AIチップメーカーのKneronが自動運転の推進に向けて約28.4億円調達

AIチップは機械学習を加速する半導体であり、多くのアプリケーションがある。Albert Liu(アルベルト・リュー)氏によると、将来性のあるユースケースの1つが自動運転車への利用だという。

リュー氏のAIチップ生産スタートアップKneronは、秘かに投資を集めて、スマート交通分野に進出しようとしている。同社はこのほど2500万ドル(約28億4000万円)の新たな投資ラウンドを完了したが、それは主に、台湾の光電子工学のパイオニアであるLite-On Technologyを戦略的投資家として迎え、その他の投資家にはAlltekやPalPilot、Sand Hill Angels、Gaingelsなどとなる。

2015年の創業以降、Kneronの総調達額は1億2500万ドル(約142億1000万円)を超えた。サンディエゴと台北を拠点とする同社は、香港の大物Li Ka-Shing(李嘉誠)氏のHorizon VenturesやAlibaba、Qualcomm、Sequoia、Foxconnなど多くの著名投資家たちを集めている。中でもFoxconnは世界最大のエレクトロニクスメーカーであり、Appleのサプライヤーだ。

関連記事:クアルコム出資のチップメーカーKneronがフォックスコンからも資金を調達

先にリュー氏が語ったところによると、同社は2023年に黒字化するため、上場の「好機」だという。最近、彼はIPOについてあまり語らなくなったが、上場は米国で行なうという。

Qualcommでコンピュータービジョンを手がけていたリュー氏は、インタビューで「自動運転のL4とL5はクルマだけの問題ではなく、路側のAIも重要です」と述べている。

Kneronへの最新の投資は、同社が先進運転支援システム(ADAS)と自動運転車向けの最初の自動車グレード半導体をリリースした直後にやってきた。

近くの車両と通信できる路側ユニットがあれば、例えば救急車は交差点で停止する必要がない。このようなインフラは、米国よりも交通事情が複雑なアジア諸国では特に有効であると、リュー氏はいう。

この戦略的投資を通じて、KneronとLite-Onは、KneronのエッジAIチップを搭載したロードサイドAIボックスを共同開発する。

このスタートアップのチップは「再構成可能」であり、ソフトウェアの柔軟性とハードウェアの高速性を兼ね備えている。自動車の場合、同社のシリコンは、車内の大型AIエンジンにも、クルマの外装に重ねた小型センサーの電源にも使えると、リュー氏は説明し、以下のデモ動画でも紹介している。

 

Kneronは、現在30社の企業顧客から毎月300万〜400万ドル(約3億4000万〜4億5000万円)の収益を得ており、収益の30〜40%は米国からのものだ。

同社は、業界のパートナーとの深い提携関係を築いている。5月には、Delta Electronicsの子会社であるVivotekから画像信号処理装置のVaticsを買収することに合意している。KneronはFoxconnを戦略的投資家としてカウントしており、電気自動車向け製造プラットフォーム「MIH」は同社のチップが採用されている。

画像クレジット: KneronAdventr

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クアルコム出資のチップメーカーKneronがフォックスコンからも資金を調達

サンディエゴと台北に拠点を置くスタートアップがエレクトロニクス業界の最大手数社からひっそりと資金ならびに契約を獲得している。エネルギー効率の良いエッジAIチップを専門とするKneron(クネロン)は、台湾の製造大手Foxconn(フォクスコン)と集積回路メーカーWinbond(ウィンボンド)から戦略的資金を調達した。

本ラウンドの1年前に、Kneronは香港の大富豪Li Ka-Shing(リ・カシン)氏のHorizons Venturesがリードした4000万ドル(約42億円)のラウンドをクローズした。他の主要投資家としては、Alibaba Entrepreneurship Fund、Sequoia Capital、Qualcomm、SparkLabs Taipeiなどが含まれる。

KneronはFoxconnとWinbondの投資額については両社からの要望を受けて非公開としたが、創業者でCEOのAlbert Liu(アルバート・リュー)氏はTechCrunchとのインタビューで「8桁」のディールだったと述べた。

2015年に設立されたKneronの最新プロダクトは洗練されたAIアプリをクラウドに頼ることなく動かすことができるNPU(ニュートラルネットワークを組み込んだ人工知能専用のプロセッサー)だ。KneronはIntel(インテル)とGoogle(グーグル)のチップを直接引き受けており、それらは自社の製品よりもエネルギー消費が大きいとKneronは主張する。同社は最近、Qualcomm(クアルコム)台湾の元エンジニアリング責任者Davis Chen(デイビス・チェン)氏を採用し、人材の強化を図った。

Kneronの顧客には中国のエアコン大手Gree(グリー)やドイツの自動運転ソフトウェアプロバイダーTeraki(テラキ)が含まれ、そして今回の資金調達で世界最大の電気機械メーカーをクライアントに持つことになる。戦略的提携の一環として、KneronはFoxconnのスマートマニュファクチャリング、それから新しく導入された電動車両向けのオープンプラットフォームで協業する。その一方でWinbondとの協業はMCU(マイクロコントローラー)ベースのAIとメモリーコンピューティングにフォーカスする。

「低電力のAIチップはセンサーを埋め込むのが簡単です。我々はみな、一部のオペレーションラインではセンサーがかなり小さいことを知っています。なので大きなGPU(グラフィックスプロセッシングユニット)やCPU(セントラルプロセッシングユニット)を使うのは、特に電力消費が大きな懸念材料である場合においては簡単ではありません」とリュー氏は述べた。同氏はKneronを設立する前、QualcommとSamsung(サムスン)のR&D部門に在籍していた。

競合他社と異なり、Kneronは製造からスマートホーム、スマートフォン、ロボティクス、監視、決済、自動運転までさまざまなユースケース向けにチップをデザインする。チップをただ作るだけでなく、チップにAIソフトウェアを埋め込む。SenseTimeやMegviiといったクラウドを通じてAIサービスを実現している中国のAI寵児たちと差異化を図る戦略だ、とリュー氏は述べた。

Kneronは、他の企業に比べると資金調達に関してはそれほど積極的に動いてはこなかった。巨大なラウンドを通じての資金は事業を急拡大する財源となる。創業6年のSenseTimeはこれまでに26億ドル(約2700億円)を調達し、創業9年のMegviiは約14億ドル(約1454億円)を銀行口座に確保した。それに比べ、KneronはシリーズAラウンドでわずか7000万ドル(約73億円)を調達したにすぎない。

Kneronは、中国のAI新興企業のようにIPOを検討している。同社は2023年に黒字化達成を予想していて、「おそらくIPOにはいい頃でしょう」とリュー氏は述べた。

関連記事:Kneronが新たなエッジAIチップでグーグルやインテルに挑戦

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Kneron資金調達FoxconnQualcomm

画像クレジット:Kneron

原文へ

(翻訳:Mizoguchi