このスイス製腕時計は、心臓の鼓動をペースメーカーの動力に変える

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スイスの研究者が昔ながらの時計じかけを改造して、心臓ペースメーカーの動力源を心臓の鼓動そのものから取り出す仕組みを作った。自動巻の腕時計が手首の動きをエネルギーに替えるのと同じ方式だ。

ペースメーカー等の埋め込みデバイスには動力源が必要であり、通常その力は電池で供給する。しかし電池は消耗し、交換が必要になる ― 皮膚から1~2インチ下では容易な作業ではない。

ベルン大学のAndreas Haeberlinとミシガン大学のAdrian Zurbuchenのふたりは、本物の時計じかけを利用した代替手段を提唱している。実際の(当然スイス製の)腕時計から回収した部品を使っている。

「ヒトの心臓の連続的で強力な収縮は電池の代替として理想的な性質だ」と、IEEE Transactions on Biomedical Circuits and Systemsに掲載された論文にふたりは書いた。ペースメーカーは心臓が正確に鼓動する手助けをするが、心筋を実際に動かすための豊富なエネルギーは、身体から供給されている。

しかし、その運動エネルギーをどうやって捕獲し蓄積するのか? 研究者の出身地が、そのための精密機械を何世紀も作り続けてきたことで有名な国だったらどうだろうか。まさしくそうであることに気付いたふたりは、スイス製腕時計を分解し、研究のために再利用することにした。

通常腕時計は手首に着けられ、手首が動くと内部のおもりが振れ、その運動がゼンマイに蓄積される。これを心臓の近くに置き、おもりが心蔵の鼓動そのものによって動くように機構を修正した。ブタを使った初期試験では約6マイクロワットが得られた。これはペースメーカーを駆動するのに十分なエネルギーだ。

両方の鼓動が同時に停止したときに備えて、小型のバックアップ電池が必要になるだろうが、それも心筋活動が順調な間に心臓の動きによって充電することができる。

今後数年間は研究とテストを継続する必要があるが、うまくいけばペースメーカーの電池交換は過去のものになるかもしれない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

わずか20セントの子どもの回転おもちゃで1000ドル相当の医学用遠心分離器を作れた

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高速回転により液体中の物質を分離する遠心分離器という器具は、世界中の医学研究所にある。しかしその良いものは2000ドルぐらいするし、もちろん電気が必要だ。お金も電気も、世界の最貧国の田舎の病院にはないだろう。スタンフォード大学の研究者たちが作った代替品は、わずか数セントの費用でできるし、充電も要らない。彼らのヒントとなった子どもの玩具は、遠心分離器として意外にも高品質なのだ。

その回転玩具は、単純な構造だ。ボタンのような小さなディスク(円盤)に、糸を2本通す。その糸をゆっくり引くと、ボタンは相当速く回り始める。子どものころ自分で作った方も多いと思うが、研究者の一人も、自分の子どものころを思い出しながら、そのPaperfugeと呼ばれる器具を作った。

彼は大学が作ったビデオの中でこう言っている: “これは、ぼくが子どものころ遊んだおもちゃだ。でも、その回転速度を測ったことはなかった。そこで、試しに高速カメラで撮ってみたんだが、それを見たときは自分の目が信じられなくなった”。

その回転おもちゃは、10000〜15000RPMで回転していた。それはまさに、遠心分離器の回転速度だ。その後チームは、回転おもちゃの動きを詳しく研究し、それが。線形の動きを回転運動に変換する、すばらしく効率の良い方法であることを発見した。

チームは独自の回転おもちゃを作り、それに紙製のディスクを取り付け、そこに血液などの液体を入れたバイアル(小型ガラス瓶)をはめられるようにした。糸には扱いやすいようにハンドルをつけ、1〜2分糸を引き続けると、1ドルにも満たないその器具が、その何千倍以上もするデバイスの仕事を見事に演じた。回転数は125000RPM、30000Gに達した。

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“このような、お遊びのような試行方法はきわめて有意義だ。正しい解はどうあるべき、という固定観念から、われわれを解放してくれる”、指導教授(TEDのフェロー)のManu Prakashはそう語る。

実用試験は、マダガスカルで現地のパラメディカルたちと一緒に行った。そこでは、血液からマラリア原虫を分離することに成功した。次は、もっと公式の臨床試験が待っている。

このようなシンプルで安上がりな実験器具は、前にもあったな、と思われた方は、きっとFoldscopeを見た方だろう。これもやはり、Prakashのプロジェクトだ。それはボール紙を折りたたんで作った顕微鏡で、製品化されたものでも数ドルで買える。これを使えば、安い費用で科学研究や医学の研究を行うことができる。

PrakashらのチームによるPaperfugeとその開発の詳細は、最新号のNature Biomedical Engineeringに載っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))