“スマート雑誌”の実現を目指すダイマーズラボの「Favlis」

ダイマーズラボが提供する「Favlis」。2014年1月にiOS向けにサービスの本格提供を開始していたが、5月になってアプリを刷新した。アプリはApp Storeから無料でダウンロードできる。

Favlisはもともと店舗情報や書籍、CD情報などのブックマーク共有サービスとして2013年にクローズドベータ版サービスをスタートした。しかし正直なところ、利用してみた僕も使い方に迷うところがあるサービスだった。

だが2014年に入ってからは、ウェブメディアやブログなどから、同社にて独自にキュレーションしたレストランやイベントなどの情報をピックアップして配信する仕組みにそのサービスをピボットさせている。

情報は午前と午後に分けて1日40〜60件程度配信される。詳細を見る場合は元サイトにアクセスする仕組みだが、Favlisの特徴はその情報のすべてに位置情報を持たせていることにある。これによって、元サイトで店舗の詳細な情報を読みつつ、興味を持てばその情報をブックマークし、それを地図やリスト形式で閲覧することができるようになっている。

この仕組みを聞くと、「tab」を思い出すのだが、ダイマーズラボ代表取締役の長野英章氏は、「tabがユーザーがピックアップした情報を共有するもの。一方でFavlisは、キュレーションされた情報を知ることができるもの」と、サービスの違いを説明する。

ピボットしてからまだ4カ月程度なので、正直なところ情報数が多いとは決して言えない状況だ。しかし毎日ウェブメディアやブログの記事と店舗情報がセットで送られてくるため、「今まで知らなかったけれども、読んで興味を持った」というような店舗に出会うことは少なくない。ユーザーからの評価の高い飲食店を探すのであれば食べログやRettyがあるが、Favlisはニュースのように毎日プッシュで情報が送られてくるのも強みだ。

最新版のアプリでは、検索機能を追加。駅名やキーワードをもとに、Favlisでこれまでに紹介された店舗、イベントなどの情報を検索できるようになった。

長野氏は、Favlisを「スマート雑誌」として世に広めたいと語る。「雑誌をやウェブメディアのコンテンツはすばらしいし、それぞれ独自の視点でピックアップした情報であること自体に価値がある。ただそれが時間とともに過去のモノになってしまう(フロー型のコンテンツであるという意味)。これを何とかしたい」(長野氏)

Favlisで紹介するメディアやブログは基本的にRSSの利用許諾を取得、もしくは取得の打診をしているが、使用不可となった場合はコンテンツを削除しているそうだ。今後はFavlisから各サイトへの送客数などを増やし、メディアと共同での有料コンテンツ販売や広告なども展開したいとしている。


Google、ソーシャル・カーナビのスタートアップ、Wazeを11億ドルで買収―ライバルに痛打

数ヶ月前から注目の的だったWazeの去就が決まった。このソーシャル・カーナビ・サービスのスタートアップをGoogleが買収したことが明らかになった。すでに二番手を遠く引き離しているGoogleのモバイル・マップ事業が、この買収によってさらに大きく強化されることになる。買収金額は明らかにされていないが、TechCrunchの情報源によると、11億ドルだという。

アップデート: Wazeが公式ブログで買収について発表した。CEOのNoam Bardinは「GoolgeのCEO、Larry Page、ジオ・プロダクト担当副社長、Brian McClendon、Googleマップ・チームは、以前からWazeに注目していた。われわれはGoogleマップ・チームといっしょに働くことができるようになったことに興奮している」と書いている。Bardinはまた、「Wazeは買収後も事実上何も変わらない。ブランド、サービス、会社組織、そして5000万人に上るユーザー・コミュニティーは従来どおり維持される」と述べた。

BardinはまたなぜWazeが株式上場ではなく買収を選んだかについても次のように説明している。「(上場すると)企業はプロダクトよりも決算の数字を優先せざるを得なくなる。注意はユーザーよりも金融機関、投資家、弁護士、ウォールストリートの方に向かいがちだ。しかしわれわれはWazeコミュニティーを最優先する(ためにGoogle傘下に入る道を選んだ)」。

アップデート2: イスラエルのテクノロジー・ブログ、GeekTimeも11億ドルという金額を確認した。それによると、10億3000万ドルは現金で会社とその株主に支払われ、1億ドルが貢献に応じて社員に支払われるという。

今回の買収はGoogleにとって二重に戦略的だ。報道によれば、Googleのライバル2社、FacebookとAppleがWazeの買収を試みていた。Facebookはデューデリジェンス段階で脱落、Appleのアプローチも失敗した(ただし2社ともWazeに買収の申し出をしたことは公式に認めていない)。

GoogleのWazeに対する関心2週間前に報じられ、その後さらに熱意が高まっているとされた。しかしこれまで噂が先行して情報が錯綜していた。

Wazeはこれまでに6700万ドルのベンチャー資金を調達している。投資家はBlue Run Ventures、Magma、Vertex、Kleiner Perkins Caulfield & Byers、Horizon Venturesなどだ。買収代金の大半はこれらの投資家のところに直行するらしい。イスラエルの経済紙、Globesによれば、共同ファウンダーのEhud Shabtai、AmirとGili Shinar、Uri Levine、Arie Gillon、CEOのNoam Bardinが手にするのは2億ドル以下だという。

ソーシャル: ラリー・ペイジがCEOの就任して以来、Googleはソーシャル化を強力に推進してきた。今やGoogleの全プロダクjとはGoogle+を軸としてソーシャルに再編されつつある。

世界最大のクラウドソースの位置情報プラットフォームであるWazeは、Googleのモバイル・マップのソーシャル化を大きく推進することができる。ユーザーは単にウェブ上で訪問した場所(ウェブサイト)を共有するだけなく、物理的に訪問した場所を共有できる。Bardinは4月のAllThingsDカンファレンスで、「“モバイルにとっての地図はウェブにとっての検索と同じ役割を果たす」と述べた。つまりモバイル・ユーザーが行う検索の大部分は位置情報に関連している。Wazeはモバイル・ユーザーの位置情報検索を現実の地図上のソーシャル・レイヤーとして表現できる。世界でもこうしたサービスを大規模に実現している例は数えるほどしかない(ニューヨーク・タイムズは地図をカンバスにしてあらゆるモバイル・アプリを統合するという興味あ実験を紹介している)。

ライバル: Waze買収にはもうひとつの意味がある。Wazeを傘下に収めたことによってGoogleはFacebookがWazeの資産を活用することを効果的に防止することができる。Bardinも述べているとおり、Wazeは単なる地図サービスではなく、位置情報のビッグデータ企業だ。モバイル化に全力を挙げているFacebookにとってインハウスで収集された膨大なソーシャル位置情報を保有するWazeは理想的な統合の相手だった。WazeをGoogleにさらわれたことによってFacebookはサードパーティーからのデータ提供に頼ることを続けるか、あるいは別の、より小さい同種の会社を買収しなければならなくなった。

Wazeが売却の相手にGoogleを選んだのはイスラエルから本拠を移さないという条件をGoogleがのんだことも一因だという。110人の社員のほとんど全員がイスラエルにおり、パロアルトのアメリカオフィスに勤務するのはわずか10人ほどだ。しかしパロアルト・オフィスは規模は小さいものの、CEOのNoam Bardinとプラットフォームおよび提携戦略担当副社長のDi-Ann Eisnorが常駐している。

現在のWazeの主要なターゲットはアメリカだ。4月にBardinが発表したところでは4400万人(当時)のユーザーのうち1200万人はアメリカにいるということだった。今年2月、Wazeはアメリカの事業を拡張し、収益化のため、広告ビジネスの中心地、ニューヨークのマジソン・アベニューにオフィスを開いた。最近、Wazeの社員が頻繁にニューヨークを訪れている。収益化のためには今後なすべきことが多いだろうが、ここでもGoogle poleの巨大な広告マシンが大いに威力を発揮するに違いない。この点でもWazeとGoogleの相性は良さそうだ。

〔日本版〕 Wazeはカーナビをベースにしてユーザーがドライブ中に渋滞、事故、ガソリンスタンドの料金などの情報をリアルタイムで発信し、情報を共有できるサービス。日本語版も公開されている(Android版、iOS版)。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+