スマホやタブレットを使ったオンライン家庭教師サービス「manabo」を展開するマナボは、11月1日、Z会グループの持株会社である増進会出版社を引受先とする2.5億円の第三者割当増資の実施と、Z会の会員などを対象にmanaboサービスを提供する業務提携契約の締結を発表。また同日、Z会グループの経営管理を担うZEホールディングス取締役の下田勝昭氏、およびBloom & Co.代表の彌野泰弘氏の社外取締役就任も発表した。
manaboはスマホアプリを通じて、生徒が宿題や問題集などの分からない部分を撮影し、チューターにオンデマンドでリアルタイムに質問できるサービス。主に有名大学の学生がチューターとして2000人以上在席しており、得意科目をアプリの音声通話と手書きの画像共有で教える。
今回の資本業務提携により、Z会グループでは2017年4月より、Z会高校受験コース受講の中学3年生の全会員、栄光ゼミナール高等部“ナビオ”の全塾生、および10月26日に発表されたタブレット向けオンライン学習サービス「Z会Asteria(アステリア)」の会員を対象に、manaboのサービス提供を予定している。サービスは、マナボからZ会グループへは有償で提供される。両社は2017年度以降も対象範囲を順次拡大する方針で、サービスの共同開発の可能性について協議を進めていくという。
マナボでは、BtoCの自社サービス提供も行っているが、2015年末からはBtoBtoCの法人向けOEMサービス提供に軸足を置いている。そうした中、Z会グループの栄光ゼミナールとは2回のトライアルを実施。結果が好調であったことから、より深く提携を進めることとなり、今回の資本業務提携に結びついた。ちなみにマナボは、2014年9月にベネッセコーポレーションから資金調達を実施しているが、現在では「リアルタイム家庭教師」の名称で提供していたベネッセへのサービス業務契約は終了している。
マナボ代表取締役社長の三橋克仁氏は「自社サービスも将来的にはもちろん、テコ入れしていくが、BtoCサービスはやはり成長に時間がかかることが経験してみて分かった。今はBtoBtoCにリソースを強めに割いて、体力を付けたい。Z会はもちろん、それ以外の教育系事業会社とも多角的にやっていこうと考えている」と話す。
AI導入など、manabo以外のスタイルのオンライン教育サービス展開の可能性について質問してみると、三橋氏は「今のところはオンライン家庭教師サービスに集中してより深く、よりサービスクオリティが上がる方向でやっていく」と言う。「業界の動向を見ると、EduTechは2013〜2014年にかけて非常に盛り上がったが、その後Tech界隈の注目がFinTechやAI、IoT分野へシフトしていき、今は山を越えて下り坂の状態だと感じる。一方で、教育のリアルな現場のICTは、取り組むべき課題としてようやく浸透してきたところ。進み方は遅いけれども、先端のEduTechとの間にはまだまだギャップがあって、着実に成長している。投資対象としても働く領域としても、おもしろく、チャレンジしがいのある分野だ。我々はリアルな教育現場の中でも比較的意思決定の早い塾や私学などへアプローチして、まずは粛々とBtoBtoCでサービスを広げていくつもりだ」(三橋氏)
また、最近日本でもトレンドになってきているアクティブ・ラーニング(能動的学習)やアダプティブ・ラーニング(適応学習)などの教育手法とmanaboとの関係について、三橋氏はこう語る。「自律学習やアダプティブ・ラーニングの本質とは、“先生が生徒に(一方的に)教える”というのを“生徒が先生に(自発的に)学ぶ”という逆向きのベクトルに変えることで、それは元々manaboがサービスとしてやってきていること。あらためて大局がmanaboの目指す方向に向かっていると感じる」(三橋氏)