メインフレームも今では痩身のマシン、IBMがエントリーレベルのZシリーズをアップデート

メインフレームといえば、何百万ドルもする巨大なハードウェアで、家具としても使えるようなコンピューターを連想するだろう。しかしそのイメージを変えたいIBMはこのほど、同社のZシリーズマシンに新しい機種、IBM z14 Model ZR1を加えた。この新型のメインフレームは、ふつうのクラウドデータセンターやプライベートなクラウド環境で使いやすいように作られている。またこれと並んでIBMは、同じぐらいのサイズのRockhopperサーバーのアップデートも発表した。

多くの点で、この新しいz14 ZR1は同社のエントリーレベルのz13sの後継機種だ。ただし、そもそも、エントリーレベルのメインフレームなんてありえない、という説も世の中にはあるだろう。IBMによると、z14は前世代機に比べて能力は10%増、メモリは2倍で8テラバイト、そして、一台で一日に8億5000万以上の完全に暗号化されたトランザクションを扱える。それがどういうトランザクションかを、IBMは述べていないけど。

IBM ZのゼネラルマネージャーRoss Mauriは、今日の発表声明でこう述べている: “これによりIBM Zの力を、全面的な暗号化による堅牢なセキュリティと機械学習、クラウドの運用力、そして強力なアナリティクスを求めるクライアントの、さらに高能力なデータセンターに持ち込める。これはクライアントのオンプレミスおよびハイブリッドクラウド環境のセキュリティと能力を増すだけでなく、われわれもまたこの新しいシステムを弊社IBMのパブリッククラウド用データセンターにデプロイし、ますます集約性を高めるデータ負荷のためのセキュリティとパフォーマンスを強化するだろう”。

なお、メインフレームは今日の世界ではコンピューティングのもっともセクシーな分野とは言えないにしても、しかしIBMにとっては今だに堅実なビジネスであり、今日のマイクロサービスの時代においても、金融をはじめとする多くの企業が依然としてその高能力なマシンを頼りにしている。IBMによると、上位50の銀行のうちの44行と大手航空会社の90%が今日、Zシリーズのメインフレームを使っている。その超巨大な先祖たちと違って今日のメインフレームは、特殊な冷却や電力供給を必要とせず、そして今日では、嬉々としてLinuxや、あなたがよく知っているスタンダードなソフトウェアのすべてを動かしているのだ。

今日のIBMはZR1に加えて、LinuxONE Rockhopper IIをローンチした。それは、より従来的なLinuxサーバーであり、同じくシングルフレームの19インチラックに収まる。この新しいRockhopperも最大8テラバイトのメモリをサポートし、最大で33万のDockerコンテナを動かせる。ZR1が現在のメインフレームをアップデートしたい企業向けであるのに対し、Rockhopper IIは明らかに、現代的なDevOpsの実践を目指して自分たちのソフトウェアアーキテクチャを再検討し始めた企業向けだ。〔日本語記事

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

メインフレームのCOBOLコードをLinuxのクラウドへ移行するLzLabs、そのためのツールを発表

1960s MAN PROGRAMMING LARGE MAINFRAME COMPUTER SURROUNDED BY DATA TAPE DRIVES INDOOR  (Photo by H. Armstrong Roberts/ClassicStock/Getty Images)

世界は、本誌TechCrunchが毎日書いているような進んだテクノロジーで満ち溢れているが、しかしそんな中にも、まだ一部には古代が生き残っていて、COBOLで書かれたプログラムをメインフレームコンピューターが動かしている場所がある。

COBOLは1950年代の晩(おそ)くに開発された言語で、主に60年代、70年代に使われ、80年代にも使われていたが、今でもまだ絶滅してはいない。現代の企業世界からは完全に姿を消した、と思ったら大間違いだ。

ただし、年を経るごとに、COBOLプログラムをメンテできる人の数は減っている。そしてそれとともに、データや(その古びたプログラムさえ)をもっと新しいプラットホームに移そうとする企業が増えているが、しかし今度は、そんな移行を手伝える人材が見つからない。

スイスのLzLabsは、そこに大きな機会を見出した。“レガシーのメインフレームで動いているコードのメンテナンスにおける、スキルの不足は、今や深刻だ。そんな人材を見つけることが、大きな問題になっている”、LzLabsのCEO Mark Cresswellはこう語る。

この問題を解決するためにLzLabsが編み出したのが、Gotthard〔10世紀の宗教改革者〕と名付けられたツール、それはまず、何年も前に書かれたそのスズメバチの巣のようなコードから、各種のデータや実行コード、構成ファイルなどを拾い上げることから仕事を始める。それから、そういったさまざまな破片をコンテナに収めて密封し、Red Hat Enterprise Linux(RHEL)が動いているクラウドプラットホームへ移す。

実は同社は、今日(米国時間7/5)の発表よりも前の昨年の冬、ドイツで行われたCeBIT Technology Fairで、ソフトウェア定義メインフレーム(software defined mainframe)と同社が呼ぶものを立ちあげ、Red HatおよびMicrosoftとのパートナーシップを発表した(後者はほぼ同じころ、AzureをRHELに持ち込むためのパートナーシップを発表している)。

同社は、そのツールがインスタントなソリューションを可能にする、とは言っていない。むしろそれは、長丁場の仕事だ。そこで同社は、自分たちが直接客先に接するよりも、サードパーティのSIとパートナーすることを望んでいる。彼らが、現場の面倒な仕事を全部やってくれて、移行の準備を整えてくれることを。

今日の発表は最初の発表からの同社の進化を表していて、レガシーのメインフレームアプリケーションを抱える企業の移行をできるかぎり容易にするためのツールの発表が主だ。それでもまだ、困難で長期にわたる、骨の折れる仕事であることに、変わりはない。しかしとにもかくにも、そのための道具がやっと使えるようになったのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

IBM、Canonicalと提携してUbuntu Linuxの動作するメインフレームを提供

linuxone

「Linux」と「メインフレーム」を「相反するもの」と捉えている人も多いのではなかろうか。しかしこの15年、IBMはメインフレームにLinuxの要素を取り入れてきているのだ。そしてついにIBMCanonicalは、メインフレーム上でUbuntsu Linuxを動かすことにした旨のアナウンスを行った。このプロダクトはLinuxOneと命名されている。

このLinuxOneではメインフレームの利用シーンを拡大したいという狙いに満ちてもいる。たとえば価格にはサブスクリプションモデルを採用し、またさまざまなオープンソースプロジェクトと連携し、さらには自らのメインフレーム上のコードもオープンソース化するという動きもみられる。

Canonicalとの連携にあたり、IBMが用意するメインフレームは2種類だ(もちろんペンギンにちなむものだ)。ひとつは「Emperor」(皇帝)という名前で、1月に記事にしたIBM z13を利用するものだ。もうひとつは少々コンパクトで「Rockhopper」(イワトビ)の名前を持つ。こちらはメインフレームユーザーの中では、エントリーレベルの層をターゲットとしている。

もしかすると、「メインフレーム」というのは恐竜のように絶滅したのだと思っていた人もいるかもしれない。実のところはまだまだ現役で、それどころか、世界中の大組織の中で積極的に活用されているものだ。こうした中でクラウドサービス、データ分析やセキュリティ面などでもメインフレームの活用の場を広げるため、Ubuntu LinuxおよびApache Spark、Node.js、MongoDB、MariaDB、PostgreSQLおよびChefなどメジャーなオープンソースのエンタープライズソフトウェアを動作させようとしているわけだ。

IBM SystemsのRoss Mauriによれば、IBMは四半期毎に10社ないし20社程度のメインフレームユーザーを獲得しているのだとのこと。IBMとしてはクラウドサービス並に柔軟な価格体系を用意して、メインフレームの導入コストに躊躇していた利用者をも獲得していきたい考えだ。

Mauri曰く、こうした価格体系にあってメインフレームはオンプレミスで提供されるものの、しかし課金についてはクラウド風に使用量に応じた形で請求されるのだそうだ。

これまでの歴史からみれば、CanonicalとIBMに接点はなさそうにも見える。しかしPund-ITのプリンシパルアナリストであるCharles Kingによれば、これは企業内でUbuntu Linuxの採用事例が増えていることに対するIBMの成長戦略のひとつなのであるとのこと。

Ubuntuを支援するCanonicalのJohn Zannosの話によれば、顧客層の中でのUbuntu利用が増える様子をみて、IBMの方からCanonicalにアプローチしてきたらしい。ちなみに、今回が両社がタッグを組む最初の事案というわけでもなくOpenPOWERプロジェクトでも協力した経験を持っている。

Zannosは曰く、IBMはZシステムやメインフレーム上でオープンソースの活用を積極的にすすめるなど、従来のパラダイムを転換する方向に動いているとのこと。

Charles Kingは、今回の連携は双方にとってもメリットのあるものだ(もちろんほぼすべての業務提携が双方にとってのメリットを強調してはいる)と述べている。「IBMはLinuxの強い市場でのプレゼンスを高めることになるでしょう。そしてCanonicalの方も、IBMのメインフレームを使っていたような大企業におけるシステム導入を増やすことに繋がることになります」と、明るい未来を描いている。

IBMとしては、セールス拡大に向けた新たなチャネルを獲得したい狙いがある。「主要ビジネスでの全面的な売上低下」に対応していきたいという考えているはずだと、Wall Street Journalは伝えている。

IBMにとっては、ともかくメインフレームの販売拡大が企業にとっての大きなメリットとなる。Canonicalとの提携や、各種オープンソースツールの採用により、小規模な、しかし成長著しいマーケットへの進出を狙いたいと考えているわけだ。

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(翻訳:Maeda, H

モバイルの膨大なトランザクションを扱うz13でメインフレームの存続に賭けるIBM

IBMはx86のサーバビジネスを投げ捨て、メインフレームが過去の遺物となったと思われる今日このごろ、実は5年間で10億ドルを投じて、現代のモバイル時代にふさわしい、新しいメインフレームの猛獣を開発していた。

今の企業は、ハイエンドなコンピューティングシステムを求めている。IBMの、z13と名付けられたホットな新システムはまさに、モバイルの大量のトランザクションを処理できるように設計されている。IBMの発表によると、その一日の処理能力は25億トランザクション、それはCyber Monday100日ぶんに相当する。

IBMは昨年の4月に、同社のメインフレームビジネスの50周年記念を祝った。その間エンタプライズコンピューティングは数多くの変化を経験したが、まだメインフレームが生き残っている部分もある(後述)。

IBMでエンタプライズモバイルを担当しているディレクターMike Gilfixによると、メインフレームの最新機z13の開発でとくに意識したのは、モバイルトランザクションに特有の複雑性と、その増加だ。そのため同機は、複数のシステム間の複雑な相互作用に十分対応できると同時に、同社が“リアルタイムモバイルエンクリプション(encryption, 暗号化)”と呼ぶ技術によるセキュリティの確保と、ハイエンドなリアルタイムの分析(タスク分析、アクセス分析)ができるように設計されている。

彼が例として挙げるのは、モバイルデバイス上のeコマースのトランザクションだ。ユーザが画面の[購入する]ボタンを押すと、非常に多数のさまざまなシステムが、クレジットカードの処理や在庫管理、発送、などなどをめぐって大量のコミュニケーションを開始する。しかもそれらの処理は逐次ではなくて同時並行的だ。すなわち、顧客一人につき大量の複雑な処理が行われるが、そのときアクセスしている顧客全員なら合わせて数十億というトランザクションが並列で行われることになる。そんなとき、z13なら顧客に遅れを感じさせることがない、という。

彼は曰く、“今のコンピュータとネットワークの利用を先頭に立って引っ張っているのがモバイルだ。eコマースでもヘルスケアでも金融サービスでも、モバイルが最大の利用インタフェイスになっていく。すべての人が、毎日の生活の中で、モバイルから必要な情報を得ようとするのだ”。

そんな全地球規模の、しかもリアルタイムのトランザクション集合に遅延なく対応することは、どんなコンピュータにとっても難題だ。しかしこのマシンが前宣伝に恥じない性能を本当に持っているなら、まさにそれは、今日の企業のためのメインフレームになるだろう。ただし今の企業は、メインフレーム機など求めているのか? この製品の価格情報はまだ提供されていないが、安くはないはず。しかも今の企業には、クラウドコンピューティングなどそのほかの選択肢もある。Gilfixが、多くの選択肢の中で企業はこのマシンの方を選ぶ、と主張する主な根拠は、その処理能力とセキュリティだ。

InformationWeek誌の昨年4月号は、2003年に100万ドルだったIBMのメインフレームが今なら75000ドルで買える、と報じた。このz13がなんぼするのか、それをIBMはまだなかなか言わないのだが、ハードウェアの構成を見るかぎり、100万ドルと75000ドルのあいだのどこか、とは言えるだろう。100万を超えることは、ありえない。

これは、超高性能なx86機ではない。IBMによると、z13には世界最高速のプロセッサが搭載されていて、そのスピードは今の一般的なサーバ用プロセッサの2倍、メモリ容量は4倍、ネットワーク帯域は2倍、そして高度な分析機能を伴うベクトル演算によりモバイルのトランザクションを高速化する。

Gilfixが示唆する主な売れ先は、金融や大型小売、ヘルスケアなどにおける既存の顧客だ。また今現在メインフレーム上の大量のデータに投資を蓄積しているユーザも、対象になる。しかし、モバイルトランザクションの高効率化という点で、これまでメインフレームなど検討したことのないユーザも、魅力をおぼえるはずだ、と。

具体的な例としてGilfixが挙げるのは、OpenStackによるプライベートクラウドだ。うむ、それならありかもしれない。

2012年のReuters(ロイター通信)の記事が、IBMにはまだメインフレームの顧客がおり、その数は数千のオーダー、と報じた。しかし、その後の市場の整理統合、そして企業ITの姿の変貌により、数はさらに減っているはずだ。IBMは、新しいメインフレームを現代的なパッケージで包めば、その市場は存続する、と賭けているのだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))