、ダイレクトなインプットが不可欠だ。そのことを前提してアプリを作っていくだろう。そうすると、ユーザーと、彼/彼女が受け取るコンテンツとの間に明快な理解があるようになる」、とShafi氏は言っている。

AeBeZeの技術を統合したIRLの最初のバージョンは、来年前半に出す予定だ。AeBeZe Labsは現時点で創業わずか2年あまりの企業で、これまでに100万ドル強の資金を調達している。

訂正: 最初のAaBeZeは間違いでした。正しくはAeBeZeです。

(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: IRL

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ライブ向けバーチャルイベント用カレンダーアプリ開発のIRLがウェブ版をリリース

ライブのバーチャルイベントをまとめるカレンダーアプリに最近事業転換したIRLが、米国時間5月6日、このプラットフォームのウェブ版をリリースした。

IRLは、Goodwater Capital、Founders FundFloodgateから1100万ドル(約12億円)を調達し、関心と地域に基づいて現実の世界で仲間を見つけるソーシャルプランニングアプリとしてスタートした。

同社は事業を進めるうちにカレンダーそのもののパワーに気づいた。共同創業者でCEOのAbe Shafi(エイブ・シャフィ)氏は、まだ誰もカレンダーをソーシャルにすることはできていないと説明する。ある人の音楽をSoundCloudでフォローし、その人の最新情報はTwitterでフォローする。ではその人のイベントはどうやってフォローすればいいのか?

新型コロナウイルスが広がる前は、イベントは実際に開催され、人々は会場に集まった。しかしバーチャルイベントに事業転換したIRLにとって、新型コロナウイルスは広い世界を開いたのかもしれない。

YouTube、Twitch、Spotify、そしてユーザーが作成するコンテンツと連携するAPIを通じて、IRLは世界中のバーチャルイベントをすべて好みに応じて整理し、ホームページ上にまとめようとしている。まとめたいバーチャルイベントには、eスポーツのトーナメントやバーチャルコンサート、Zoom飲み、ウェビナーなどがあるだろう(ちなみに「IRL」は、以前は「In Real Life」の頭文字だったが、今は「In Remote Life」だ)。

これを推進するには、今回リリースされたWebのプレゼンスが不可欠だ。ユーザーはコンテンツ制作者をフォローすることもできるし、単に個々のイベントの通知を受けるだけでもいい。さらにIRLは、コンテンツ制作者が自身のウェブサイトに配置するための「カレンダーに追加」ボタンもリリースした。

現在「カレンダーに追加」ボタンは一部のパートナーのみが利用できる。今後このボタンを自身のウェブサイトに配置したい人は、ウェイトリストに登録する。

シャフィ氏はTechCrunchに対し、同社の収益化プランについて「収益化を目指す前に、まず現時点ではクリティカルマスを獲得することに集中している」と前置きした上で次のように語った。

「我々は収益の意識について考えている。FacebookやInstagramを利用しているとき、収益に関する意識は低い。友達が何をしているかに興味があるからだ。一方、Googleを利用しているときは収益に対する意識をはるかに強く持つ。何かを見つけたりどこかへ行こうとしたりしているからだ。人々はIRLを使って誰かが何らかの方法で収益化しようとしているコンテンツにアクセスするという意味で、我々の収益の意識はFacebookやInstagramよりもGoogle検索にずっと近い」(シャフィ氏)。

コンテンツ制作者はアプリを使ってイベントをプラットフォームに追加する必要があるが、シャフィ氏はTechCrunchに対し、ウェブ版にも同じ機能を追加する予定だと述べた。

IRLがコンテンツ制作自体に参入するかという問いに対しシャフィ氏は、その前提は「頭痛の種だ」と答えた。

「我々はコンテンツの集まる場所になりたいと考えている。多くのすぐれた人々がコンテンツを作っている。コンテンツビジネスへの進出は手強い。コンテンツを見つけるのに最適なサービスだと思われれば、我々にとっては大成功だ」と同氏。

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(翻訳:Kaori Koyama)

新型コロナによりリアルから仮想イベントのカレンダーアプリへ方向転換中のIRLがカテゴリー1位に

あなたの企業がイベントディスカバリー関連のスタートアップ企業だったとする。ところが突然法律によって人々がイベントに出席することが禁止された場合、どうするか。文化的シフトと転換を推し進めるのが正解だろう。資本金1100万ドル(約12億円)のカレンダーアプリIRLは現在、「In Real Life」から「In Remote Life」に変化を遂げつつある。IRLは今後、ライブストリーミングコンサートからeスポーツトーナメント、Zoomでのカクテルパーティーまで、ユーザーが仮想イベントの検索、招待、計画、共有、チャットできるよう注力していく。

新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により、IRLはより多くのユーザーに関わりのあるものとなった。以前はイベントがどこで開催されるかは非常に重要な点だったが、In Remote Lifeのコンテンツに地理的制限はない。IRLの共同設立者でCEOのAbe Shafi(エイブ・シャフィ)氏は「みなさんの日常生活がすっかり変わってしまったため、ニーズは飛躍的に拡大しています」と言う。4月3日現在、米国のApp StoreにおけるIRLのランクは第138位で、カレンダーアプリとしては第一位、Googleのカレンダーアプリ(第168位)よりも上位である。

IRL In Remote Life Calendar

RobinhoodのJosh ElmanがIRLに参画

この変化を推進するため、IRLは製品開発に携わる新しい人材を迎え入れた。株式取引アプリRobinhoodのプロダクト事業部長であるJosh Elman(ジョッシュ・エルマン)氏を雇用。同氏はGreylockの元インベスターでありFacebook、Twitter、LinkedInでの仕事を手掛けたことでよく知られている。エルマン氏は2018年の初めにRobinhoodに入社したものの、2019年後半に離職している。機能停止が急増しユーザーを激怒させた出来事が起こったのはその後である。

「私は会社が110%を捧げられる人材を何よりも必要としていることに気づきましたが、私がその人物に該当するか確信が持てませんでした」。エルマン氏は現在76億ドル(約8270億円)の価値があると評価され、拡大に苦心するRobinhoodについて語った。「私が第一に情熱を注ぎ、長年にわたって話してきたのは、ソーシャルとメディアでした」

今のところ、IRLは彼にとってパートタイムのギグワークであり、ここではシークレットプロジェクト部門を率いる予定だ。多くのアプリは「ユーザーの時間を奪おうとする」ものであるが、彼はIRLをこの貴重なリソースを人々に還元させることのできるチャンスと考えている。前職に関しては「Robinhoodはすばらしい企業です。私は株主としてとても満足しています」と付け加えた。

ボーダーレスなイベント

「当社は、実際のイベントに関連するアプリの使用率と成長で安定した状態に到達していました」と、Zoomでの会話中にシャフィ氏は話す。新型コロナウイルスによってもたらされたこの状況について「そして今回の出来事がおこったのです」と述べた。「イベントが開催できないため、すべてのコンテンツを回収せざるを得なかったのです」。

4月3日、IRLのiOSアプリは、ユーザーが自宅から参加できる仮想イベントを中心としたホーム画面コンテンツ「Discover」の新デザインをローンチした。ゲーム、ポッドキャスト、テレビ、教育、音楽、料理、ライフスタイル、「楽しいイベント」セクションのタブが追加された。 各イベントをカレンダーに追加してGoogleカレンダーと同期させたり、友人やファンがフォローできるよう「いいね」ボタンをユーザーのプロファイルに追加したりすることができる。また、IRLでイベントに関するグループチャットをすぐに開始したり、Instagram Storiesや他のメッセージングアプリでシェアすることも可能だ。

やりたいことが見つからない場合は、コンポーザーを使って「ビデオチャットをする」「Zoomワークアウト」「ゲームセッション」「Netflixパーティー」などの提案をし、友達とイベントの計画を立てることができる。これにより、他の人々を招待できるカレンダーイベントが自動的に設定される。また、イベントの開催日時がはっきりしない場合は、IRLの「Soon(まもなく)」オプションを使用すると、スケジュールは未定のままで、皆が参加できる時間を確認することができる。実際、シャフィ氏によるとIRLの計画の50%は「Soon」を利用して開始されるとのことだ。厳密な時間、日時カレンダーにニーズのギャップがあることがわかる。

IRLは個々のイベントだけでなく、ワークアウト、瞑想、その他の予定をユーザーがサブスクライブできるようにすることで、習慣として確立しやすくしたいと考えている。スポーツのシーズンは中断されたが、IRLを使用すると代わりにヒップホップアルバムのリリースなどの予定がカレンダーと同期できる。または、インフルエンサーの生活をサブスクライブし、デジタル上でイベントに同行することも可能だ。社会的距離戦略が収まってきたら、オフラインのイベントをIRLのコンテンツの推奨事項に少しずつ加えていくことが目標である。

IRLの最大の課題は、イベント推奨アルゴリズムを調整することである。イベントに対し従来使用されてきた関連性シグナル、例えばイベントが家にどれだけ近いか、費用がどれくらいか、イベントがユーザーの住んでいる都市で行われるかといったシグナルの多くが使用できなくなっている。 In Remote Lifeへの移行は、世界中のさまざまなイベントを誰もが利用できるようになることを意味している。また、無料でイベントを主催できることが多いため、参加するユーザーが少ない質の低いイベントが多数発生している。このためどのイベントを表示するかを決定することが非常に難しくなっている。

今のところ、IRLはホーム画面でユーザーの使用頻度に応じたリコメンド表示をしているが、それでは初期のユーザーエクスペリエンスにはかなり当たり外れがある。筆者が経験したところでは、各カテゴリーのトップイベントが面白そうだと感じることはほとんどなかった。しかし、IRLは、新規ユーザーが使い慣れていくプロセスを強化してユーザーが何に興味を持っているかを質問するとともに、Spotifyと統合することで、ユーザーがどのミュージシャンのオンラインコンサートに参加したいかを把握できるようにする予定である。

いずれにしても、シャフィ氏はIRLが他のソーシャルでない代替手段よりもすでに優れてたものになっていると考えている。「当社の主なユーザーの年齢幅は13歳から25歳で、大学生および大学卒業者のいる大都市圏、および大学のキャンパスで使用されています。IRLの一般的なユーザーは、これまでにカレンダーを使用したことがない人か、GoogleカレンダーやiCalなどのデフォルトのカレンダーを使用したことがあるだけの人です」。

孤独を癒やす

願わくば、自分と同じタイミングで友人に暇があり一緒に遊べるかどうかを把握できるようにする機能をIRLが発達させてくれることを望んでいる。 Down To Lunchがこの分野で失敗した一方、Facebook MessengerやInstagramは自動ステータス機能でその可能性を探っている。SnapMapやZenlyなどの位置情報アプリでは、ユーザーが自分がどこにいるかをシェアするだけでなく、交流する意図があるかをシェアすることができる。

「ほんの少しの刺激、透明性、サジェストによって、毎月のアクティビティを1つでも増やすにはどうすればよいのか」というのがシャフィ氏の問いだ。 IRLはユーザーが「自分は2時間空いている」ということを「相手が応答しない場合でも拒否されたと感じない」方法で、受動的に共有できる方法を見つけようとしている。

Facebookは2016年に独立したイベントカレンダーアプリを立ち上げたが、後にカレンダー機能を組み合わせて、レストランのおすすめに組み込み、Localという名前に変更した。 Facebookほど大きな企業でも、すぐ完璧にできることは限られています」とエルマン氏は以前自身が携わった企業について語った。「彼らは『イベント』機能でもっと多くのことができたのでしょうが、写真の投稿に関してほど絶対的な存在ではありませんでした」

シャフィ氏はこのような基盤となる分野でチャンスを得たことを喜び、カレンダーにおける同コンセプトが定着すると確信している。どれほど長く時間がかかっても、促進するため努力する価値があると考えている。一方で彼に投資しているGoodwater Capital、Founders Fund、Kleiner Perkins、Floodgateは、最終的に収益化につながるよう願っていることだろう。

アプリを介したイベントへのアクセス権の販売や、プロモーターや地元企業に対してディスカバリーを高めることで収益化できるだろう。だが今のところIRLは、イベントやコンテンツパブリッシャーとの深いつながりを構築しつつあり、サイトやメールに組み込むことができる無料の「カレンダーに追加」ボタンもまもなくリリースされる。エルマン氏によると、AppleやGoogleのカレンダーと連携するボタンは一部有料サービスとなるが、多くを無料で提供することで、アプリにイベントを増やし、ユーザーがより多くのことをできるようにしたいと考えている。

「当社のタグラインは『live your best life(自分にとって最高の人生を送る)』です。当社が誰かに価値観を押し付けることはありません。もしユーザーにとっての最高の生活がソファに座って友達とゲームをすることなら、それを楽しんでいただきたいのです」

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(翻訳:Dragonfly)