Lucid Motors(ルシード・モータース)がオール電化セダンAirの最終バージョンを発表してから8カ月、同社はついにその車載テクノロジーの詳細を明らかにした。曲線を描く34インチディスプレイ、セカンドタッチスクリーンから、基盤となるソフトウェア、統合アプリ、そしてAmazon Alexa音声アシスタントに至るまで、同社が2021年後半に納車を開始すれば、ドライバーや同乗者はそれらを利用できるようになる。
同社のブランド名を冠したLucid User Experience(Lucid UX)が目指すところは、顧客が求めるテクノロジーを、複雑さや煩雑さを増すことなく、8万ドル(約878万円)から16万9000ドル(約1854万円)の価格帯のクルマに搭載することだ。
「使いやすさ、学習曲線の短さという確固とした原則を基盤にして、迅速なレスポンスと全体的なエレガントさを追求しました」とLucidの設計責任者Derek Jenkins(デレク・ジェンキンス)氏は最近のインタビューで語っている。「過度に技術的であったり、サイエンスフィクション的であったり、あるいはスプレッドシート風であることから離れて、当社のブランドやデザイン精神に一層適合するものへと真の意味で移行したいという気持ちがありました」。
その内装は、Tesla(テスラ)のModel 3やModel Yほどシンプルではないし、ドイツの高級車のようにぎっしり詰まった感じでもない。ジェンキンス氏とそのチームは、ゴルディロックスが選んだお粥のボウルのような「ちょうどいい」テクノロジーを意識した。
「プロジェクト初期に、私はいつもチームにこう伝えていました。『母親にこのクルマに乗ってもらうことを想定して、このクルマでまず実現することを見いだしたいと思っている』」とジェンキンス氏は続けた。「母親は、ライトのスイッチとドアのロックが左側にあることを直感的に認識できると思います。なぜならそれらは常にその場所にあるからであり、そのようなものを掘り下げる必要はありません。あるいは、母親であれば空調はおそらくスクリーン下部にあるだろうと考えるでしょう。大抵そのあたりにあり、伝統的な配置だからです。直感的でシンプルなものにすべきという思いを純粋に抱きながら、印象的な機能や進化するシステムの装備を考慮していきました」。
画像クレジット:Lucid Motors
ハードウェア
「ガラス製コックピット」と称される湾曲形状の34インチ5Kディスプレイは、ダッシュボードの少し上に設置されている。車内で最も視認性の高いハードウェアだが、特筆すべき要素はそれだけではない。Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)が56インチのハイパースクリーンに採用した技術を使用して、1枚のガラスプレートの下に3つのディスプレイを搭載。左端にあるのはタッチスクリーンで、Lucidはここにウィンドウのデフロスター、照明、ワイパー設定など、最も重要な車両コントロールを配備している。
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中央のディスプレイには、速度とバッテリー残量を表示するインストルメントクラスターが配されている。インストルメントクラスターの右側にはウィジェット機能が実装されており、ナビゲーションや音楽の再生など、ユーザーに応じてさまざまな情報を表示可能だ。インストルメントクラスターは、先進運転支援システムが作動しているかどうかをドライバーが確認する場所でもある。
ハンドルに向かって右側に、Lucidが「ホームスクリーン」と呼ぶタッチディスプレイが位置している。ナビゲーション、メディア、通信機能がここに搭載されている。
中央コンソールエリアには、Lucidが「パイロットパネル」と名づけた別の湾曲スクリーンがあり、そこにはクライメートコントロール、マッサージ機能を含む座席機能、その他の車両設定が映し出されている。ホームスクリーンにあるメニューを下のパイロットパネルにスワイプすると、音楽やナビゲーションの詳細なコントロールを表示することができる。また、ドライバーが追加的なタッチスクリーンを望まない場合は、パイロットパネルを格納して、その背後にあるストレージスペースを利用することも可能だ。
なお、アナログスイッチは、ドアとハンドル、そしてパイロットパネルと上部ホームスクリーンの間のスペースという3つの領域で車内に残されている。ドアに付いているのはウィンドウスイッチと内部ドアラッチだ。センターコンソールのディスプレイの真上には4つの物理的なボタンがあり、エアコンの温度や風量を設定できる。
画像クレジット:Lucid Motors
ハンドルにはタッチバーと2つのトグルがある。これらのボタンを使って、Alexa音声アシスタントの起動、先進運転支援機能のオン / オフの切り替え、クルーズコントロールによる追従走行の設定、ボリュームの制御などが行える。
「物理的なボタンやタッチスクリーン上でのデジタル操作といったアナログ操作に関する議論を通して、数多くの研究を重ねました」とジェンキンス氏。「その結果、人々がまだ物理的な操作を望んでいる重要な機能があることがわかりました」。
車両には32個のセンサーも搭載されており、その中には、車両の外側にあるノーズブレードの真下に位置する単一のLiDARも含まれている。その下に低めのエアインテークと前向きのレーダーが設置され、他のレーダーセンサーは外側のコーナーに配置されている。バックミラーの後ろのノーズとヘッダ部分には、外部カメラも装備されている。
車内には、インストルメントクラスターの下部に、ドライバーの方を向いたカメラが内蔵されている。このカメラはドライバーモニタリングシステムの一部で、先進運転支援システムが作動しているときに、ドライバーが注意を払っていることを確認するためのものだ。
他に特筆すべきハードウェアとして、Dolby Atmos(ドルビーアトモス)の21個のスピーカーで構成されるサラウンドサウンドシステムと、エアベントが醸し出すビンテージ風(そしてミアータ風)のディテールが挙げられる。Lucidは、ユーザーがデジタルタッチスクリーンを使って空気の流れの方向を変えるTesla Model 3とは異なり、人が触れて動かすことのできる物理的なエアベントをAirに持たせたいと考えた。しかしLucidは、チクレットスタイルのデザインで、空気の流れをオン/オフするためのサイドタブを追加した大きなエアベントは望まなかった。
解決策は、中央に丸いダイヤルが1つあるスリムダウンされたエアベントだった。ダイヤルをつまんで動かすことで空気の流れを変えることができる。また、特定のベントへの空気を遮断するための開閉も可能となっている。
「これは私たちには画期的なことでした」とジェンキンス氏は笑みを浮かべて語った。「60年代、70年代の車では極めてよく見られたことなので、画期的とは言えないかもしれませんね」。
ソフトウェア
物理的なタッチスクリーンやセンサーの裏側には、機能やサービスを提供するソフトウェアがある。
Lucidは、オープンソースのAndroid Automotiveオペレーティングシステムからスタートし、そこでアプリやその他の機能を構築した。Android Automotive OSは、Linux上で動くGoogleのオープンソースのモバイルオペレーティングシステムAndroidをモデルにしている。Googleはしばらく前から、このOSのオープンソース版を自動車メーカーに提供してきた。近年、自動車メーカーはGoogleと協力して、GoogleアシスタントやGoogleマップ、Google Playストアなど、Googleのすべてのアプリやサービスに組み込まれたAndroid OSをネイティブに構築している。Lucidは、Googleサービスプラットフォームのルートを辿ることはなかった。
Lucidはその後、各種のサードパーティーアプリをインフォテインメントシステムに統合した。そのリストには、現時点でiHeartRadio、TuneIn、Pocket Casts、Dolby Atmos、Tidal、Spotifyが名を連ねている。
Lucidはまた、デフォルトの統合音声制御システムとしてAlexaを採用。さらにLucid Airには、Android AutoとApple CarPlayの付属も予定されている。ユーザーのスマートフォン上で動作し、車のインフォテインメントシステムと無線通信するアプリだ。つまり、ドライバーはこれらのアプリでGoogleアシスタントやSiriにアクセスできる。ただし温度調整などの車両機能は制御できない。
加えて、モバイルとWi-Fi接続が統合され、ソフトウェアをワイヤレスでアップデートできる。Lucidはこの無線アップデート機能を通じて、新しいアプリやサービスを追加していくことが可能になる。
今後の展望
ジェンキンス氏によると、同社はすでに、駐車中にのみアクセスできるゲームやビデオストリーミングなど、さらなるコンテンツをインフォテインメントシステムに追加することを視野に入れているという。
Lucidの設計チームはさらに、Airの将来のモデルイヤーに向けて、リアエンターテインメントディスプレイなどのハードウェアベースの追加も検討している。
「おそらく2023年頃には、それを目にすることになるでしょう」とジェンキンス氏は語ってくれた。「リアシートはすばらしい空間ですから、この取り組みはとりわけ意味のあることだと考えています」。
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画像クレジット:Lucid Motors
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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)