食材宅配のBlue Apron、ウォルマート傘下のJet.comとの提携で株価アップ

敵の敵は味方。今日(米国時間10/29よJet.com が発表した両スタートアップの提携はそれで説明がつく。同社は窮地に立つBlue Apronに手を差し伸べ、ニューヨークの同社顧客に食材セットを販売する

この提携により、Blue Apronの食材キット4種類がJet.comの「City Grocery」サービスの一部として利用可能になる。キットは6週間毎に循環し、マンハッタン、ブルックリン、クイーンズ、ブロンクス、ジャージーシティー、およびホーボーケンで当日あるいは翌日配達される。

Blue Apronにとって初めてのEコマースパートナーとなるJetは、このキットは同社顧客が何を食べたいか、どう作りたいかという「大規模なフィードバック」に基づいて作られたと言った。その狙いの一環として、キットはすべて30分以内で調理できる。

初回のメニューセレクションは以下の通り:

  • 牛肉のたたきステーキ、フレゴラサルタパスタのペパロナータ、グラナパダノチーズ(2人前、28 oz/794 g)——22.99ドル
  • デュカスパイスビーフ、タヒにドレッシングかけクスコ(2人前、41 oz/1162 g)——20.99ドル
  • トウガラシポップコーンチキン・スイートチリスロー添え、ジャスミンライス(2人前、32 oz/907 g)——18.99ドル
  • イタリアンファロサラダ・焼き野菜添え、モッツァレラ(2人前、32 oz/907g)——16.99ドル

「Blue Apronのオンデマンド料理キットを取り扱う最初のEコマース店舗としてニューヨークでスタートできることを大変喜んでいる」とJetのSimon Belsham社長が声明で述べた。「当社が最近開始したCity Grocery体験にこのオンデマンド商品が加わることで、人々の生活を便利にするわれわれのサービスや製品に新たなレイヤーを提供できる。これはJetが差別化を続けていくやり方を示す好例だ」

昨年遅くにBlue ApronのCEOになったBrad Dickersonも同調した。Dickersonは同社が「チャンネル拡大戦略」に力を入れていることを示唆した。

2017年は上場を果たしたにも関わらずBlue Apronにとって苦難の年だった。

当初15~17ドルと期待していた株価は10ドルで公示された。しかしもっと大きかったのは、AmzaonがBlue Apronの株式公開直前にWhole Foodsを買収したことだ。投資家はこの買収がBlue Apronに悪影響を与えることを懸念し、同社の顧客維持戦略の実効性に対してさらに疑問が募った。

それ以来Blue Apronの状況は悪化するばかりで、金曜日(米国時間10/26)の終値はわずか1.14ドルだった。しかしJetとの取引を巡ってプラスの要因が働いたのか、株価は時間外取引で22%近く上がったことをYahoo Financeが示している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ウォルマートがeコマースの有力スタートアップ、Jet.comを30億ドルのキャッシュで買収と発表

2016-08-09-jet-com-alt

このところ小売業はAmazonが君臨するeコマースが主戦場となっている。今日(米国時間8/8)、Walmartはデジタル・コマース・ビジネスにおける過去最大の買収を発表した。Walmartは運用開始後ちょうど1年のオンライン専門ショッピングサイト、Jet.comを30億ドルのキャッシュで買収する。またJet.comのファウンダーや関係者に最高3億ドル分のWalmart株式を与えるという。

Walmartの発表によれば買収後もJet.comは独立のブランドとして運営される。この買収は〔実店舗のスーパーマケットチェーンという〕Walmartのコア事業を多様化し、ターゲットの消費者を拡大する戦略に沿うものだという。

Jet.comの共同ファウンダー、CEOのMarc LoreはJet.comの責任者を続けるだけでなく、Walmartのオンライン事業のトップの地位をNeil Asheから引き継ぐ。Walmartの社長、CEOのDoug McMillonは買収についての電話記者会見で「われわれはeコマース事業にさらに注力していく。〔この人事は〕買収に伴う自然な成り行きだ」として次のように述べた。

「LoreがJetで確立した〔システム〕はWalmartでも採用される。Loreがこのポジションをは引き継ぐことは、Walmartをeコマースの世界にさらにコミットさせる役割を果たすだろう。これは理にかなったことだ」と述べた

2012年からグローバルeコマース部門のトップになったAsheは2016年からWalmart Technologyの責任者も兼ねているが、Asheが買収後も後者の地位に留まるのかは不明だ(取材中)。

McMillonは「Jet.comは「〔Jet.comは〕2020年までに黒字化を達成することになっているが、グループに入ったことで配送、人的資源、サプライチェーンなどにスケールメリットが活かせることになり、黒字化の目標達成は早められるだろう。ただし〔Jet.comに対して〕しばらく投資を続ける期間が必要必要だ。今日はWalamartのガイダンスの修正は行わないが、いずれにせよわれわれの企業文化は短期の損益に拘泥しない。われわれは消費者と共に勝利することに集中している」と述べた。

規制当局に承認されれば買収手続きの完了は年内を目標としている。【略】

WalmartとJet.comの買収交渉は1週間にわたって大きなビジネス・ニュースとなっていた。買収金額についてBoombergre/codeだけでなく、われわれTechCrunchも30億ドルになると報じたが、この情報は正しかったことになる。

今回の買収は急成長中のeコマース企業と世界最大の実店舗小売業の合併として大きなインパクトを与えている。現在Walmartは世界28ヶ国に1万1527店舗を展開し、会員制スーパーのSam’s Clubを始め63のグループ企業を展開している。1週あたり顧客は2億6000万人、会計年度の2016年には4820億ドルの売上を記録し、従業員は(なんと!)230万人に上る。

一方Walmartの発表によれば、Jet.comは事業を開始した最初の年に通年換算の流通総額 (Gross Merchandise Value=GMV)が10億ドルに達した。Jet.comの取扱商品は単品管理単位(Stock Keeping Unit=SKU)で1200万、月間新規顧客は40万、処理注文数は1日当たり2万5000、登録小売企業および提携企業数は2400となっている。

eコマース・ビジネスのインフラ構築のためにWalmartがこれほどの巨額を投じたことは強い関心を集めている。Walmartは世界最大の小売業だが、このところ採算性の悪い分野でのダウンサイジングにも努めている。たとえばWalmart Expressと名付けられたミニ・スーパーを実験的に開設している。

今日の電話記者会見で WalmartのCEO、McMillonは「Jet.comは「〔Walmartよりも〕都会的でありミレニアル世代を惹きつける力がある。現在われわれが扱っていないブランドにとっても魅力だ」と説明した。【略】

Jet.com―離陸したのか、滑走中か?

WalmartはJet.comのビジネスについは、売上総額、顧客総数、収益性など具体的な数字を発表していないが、買収以前にJet.comが発表したところによれば2019年までは赤字が続く見込みだ。

Jet.comは2013年に Lore、Mike Hanrahan、Nate Faustによって創立され、巨額のベンチャー資金を集めることに成功している。投資額は5億ドル以上と報じられているが、8億ドル以上の可能性もある。会社創立後、2015年7月に運用を開始するまで評価額上昇を続けた。30億ドルの買収額は、昨年末の資金調達ラウンドにおける評価額の1つとして報じられた額だ。

Jet.comはスタートアップとしても非常に若い会社で、事業の運営もアメリカに限定されている。しかしLoreはイギリスでドメイン名を登録しており、ヨーロッパ、少なくともイギリスには事業を拡張する計画かもしれない。

Walmartの広報担当者によれば、「JetはWalmartを助け、WalmartもJetを助けることができる」という。

この記事はアップデートでWalmartのCEO と広報担当の発言を追加している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+